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翌朝は寝落ちしてしまった冬馬が起きて驚くほど落ち込んでいて、何も気にすることないのに私に謝り倒したままお互い出勤。
私はまず一番に由紀乃の元へ行き、「この間は本当にごめん」と頭を下げた。
「私は全然いいの。むしろしずくが大丈夫だった?あれからずっと心配してて」
「うん。昨日冬馬とも話し合って、解決したの」
冬馬との話を掻い摘んで伝えると、「良かったあ」とホッとしたように微笑んでくれた。
「心配かけてごめんね」
「いいの。気にしないで」
「ありがとう」
同棲の話も喜んでくれて、私もホッとした。
それからあっという間に二週間が経過。
言っていた通り冬馬はどんどん忙しくなっていって、私も二月の半ばに入り本格的に卒園式の準備に追われ始め、会うどころじゃ無くなった。
最初はどうにか都合をつけて一緒に不動産屋に行こうと思っていたものの、冬馬の住むマンションに部屋が空いているためそこに転がり込むことでいいんじゃない?となり、冬馬が管理会社に確認してOKが出たためほぼ決定。
お父さんと雅弥、冬馬のお母さんにも報告済みで、両家共にすごく喜んでくれている。
私の住む家が三月が更新のタイミングになるため、それに合わせて引っ越し予定となった。
あともうちょっとでこの部屋ともお別れだ。
上京してからずっと住んでいるため愛着もあるけれど、それ以上に新しい生活が楽しみで仕方ない。
そのため今は休みの前の日に冬馬の家に小物を運ぶついでに泊まりに行き、朝仕事に行く冬馬を見送ってから一週間分の作り置きを用意して冷蔵庫に入れ、そこから自宅に戻り引っ越し準備をするという日々を送っている。
冬馬の栄養面も心配だったからちょうどいい。
今までは仕事の邪魔になるんじゃないかとか、疲れてるのに私が行ったら迷惑なんじゃないかとかいろいろ遠慮していたけれど、冬馬はむしろもっと泊まりに来てほしかったらしい。
だから逆に冬馬の仕事が休みの時は、私の家に冬馬が泊まりに来たりもしている。
何か特別なことが起こるわけでもないし、ただ一緒にご飯を食べたりお酒を飲みながら映画を見たりと些細なお家デートが多い。
それでもお互い会うことにより心の回復ができていると実感しているため、今は毎週末が楽しみで仕方ない。
今日も冬馬の家から帰ってきて荷物整理をしていると、昼過ぎにテーブルの上からバイブレーションの音がして歩いて向かった。
スマートフォンを見ると、一通のメッセージが。
表示された名前と文面を見て、「わぁ!来た!」と荷物はそっちのけでソファに座ってアプリを開く。
それは、莉子から送られてきたふみくんとの結婚の報告だった。
二人はヨリを戻してすぐに結婚を視野に入れていたようで、ふみくんの仕事の異動の兼ね合いもありスピード婚することになった。
結婚式はすぐには予定していないらしく、新居はつい最近決めたばかりらしい。
婚姻届を持って幸せそうに笑う二人の写真を見て、食い気味に"おめでとう!"と返事をする。
すぐに"ありがとう!次はしずくと冬馬の番だね!"と返ってきて、一人でにやけてしまった。
冬馬にも当然連絡がいっており、夜に電話が鳴る。
『莉子から聞いた?』
「うん。すぐおめでとうって返した」
『俺も史明から連絡きてて、驚きすぎてすぐ返した』
「あれ、ふみくんから籍入れるって聞いてなかったの?」
『前に電話した時に多分言われてたとは思うんだけど、その時寝ぼけてたから全然覚えてなくて』
「ははっ、それはびっくりするわ。ふみくんも驚いただろうね」
『あぁ。"前に言っただろ"って怒られた』
冬馬は私が冷蔵庫にしまっていった作り置きのおかずを食べながら電話をしているらしく、定期的に『うまっ、これまた来週も作って』と感想が入ってくる。
『しずくがおかず作ってくれてるおかげで最近体調が良いんだ。やっぱ外食ばっかりじゃダメだな』
「そうだよ。そんな料理でよければいつでも作ってあげる」
『ありがとう。本当助かってる』
「うん。明日は裁判あるんだっけ?」
『あぁ。でも明日は初公判だからすぐ終わるよ』
「そっか。頑張ってね」
明日も早起きな冬馬のために、いつもより早めに電話を切り上げる。
お風呂にゆっくり浸かって、上がると職場からの連絡が来ていて慌てて返信して。
私も明日仕事だから早く寝ないと。そう思って早めに布団に入ったのに、全然眠れそうもない。
冬馬に抱きしめてもらって眠る幸せを知ってしまうと、一人の夜が寂しくて仕方ないのだ。
かと言って今連絡して寝ようとしている冬馬を起こすわけにはいかない。
もしかしたらもう寝てるかもしれないし。
冬馬とのやりとりを遡って読んでみたり、目を閉じて冬馬の顔を思い浮かべてみたり。
こんなことなら、冬馬の家から何か服でも持ってくればよかった。
冬馬の匂いに包まれていれば、少しは眠れるかもしれない。
次冬馬の家に行ったら、何か拝借してこよう。
そんなことを考えているうちにようやく眠くなった私。
