一なつの恋

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
131 / 188
8/13

7:00

しおりを挟む
今日こそ天のことを迎えに行かないと将に申し訳ないな。

けど、夜には永海と合コンをするから今日も遅くなると天にメッセージを送ると電話がかかってきてしまった。

天『ひぃ兄の家に取りに行きたいのあるんだけど。』

一「何?」

天『たくさん!いつ家に帰っていいの?』

一「今日はちゃんと夜に家帰るから待っててくれ。」

天『分かったよーぅ。絶対ね!』

俺は天に約束して夢衣と約束しているカフェに行くと、モモちゃんも一緒に来ていた。

桃汰「ひーくん、おはよー。」

夢衣「おはよー。」

2人して体全身を使って俺に手を振ってくるのでちょっと恥ずかしくなり、早く止めてもらうために駆け寄る。

一「おはよう。モモちゃんもいるんだ。」

夢衣「うん!ちょっとお膝借りた!」

桃汰「夢衣ちゃんの夢見が悪かったらしいから。」

…そうだったのか。
俺じゃなくてモモちゃんを呼んだのはきっと夢衣も俺と距離を置こうって思ってくれてるからなんだろうな。

一「寝不足?」

夢衣「ううん。ちゃんと寝れたよ!」

一「なら良かった。店入るか。」

俺たちは店に入り、看板メニューの具だくさんスープと焼きたて全粒粉パンを一緒に食べ進める。

その中でモモちゃんはずっと隣にいる夢衣のことを我が子のように見つめて、少しでも口が汚れると自分のナフキンを使って口を拭き満足そうにする。

俺が心配しなくても元からいい人を見つけられてたんだと思っていると、夢衣をずっと見ていたモモちゃんと目が合い笑顔を向けられる。

桃汰「ひーくんは夢衣ちゃんと付き合わないの?」

と、モモちゃんは俺たちの仲を遠慮なしに聞いてきた。

一「俺は元彼もとかのとは付き合わないです。」

夢衣「私も元彼もとかれとは付き合わない。」

2人してそう言ったけれど、夢衣の顔は少し寂しそうに見えてしまって思わず目を逸らしてしまった。

桃汰「そうなんだー?じゃあさ…」

モモちゃんは隣にいる夢衣に体を向けて両手を掴み、自分の胸に抱えると満面の笑みで夢衣に微笑みかけて、

「夢衣ちゃん。僕と付き合おう。」

と、夢衣の鼻先まで顔を近づけて言った。

夢衣「…え?でも、モモちゃん男の子が好きなんじゃないの?」

桃汰「どっちも好きだよ。僕、男の子“だけ”好きって言った覚えないよ?」

夢衣「あれ…?そうだっけ。」

桃汰「…ひーくんがいい?」

モモちゃんはだんだんと夢衣の顔に近づき、キスする寸前まで顔を近づけてしまう。

…俺は、俺はどうすればいいんだ?
友達として夢衣の恋愛を応援すべきか?
元彼もとかれとして少し嫉妬を見せた方がいいのか?
俺として得体の知れない人間は辞めておけと言うべきか?

俺が夢衣に思うことで頭の中がぐちゃぐちゃになっていると、夢衣と一瞬目が合う。

けれど、その目は俺との想いを切るようにまぶたを閉じ、そのままモモちゃんと唇を重ねた。

夢衣「モモちゃん、恋人としてこれからもよろしく。」

桃汰「…え!?やったぁ♡♡♡」

そう言ってモモちゃんは夢衣に抱きつき、顔にいっぱいキスをする。
それを見て周りにいた客が2人の幸せそうな姿を見て小さく拍手を送る中、俺はどうしても祝福を送ることができなかった。

けど、夢衣の中でモモちゃんがいいなと思ったのなら俺はなにも口出ししない。
ただ、色々タイミングがずれただけできっとモモちゃんと付き合う事は決まっていたんだ。

桃汰「今からモモちゃんじゃなくて桃汰って夢衣ちゃんには呼んでほしいな。」

モモちゃんは嬉しそうにこれからの付き合い方を話す。

それは夢衣が求めていた彼氏像そのままで、夢衣は全てにOKを出していく。

桃汰「ひーくんと遊ぶ時は俺も呼んでね。」

夢衣「お仕事も…?」

桃汰「お仕事って1人で出来るでしょ?これから同棲するから働かなくてもいいけど。」

なんだかモモちゃんの言葉に胸がざわつく。
全部モモちゃんが決めて夢衣が頷くだけの様子が高校生の時、俺が夢衣と話していた様子に見えてしょうがない。

一「…好きなもの買えなくなるから働いた方がいいと思います。」

俺は今日の夜から一緒に寝ようねと話すモモちゃんの会話を割る。

桃汰「どうして?自分、結構稼ぎあるから大丈夫だよ?」

一「夢衣は大人だから自分で稼いだ方がいいと思います。」

桃汰「僕は夢衣ちゃんと過ごせる時間がいっぱい欲しいの。だってひーくんより夢衣ちゃんのこと好きだもん。」

…そう、だよな。

もう、彼氏になったモモちゃんに元彼もとかれでセフレだった俺は好きの量で勝てないよな。

だって、付き合うのはその人のことを自分の手で大切に守っていきたいって思うからそうするはずなんだ。

一「…そうですね。口出ししてごめんなさい。」

桃汰「謝らないでよー。ちょっとした考えの違いは誰にでもあるもん。」

そうモモちゃんは笑うけれど、その笑顔がどうしても父親が俺を殴った後の顔にそっくりで嫌だ。

俺はモモちゃんがどうしても好きになれないけど、夢衣にとってはいい相談相手だったんだよな。

俺はモモちゃんの隣にいる夢衣をふと見ると、何か言いたげだけど押し込んでいるような母さんの顔に見えてしょうがない。

なあ、夢衣。
本当に桃汰さんのこと好きなのか?

もし当てつけや気休め、寂しいものを埋めるためだったらまだ俺に頼ってほしいよ。

そいつよりも長い付き合いなんだから夢衣の嫌なことたくさん知ってるよ。

人目を寄せてしまう雨降るようなキスも、物を口まで運ばれて自分のペースで食べられないことも、友達の前で公開告白したりされるのも嫌いだろ?

なのになんで今は受け入れてるんだよ。

俺には嫌だって言ったくせに。

俺は夢衣の脆い表情を見てもう変わってしまったんだなと、そう思うようにした。




→ Hug
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

私の不倫日記

幻田恋人
恋愛
これは私が体験した自身の不倫を振り返って日記形式で綴った小説である。 登場する私自身と相手の人妻は実在する生身の男女である。 私はある時期の数か月間を、不倫ではあったが彼女との恋愛に情熱を燃やした。 二人の愛の日々を、切ない郷愁と後悔の中で思い出しながら綴っていく。 よろしければお付き合いいただきたい。 当人が許可しますので「私の不倫日記」を覗いてみて下さい。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

処理中です...