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Forth
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「じゃあやっぱりあの人は課長の元カノだったんだ?」
「うん。そうみたい……盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」
「でも意外。課長って今まで浮いた話無かったよね。恭子さん、だっけ。付き合ってたのは大分前のことなのかもね」
「うん……」
「……で?何で金山がそんなに課長のこと気にしてるの?」
優しい問いかけに、私はハイボールに逃げる。
今の話を聞いたらわかるだろうに。どうしても相田は私の口から直接言わせたいようだ。
「……課長のことが好き、かもしれなくて」
「いやそれ完全に好きでしょ」
「わかってるなら聞くな!」
「ははっ!ごめんごめん」
恥ずかしさに涙目になりそうな私を相田は適当に慰めながらも
「そっかあ……金山と課長かぁ……確かに違和感無いかも」
と嬉しそうに微笑む。
「……そう?」
「うん。まぁ入社以来あんたはずっと課長の直の部下じゃん。新入社員の頃に物凄い厳しく扱かれてたのも知ってるし、認められてからは良いパートナーみたいな感じに見えてたし」
「そ、そうだったんだ……」
「課長も金山には一目置いてる感じじゃん。何て言うか……信頼されてる感じ?」
「そう、かな……」
「だって未だに課長が出張の時、一番に指名するの金山じゃん。それって凄いことじゃない?」
「……確かに。言われてみればそうかもしれない」
いつも課長が出張の時は、まず私にお声がかかる。スケジュールが合えばそのまま同行するし、合わなければ次の社員に聞く。それがいつものスタイルだ。
「私は二人は凄くお似合いだと思う」
周りからどう見えているかなんて、言われるまで全く気にしたことがなかった。
「私は金山を応援したいなあ」
「……」
「まぁそれは金山次第だけどさ。恭子さんとのことが気になるなら、避けてないで直接聞けば良いのに」
「それができるなら最初からやってるよ……」
「金山は変なところでヘタレるからな」
「うるさい」
"恭子さんと昔付き合ってたらしいですけど、今はどうなんですか?好きなんですか?"なんて、聞けるわけがない。
聞いたらそれはもう、"私は貴方が好きです"って言ってるのと変わらない。
この居酒屋の新メニューだと言うアヒージョを食べながら、ため息が止まらない。
「でも、このまま避けてたら何も始まらないよ?」
「……うん。そうなんだよね。だから悩んでる……」
「こういうのって、誰かが代わりに聞いたって意味無いからさ、気になるなら金山が自分で聞くしかないんだよ」
「……」
「うじうじしてるのなんて金山らしくないよ。もう本人にバシッと聞いておいでよ!」
「……私らしさ」
「うん。さっぱりきっぱりしてるのが金山の良いところ!大丈夫、もしダメだったら私がうざいくらいに抱きしめてあげるから!」
「ははっ、何それ。その考えがもううざいわ」
「えぇ?良いと思うんだけどな」
「ふはっ、……でもありがとう。その気持ちが嬉しい」
「うん」
「……そうだよね。聞かないと、始まらないね」
このままでいいわけなんて、無いんだし。
その後は相田の彼氏の愚痴を聞きながら、月曜日なのに帰る頃には二人してたっぷりのお酒で程良く酔っ払ってしまっていた。
「うん。そうみたい……盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」
「でも意外。課長って今まで浮いた話無かったよね。恭子さん、だっけ。付き合ってたのは大分前のことなのかもね」
「うん……」
「……で?何で金山がそんなに課長のこと気にしてるの?」
優しい問いかけに、私はハイボールに逃げる。
今の話を聞いたらわかるだろうに。どうしても相田は私の口から直接言わせたいようだ。
「……課長のことが好き、かもしれなくて」
「いやそれ完全に好きでしょ」
「わかってるなら聞くな!」
「ははっ!ごめんごめん」
恥ずかしさに涙目になりそうな私を相田は適当に慰めながらも
「そっかあ……金山と課長かぁ……確かに違和感無いかも」
と嬉しそうに微笑む。
「……そう?」
「うん。まぁ入社以来あんたはずっと課長の直の部下じゃん。新入社員の頃に物凄い厳しく扱かれてたのも知ってるし、認められてからは良いパートナーみたいな感じに見えてたし」
「そ、そうだったんだ……」
「課長も金山には一目置いてる感じじゃん。何て言うか……信頼されてる感じ?」
「そう、かな……」
「だって未だに課長が出張の時、一番に指名するの金山じゃん。それって凄いことじゃない?」
「……確かに。言われてみればそうかもしれない」
いつも課長が出張の時は、まず私にお声がかかる。スケジュールが合えばそのまま同行するし、合わなければ次の社員に聞く。それがいつものスタイルだ。
「私は二人は凄くお似合いだと思う」
周りからどう見えているかなんて、言われるまで全く気にしたことがなかった。
「私は金山を応援したいなあ」
「……」
「まぁそれは金山次第だけどさ。恭子さんとのことが気になるなら、避けてないで直接聞けば良いのに」
「それができるなら最初からやってるよ……」
「金山は変なところでヘタレるからな」
「うるさい」
"恭子さんと昔付き合ってたらしいですけど、今はどうなんですか?好きなんですか?"なんて、聞けるわけがない。
聞いたらそれはもう、"私は貴方が好きです"って言ってるのと変わらない。
この居酒屋の新メニューだと言うアヒージョを食べながら、ため息が止まらない。
「でも、このまま避けてたら何も始まらないよ?」
「……うん。そうなんだよね。だから悩んでる……」
「こういうのって、誰かが代わりに聞いたって意味無いからさ、気になるなら金山が自分で聞くしかないんだよ」
「……」
「うじうじしてるのなんて金山らしくないよ。もう本人にバシッと聞いておいでよ!」
「……私らしさ」
「うん。さっぱりきっぱりしてるのが金山の良いところ!大丈夫、もしダメだったら私がうざいくらいに抱きしめてあげるから!」
「ははっ、何それ。その考えがもううざいわ」
「えぇ?良いと思うんだけどな」
「ふはっ、……でもありがとう。その気持ちが嬉しい」
「うん」
「……そうだよね。聞かないと、始まらないね」
このままでいいわけなんて、無いんだし。
その後は相田の彼氏の愚痴を聞きながら、月曜日なのに帰る頃には二人してたっぷりのお酒で程良く酔っ払ってしまっていた。
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