1 / 22
1 君にサプライズをあげる
しおりを挟む
今宵はローマイア王立貴族学園の高等部卒業記念パーティーが開催されます。
場所は学園の特別大ホールです。
特別大ホールは普段は使用されず、名前の通り特別な入学式や卒業式、戦時中には出陣される男子生徒の為の壮行会等も開かれたホールです。
本日の午前中にこちらで第105回高等部卒業式が執り行われ、私達卒業生は各々一旦帰宅して制服を正装に改めて、卒業記念パーティーに参加しているのでした。
さて。
ここからようやくですが、私の自己紹介を致しましょう。
父はこのローマイア王国の伯爵で、王立騎士団で統合副団長の職に就いています。
副団長ですからトップじゃないのです、残念ながら。
私はロドリー伯爵領を治めるマッカラム家の長女で。
エヴァンジェリン・マッカラム・ロドリーと申します。
愛称はエヴァ。
どうぞよろしくお願い致します!
私も本日無事に卒業証書を受け取り、今夜のパーティーに出席したのですが。
お恥ずかしい事に、私はパートナー無しの出席となってしまいました。
信じられないでしょうけれど、ホントの話です。
と言うのも、私の婚約者は私とは違う女性を伴って、このパーティーに出席しているのです。
それを告げられたのは、わずか2日前の事でした。
長年婚約していたのに、私も舐められたものです。
そう、彼はわざと直前になって、私にそれを告げました。
わざとなんですよ、わざと!
彼は性根が腐ってる男なんです!
図書室で待っている、と彼は伝言してきました。
それさえも、私には直接言わなくなってきた男。
この日、何ヵ月ぶりかで伝言してきた男。
夏が終わり、最終学年が始まって以来、私達は話すことも顔を合わすこともなくなっていて……
私の目の前には、幼馴染みで婚約者の彼が彼女と立っていました。
彼の左腕は毎度のお約束通り、彼女の腰に回されていて。
ふたりは私に、何とも言えない笑顔を見せながら。
「君には申し訳ないけれど、やはり学生生活最後のパーティーは真実に愛するひとと参加したいからね」
「ごめんなさい、マッカラム様。
彼もずっと悩んでいて、こんなギリギリになりました」
「……」
「悪く思わないで欲しい。
君が誰と出席するかは知らないけど、欠席はしないでくれよ?
卒業記念に、俺から君にサプライズをあげるよ」
悪く思うな?
私にサプライズをあげる、だと?
事前に予告するサプライズ、って意味がわからない。
何言ってんだ、こいつ? 案件です。
頭わいてるな、お前ら? 案件です。
それにこの女、私に近付いて親しげにしていた時は『エヴァンジェリン様』なんて、馴れ馴れしくしていたくせに。
今となったら、家名呼びするのね!
卒業記念のパーティーは、基本婚約者がいる者はそちらを優先する事と、それは暗黙の了解でした。
いくら、彼が彼女と仲睦まじく毎日を過ごしていても、私達の婚約は続いていたので、取りあえず最初だけは一緒に入場になるだろう、と思っていた……
んだよ! 私は!
彼が私に対して愛情を持っていない事など、今更。
私もまた彼を愛していない事を、彼自身も知っていた。
それでも私達の婚約は解消されていなかったから、将来を共にするつもりだったよ?
だって、そんな結婚は貴族の世界じゃよくあることだし、って。
卒業2日前に彼から言われるまでは、ね!
見た目程、私も強靭な神経していないから。
パートナー無しの参加は正直云って、堪えます。
皆様からの視線が怖い……
『こっち見るな、お前ら』と言えたら、どんなにスッキリするか。
場所は学園の特別大ホールです。
特別大ホールは普段は使用されず、名前の通り特別な入学式や卒業式、戦時中には出陣される男子生徒の為の壮行会等も開かれたホールです。
本日の午前中にこちらで第105回高等部卒業式が執り行われ、私達卒業生は各々一旦帰宅して制服を正装に改めて、卒業記念パーティーに参加しているのでした。
さて。
ここからようやくですが、私の自己紹介を致しましょう。
父はこのローマイア王国の伯爵で、王立騎士団で統合副団長の職に就いています。
副団長ですからトップじゃないのです、残念ながら。
私はロドリー伯爵領を治めるマッカラム家の長女で。
エヴァンジェリン・マッカラム・ロドリーと申します。
愛称はエヴァ。
どうぞよろしくお願い致します!
