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昨日から今日にかけての眠りは俺の人生史上1番眠りの浅い時間だった。
音己ねぇが寝相で動いても、奏が寝相で動いても、抱き枕になり続けていた俺は目を覚まし、昨日の夜のことがないように過ごした。
今も奏が俺の首元に顔を埋めてきたから目を覚ましてしまい、まともに寝れない頭が悲鳴をあげていると、俺の目の前にいる音己ねぇがゆっくりと目を開けて体を伸ばした。
音己「…おはよ。」
一「おはよ。」
2人で奏が起きないように息で会話する。
一「音己ねぇ、大丈夫?」
音己「…まあね。」
そう言う音己ねぇだけど、まだ俺が知らないことがあるような表情をした。
一「俺、誰にも言わない奴ってお墨付きもらったけど。」
音己「私にな。」
と、音己ねぇは鼻で微笑む。
一「怖いの半分こする?」
俺が音己ねぇの手を取ろうとすると音己ねぇは首を振ってしまう。
音己「そんなに万能じゃないよ。」
一「…それでも気持ちは落ち着くよ。」
俺は音己ねぇの手を取り抱きしめる。
一「教えて。俺、誰も嫌いにならないから。」
そう言うと音己ねぇは俺に内緒であくびをしたのか、急に目が潤み出す。
音己「…昨日が最初じゃないんだ。」
一「そう、なの…?」
音己「うん。最初は奏の誕生日会があった次の日。」
奏の5月の誕生日に俺たちと飲み明かしたけど、奏なりに自制していて昨日みたいには酔っていなかったはず。
音己「奏とやっと酒を呑めるのが嬉しくて、いっぱい呑ませたら昨日みたいなことになった。」
一「…その時は大丈夫だったの?」
音己「まだ酒に慣れてなくてすぐに寝てくれた。」
たしかに呑み始めた頃はよく眠いって言ってたな。
音己「けど、だんだん体が慣れたのか合宿終わりのクラス会の後が1番危なかった。」
俺が津々美さんに挨拶をするために奏を1人、タクシーで家に帰らせた日だ。
音己「その日が1番怖かった。奏じゃないと思った。」
音己ねぇは赤ん坊の時から知ってるはずの奏が自分のことを襲おうとした事実に涙を流してしまう。
一「俺でも彼氏にでも連絡くれればいいのに。」
音己「彼氏いないし、友達のああいうとこ見たら嫌いになるじゃん。」
あれ…?
本当にただの友達だったのか。
俺はこんな時に元からいなかった知らない男の影が消え、安心してしまう。
一「…俺はならない。」
俺はそう言い、音己ねぇの腕をきつく抱きしめる。
ずっと俺のことを救ってくれた奏と音己ねぇを嫌いになることは絶対ない。
けど、奏の想いが溢れ出てしまった昨日は何故か心臓が痛かった。
音己「そっか。よかった…。」
自分の心配より奏のことを心配する音己ねぇが俺は心配だよ。
一「キスで終わった?他は大丈夫?」
音己「…ちょっと触られた。」
一「上?下?」
音己「…どっちも。けど、筋トレしてた方ね。」
それでも、本来姉弟が触れ合うべき部位じゃないんだ。
けど、なんでそんな悲しそうな顔をするのに、別荘では一緒に風呂入ったんだろう。
一「なんで2人で風呂入ったの?」
音己「…確かめたかったから。」
一「何を?」
音己「酔ってるのか酔ってないのか。」
一「酔っててもしちゃダメなことあるじゃん。」
音己「けど、いつもこの家には私と奏しかいないんだ。だから気まずくなりたくない。」
一「それでも…」
音己「ダメなの分かってるよ。けど、奏は大好きな弟だからあんまり傷ついてほしくないよ。」
そう言って音己ねぇは俺の胸に顔を埋めて涙を隠す。
音己「この秘密は誰にも言っちゃダメだよ。約束破ったら咬み殺すよ。」
一「分かった。言わないよ。」
俺は音己ねぇの全てを抱きしめて、恐怖の寒さに震える体を温める。
一「…両想いだから付き合おうよ。」
俺は自分で考えられる1番の解決策を音己ねぇに提案する。
音己「…違うよ。」
一「俺もずっと音己ねぇ好きだし、音己ねぇもずっと俺が好き。奏が言ってたよ。」
音己「…ちがうよ。」
一「音己ねぇが他に好きな人出来て付き合えたら俺と別れて。」
音己「…いやだよ。」
一「ううん。これは絶対の約束。破ったら俺が音己ねぇ襲うね。」
音己「…やだ。」
一「音己ねぇが俺を守ってくれたみたいに俺も音己ねぇ守るから。少しの間だけ音己ねぇにカッコいいとこ見せたい。」
音己「そんなことしなくていいよ…。」
一「お願い。俺の願い叶えてよ。俺がたくさん色が見たいって願いは叶えてくれたじゃん。」
音己「それとこれは…」
一「願い事を比べあいっこするのはダメなんだよ。」
俺の胸に顔を埋めている音己ねぇの顔を俺は雲を持つように優しく持ち上げる。
一「怖いのも辛いのも寂しいのも半分こするから、音己ねぇの彼氏にならせて。」
俺は音己ねぇの口元に自分の唇を近づけて1歩手前で止める。
一「音己ねぇの味噌汁しばらく食べさせて。」
音己「…ちょっとだけね。」
一「ありがとう。」
俺は彼女になった音己ねぇにキスをして怖かった思いを吸い取る。
一「彼女と花火デート初めて。」
昨日の夕方に瑠愛くんの家に拠点を移させてもらった天があと少しでみんな分の浴衣が出来ると、瑠愛くんの家で1番広いゲストルームで騒いでいた。
俺と夢衣も今日の昼、自分の荷物をまとめて少しの間瑠愛くんの家に居候させてもらうことになった。
桃汰さんが家に入ったことも、使ったことも嫌だろうからと言って、瑠愛くんは恋人の悠がいるのに俺たちにも使わせてくれるらしい。
音己「…友達来るから付き合ってるの内緒ね。」
一「紹介してくれてもいいけど。」
音己「絶対やだ。」
せっかく彼氏になったのにいつも通りの扱いなのかと少し残念に思ってしまった。
一「まあいいや。もう少し寝よ。」
音己「…うん。」
俺たちはやっと安心して眠りに入り、奏に付き合うことを伝えて想いを断ち切ってもらうことにした。
→ 夜光虫
音己ねぇが寝相で動いても、奏が寝相で動いても、抱き枕になり続けていた俺は目を覚まし、昨日の夜のことがないように過ごした。
今も奏が俺の首元に顔を埋めてきたから目を覚ましてしまい、まともに寝れない頭が悲鳴をあげていると、俺の目の前にいる音己ねぇがゆっくりと目を開けて体を伸ばした。
音己「…おはよ。」
一「おはよ。」
2人で奏が起きないように息で会話する。
一「音己ねぇ、大丈夫?」
音己「…まあね。」
そう言う音己ねぇだけど、まだ俺が知らないことがあるような表情をした。
一「俺、誰にも言わない奴ってお墨付きもらったけど。」
音己「私にな。」
と、音己ねぇは鼻で微笑む。
一「怖いの半分こする?」
俺が音己ねぇの手を取ろうとすると音己ねぇは首を振ってしまう。
音己「そんなに万能じゃないよ。」
一「…それでも気持ちは落ち着くよ。」
俺は音己ねぇの手を取り抱きしめる。
一「教えて。俺、誰も嫌いにならないから。」
そう言うと音己ねぇは俺に内緒であくびをしたのか、急に目が潤み出す。
音己「…昨日が最初じゃないんだ。」
一「そう、なの…?」
音己「うん。最初は奏の誕生日会があった次の日。」
奏の5月の誕生日に俺たちと飲み明かしたけど、奏なりに自制していて昨日みたいには酔っていなかったはず。
音己「奏とやっと酒を呑めるのが嬉しくて、いっぱい呑ませたら昨日みたいなことになった。」
一「…その時は大丈夫だったの?」
音己「まだ酒に慣れてなくてすぐに寝てくれた。」
たしかに呑み始めた頃はよく眠いって言ってたな。
音己「けど、だんだん体が慣れたのか合宿終わりのクラス会の後が1番危なかった。」
俺が津々美さんに挨拶をするために奏を1人、タクシーで家に帰らせた日だ。
音己「その日が1番怖かった。奏じゃないと思った。」
音己ねぇは赤ん坊の時から知ってるはずの奏が自分のことを襲おうとした事実に涙を流してしまう。
一「俺でも彼氏にでも連絡くれればいいのに。」
音己「彼氏いないし、友達のああいうとこ見たら嫌いになるじゃん。」
あれ…?
