13 / 55
第一章
リハビリ
しおりを挟む
一週間後。
「っ……」
「もう一回動かすよ。ちょっと頑張ってみようか」
「はい……」
足の骨折は少しずつ回復しているようで、今日から膝の曲げ伸ばしのリハビリが始まった。
車椅子に乗る時も足を伸ばして乗っているから、膝をしっかりと曲げるのは多分久しぶりのこと。
ピリッと、刺すような痛みが走った。
「痛む?」
「はい。……ちょっと」
「こっちは?」
「そっちは大丈夫、です」
「ん、わかったよ」
理学療法士さんが私の足を持って、ゆっくりと動かしてくれる。
こうやって怪我の治り具合とか、筋肉の落ち方とかを見ているようだ。
すぐ側には東海林先生もいて、レントゲン写真やパソコンのカルテを見ながら私の症状を話し合っている。その間に私は立花さんに手伝ってもらって車椅子に乗った。
やはり大分右足の筋肉が落ちてしまっているらしく、様子を見つつ、できれば毎日リハビリを進めていくことになった。
立花さんと話しながら病室に戻ると、そこには龍之介くんの姿があった。
しかし美優ちゃんの姿は無く、ベッドは空だ。
「あ、龍之介くん。来てたんだ」
「……あ、奈々美。……さっき美優の着替え届けに来たんだ」
「そっか」
学校帰りなのだろう、学ラン姿の龍之介くんは手に持っていた漫画をパタンと閉じたかと思うと、立花さんに声を掛けてその立ち位置を代わるとベッドの横まで車椅子を押してくれて、さらには私を抱えるようにしてベッドに戻るのを手伝ってくれた。
「……あ、ありがとう」
「ん。いつも美優でやってるから気にすんな」
照れてしまう私と対称的に、なんてことないように丸椅子をこちらに持ってきて隣に座る龍之介くん。
立花さんはそのまま病室を出て行って、必然的に二人になった。
「美優ちゃんは?」
「なんか検査だって連れてかれた」
「そっか」
「奈々美も検査かなにか?」
「私はリハビリ。明日から毎日やるみたい」
「そっか。痛みとか大丈夫か?」
「うん、ちょっと痛かったけど大丈夫。ありがとう」
そのまま二人で喋っているうちに美優ちゃんが戻ってきて、立花さんに怒られない程度に龍之介くんを真ん中に挟んでお喋りをする。
最近じゃあ、このスタイルがいつものことになってきていて、私の癒しの時間だ。
二人のご両親は共働きらしく、龍之介くんが定期的に美優ちゃんの服を洗濯しては届けに来ている。
私は病院側から服をレンタルしているからそういうのは無いけれど、毎日のように来ているのはそれが一番の理由だろう。
行きは学校からや家からバスで来るらしいものの、帰りは二人のお母さんがお見舞いがてら迎えに来るので一緒に車で帰っているそうだ。
だから龍之介くんは、二人のお母さんが来るまでは大体ここにいる。
そりゃあ、美優ちゃんに友達いないってからかわれるわけだ。だってしょっちゅうここにいるし。
「ん?どうした奈々美?ニヤニヤして」
「ううん。なんでもない」
「変なやつだな?」
そんな些細な会話も、結構楽しい。
「っ……」
「もう一回動かすよ。ちょっと頑張ってみようか」
「はい……」
足の骨折は少しずつ回復しているようで、今日から膝の曲げ伸ばしのリハビリが始まった。
車椅子に乗る時も足を伸ばして乗っているから、膝をしっかりと曲げるのは多分久しぶりのこと。
ピリッと、刺すような痛みが走った。
「痛む?」
「はい。……ちょっと」
「こっちは?」
「そっちは大丈夫、です」
「ん、わかったよ」
理学療法士さんが私の足を持って、ゆっくりと動かしてくれる。
こうやって怪我の治り具合とか、筋肉の落ち方とかを見ているようだ。
すぐ側には東海林先生もいて、レントゲン写真やパソコンのカルテを見ながら私の症状を話し合っている。その間に私は立花さんに手伝ってもらって車椅子に乗った。
やはり大分右足の筋肉が落ちてしまっているらしく、様子を見つつ、できれば毎日リハビリを進めていくことになった。
立花さんと話しながら病室に戻ると、そこには龍之介くんの姿があった。
しかし美優ちゃんの姿は無く、ベッドは空だ。
「あ、龍之介くん。来てたんだ」
「……あ、奈々美。……さっき美優の着替え届けに来たんだ」
「そっか」