私も本日無事に卒業証書を受け取り、今夜のパーティーに出席したのですが。
お恥ずかしい事に、私はパートナー無しの出席となってしまいました。
信じられないでしょうけれど、ホントの話です。
と言うのも、私の婚約者は私とは違う女性を伴って、このパーティーに出席しているのです。
それを告げられたのは、わずか2日前の事でした。
長年婚約していたのに、私も舐められたものです。
そう、彼はわざと直前になって、私にそれを告げました。
わざとなんですよ、わざと!
彼は性根が腐ってる男なんです!
図書室で待っている、と彼は伝言してきました。
それさえも、私には直接言わなくなってきた男。
この日、何ヵ月ぶりかで伝言してきた男。
夏が終わり、最終学年が始まって以来、私達は話すことも顔を合わすこともなくなっていて……
私の目の前には、幼馴染みで婚約者の彼が彼女と立っていました。
彼の左腕は毎度のお約束通り、彼女の腰に回されていて。
ふたりは私に、何とも言えない笑顔を見せながら。
「君には申し訳ないけれど、やはり学生生活最後のパーティーは真実に愛するひとと参加したいからね」
「ごめんなさい、マッカラム様。
彼もずっと悩んでいて、こんなギリギリになりました」
「……」
「悪く思わないで欲しい。
君が誰と出席するかは知らないけど、欠席はしないでくれよ?
卒業記念に、俺から君にサプライズをあげるよ」
悪く思うな?
私にサプライズをあげる、だと?
事前に予告するサプライズ、って意味がわからない。
何言ってんだ、こいつ? 案件です。
頭わいてるな、お前ら? 案件です。
それにこの女、私に近付いて親しげにしていた時は『エヴァンジェリン様』なんて、馴れ馴れしくしていたくせに。
今となったら、家名呼びするのね!
卒業記念のパーティーは、基本婚約者がいる者はそちらを優先する事と、それは暗黙の了解でした。
いくら、彼が彼女と仲睦まじく毎日を過ごしていても、私達の婚約は続いていたので、取りあえず最初だけは一緒に入場になるだろう、と思っていた……
んだよ! 私は!
彼が私に対して愛情を持っていない事など、今更。
私もまた彼を愛していない事を、彼自身も知っていた。
それでも私達の婚約は解消されていなかったから、将来を共にするつもりだったよ?
だって、そんな結婚は貴族の世界じゃよくあることだし、って。
卒業2日前に彼から言われるまでは、ね!
見た目程、私も強靭な神経していないから。
パートナー無しの参加は正直云って、堪えます。
皆様からの視線が怖い……
『こっち見るな、お前ら』と言えたら、どんなにスッキリするか。
30
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?
水谷繭
恋愛
公爵令嬢ジゼル・ブラッドリーは第一王子レイモンドの婚約者。しかしレイモンド王子はお気に入りの男爵令嬢メロディばかり優遇して、ジゼルはいつもないがしろにされている。
そんなある日、ジゼルの元に王子から「君と話がしたいから王宮に来て欲しい」と書かれた手紙が届く。喜ぶジゼルだが、義弟のアレクシスは何か言いたげな様子で王宮に行こうとするジゼルをあの手この手で邪魔してくる。
これでは駄目だと考えたジゼルは、義弟に隠れて王宮を訪れることを決めるが、そこにはレイモンド王子だけでなく男爵令嬢メロディもいて……。
◆短めのお話です!
◆なろうにも掲載しています
◆エールくれた方ありがとうございます!
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。
昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。
しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。
両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。
「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」
父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた
ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。
だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。
寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!
ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。
故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。
聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。
日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。
長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。
下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。
用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが…
「私は貴女以外に妻を持つ気はない」
愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。
その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる