74 / 97
TICKTACK
はつこい酸味
しおりを挟む
あれから1ヶ月近く経った。
私は最後の有休の日をまたMGRで過ごす。
あの日は有休消化なんて出来るはずなくすっぱり辞めさせられるものだと思っていたけど、同期のユキたちが私の体調や仕事での異変に気づいていていつも声をかけてくれていたからか、最後に私が伝えた言葉に仕事のオーバーワークで体調を崩して辞めることを上に説明したらしく、私に有休をくれた。
だから1ヶ月分の余らせていた有休をしっかり使わせてもらい、ちゃんと連絡を取り合って明日正式に辞めることになった。
私は同期や後輩の子たちにたくさん迷惑をかけてしまったので、落ち着いた頃ちゃんとお詫びをすることを約束して1度あの会社全てから距離を取り、自分の荷物から仕事を一旦取り除いた。
それでもまだ少しお腹の気持ち悪さを拭えないのはなんなんだろうなと思いつつ、今日はこれで5度目の綺咲さんと雨瑞くんの朝ごはんデートを見て私は心を和ませる。
いつも2人は人の少ない第3木曜日をデートの日にして、朝ごはんを楽しんでいる。
私はその2人をカウンター越しで見ながらドリンクの補充やグラスの拭き上げをしていると、夏初めにMGRに入ったバイトの浦田 拓治さんがいつも通り無表情で私たちに挨拶をしてキッチンの向こうにある更衣室に向かっていった。
綺咲「今日もありがとう。好きなモーニングセット、かーくんと食べていってね。」
明人「ありがとうございます。オレンジジュースといつものサンドいただきます。」
私はバイト代として貰っているピカイチサンドセットのドリンクを作っていると、着替えた浦田さんが私の隣にやってきた。
浦田「替わります。」
明人「よろしくお願いします。」
私はオレンジジュースを作りながら浦田さんに仕込みの伝達をして、いつもの席に座ると同時に信之がピカイチサンドセットを持ってやってきた。
信之「いただきます。」
明人「いただきます。」
綺咲「はーい。私たちちょっとお散歩してから店戻るけどいいかな?」
浦田「はい。デートいってらっしゃい。」
綺咲「…はぁ。やっぱり落ち着かないよ。」
と、立ち上がろうとしていた綺咲さんだったけれど、また椅子に座った。
雨瑞「どうする?僕はここにいてもいいけど。」
浦田「目の前にバカップル2組もいるとこちらがきついので。綺咲さん、いってらっしゃい。」
相変わらず辛辣さんだなぁと、私は信之のおでこ横に見える浦田さんの無表情な顔をぼけっとしながら見ていると、信之と目が合った。
信之「…好き?」
明人「好きだよ。」
私はなんで急にそれを聞いてきたか分からなかったけど、私の好きは信之の嬉しいことってことは前に体で表現してくれたから素直に答えた。
信之「じゃあ、今度お出かけ行ってみたら?」
ん…?
どういうこと?
明人「信之と今日行くじゃん。」
信之「拓治と。」
私はその発言に少しモヤっとして顔いっぱいに不満を表す。
明人「そんな時間あるなら信之と行くもん。成紀くんと遊ぶのさえちょっと嫌なのになんでそんなこと言うの。」
信之「ずっと見てたから。」
明人「辛辣さんだなって思っただけ。」
なんだか浦田さんが来てから信之の様子が変な感じ。
元から私とちょっと距離がある感じだけど、尚更そんな感じが強まったから私の中でその根源の浦田さんは良きでもなんでもない人なんだよな。
浦田「俺で争わないでください。」
と、突然浦田さんはデートをごねる2人と喧嘩寸前の私たちにショットグラスでレモン汁を4人分置いた。
浦田「これ飲んで今後俺の言うこと聞かないとすぐ辞めるんで。社会科見学のバイトでも手が欲しいって言ったのはそちらさんなので、今日しっかり俺の存在意義を決めてください。」
そう言って浦田さんはキッチンに入り、皿洗いをしに行ってしまった。
雨瑞「飲んで3分だけ散歩しよ。」
綺咲「…そ、そうだね。うらちゃん仕事の手際いいから辞めてほしくないし。」
2人はすぐにレモン汁を飲み、皿をカウンター上段に乗せると足早に散歩しに行ってしまった。
信之「飲もっか。」
そう言って信之は私の手元にレモン汁を置くけど、私はまだ飲む気になれない。
明人「またさっきのこと言ったら浦田さんに告げ口して辞めさせるからね。」
信之「…分かった。もう言わない。」
明人「絶対ね。」
私は信之に指切りげんまんをさせて、信之がレモン汁を飲んだ所を見て私もレモンを口の中に入れる。
けど、ちょっと腹が煮える私は信之の口にレモン汁を入れて初恋味のキスをする。
明人「私は信之のことがずっと好き。誰と何が起きたとしてもそうだよ。」
信之「…うん。」
明人「信之は?」
私はひと返事しかしてくれない信之がちょっと嫌になる。
信之「俺もそうだよ。明人のことずっと好き。」
明人「嬉しいっ。今日のピクニック楽しみ。」
信之「たくさん日向ぼっこしようね。」
明人「うん!お昼、MGRのランチプレートにする?」
信之「そうだね。拓治に今作ってもらおう。」
信之は浦田さんを呼んで私たちの昼ごはんを頼み、空になったショットグラス4つを渡すと浦田さんはちょっと満足げに口角が上がっていた。
きっと浦田さんはちょっといじめるのが好きな人なんだろうなと勝手に解釈して、私は距離を置くことにした。
…………
朝・ピカイチサンドセット 初恋味のちゅー
信之の下手くそなはなし方、よきではない。
だからそんなことさせないように私が頑張らないと。
…………
環流 虹向/エンディングノート
私は最後の有休の日をまたMGRで過ごす。
あの日は有休消化なんて出来るはずなくすっぱり辞めさせられるものだと思っていたけど、同期のユキたちが私の体調や仕事での異変に気づいていていつも声をかけてくれていたからか、最後に私が伝えた言葉に仕事のオーバーワークで体調を崩して辞めることを上に説明したらしく、私に有休をくれた。
だから1ヶ月分の余らせていた有休をしっかり使わせてもらい、ちゃんと連絡を取り合って明日正式に辞めることになった。
私は同期や後輩の子たちにたくさん迷惑をかけてしまったので、落ち着いた頃ちゃんとお詫びをすることを約束して1度あの会社全てから距離を取り、自分の荷物から仕事を一旦取り除いた。
それでもまだ少しお腹の気持ち悪さを拭えないのはなんなんだろうなと思いつつ、今日はこれで5度目の綺咲さんと雨瑞くんの朝ごはんデートを見て私は心を和ませる。
いつも2人は人の少ない第3木曜日をデートの日にして、朝ごはんを楽しんでいる。
私はその2人をカウンター越しで見ながらドリンクの補充やグラスの拭き上げをしていると、夏初めにMGRに入ったバイトの浦田 拓治さんがいつも通り無表情で私たちに挨拶をしてキッチンの向こうにある更衣室に向かっていった。
綺咲「今日もありがとう。好きなモーニングセット、かーくんと食べていってね。」
明人「ありがとうございます。オレンジジュースといつものサンドいただきます。」
私はバイト代として貰っているピカイチサンドセットのドリンクを作っていると、着替えた浦田さんが私の隣にやってきた。
浦田「替わります。」
明人「よろしくお願いします。」
私はオレンジジュースを作りながら浦田さんに仕込みの伝達をして、いつもの席に座ると同時に信之がピカイチサンドセットを持ってやってきた。
信之「いただきます。」
明人「いただきます。」
綺咲「はーい。私たちちょっとお散歩してから店戻るけどいいかな?」
浦田「はい。デートいってらっしゃい。」
綺咲「…はぁ。やっぱり落ち着かないよ。」
と、立ち上がろうとしていた綺咲さんだったけれど、また椅子に座った。
雨瑞「どうする?僕はここにいてもいいけど。」
浦田「目の前にバカップル2組もいるとこちらがきついので。綺咲さん、いってらっしゃい。」
相変わらず辛辣さんだなぁと、私は信之のおでこ横に見える浦田さんの無表情な顔をぼけっとしながら見ていると、信之と目が合った。
信之「…好き?」
明人「好きだよ。」
私はなんで急にそれを聞いてきたか分からなかったけど、私の好きは信之の嬉しいことってことは前に体で表現してくれたから素直に答えた。
信之「じゃあ、今度お出かけ行ってみたら?」
ん…?
どういうこと?
明人「信之と今日行くじゃん。」
信之「拓治と。」
私はその発言に少しモヤっとして顔いっぱいに不満を表す。
明人「そんな時間あるなら信之と行くもん。成紀くんと遊ぶのさえちょっと嫌なのになんでそんなこと言うの。」
信之「ずっと見てたから。」
明人「辛辣さんだなって思っただけ。」
なんだか浦田さんが来てから信之の様子が変な感じ。
元から私とちょっと距離がある感じだけど、尚更そんな感じが強まったから私の中でその根源の浦田さんは良きでもなんでもない人なんだよな。
浦田「俺で争わないでください。」
と、突然浦田さんはデートをごねる2人と喧嘩寸前の私たちにショットグラスでレモン汁を4人分置いた。
浦田「これ飲んで今後俺の言うこと聞かないとすぐ辞めるんで。社会科見学のバイトでも手が欲しいって言ったのはそちらさんなので、今日しっかり俺の存在意義を決めてください。」
そう言って浦田さんはキッチンに入り、皿洗いをしに行ってしまった。
雨瑞「飲んで3分だけ散歩しよ。」
綺咲「…そ、そうだね。うらちゃん仕事の手際いいから辞めてほしくないし。」
2人はすぐにレモン汁を飲み、皿をカウンター上段に乗せると足早に散歩しに行ってしまった。
信之「飲もっか。」
そう言って信之は私の手元にレモン汁を置くけど、私はまだ飲む気になれない。
明人「またさっきのこと言ったら浦田さんに告げ口して辞めさせるからね。」
信之「…分かった。もう言わない。」
明人「絶対ね。」
私は信之に指切りげんまんをさせて、信之がレモン汁を飲んだ所を見て私もレモンを口の中に入れる。
けど、ちょっと腹が煮える私は信之の口にレモン汁を入れて初恋味のキスをする。
明人「私は信之のことがずっと好き。誰と何が起きたとしてもそうだよ。」
信之「…うん。」
明人「信之は?」
私はひと返事しかしてくれない信之がちょっと嫌になる。
信之「俺もそうだよ。明人のことずっと好き。」
明人「嬉しいっ。今日のピクニック楽しみ。」
信之「たくさん日向ぼっこしようね。」
明人「うん!お昼、MGRのランチプレートにする?」
信之「そうだね。拓治に今作ってもらおう。」
信之は浦田さんを呼んで私たちの昼ごはんを頼み、空になったショットグラス4つを渡すと浦田さんはちょっと満足げに口角が上がっていた。
きっと浦田さんはちょっといじめるのが好きな人なんだろうなと勝手に解釈して、私は距離を置くことにした。
…………
朝・ピカイチサンドセット 初恋味のちゅー
信之の下手くそなはなし方、よきではない。
だからそんなことさせないように私が頑張らないと。
…………
環流 虹向/エンディングノート
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】優しい嘘と甘い枷~もう一度あなたと~
イチニ
恋愛
高校三年生の冬。『お嬢様』だった波奈の日常は、両親の死により一変する。
幼なじみで婚約者の彩人と別れなければならなくなった波奈は、どうしても別れる前に、一度だけ想い出が欲しくて、嘘を吐き、彼を騙して一夜をともにする。
六年後、波奈は彩人と再会するのだが……。
※別サイトに投稿していたものに性描写を入れ、ストーリーを少し改変したものになります。性描写のある話には◆マークをつけてます。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【完結】一夜の関係を結んだ相手の正体はスパダリヤクザでした~甘い執着で離してくれません!~
中山紡希
恋愛
ある出来事をキッカケに出会った容姿端麗な男の魅力に抗えず、一夜の関係を結んだ萌音。
翌朝目を覚ますと「俺の嫁になれ」と言い寄られる。
けれど、その上半身には昨晩は気付かなかった刺青が彫られていて……。
「久我組の若頭だ」
一夜の関係を結んだ相手は……ヤクザでした。
※R18
※性的描写ありますのでご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる