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1 君にサプライズをあげる

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今宵はローマイア王立貴族学園の高等部卒業記念パーティーが開催されます。
場所は学園の特別大ホールです。

特別大ホールは普段は使用されず、名前の通り特別な入学式や卒業式、戦時中には出陣される男子生徒の為の壮行会等も開かれたホールです。

本日の午前中にこちらで第105回高等部卒業式が執り行われ、私達卒業生は各々一旦帰宅して制服を正装に改めて、卒業記念パーティーに参加しているのでした。


さて。
ここからようやくですが、私の自己紹介を致しましょう。

父はこのローマイア王国の伯爵で、王立騎士団で統合副団長の職に就いています。
副団長ですからトップじゃないのです、残念ながら。

私はロドリー伯爵領を治めるマッカラム家の長女で。
エヴァンジェリン・マッカラム・ロドリーと申します。
愛称はエヴァ。
どうぞよろしくお願い致します!



私も本日無事に卒業証書を受け取り、今夜のパーティーに出席したのですが。
お恥ずかしい事に、私はパートナー無しの出席となってしまいました。
信じられないでしょうけれど、ホントの話です。

と言うのも、私の婚約者は私とは違う女性を伴って、このパーティーに出席しているのです。
それを告げられたのは、わずか2日前の事でした。
長年婚約していたのに、私も舐められたものです。

そう、彼はわざと直前になって、私にそれを告げました。
わざとなんですよ、わざと! 
彼は性根が腐ってる男なんです!



図書室で待っている、と彼は伝言してきました。
それさえも、私には直接言わなくなってきた男。
この日、何ヵ月ぶりかで伝言してきた男。

夏が終わり、最終学年が始まって以来、私達は話すことも顔を合わすこともなくなっていて……


私の目の前には、幼馴染みで婚約者の彼が彼女と立っていました。
彼の左腕は毎度のお約束通り、彼女の腰に回されていて。
ふたりは私に、何とも言えない笑顔を見せながら。


「君には申し訳ないけれど、やはり学生生活最後のパーティーは真実に愛するひとと参加したいからね」

「ごめんなさい、マッカラム様。
 彼もずっと悩んでいて、こんなギリギリになりました」

「……」
 
「悪く思わないで欲しい。
 君が誰と出席するかは知らないけど、欠席はしないでくれよ?
 卒業記念に、俺から君にサプライズをあげるよ」


悪く思うな?
私にサプライズをあげる、だと?
事前に予告するサプライズ、って意味がわからない。
何言ってんだ、こいつ? 案件です。
頭わいてるな、お前ら? 案件です。


それにこの女、私に近付いて親しげにしていた時は『エヴァンジェリン様』なんて、馴れ馴れしくしていたくせに。
今となったら、家名呼びするのね!


卒業記念のパーティーは、基本婚約者がいる者はそちらを優先する事と、それは暗黙の了解でした。

いくら、彼が彼女と仲睦まじく毎日を過ごしていても、私達の婚約は続いていたので、取りあえず最初だけは一緒に入場になるだろう、と思っていた……
んだよ! 私は!



彼が私に対して愛情を持っていない事など、今更。
私もまた彼を愛していない事を、彼自身も知っていた。

それでも私達の婚約は解消されていなかったから、将来を共にするつもりだったよ?
だって、そんな結婚は貴族の世界じゃよくあることだし、って。

卒業2日前に彼から言われるまでは、ね!



見た目程、私も強靭な神経していないから。
パートナー無しの参加は正直云って、堪えます。
皆様からの視線が怖い……

『こっち見るな、お前ら』と言えたら、どんなにスッキリするか。
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