【完結】やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかったわたしは今度こそ間違えない

Mimi

文字の大きさ
上 下
8 / 112
第1章 今日、あなたにさようならを言う

しおりを挟む
 ずっと、内緒にされていた。
 ずっと、変わらない態度と笑顔で。
 何で平気な顔をして、そんなことが出来たの?
 ふたりとも普通の神経じゃないところがお似合いね。


 婚約を発表しようとシドニーと決めていただろう今日だって、モニカの様子はいつもと同じ。
 今日の予定は20時からのシドニーのパーティーだけだったから、わたしは講義が終わると直ぐに部屋に戻り。
 仕事が13時半上がりの早番で、2時間くらい夕方寝をしていたモニカを起こした。 

 そして彼女が持ち帰った新作パンを食べてから、お互いのヘアメイクと服装にチェックを入れて、くだらない冗談を言い合って。
 運賃を割り勘にしたキャリッジに乗って(往路のチップは彼女が支払って、帰りのチップはジェリーね、なんてモニカは笑っていて)
 パーティーの開始時間にシドニーの部屋を訪ねて、モニカと半分ずつお金を出しあったプレゼントを彼に渡して。


 シドニーだって、『ありがとう』と先にわたしを抱擁して、その後、同じ様にモニカを軽く抱き締めたのだ。
 それはいつもと同じだった。
 いつだってシドニーは、付き合いの長いわたしをモニカより優先していた。
 ……わたしの前でなら。


 だけど違う場所で、わたしの居ない場所でなら。
 ふたりきりなら、シドニーはいつもの親愛の抱擁ではなく。
 わたしには決して見せない、甘く優しい表情で。
 愛しいモニカを離さないと強く抱き締めていたのだ。



 初めて会った16の頃から憧れて、信頼していた先輩。
 本当の姉妹のように、どんなことも分けあってきた従姉。

 ふたりを会わせたのはいつだった?
 確か2年前、王都が猛暑に襲われた夏……


「この暑さ、有り得ないよ、もう耐えられない!
 クレイトンには、山と湖が有るんだろ?
 避暑に行かせてくれないかな?」

「シドニーのおウチ、海辺に別荘持ってなかった?
 あちらには行かないの?
 勿論来て貰うのは全然構わないけど、本当に自然以外何にも無いところよ?」

「海なんか照り返しがキツくて、ここより暑いし、潮風はベタつくし。
 海より山の方が涼しいからさ。
 迷惑じゃなければ、ジェンの思い出話とか?
 案内しながら教えてよ」


 シドニーは1週間の予定でクレイトンのカントリーハウス、通称ノックスヒルへ来て、結局夏のお祭りも参加して、2週間後王都へ帰って行った。
 その時がモニカとは初対面で、特にふたりは親しくなったように見えなかった。

 そしてその翌年の、去年にモニカがこっちへやって来た。


「結婚前には1度、王都へ出たかったの」

 大学へ通うわたしの部屋で同居することになって、モニカは学生街のパン屋さんで働くことになった。 

 伝手があったので貴族街に在る洋菓子店でも働くことが可能だったのに、
『部屋から近いところがいいわ』と学生街での仕事に就きたがった。
 彼女はパンやお菓子を作るのが得意で、働くならそういう系統がいいと探していたから、希望が叶ってよかった、とわたしは一安心したのだった。


 今から思うと、ふたりが交際を始めたのはこの頃からかもしれない。

しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

処理中です...