冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

文字の大きさ
上 下
78 / 112
Sixth

20-1

しおりを挟む
一週間後。


私はとあるイタリアンのレストランで、恭子さんと対峙していた。


何故そんなことになったのかと言えば、定時で上がろうとしたらいきなり恭子さんに拉致られた。


"ちょっと金山ちゃん借りまーす!"だなんて叫ぶものだから、皆呆気に取られたような顔をしていた。


当の私も訳が分からないまま連れ去られていきなりここに連れてこられ、



「はい!何でも好きなもの頼んでね!私の奢りだから!」



と言われてメニューを目の前に広げられて困惑している。


……いや、どういう状況?



「あの……えっと、私に何かご用ですか?」


「え?あぁうん。とりあえず食べてからと思ったんだけど……あんまりお腹空いてない?」


「いえ……適度に空いてはいます」


「じゃあまずは食べよう!」


「……はぁ」



とにかく食べてから!と、これ好き?あれは?こっちは?と私が好きかどうかをその都度聞きながらいくつか注文した恭子さん。


にこにこしながら目の前に座る恭子さんに、私は何も言えずに頼んだものが来るまでお水を飲んでやり過ごした。


特に恭子さんが喋るわけでもないため、しばらく全く会話が無いというある意味地獄のような数分を過ごした。



「お待たせ致しました。ジェノベーゼとボロネーゼのパスタです」


「ありがとうございまーす」


「セットのサラダとスープです。ごゆっくりお召し上がりください」



失礼いたします。と言って去っていったスタッフさんに会釈をすると、



「さぁ、食べようか」



と言われ、一先ず食べることにした。


とても美味しいパスタを完食し、食後のカフェオレまでご馳走になってしまった私はビクビクしながら話が始まるのを待つ。


恭子さんがブラックコーヒーを飲み切った後、視線が交わった。



「……ごめんね、金山ちゃん」



唐突な謝罪に、狼狽た。



「……恭子さんに謝られるようなことは特に無いと思いますが……」



何かあっただろうか。真剣に考えるものの特に思い当たるものはない。



「……綾人のことよ」



そう言われてようやく今日拉致られた意味を理解した。



「私のせいで誤解させて、二人が付き合うのに遠回りしたって聞いたの。綾人も綾人だけど、私も私だったわ」


「……いえ、お気になさらず」


「綾人は昔から仕事人間だったからあまり色恋沙汰は得意じゃなくてね。言ったことあったかしら?私達ね、昔付き合ってたの」


「綾人さんから、聞きました」



実際にはその前に盗み聞きしてしまったけれど。



「じゃあ別れた理由も知ってる?」



別れた、理由。



「それは聞いたことない、ですね……」


「私達が同期なのは知ってるでしょ?」


「はい」


「付き合い始めたのは、入社して一年経ったくらいだったかなあ。
別れた原因はね、私なの。私が欲深かったからなのよ」



そう言って思い出すように、恭子さんは昔話を始めた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

年上幼馴染の一途な執着愛

青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。 一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...