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第五章

秘めた想い(2)

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それから、二週間の月日が流れて。


「奈々美」

「龍之介くん。おはよう」

「今日からか、復学」

「うん。ちょっと緊張してるけど、龍之介くんもいるし頑張ってくる」


私は今日から白河高校へ復学することになり、朝から職員室に向かうために早めに着いたのに。昇降口で会った龍之介くんの姿に驚きつつも、すごく安心した。


「あぁ。なんか嫌なこと言われたら保健室に逃げとけ。それと俺にもちゃんと連絡入れること」

「うん。ありがと」


お互いが制服姿でこうして学校で出会うことが違和感でしかないものの、それも徐々に慣れていつしか当たり前のことに変わるだろう。

季節はすでに冬が間近に迫っている。

あと数ヶ月すれば、龍之介くんと同じ学年になる。

それなら四月から復学でも良かったものの、怪我も治っているのにずっと家にいるのも嫌で、立花さんからもらった制服の力も借りて少し頑張ってみることにしたのだ。

案の定龍之介くんと別れて職員室に向かうまでの道のりで視線をいくつか感じた。でも、今度こそ学校生活を楽しむんだと決めたから、何も怖くない。

ガラリと開けた職員室の中。広瀬先生が泣きそうな笑顔で私を出迎えてくれて。


「おかえりなさい、桐ヶ谷さん」

「広瀬先生、いろいろありがとうございました。心配かけちゃってごめんなさい」

「ううん。私も何も気付かなくてごめんなさい。今桐ヶ谷さんの元気そうな顔が見られてるから、それでいいの。またここに戻ってきてくれてありがとうね」

「……ありがとうございます。また今日からよろしくお願いします」


頭を下げると、広瀬先生だけでなく周りの先生からも口々に「おかえり」と言ってもらえた。

それが嬉しくて、でも言葉に言い表せなくて無言で感激していると


「桐ヶ谷さん、そういう時はね、"ただいま"って言えばいいの」


と手招きした広瀬先生に小声で教えてもらう。


「……ただいま、です」


こぼすように言うと、柔らかな拍手が私を包み込んでくれた。

教室に案内され、そのまま始まったホームルームで軽く私の復学の紹介をしてもらう。

広瀬先生のように笑顔を向けてくれる子もいれば、痛々しいものを見る視線を送ってくる子もいた。

でも、私はそれに笑顔を返す。


「お久しぶりです。今日から復学しました。迷惑かけちゃってごめんなさい。残り短い期間ですが、よろしくお願いします」


声なんて返ってこない前提での挨拶だったものの、なぜかパラパラと「おかえり」という声が聞こえて顔を上げた。


「おかえり、桐ヶ谷さん」

「大変だったね、怪我は治った?」

「元気そうで安心したよ」

「何かあったらいつでも言ってね?」


教室中から聞こえてくる声は、優しさに満ち溢れていた。


「……皆、ありがとう。ただいま」


その優しさに感動してしまい、朝から泣きそうになった。
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