本当にただの友達だったのか。
俺はこんな時に元からいなかった知らない男の影が消え、安心してしまう。
一「…俺はならない。」
俺はそう言い、音己ねぇの腕をきつく抱きしめる。
ずっと俺のことを救ってくれた奏と音己ねぇを嫌いになることは絶対ない。
けど、奏の想いが溢れ出てしまった昨日は何故か心臓が痛かった。
音己「そっか。よかった…。」
自分の心配より奏のことを心配する音己ねぇが俺は心配だよ。
一「キスで終わった?他は大丈夫?」
音己「…ちょっと触られた。」
一「上?下?」
音己「…どっちも。けど、筋トレしてた方ね。」
それでも、本来姉弟が触れ合うべき部位じゃないんだ。
けど、なんでそんな悲しそうな顔をするのに、別荘では一緒に風呂入ったんだろう。
一「なんで2人で風呂入ったの?」
音己「…確かめたかったから。」
一「何を?」
音己「酔ってるのか酔ってないのか。」
一「酔っててもしちゃダメなことあるじゃん。」
音己「けど、いつもこの家には私と奏しかいないんだ。だから気まずくなりたくない。」
一「それでも…」
音己「ダメなの分かってるよ。けど、奏は大好きな弟だからあんまり傷ついてほしくないよ。」
そう言って音己ねぇは俺の胸に顔を埋めて涙を隠す。
音己「この秘密は誰にも言っちゃダメだよ。約束破ったら咬み殺すよ。」
一「分かった。言わないよ。」
俺は音己ねぇの全てを抱きしめて、恐怖の寒さに震える体を温める。
一「…両想いだから付き合おうよ。」
俺は自分で考えられる1番の解決策を音己ねぇに提案する。
音己「…違うよ。」
一「俺もずっと音己ねぇ好きだし、音己ねぇもずっと俺が好き。奏が言ってたよ。」
音己「…ちがうよ。」
一「音己ねぇが他に好きな人出来て付き合えたら俺と別れて。」
音己「…いやだよ。」
一「ううん。これは絶対の約束。破ったら俺が音己ねぇ襲うね。」
音己「…やだ。」
一「音己ねぇが俺を守ってくれたみたいに俺も音己ねぇ守るから。少しの間だけ音己ねぇにカッコいいとこ見せたい。」
音己「そんなことしなくていいよ…。」
一「お願い。俺の願い叶えてよ。俺がたくさん色が見たいって願いは叶えてくれたじゃん。」
音己「それとこれは…」
一「願い事を比べあいっこするのはダメなんだよ。」
俺の胸に顔を埋めている音己ねぇの顔を俺は雲を持つように優しく持ち上げる。
一「怖いのも辛いのも寂しいのも半分こするから、音己ねぇの彼氏にならせて。」
俺は音己ねぇの口元に自分の唇を近づけて1歩手前で止める。
一「音己ねぇの味噌汁しばらく食べさせて。」
音己「…ちょっとだけね。」
一「ありがとう。」
俺は彼女になった音己ねぇにキスをして怖かった思いを吸い取る。
一「彼女と花火デート初めて。」
昨日の夕方に瑠愛くんの家に拠点を移させてもらった天があと少しでみんな分の浴衣が出来ると、瑠愛くんの家で1番広いゲストルームで騒いでいた。
俺と夢衣も今日の昼、自分の荷物をまとめて少しの間瑠愛くんの家に居候させてもらうことになった。
桃汰さんが家に入ったことも、使ったことも嫌だろうからと言って、瑠愛くんは恋人の悠がいるのに俺たちにも使わせてくれるらしい。
音己「…友達来るから付き合ってるの内緒ね。」
一「紹介してくれてもいいけど。」
音己「絶対やだ。」
せっかく彼氏になったのにいつも通りの扱いなのかと少し残念に思ってしまった。
一「まあいいや。もう少し寝よ。」
音己「…うん。」
俺たちはやっと安心して眠りに入り、奏に付き合うことを伝えて想いを断ち切ってもらうことにした。
→ 夜光虫
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