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第1章 今日、あなたにさようならを言う
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嘘だ、と誰かに言って欲しかった。
これはちょっとした余興、そう彼の誕生日パーティーの……
本当のことじゃない、って。
だけど、彼は皆に祝われて、囃し立てられて、肩を抱いていた彼女にキスをした。
そして、それを受けて皆で一斉に拍手した……わたしも。
指笛、口笛、歓声が幸せなカップルを包んだ。
誰もわたしなんか見ていない。
注目されているのは彼と彼女だから。
だから、無理に笑うのは止めて。
彼と彼女を見た。
見たくもないふたりを。
彼は周りの友人達から肩や背中を叩かれて、荒っぽい祝福を受けていて。
彼女の方もまた友人達に囲まれて、頬を染めながら微笑んでいて。
幸せそうな、お似合いのふたりだ。
そう思いたかったのに。
そう思わなくてはならないのに。
わたしの心はそれを拒否する。
わたしの心は涙を流して、出来たばかりの傷口からは血が噴き出している。
◇◇◇
しばらくすると、ふたりを囲む輪はゆっくりとほどけていって、それぞれにこの集まりを楽しむために離れていく。
そして、その道すがら。
ついでのように、わたしにまでお祝いの声をかけてくる人達がいる。
彼の21歳の誕生日パーティーで婚約を発表したふたり。
主役の彼、シドニー・ハイパーはわたしの尊敬する先輩で。
婚約者となった彼女、モニカ・キャンベルがわたしの従姉だからだ。
わたしが彼等ふたりを取り持ったのだ、と思い込んで。
「良かったわね、ジェン!」
「おめでとう、ジェン!」
どうして、わたしにまで『おめでとう』なんて……
誰も知らないのだ。
故郷を離れて、ふたりで住んでいたのに、モニカはわたしにシドニーとのことを黙っていた。
いきなり婚約なんて有り得ないから、シドニーとモニカはわたしに隠れて恋人同士になったのだ。
それは一体、いつからだったのだろう?
これはちょっとした余興、そう彼の誕生日パーティーの……
本当のことじゃない、って。
だけど、彼は皆に祝われて、囃し立てられて、肩を抱いていた彼女にキスをした。
そして、それを受けて皆で一斉に拍手した……わたしも。
指笛、口笛、歓声が幸せなカップルを包んだ。
誰もわたしなんか見ていない。
注目されているのは彼と彼女だから。
だから、無理に笑うのは止めて。
彼と彼女を見た。
見たくもないふたりを。
彼は周りの友人達から肩や背中を叩かれて、荒っぽい祝福を受けていて。
彼女の方もまた友人達に囲まれて、頬を染めながら微笑んでいて。
幸せそうな、お似合いのふたりだ。
そう思いたかったのに。
そう思わなくてはならないのに。
わたしの心はそれを拒否する。
わたしの心は涙を流して、出来たばかりの傷口からは血が噴き出している。
◇◇◇
しばらくすると、ふたりを囲む輪はゆっくりとほどけていって、それぞれにこの集まりを楽しむために離れていく。
そして、その道すがら。
ついでのように、わたしにまでお祝いの声をかけてくる人達がいる。
彼の21歳の誕生日パーティーで婚約を発表したふたり。
主役の彼、シドニー・ハイパーはわたしの尊敬する先輩で。
婚約者となった彼女、モニカ・キャンベルがわたしの従姉だからだ。
わたしが彼等ふたりを取り持ったのだ、と思い込んで。
「良かったわね、ジェン!」
「おめでとう、ジェン!」
どうして、わたしにまで『おめでとう』なんて……
誰も知らないのだ。
故郷を離れて、ふたりで住んでいたのに、モニカはわたしにシドニーとのことを黙っていた。
いきなり婚約なんて有り得ないから、シドニーとモニカはわたしに隠れて恋人同士になったのだ。
それは一体、いつからだったのだろう?
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