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ANNIVERSARY
しとしと交差
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雨、すごいな…。
私は明日から始まる成くんが幹事の旅行に少し胸を高鳴らせていたけど、この雨だと外で夏先取りの花火なんか出来ないよ?
織華「雨なのに来てくれてありがとう。」
明人「今日はずっと楽しみにしてたリングピローのデザイン決めるから雨なんか関係ないよ。」
織華「ありがとう。秋に向けてなんだか忙しいなぁ。」
と、幸せの忙しさで微笑む織華で信之のことで悩んでいた私は少し癒された。
織華「明人はオアシスさんとどうなの?」
明人「喧嘩はあんまりしないし、休みが合ったらデートに誘ってくれるんだ。」
織華「いいね。2人の晴れ姿も見れたりするかな。」
明人「…どうだろ。」
織華「え?そういう話、あまりしない?」
織華にはまだ信之の全部のことは言えていない。
いつもMGRでごはんか信之や彼氏さんの春大さんがいたりして、今日みたいに2人っきりで落ち着いた室内にいられたことはなかったから今日ちゃんと相談してみることにした。
織華「…そっか。でも、明人は一緒にいたいって思ってるんだもんね。」
明人「うん…。なんか自分の愛情不足で信之に気持ちが伝わってないのかなって最近思っちゃう。」
織華「愛情表現の仕方は人それぞれだと思うけど、私が見てる限り2人ともちゃんと伝え合えてるとは思うよ?」
明人「そうかな…。」
織華「うん。だから信之さんは1人になろうって思ってても、今は明人と一緒にいるじゃん。」
明人「けど、将来的には1人になろうって思ってるよ。」
織華「…そこだよね。明人だけが2人でいたいって思ってて、信之さんは2人でいたいけど1人になろうとしてる。」
明人「ならなくていいじゃん…。私、子どもはいいから信之といたい。」
織華「それ言った?」
明人「この間そう言ったら、すごい困った笑顔して『明人の子どもは見たい。』って言ったの。」
織華「…信之さんなりに明人の幸せを考えてのことだろうけど、違うもんね。」
明人「うん。なんで…、そこだけ頑固なんだろうね。」
私はデザイン案を書き綴っていたペンを置き、近くのソファーに倒れこむ。
明人「『明人の子ども“は”』ってさ。自分の子どもはもう諦めてるってことだよね。」
織華「…そう、聞こえちゃうね。」
明人「病気は食事管理と定期検診でなんとかなるけど、そこだよね。信之の1番大きいとこ。」
織華「そういえば、自分には出来ないから他の人に譲るようなことばっかり言ってるよね。この間の…、Wデートした時思い出して泣きそう…。」
明人「…ごめん。」
織華「ううん。2人が想い合ってるはすごい伝わってくるからいいの。けど、その想い合いがすれ違っちゃってるから…、明人のこと思うと…。」
と、織華は急に両手で顔を塞ぎ小さくなる。
明人「泣かせるつもりじゃなかったのに…。ごめん。」
織華「明人が謝る事ないよ。私の気持ちの許容量が少ないだけ。」
そう言って織華は自分のシャツで涙を拭き、私に潤んだ目を合わせた。
織華「2人の晴れ姿も、子どもも見れなくていいけど、2人がすれ違ったままお互いの存在を手放してほしくないなって思うの。だから、これから2人で納得いく将来を話し合っていこう?」
明人「…うん。そうする。」
織華「うん!明人は信之さんといる時、いつも嬉しそうだから一緒にいてほしいなって思う。」
明人「私もずっと一緒にいたいなって思う。」
織華は私がちゃんと見つけた好きな人だから、付き合った事を伝えてからずっと応援してくれている。
この織華の気持ちが悲しい気持ちに変換されないように、もっと信之と一緒に将来の話をしていこう。
私は明日の旅行で信之と将来一緒にやりたい事をたくさん口に出すことにした。
…………
もっとたくさん信之と話そう。
これ以上すれ違わないようにちゃんと目を見て、手を繋いで話そう。
…………
環流 虹向/エンディングノート
私は明日から始まる成くんが幹事の旅行に少し胸を高鳴らせていたけど、この雨だと外で夏先取りの花火なんか出来ないよ?
