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第一章

リハビリ

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一週間後。


「っ……」

「もう一回動かすよ。ちょっと頑張ってみようか」

「はい……」


足の骨折は少しずつ回復しているようで、今日から膝の曲げ伸ばしのリハビリが始まった。

車椅子に乗る時も足を伸ばして乗っているから、膝をしっかりと曲げるのは多分久しぶりのこと。

ピリッと、刺すような痛みが走った。


「痛む?」

「はい。……ちょっと」

「こっちは?」

「そっちは大丈夫、です」

「ん、わかったよ」


理学療法士さんが私の足を持って、ゆっくりと動かしてくれる。

こうやって怪我の治り具合とか、筋肉の落ち方とかを見ているようだ。

すぐ側には東海林先生もいて、レントゲン写真やパソコンのカルテを見ながら私の症状を話し合っている。その間に私は立花さんに手伝ってもらって車椅子に乗った。

やはり大分右足の筋肉が落ちてしまっているらしく、様子を見つつ、できれば毎日リハビリを進めていくことになった。

立花さんと話しながら病室に戻ると、そこには龍之介くんの姿があった。

しかし美優ちゃんの姿は無く、ベッドは空だ。


「あ、龍之介くん。来てたんだ」

「……あ、奈々美。……さっき美優の着替え届けに来たんだ」

「そっか」


学校帰りなのだろう、学ラン姿の龍之介くんは手に持っていた漫画をパタンと閉じたかと思うと、立花さんに声を掛けてその立ち位置を代わるとベッドの横まで車椅子を押してくれて、さらには私を抱えるようにしてベッドに戻るのを手伝ってくれた。


「……あ、ありがとう」

「ん。いつも美優でやってるから気にすんな」


照れてしまう私と対称的に、なんてことないように丸椅子をこちらに持ってきて隣に座る龍之介くん。

立花さんはそのまま病室を出て行って、必然的に二人になった。


「美優ちゃんは?」

「なんか検査だって連れてかれた」

「そっか」

「奈々美も検査かなにか?」

「私はリハビリ。明日から毎日やるみたい」

「そっか。痛みとか大丈夫か?」

「うん、ちょっと痛かったけど大丈夫。ありがとう」


そのまま二人で喋っているうちに美優ちゃんが戻ってきて、立花さんに怒られない程度に龍之介くんを真ん中に挟んでお喋りをする。

最近じゃあ、このスタイルがいつものことになってきていて、私の癒しの時間だ。

二人のご両親は共働きらしく、龍之介くんが定期的に美優ちゃんの服を洗濯しては届けに来ている。

私は病院側から服をレンタルしているからそういうのは無いけれど、毎日のように来ているのはそれが一番の理由だろう。

行きは学校からや家からバスで来るらしいものの、帰りは二人のお母さんがお見舞いがてら迎えに来るので一緒に車で帰っているそうだ。

だから龍之介くんは、二人のお母さんが来るまでは大体ここにいる。

そりゃあ、美優ちゃんに友達いないってからかわれるわけだ。だってしょっちゅうここにいるし。


「ん?どうした奈々美?ニヤニヤして」

「ううん。なんでもない」

「変なやつだな?」


そんな些細な会話も、結構楽しい。

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