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第1章 今日、あなたにさようならを言う
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逃げようとしたのに失敗して、変態の空き巣に気付かれてしまった。
忍び込んだ部屋の住民に見つかったのに、逃亡するのではなく、笑っているのは居直り強盗に変更して、口封じをするためか。
もう遅いとは思ったけれど、悲鳴を上げようとわたしは大きく息を吸い込んだ。
「お帰りなさい!」
「……ゴホッゴホ」
キャー!と、辺りに響かせるつもりの息の吸い込みが、嬉しそうに露出狂から『お帰りなさい』と声をかけられたことで、途中で止まって行き場を失い、吐くか、吸い込むか、どっち付かずになって、わたしはむせた。
「どうした、大丈夫か!」
わたしが軽い呼吸困難に陥って咳き込んだので、その一瞬だけ変態は表情を変えて、わたしの方に手を伸ばしてきたので、その手を叩き落とした。
わたしを心配するような素振りから凶悪犯じゃないような気がしてきたから、追い出しにかかることにする。
「触らないでよ!
今すぐ、ここから出ていって!」
「……」
「出ていかないと、叫ぶからね!
早く出ていけ!」
「……やだなぁ、お恥ずかしいところ見せちゃったから、怒ってるんだね!
どこに出掛けてたの、ディナ?」
ディナ、と呼ばれた?
そんな愛称で呼ばれたことはない。
一般的にわたしの名前の愛称はジェリーか、ディナが多いが、キャンベル家ではカルディナと言う名のメイドが既にディナと呼ばれていたので、後から生まれたわたしはジェリーだった。
ディナと呼ぶと言うことは、わたしの名前を知っているこの女は初対面じゃない?
こんな物凄い素顔美人で、巨乳の、ナイスな身体を持つ変態がわたしの知り合いに居た?
超高速のスピードで父方の親戚、母方の親戚、領地、王都、幼小中高大、思い付く限りの知人女性のメイク無しの素顔を推測しながら思い浮かべて行くが、どれにもヒットしない。
いやいや、この際、どんな関係者だろうと許せない。
どう考えても、いくら知り合いであっても、招いていないのにウチの中に居るのはおかしいでしょ、全裸で!
お帰りなんて、馴れ馴れしくされても、この女に見覚えはないし、ここは強気で行くしかない。
「あんた、誰よ?
パピーに変な真似していないでしょうね!」
「えー、パピーに変な真似なんて、しないわよぉ。
だって、あたしがパピーなんだもん!」
自分はパピーだと主張する黒髪美女の金色の瞳が光った。
こんな女、相手していられない。
パピーが無事か気になって、急いでベッドを覗いたが、眠っているはずのパピーの姿はない。
「だからー、あたしがパピーなんだってぇ」
もしかして落ちたのかも、とベッドの向こう側を探してみる。
壁との狭い隙間には幼いパピーもさすがに入れないのは分かるのだが、確認だけしてみる。
「ねー、ねー、ディナ、探すの止めて話を聞いて」
女に話しかけられても無視して、モニカの部屋、バスルーム、レストルーム、全部の場所をパピーを呼びながら、見て回る。
そんなわたしの後ろを全裸の女が付いてくる。
どうしてなの。
どこにいるの。
あんな傷を負ったまま、消えてしまった小さなパピー。
少しの間だからと出掛けるんじゃなかった。
どこにもいない、パピーはどこにもいない。
力が抜けて床に座り込んだ。
物凄い喪失感がわたしを襲う。
「泣かないで、ディナ。
パピーはホントにあたしなの。
あたしは『時戻しの魔女』、昨日は無理して魔力を消耗して、子供の姿になってしまっていたの。
ありがとう、貴女のおかげで魔力が戻って、元の姿に……」
自分でも気付かないくらい、静かに涙が流れていたようだった。
時戻しの魔女と名乗った全裸の女に、わたしは抱き締められて。
もう一度パピーに会いたくて、わたしは泣いた。
忍び込んだ部屋の住民に見つかったのに、逃亡するのではなく、笑っているのは居直り強盗に変更して、口封じをするためか。
もう遅いとは思ったけれど、悲鳴を上げようとわたしは大きく息を吸い込んだ。
「お帰りなさい!」
「……ゴホッゴホ」
キャー!と、辺りに響かせるつもりの息の吸い込みが、嬉しそうに露出狂から『お帰りなさい』と声をかけられたことで、途中で止まって行き場を失い、吐くか、吸い込むか、どっち付かずになって、わたしはむせた。
「どうした、大丈夫か!」
わたしが軽い呼吸困難に陥って咳き込んだので、その一瞬だけ変態は表情を変えて、わたしの方に手を伸ばしてきたので、その手を叩き落とした。
わたしを心配するような素振りから凶悪犯じゃないような気がしてきたから、追い出しにかかることにする。
「触らないでよ!
今すぐ、ここから出ていって!」
「……」
「出ていかないと、叫ぶからね!
早く出ていけ!」
「……やだなぁ、お恥ずかしいところ見せちゃったから、怒ってるんだね!
どこに出掛けてたの、ディナ?」
ディナ、と呼ばれた?
そんな愛称で呼ばれたことはない。
一般的にわたしの名前の愛称はジェリーか、ディナが多いが、キャンベル家ではカルディナと言う名のメイドが既にディナと呼ばれていたので、後から生まれたわたしはジェリーだった。
ディナと呼ぶと言うことは、わたしの名前を知っているこの女は初対面じゃない?
こんな物凄い素顔美人で、巨乳の、ナイスな身体を持つ変態がわたしの知り合いに居た?
超高速のスピードで父方の親戚、母方の親戚、領地、王都、幼小中高大、思い付く限りの知人女性のメイク無しの素顔を推測しながら思い浮かべて行くが、どれにもヒットしない。
いやいや、この際、どんな関係者だろうと許せない。
どう考えても、いくら知り合いであっても、招いていないのにウチの中に居るのはおかしいでしょ、全裸で!
お帰りなんて、馴れ馴れしくされても、この女に見覚えはないし、ここは強気で行くしかない。
「あんた、誰よ?
パピーに変な真似していないでしょうね!」
「えー、パピーに変な真似なんて、しないわよぉ。
だって、あたしがパピーなんだもん!」
自分はパピーだと主張する黒髪美女の金色の瞳が光った。
こんな女、相手していられない。
パピーが無事か気になって、急いでベッドを覗いたが、眠っているはずのパピーの姿はない。
「だからー、あたしがパピーなんだってぇ」
もしかして落ちたのかも、とベッドの向こう側を探してみる。
壁との狭い隙間には幼いパピーもさすがに入れないのは分かるのだが、確認だけしてみる。
「ねー、ねー、ディナ、探すの止めて話を聞いて」
女に話しかけられても無視して、モニカの部屋、バスルーム、レストルーム、全部の場所をパピーを呼びながら、見て回る。
そんなわたしの後ろを全裸の女が付いてくる。
どうしてなの。
どこにいるの。
あんな傷を負ったまま、消えてしまった小さなパピー。
少しの間だからと出掛けるんじゃなかった。
どこにもいない、パピーはどこにもいない。
力が抜けて床に座り込んだ。
物凄い喪失感がわたしを襲う。
「泣かないで、ディナ。
パピーはホントにあたしなの。
あたしは『時戻しの魔女』、昨日は無理して魔力を消耗して、子供の姿になってしまっていたの。
ありがとう、貴女のおかげで魔力が戻って、元の姿に……」
自分でも気付かないくらい、静かに涙が流れていたようだった。
時戻しの魔女と名乗った全裸の女に、わたしは抱き締められて。
もう一度パピーに会いたくて、わたしは泣いた。
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