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第1章 今日、あなたにさようならを言う
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わたしジェラルディン・キャンベルをジェンと呼び始めたのはシドニーだ。
「そろそろ先輩じゃなくて、シドニーでいいよ。
俺も名前で呼ばせて貰おうかな。
キャンベルは何て呼ばれてる?」
「あー、えーと、ジェリーです」
王都の高等学院で知り合って、1年が経とうとしていた頃。
シドニーが学院を卒業して大学に進学した頃だ。
彼の方からお互いに名前呼びをしよう、と提案されて、わたしは昔からの愛称の『ジェリー』と答えた。
「そうだなぁ……じゃあ俺はジェンと呼ばせて貰おうかな。
まだ誰も君をそう呼んでないだろ?
俺がジェンの一番最初、ってことで、よろしくな?」
直ぐに受け入れて心を開いてくれた先輩ではなかった。
シドニーは侯爵家の子息で、見た目も良くて。
彼は自分を取り巻く条件に惹かれて近付く人間を毛嫌いしていた。
最初はわたしもそう思われていて。
凄く線を引かれていた。
だけど1年経って、普通に友人と扱ってくれるようになって。
『身内』になると、彼は色んな表情を見せてくれるようになって。
『シドニーってクールなひとかと思っていたけれど、単なる人見知りだね』
そう言ったわたしの髪の毛を、彼は笑顔でくしゃくしゃとかき混ぜた。
シドニーがわたしをジェンと呼ぶから、王都で知り合った人達は皆、わたしをジェンと呼ぶようになった。
去年、領地から王都に出てきて、わたしの部屋で同居するようになった従姉のモニカを除いて。
彼女だけが、わたしをジェリーと呼び続けた。
「ジェリー、そんなこと言うなんて酷いわ」
「今のは君が言い過ぎだ」
シドニーはわたしの傍らを通り過ぎて、わざとらしくよろめいたモニカを支えた。
モニカがわたしや家族のことを有ること無いこと話しても庇うのに、わたしがモニカに対してキツいことを言うと、怒るのね。
愛って気持ちは、そんなに特別なの?
愛するモニカが言うことは、どんなに可笑しくても受け入れて。
愛するモニカを攻撃するわたしには冷たく出来る。
『世界中全部を敵に回しても、俺は君を守り続ける』
『誰もが貴方を嘘つきだと責めても、私だけは貴方を信じてる』
そんな文章や台詞を。
有り得ない、と皮肉げに嗤ったシドニー・ハイパーだったのに。
愛は、こんなにも簡単に人を変えてしまう。
かよわくすがってくるモニカを抱き締めるシドニー。
リビングに居た何人かが、不穏な雰囲気を察してこちらの様子を見にやってくる。
帰りたい。
もうここには居たくない。
「そろそろ先輩じゃなくて、シドニーでいいよ。
俺も名前で呼ばせて貰おうかな。
キャンベルは何て呼ばれてる?」
「あー、えーと、ジェリーです」
王都の高等学院で知り合って、1年が経とうとしていた頃。
シドニーが学院を卒業して大学に進学した頃だ。
彼の方からお互いに名前呼びをしよう、と提案されて、わたしは昔からの愛称の『ジェリー』と答えた。
「そうだなぁ……じゃあ俺はジェンと呼ばせて貰おうかな。
まだ誰も君をそう呼んでないだろ?
俺がジェンの一番最初、ってことで、よろしくな?」
直ぐに受け入れて心を開いてくれた先輩ではなかった。
シドニーは侯爵家の子息で、見た目も良くて。
彼は自分を取り巻く条件に惹かれて近付く人間を毛嫌いしていた。
最初はわたしもそう思われていて。
凄く線を引かれていた。
だけど1年経って、普通に友人と扱ってくれるようになって。
『身内』になると、彼は色んな表情を見せてくれるようになって。
『シドニーってクールなひとかと思っていたけれど、単なる人見知りだね』
そう言ったわたしの髪の毛を、彼は笑顔でくしゃくしゃとかき混ぜた。
シドニーがわたしをジェンと呼ぶから、王都で知り合った人達は皆、わたしをジェンと呼ぶようになった。
去年、領地から王都に出てきて、わたしの部屋で同居するようになった従姉のモニカを除いて。
彼女だけが、わたしをジェリーと呼び続けた。
「ジェリー、そんなこと言うなんて酷いわ」
「今のは君が言い過ぎだ」
シドニーはわたしの傍らを通り過ぎて、わざとらしくよろめいたモニカを支えた。
モニカがわたしや家族のことを有ること無いこと話しても庇うのに、わたしがモニカに対してキツいことを言うと、怒るのね。
愛って気持ちは、そんなに特別なの?
愛するモニカが言うことは、どんなに可笑しくても受け入れて。
愛するモニカを攻撃するわたしには冷たく出来る。
『世界中全部を敵に回しても、俺は君を守り続ける』
『誰もが貴方を嘘つきだと責めても、私だけは貴方を信じてる』
そんな文章や台詞を。
有り得ない、と皮肉げに嗤ったシドニー・ハイパーだったのに。
愛は、こんなにも簡単に人を変えてしまう。
かよわくすがってくるモニカを抱き締めるシドニー。
リビングに居た何人かが、不穏な雰囲気を察してこちらの様子を見にやってくる。
帰りたい。
もうここには居たくない。
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