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Chapter2
2-2
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和葉が会議室を出て行ってからは康平も仕事モードになったのか、打ち合わせは滞りなく進んだ。
和葉のことになると自分を見失うのか、仕事においては真面目だしやりやすいし、ビジネスパートナーとしてなら何も言うことはない。
しかし康平は出されたお茶には一口も口をつけなかった。
哲平からは二人の関係について聞くことはできない。
どこかモヤモヤとした気持ちを抱えているとそれに気付いたか無意識か、康平は至極面白そうに口を開いた。
「これは俺の個人的な質問なんですが。
……中西さんは、アイツのこと好きなんですか?」
哲平はまさか康平から和葉の話を振ってくるとは思わず、しかも会ったばかりの人物に自分の気持ちがバレていることに酷く動揺して飲んでいたお茶を噎せた。
「な、何故それを……」
「あ、やっぱりそうなんですね」
若干赤く染まった頰を隠すように下を向いてもう一度お茶を飲んだ。
もう一度顔を上げた時、康平の顔を見て哲平は目を見開いて驚いた。
「悪いこと言わないから、アイツはやめた方がいいですよ」
「それは、どういう」
「……アイツは、色々と抱え過ぎですからね」
そう言った康平の顔は、悔しそうで、悲しそうで、今にも泣きそうで。
とても先程まで和葉を罵倒していたとは思えない、まるで和葉を心配しているような、そんな表情だった。
「聞いているかもしれませんが、俺はアイツの幼馴染です。それこそ昔はそれなりに仲が良かった。
でも今は、
……アイツのことを許すことができない」
「……それは、何故ですか」
恐る恐る聞いた哲平は康平の言葉を聞いて、後悔した。
「本当はアイツのせいじゃないって、アイツが悪くないことなんて、皆わかってる。それでもあの頃の俺たちは、誰かを恨まずには生きていけなかった。
そんな時に、アイツが言ったんですよ。
【私を罵ればいい。私を憎めばいい。私を恨めばいい。悪いのは全て私だから、絶対に私を許さないでくれ】って」
頭を思い切り拳で殴られたような、そんな衝撃を受けた。
「それって、あまりにも……」
「自分勝手すぎる?責任転嫁もいいところ?ですよね。矛盾してるのはわかってるんです。酷いと思うでしょう。俺もそう思います。
でもあの時は、ああするしかなかったんですよ。
……そしてそれが当たり前になってしまった今、俺はその当たり前を崩すことができない」
そう言って顔を歪めた康平に、哲平は思った。
本当は、康平も和葉を恨みたいわけではなかったのだと。でも、それってやっぱり、あまりにも。酷すぎるんじゃないか。
康平の話によると、和葉は悪くない。なのに和葉1人に責任を押し付けるようなこと。
そんなの、あんまりだ。
哲平の心の中を、言いようのない何か黒いものがじわじわと広がっていくような気がした。
それに気が付かない康平は口を開くことをやめない。
「俺はアイツの味方にはなってやれません。
だから全てを聞いた時、少しでも幻滅するならアイツとは関わらないでやってください。これ以上アイツを苦しめる奴なんて、必要ないですから。
ただ。全部知った上で、それでもアイツと一緒にいたいと思うのなら。救いたい、力になってやりたいと思うのなら。貴方がアイツの唯一の味方になってやってください」
お願いします。と小さく頭を下げた康平を見て、
「(自分が何を言っているのかわかってるのか……?)」
哲平は今すぐこの男を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。
拳をぎゅっと握って、耐える。
深呼吸をして、康平を見据えた。
「貴方は最低ですね」
たったそれだけしか言えなかった。
それでも、康平にとってはそのストレートな言葉が大分効いたようで。
「……はい。俺は最低です」
そう言って後悔したような表情で力無く笑った。
和葉のことになると自分を見失うのか、仕事においては真面目だしやりやすいし、ビジネスパートナーとしてなら何も言うことはない。
しかし康平は出されたお茶には一口も口をつけなかった。
哲平からは二人の関係について聞くことはできない。
どこかモヤモヤとした気持ちを抱えているとそれに気付いたか無意識か、康平は至極面白そうに口を開いた。
「これは俺の個人的な質問なんですが。
……中西さんは、アイツのこと好きなんですか?」
哲平はまさか康平から和葉の話を振ってくるとは思わず、しかも会ったばかりの人物に自分の気持ちがバレていることに酷く動揺して飲んでいたお茶を噎せた。
「な、何故それを……」
「あ、やっぱりそうなんですね」
若干赤く染まった頰を隠すように下を向いてもう一度お茶を飲んだ。
もう一度顔を上げた時、康平の顔を見て哲平は目を見開いて驚いた。
「悪いこと言わないから、アイツはやめた方がいいですよ」
「それは、どういう」
「……アイツは、色々と抱え過ぎですからね」
そう言った康平の顔は、悔しそうで、悲しそうで、今にも泣きそうで。
とても先程まで和葉を罵倒していたとは思えない、まるで和葉を心配しているような、そんな表情だった。
「聞いているかもしれませんが、俺はアイツの幼馴染です。それこそ昔はそれなりに仲が良かった。
でも今は、
……アイツのことを許すことができない」
「……それは、何故ですか」
恐る恐る聞いた哲平は康平の言葉を聞いて、後悔した。
「本当はアイツのせいじゃないって、アイツが悪くないことなんて、皆わかってる。それでもあの頃の俺たちは、誰かを恨まずには生きていけなかった。
そんな時に、アイツが言ったんですよ。
【私を罵ればいい。私を憎めばいい。私を恨めばいい。悪いのは全て私だから、絶対に私を許さないでくれ】って」
頭を思い切り拳で殴られたような、そんな衝撃を受けた。
「それって、あまりにも……」
「自分勝手すぎる?責任転嫁もいいところ?ですよね。矛盾してるのはわかってるんです。酷いと思うでしょう。俺もそう思います。
でもあの時は、ああするしかなかったんですよ。
……そしてそれが当たり前になってしまった今、俺はその当たり前を崩すことができない」
そう言って顔を歪めた康平に、哲平は思った。
本当は、康平も和葉を恨みたいわけではなかったのだと。でも、それってやっぱり、あまりにも。酷すぎるんじゃないか。
康平の話によると、和葉は悪くない。なのに和葉1人に責任を押し付けるようなこと。
そんなの、あんまりだ。
哲平の心の中を、言いようのない何か黒いものがじわじわと広がっていくような気がした。
それに気が付かない康平は口を開くことをやめない。
「俺はアイツの味方にはなってやれません。
だから全てを聞いた時、少しでも幻滅するならアイツとは関わらないでやってください。これ以上アイツを苦しめる奴なんて、必要ないですから。
ただ。全部知った上で、それでもアイツと一緒にいたいと思うのなら。救いたい、力になってやりたいと思うのなら。貴方がアイツの唯一の味方になってやってください」
お願いします。と小さく頭を下げた康平を見て、
「(自分が何を言っているのかわかってるのか……?)」
哲平は今すぐこの男を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。
拳をぎゅっと握って、耐える。
深呼吸をして、康平を見据えた。
「貴方は最低ですね」
たったそれだけしか言えなかった。
それでも、康平にとってはそのストレートな言葉が大分効いたようで。
「……はい。俺は最低です」
そう言って後悔したような表情で力無く笑った。
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