冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来

文字の大きさ
上 下
58 / 112
Forth

14-5

しおりを挟む
「じゃあやっぱりあの人は課長の元カノだったんだ?」


「うん。そうみたい……盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」


「でも意外。課長って今まで浮いた話無かったよね。恭子さん、だっけ。付き合ってたのは大分前のことなのかもね」


「うん……」


「……で?何で金山がそんなに課長のこと気にしてるの?」



優しい問いかけに、私はハイボールに逃げる。


今の話を聞いたらわかるだろうに。どうしても相田は私の口から直接言わせたいようだ。



「……課長のことが好き、かもしれなくて」


「いやそれ完全に好きでしょ」


「わかってるなら聞くな!」


「ははっ!ごめんごめん」



恥ずかしさに涙目になりそうな私を相田は適当に慰めながらも



「そっかあ……金山と課長かぁ……確かに違和感無いかも」



と嬉しそうに微笑む。



「……そう?」


「うん。まぁ入社以来あんたはずっと課長の直の部下じゃん。新入社員の頃に物凄い厳しく扱かれてたのも知ってるし、認められてからは良いパートナーみたいな感じに見えてたし」


「そ、そうだったんだ……」


「課長も金山には一目置いてる感じじゃん。何て言うか……信頼されてる感じ?」


「そう、かな……」


「だって未だに課長が出張の時、一番に指名するの金山じゃん。それって凄いことじゃない?」


「……確かに。言われてみればそうかもしれない」



いつも課長が出張の時は、まず私にお声がかかる。スケジュールが合えばそのまま同行するし、合わなければ次の社員に聞く。それがいつものスタイルだ。



「私は二人は凄くお似合いだと思う」



周りからどう見えているかなんて、言われるまで全く気にしたことがなかった。



「私は金山を応援したいなあ」


「……」


「まぁそれは金山次第だけどさ。恭子さんとのことが気になるなら、避けてないで直接聞けば良いのに」


「それができるなら最初からやってるよ……」


「金山は変なところでヘタレるからな」


「うるさい」



"恭子さんと昔付き合ってたらしいですけど、今はどうなんですか?好きなんですか?"なんて、聞けるわけがない。


聞いたらそれはもう、"私は貴方が好きです"って言ってるのと変わらない。


この居酒屋の新メニューだと言うアヒージョを食べながら、ため息が止まらない。



「でも、このまま避けてたら何も始まらないよ?」


「……うん。そうなんだよね。だから悩んでる……」


「こういうのって、誰かが代わりに聞いたって意味無いからさ、気になるなら金山が自分で聞くしかないんだよ」


「……」


「うじうじしてるのなんて金山らしくないよ。もう本人にバシッと聞いておいでよ!」


「……私らしさ」


「うん。さっぱりきっぱりしてるのが金山の良いところ!大丈夫、もしダメだったら私がうざいくらいに抱きしめてあげるから!」


「ははっ、何それ。その考えがもううざいわ」


「えぇ?良いと思うんだけどな」


「ふはっ、……でもありがとう。その気持ちが嬉しい」


「うん」


「……そうだよね。聞かないと、始まらないね」



このままでいいわけなんて、無いんだし。


その後は相田の彼氏の愚痴を聞きながら、月曜日なのに帰る頃には二人してたっぷりのお酒で程良く酔っ払ってしまっていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

年上幼馴染の一途な執着愛

青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。 一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...