織華「雨なのに来てくれてありがとう。」
明人「今日はずっと楽しみにしてたリングピローのデザイン決めるから雨なんか関係ないよ。」
織華「ありがとう。秋に向けてなんだか忙しいなぁ。」
と、幸せの忙しさで微笑む織華で信之のことで悩んでいた私は少し癒された。
織華「明人はオアシスさんとどうなの?」
明人「喧嘩はあんまりしないし、休みが合ったらデートに誘ってくれるんだ。」
織華「いいね。2人の晴れ姿も見れたりするかな。」
明人「…どうだろ。」
織華「え?そういう話、あまりしない?」
織華にはまだ信之の全部のことは言えていない。
いつもMGRでごはんか信之や彼氏さんの春大さんがいたりして、今日みたいに2人っきりで落ち着いた室内にいられたことはなかったから今日ちゃんと相談してみることにした。
織華「…そっか。でも、明人は一緒にいたいって思ってるんだもんね。」
明人「うん…。なんか自分の愛情不足で信之に気持ちが伝わってないのかなって最近思っちゃう。」
織華「愛情表現の仕方は人それぞれだと思うけど、私が見てる限り2人ともちゃんと伝え合えてるとは思うよ?」
明人「そうかな…。」
織華「うん。だから信之さんは1人になろうって思ってても、今は明人と一緒にいるじゃん。」
明人「けど、将来的には1人になろうって思ってるよ。」
織華「…そこだよね。明人だけが2人でいたいって思ってて、信之さんは2人でいたいけど1人になろうとしてる。」
明人「ならなくていいじゃん…。私、子どもはいいから信之といたい。」
織華「それ言った?」
明人「この間そう言ったら、すごい困った笑顔して『明人の子どもは見たい。』って言ったの。」
織華「…信之さんなりに明人の幸せを考えてのことだろうけど、違うもんね。」
明人「うん。なんで…、そこだけ頑固なんだろうね。」
私はデザイン案を書き綴っていたペンを置き、近くのソファーに倒れこむ。
明人「『明人の子ども“は”』ってさ。自分の子どもはもう諦めてるってことだよね。」
織華「…そう、聞こえちゃうね。」
明人「病気は食事管理と定期検診でなんとかなるけど、そこだよね。信之の1番大きいとこ。」
織華「そういえば、自分には出来ないから他の人に譲るようなことばっかり言ってるよね。この間の…、Wデートした時思い出して泣きそう…。」
明人「…ごめん。」
織華「ううん。2人が想い合ってるはすごい伝わってくるからいいの。けど、その想い合いがすれ違っちゃってるから…、明人のこと思うと…。」
と、織華は急に両手で顔を塞ぎ小さくなる。
明人「泣かせるつもりじゃなかったのに…。ごめん。」
織華「明人が謝る事ないよ。私の気持ちの許容量が少ないだけ。」
そう言って織華は自分のシャツで涙を拭き、私に潤んだ目を合わせた。
織華「2人の晴れ姿も、子どもも見れなくていいけど、2人がすれ違ったままお互いの存在を手放してほしくないなって思うの。だから、これから2人で納得いく将来を話し合っていこう?」
明人「…うん。そうする。」
織華「うん!明人は信之さんといる時、いつも嬉しそうだから一緒にいてほしいなって思う。」
明人「私もずっと一緒にいたいなって思う。」
織華は私がちゃんと見つけた好きな人だから、付き合った事を伝えてからずっと応援してくれている。
この織華の気持ちが悲しい気持ちに変換されないように、もっと信之と一緒に将来の話をしていこう。
私は明日の旅行で信之と将来一緒にやりたい事をたくさん口に出すことにした。
…………
もっとたくさん信之と話そう。
これ以上すれ違わないようにちゃんと目を見て、手を繋いで話そう。
…………
環流 虹向/エンディングノート
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