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第五章
秘めた想い(4)
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「奈々美」
「どうしたの?」
「こんなこと、いきなり言っても困らせるだけだってこと、わかってるんだけど」
「ん?うん」
「どうしても言わなきゃ、後悔すると思って」
マグカップを置いた龍之介くんに倣うように、私もそっと置く。
龍之介くんに向き直るように顔を向けると、龍之介くんもこちらを見ていて目が合った。
そして、私の手をぎゅっと包み込むようにして、不意にそれを引っ張る。
必然的に抱きしめられた状態になった。
「……奈々美。俺、奈々美のことが好きだ」
「……え?」
耳元で聞こえた甘い声に聞き返すと、
「好きだ。どうしようもないくらいに、奈々美が大好きだ」
予想だにしなかった愛の告白に、言葉を失った。
「初めて会った時から可愛くて目を引いた。こんな綺麗な目をした人と、いつか仲良くなれたらいいなって漠然と思ってた。でもその内話せば話すほど、奈々美が一人でとんでもないもの抱えてるって知って。俺が助けてやりたいって思った。俺が守ってやりたいって思った」
「龍之介くん……」
「記憶が戻った日、一番に俺に助けを求めてくれたことが、嬉しかった。奈々美を救いたいって、助けたいって思ってたから。不謹慎かもしれないけど、すげぇ嬉しかった」
大きな背中に腕を回そうとすると、ピクリと反応してすぐにもっとキツく抱きしめられる。
逃げられるとでも思っているのだろうか。捕まえたとばかりに。離さないとばかりに力強い腕。
「だからこれからも一番近くで、奈々美の隣で。奈々美のこと、守らせてほしい。支えさせてほしい。何かあったら一番に駆けつけたいし、何もなくてもずっと一緒にいたい。……ダメ、かな」
初めて聞いた、その気持ち。
龍之介くんの想いが、痛いくらいに私の胸を締め付ける。
普段、そんなに自分の気持ちを言葉にする人じゃないはずなのに。頑張って言葉を選んで伝えてくれているのがわかって、それが嬉しくてたまらない。
「ダメじゃない。ダメなんかじゃない。絶対」
……ねぇ、龍之介くん。
私もね、嬉しかったんだよ?
助けてって言った時、一番に駆けつけてくれたこと。
何も聞かずに、私の気持ちを尊重して大切にしてくれたこと。
私がつらい時に、いつも隣にいてくれること。
龍之介くんの存在が、どれほど私の心の支えになっていたか。
龍之介くんの大きな手で頭を撫でてもらえれば自然と笑顔になる。
抱きしめてもらえば安心して胸がきゅんとなる。
その優しい笑顔を見ると、苦しいくらいに胸が高鳴る。
龍之介くんと一緒にいると、息がしやすいんだ。
「……龍之介くん。……私も、龍之介くんが好き」
今度こそ背中に手を回す。
「龍之介くんにたくさん励ましてもらって、たくさん助けてもらって。甘やかしてもらって、頼りにさせてもらって。一番苦しい時に龍之介くんが助けてくれて、そばにいてくれて。私本当に嬉しかった」
「……うん」
「私も、龍之介くんとずっと一緒にいたい。いさせてください。どうしようもないくらい、私も龍之介くんが好き。大好き」
頼りないかもしれないけど、私も龍之介くんを支えたい。
手を繋いで、笑い合って。
ずっと隣で、一緒に歩いていきたい。
「いいのか?俺と付き合ってくれる?」
「うん」
「付き合ったら、毎日こうやって抱きしめるけど。……嫌じゃない?」
耳元で囁くような声に、私からもギュッと抱きつく。
「うん。むしろたりない。もっとして?」
「っ……じゃあ、これは?」
そっと重なった唇。この間の私を落ち着かせるためのキスとは違う、甘くて優しいキス。
触れるだけですぐに離れた龍之介くんの首に手を回して、私からも下手くそなキスをする。
「……嫌じゃないし、もっとしてほしい」
自分からこんなことを言うなんて恥ずかしくてたまらないのに、龍之介くんとのキスはそれ以上に愛と幸せに溢れていた。
少し震えた唇が、龍之介くんも緊張しているんだとわかって、それもまた愛おしさが溢れる。
好き。大好き。
離れて、目が合って、どちらからともなく微笑んで、もう一度甘いキスをして。
……あぁ、幸せだ。
「……私、生きてて良かった」
「ん?」
「あの時、運良く助かって良かった。美優ちゃんと龍之介くんに出会えて良かった」
こんなに幸せでいいのだろうか。現実なのだろうか。まだ夢の中なんじゃないか。
嬉しさも、幸せも。慣れていないから戸惑ってしまう自分がいる。
「俺も。奈々美に出会えて良かった。奈々美が生きててくれて良かった」
でも、確かに繋がれた手を見れば、これが夢ではないことくらい、私でもわかる。
