一なつの恋

環流 虹向

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俺は夢衣と一緒に軽く仮眠を取って、合流した瑠愛くんに少しだけ夢衣のことを任せて永海に会いにいった。

久しぶりに会った永海は、やっぱりいつもの元気はなくてずっと悲しげで俺が勝手に泣きそうになる。

永海「美味しかったー。一はあそこのお店よく行くの?」

一「そんなに。でも美味い店は脳内マップに保存してる。」

永海「そっかー。いろんなとこ知ってるの羨ましいな。」

一「ほかにどんなとこ行きたい?」

永海「んー…。」

永海は少し考える素ぶりを見せるけれど、待っていた信号が青になると歩きだし別の話を始めた。

一「…え?どこ行きたい?」

もし、もう帰りたいなら駅まで送って俺は夢衣の様子を見に帰りたいと思うんだけど、永海はどうなんだろう。

永海「…何もないとこ行きたい。」

その一言が今の永海の心が全部見えてしまった気がして心臓が痛む。

一「何もないとこなんてこの世のどこにもないよ。」

永海「じゃあ静かなとこ行きたい。」

一「…誘ってる?」

永海「うん…。」

俺は冗談半分で聞いてしまったことに後悔する。

相当参ってる様子の永海にこんな冗談通用するわけないよな。

一「俺以外の男にそう言ったら連れてかれるぞ?」

永海「どこでもいいから連れっててよ…。」

そう言うと永海は急に泣き出してしまった。

俺は慌てて近場のホテルに入り、永海に落ち着いてもらうためにベッドの端に座り水を渡す。

一「初失恋?」

永海「…ううん。」

一「けど、すごい好きだったんだ?」

永海「今もちょっと好き。」

そんなことを言うならまだ心の中で好きが溢れてるんだろう。

一「諦めたの?」

永海「いつかは諦めないとダメじゃん。」

一「俺は何回フられても諦めないけど。」

永海「…付き合ってる人いても?」

一「その人だと思ったら納得いくまで伝え続けるよ。」

永海「…すごいなぁ。そういうの羨ましい。」

と、ため息混じりに永海は俺を羨ましがるがそんな憧れは欲しくない。

一「羨ましいで片付けるな。永海だってやればいい。」

永海「報われないって分かってるの辛くない?」

一「報われる結果になるようにすればいい。」

永海「好きな人が悲しんでも…?」

一「俺はこの人しかいないって思ったならそうするってだけ。タイプなだけだったらしない。」

永海「…もう、分かんない。」

そう言って永海はベッドに倒れ込み、目を瞑った。

俺もまだ昼の酒が抜けきらない体をベッドに預けて、脳を休めるために目を瞑る。

永海「何も知らないのに好きになるのなんでかな…。」

と、永海はベッドに言葉を押しつけながら聞いてきた。

一「何も知らなくても今まで見てきた相手のことが好きだからだよ。何も知らなくたって付き合っていいし、別れてもいい。全部知って残る人なんか片手で収まるくらいだろ。」

永海「…そうかも。」

永海はため息をつき、体制を変えたのか俺の隣にやってきた声がする。

そのことに俺は驚き、目を開けると真横に永海の顔があった。

永海「…誘ったけど、ダメかな。」

と、永海は涙目で俺に訴えてきた。

一「…は?どういう意味?」

永海「こういう意味。」

永海は俺が浜辺でしたように顔を近づけきたので、俺はギリギリ1歩手前で顔を押さえて止める。

一「…俺は誰でも出来るよ。けど、永海は誰とでもしたくないでしょ?」

永海「今はいいかもって思っちゃった。」

一「寂しいのを好きでもない人と埋めたらもっと寂しいの大きくなるよ。今好きな人とやりたいことを他の人としても、ずっと虚しいだけだよ。」

永海はまだ後戻り出来るから。

俺のようにならないで。

この気持ちは伝染してほしくないんだ。

永海「…じゃあまた遊んでくれる?」

一「いいよ。多分夜のことが多いと思うけど。」

永海「それでもいいよ。1人でいるよりはずっといいもん。」

そう言って永海は俺の肩に頭を置いた。

永海「…ぎゅってしてくれる?」

一「それくらいだったらいいよ。」

俺は永海が望む通り抱きしめて時間が終わるまで体温を分け合い、帰らないと行けない場所へ帰った。





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