その日は、馬鹿みたいに冬馬の服を大量に探しているというよくわからない夢を見てしまった。
私はまず一番に由紀乃の元へ行き、「この間は本当にごめん」と頭を下げた。
「私は全然いいの。むしろしずくが大丈夫だった?あれからずっと心配してて」
「うん。昨日冬馬とも話し合って、解決したの」
冬馬との話を掻い摘んで伝えると、「良かったあ」とホッとしたように微笑んでくれた。
「心配かけてごめんね」
「いいの。気にしないで」
「ありがとう」
同棲の話も喜んでくれて、私もホッとした。
それからあっという間に二週間が経過。
言っていた通り冬馬はどんどん忙しくなっていって、私も二月の半ばに入り本格的に卒園式の準備に追われ始め、会うどころじゃ無くなった。
最初はどうにか都合をつけて一緒に不動産屋に行こうと思っていたものの、冬馬の住むマンションに部屋が空いているためそこに転がり込むことでいいんじゃない?となり、冬馬が管理会社に確認してOKが出たためほぼ決定。
お父さんと雅弥、冬馬のお母さんにも報告済みで、両家共にすごく喜んでくれている。
私の住む家が三月が更新のタイミングになるため、それに合わせて引っ越し予定となった。
あともうちょっとでこの部屋ともお別れだ。
上京してからずっと住んでいるため愛着もあるけれど、それ以上に新しい生活が楽しみで仕方ない。
そのため今は休みの前の日に冬馬の家に小物を運ぶついでに泊まりに行き、朝仕事に行く冬馬を見送ってから一週間分の作り置きを用意して冷蔵庫に入れ、そこから自宅に戻り引っ越し準備をするという日々を送っている。
冬馬の栄養面も心配だったからちょうどいい。
今までは仕事の邪魔になるんじゃないかとか、疲れてるのに私が行ったら迷惑なんじゃないかとかいろいろ遠慮していたけれど、冬馬はむしろもっと泊まりに来てほしかったらしい。
だから逆に冬馬の仕事が休みの時は、私の家に冬馬が泊まりに来たりもしている。
何か特別なことが起こるわけでもないし、ただ一緒にご飯を食べたりお酒を飲みながら映画を見たりと些細なお家デートが多い。
それでもお互い会うことにより心の回復ができていると実感しているため、今は毎週末が楽しみで仕方ない。
今日も冬馬の家から帰ってきて荷物整理をしていると、昼過ぎにテーブルの上からバイブレーションの音がして歩いて向かった。
スマートフォンを見ると、一通のメッセージが。
表示された名前と文面を見て、「わぁ!来た!」と荷物はそっちのけでソファに座ってアプリを開く。
それは、莉子から送られてきたふみくんとの結婚の報告だった。
二人はヨリを戻してすぐに結婚を視野に入れていたようで、ふみくんの仕事の異動の兼ね合いもありスピード婚することになった。
結婚式はすぐには予定していないらしく、新居はつい最近決めたばかりらしい。
婚姻届を持って幸せそうに笑う二人の写真を見て、食い気味に"おめでとう!"と返事をする。
すぐに"ありがとう!次はしずくと冬馬の番だね!"と返ってきて、一人でにやけてしまった。
冬馬にも当然連絡がいっており、夜に電話が鳴る。
『莉子から聞いた?』
「うん。すぐおめでとうって返した」
『俺も史明から連絡きてて、驚きすぎてすぐ返した』
「あれ、ふみくんから籍入れるって聞いてなかったの?」
『前に電話した時に多分言われてたとは思うんだけど、その時寝ぼけてたから全然覚えてなくて』
「ははっ、それはびっくりするわ。ふみくんも驚いただろうね」
『あぁ。"前に言っただろ"って怒られた』
冬馬は私が冷蔵庫にしまっていった作り置きのおかずを食べながら電話をしているらしく、定期的に『うまっ、これまた来週も作って』と感想が入ってくる。
『しずくがおかず作ってくれてるおかげで最近体調が良いんだ。やっぱ外食ばっかりじゃダメだな』
「そうだよ。そんな料理でよければいつでも作ってあげる」
『ありがとう。本当助かってる』
「うん。明日は裁判あるんだっけ?」
『あぁ。でも明日は初公判だからすぐ終わるよ』
「そっか。頑張ってね」
明日も早起きな冬馬のために、いつもより早めに電話を切り上げる。
お風呂にゆっくり浸かって、上がると職場からの連絡が来ていて慌てて返信して。
私も明日仕事だから早く寝ないと。そう思って早めに布団に入ったのに、全然眠れそうもない。
冬馬に抱きしめてもらって眠る幸せを知ってしまうと、一人の夜が寂しくて仕方ないのだ。
かと言って今連絡して寝ようとしている冬馬を起こすわけにはいかない。
もしかしたらもう寝てるかもしれないし。
冬馬とのやりとりを遡って読んでみたり、目を閉じて冬馬の顔を思い浮かべてみたり。
こんなことなら、冬馬の家から何か服でも持ってくればよかった。
冬馬の匂いに包まれていれば、少しは眠れるかもしれない。
次冬馬の家に行ったら、何か拝借してこよう。
そんなことを考えているうちにようやく眠くなった私。
その日は、馬鹿みたいに冬馬の服を大量に探しているというよくわからない夢を見てしまった。
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