幸せを噛み締めるように、お互いの指を絡ませた。
「どうしたの?」
「こんなこと、いきなり言っても困らせるだけだってこと、わかってるんだけど」
「ん?うん」
「どうしても言わなきゃ、後悔すると思って」
マグカップを置いた龍之介くんに倣うように、私もそっと置く。
龍之介くんに向き直るように顔を向けると、龍之介くんもこちらを見ていて目が合った。
そして、私の手をぎゅっと包み込むようにして、不意にそれを引っ張る。
必然的に抱きしめられた状態になった。
「……奈々美。俺、奈々美のことが好きだ」
「……え?」
耳元で聞こえた甘い声に聞き返すと、
「好きだ。どうしようもないくらいに、奈々美が大好きだ」
予想だにしなかった愛の告白に、言葉を失った。
「初めて会った時から可愛くて目を引いた。こんな綺麗な目をした人と、いつか仲良くなれたらいいなって漠然と思ってた。でもその内話せば話すほど、奈々美が一人でとんでもないもの抱えてるって知って。俺が助けてやりたいって思った。俺が守ってやりたいって思った」
「龍之介くん……」
「記憶が戻った日、一番に俺に助けを求めてくれたことが、嬉しかった。奈々美を救いたいって、助けたいって思ってたから。不謹慎かもしれないけど、すげぇ嬉しかった」
大きな背中に腕を回そうとすると、ピクリと反応してすぐにもっとキツく抱きしめられる。
逃げられるとでも思っているのだろうか。捕まえたとばかりに。離さないとばかりに力強い腕。
「だからこれからも一番近くで、奈々美の隣で。奈々美のこと、守らせてほしい。支えさせてほしい。何かあったら一番に駆けつけたいし、何もなくてもずっと一緒にいたい。……ダメ、かな」
初めて聞いた、その気持ち。
龍之介くんの想いが、痛いくらいに私の胸を締め付ける。
普段、そんなに自分の気持ちを言葉にする人じゃないはずなのに。頑張って言葉を選んで伝えてくれているのがわかって、それが嬉しくてたまらない。
「ダメじゃない。ダメなんかじゃない。絶対」
……ねぇ、龍之介くん。
私もね、嬉しかったんだよ?
助けてって言った時、一番に駆けつけてくれたこと。
何も聞かずに、私の気持ちを尊重して大切にしてくれたこと。
私がつらい時に、いつも隣にいてくれること。
龍之介くんの存在が、どれほど私の心の支えになっていたか。
龍之介くんの大きな手で頭を撫でてもらえれば自然と笑顔になる。
抱きしめてもらえば安心して胸がきゅんとなる。
その優しい笑顔を見ると、苦しいくらいに胸が高鳴る。
龍之介くんと一緒にいると、息がしやすいんだ。
「……龍之介くん。……私も、龍之介くんが好き」
今度こそ背中に手を回す。
「龍之介くんにたくさん励ましてもらって、たくさん助けてもらって。甘やかしてもらって、頼りにさせてもらって。一番苦しい時に龍之介くんが助けてくれて、そばにいてくれて。私本当に嬉しかった」
「……うん」
「私も、龍之介くんとずっと一緒にいたい。いさせてください。どうしようもないくらい、私も龍之介くんが好き。大好き」
頼りないかもしれないけど、私も龍之介くんを支えたい。
手を繋いで、笑い合って。
ずっと隣で、一緒に歩いていきたい。
「いいのか?俺と付き合ってくれる?」
「うん」
「付き合ったら、毎日こうやって抱きしめるけど。……嫌じゃない?」
耳元で囁くような声に、私からもギュッと抱きつく。
「うん。むしろたりない。もっとして?」
「っ……じゃあ、これは?」
そっと重なった唇。この間の私を落ち着かせるためのキスとは違う、甘くて優しいキス。
触れるだけですぐに離れた龍之介くんの首に手を回して、私からも下手くそなキスをする。
「……嫌じゃないし、もっとしてほしい」
自分からこんなことを言うなんて恥ずかしくてたまらないのに、龍之介くんとのキスはそれ以上に愛と幸せに溢れていた。
少し震えた唇が、龍之介くんも緊張しているんだとわかって、それもまた愛おしさが溢れる。
好き。大好き。
離れて、目が合って、どちらからともなく微笑んで、もう一度甘いキスをして。
……あぁ、幸せだ。
「……私、生きてて良かった」
「ん?」
「あの時、運良く助かって良かった。美優ちゃんと龍之介くんに出会えて良かった」
こんなに幸せでいいのだろうか。現実なのだろうか。まだ夢の中なんじゃないか。
嬉しさも、幸せも。慣れていないから戸惑ってしまう自分がいる。
「俺も。奈々美に出会えて良かった。奈々美が生きててくれて良かった」
でも、確かに繋がれた手を見れば、これが夢ではないことくらい、私でもわかる。
幸せを噛み締めるように、お互いの指を絡ませた。
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