学校帰りなのだろう、学ラン姿の龍之介くんは手に持っていた漫画をパタンと閉じたかと思うと、立花さんに声を掛けてその立ち位置を代わるとベッドの横まで車椅子を押してくれて、さらには私を抱えるようにしてベッドに戻るのを手伝ってくれた。
「……あ、ありがとう」
「ん。いつも美優でやってるから気にすんな」
照れてしまう私と対称的に、なんてことないように丸椅子をこちらに持ってきて隣に座る龍之介くん。
立花さんはそのまま病室を出て行って、必然的に二人になった。
「美優ちゃんは?」
「なんか検査だって連れてかれた」
「そっか」
「奈々美も検査かなにか?」
「私はリハビリ。明日から毎日やるみたい」
「そっか。痛みとか大丈夫か?」
「うん、ちょっと痛かったけど大丈夫。ありがとう」
そのまま二人で喋っているうちに美優ちゃんが戻ってきて、立花さんに怒られない程度に龍之介くんを真ん中に挟んでお喋りをする。
最近じゃあ、このスタイルがいつものことになってきていて、私の癒しの時間だ。
二人のご両親は共働きらしく、龍之介くんが定期的に美優ちゃんの服を洗濯しては届けに来ている。
私は病院側から服をレンタルしているからそういうのは無いけれど、毎日のように来ているのはそれが一番の理由だろう。
行きは学校からや家からバスで来るらしいものの、帰りは二人のお母さんがお見舞いがてら迎えに来るので一緒に車で帰っているそうだ。
だから龍之介くんは、二人のお母さんが来るまでは大体ここにいる。
そりゃあ、美優ちゃんに友達いないってからかわれるわけだ。だってしょっちゅうここにいるし。
「ん?どうした奈々美?ニヤニヤして」
「ううん。なんでもない」
「変なやつだな?」
そんな些細な会話も、結構楽しい。
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
彼女があなたを思い出したから
MOMO-tank
恋愛
夫である国王エリオット様の元婚約者、フランチェスカ様が馬車の事故に遭った。
フランチェスカ様の夫である侯爵は亡くなり、彼女は記憶を取り戻した。
無くしていたあなたの記憶を・・・・・・。
エリオット様と結婚して三年目の出来事だった。
※設定はゆるいです。
※タグ追加しました。[離婚][ある意味ざまぁ]
※胸糞展開有ります。
ご注意下さい。
※ 作者の想像上のお話となります。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
同期の御曹司様は浮気がお嫌い
秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!?
不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。
「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」
強引に同居が始まって甘やかされています。
人生ボロボロOL × 財閥御曹司
甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。
「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」
表紙イラスト
ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
君の中で世界は廻る
便葉
ライト文芸
26歳の誕生日、
二年つき合った彼にフラれた
フラれても仕方がないのかも
だって、彼は私の勤める病院の 二代目ドクターだから…
そんな私は田舎に帰ることに決めた
私の田舎は人口千人足らずの小さな離れ小島
唯一、島に一つある病院が存続の危機らしい
看護師として、 10年ぶりに島に帰ることに決めた
流人を忘れるために、 そして、弱い自分を変えるため……
田中医院に勤め出して三か月が過ぎた頃 思いがけず、アイツがやって来た
「島の皆さん、こんにちは~
東京の方からしばらく この病院を手伝いにきた池山流人です。
よろしくお願いしま~す」
は??? どういうこと???
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる