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雲の上に
058:00:48
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時音のニュースと稜平さんのプランが頭の中で行き交う中、毎日のタスクを順当にこなして単調に過ごす。
あのことがあってから、凛太郎さんからも李代さんからも連絡が分かりやすく来なくなった。
だからって春馬くんを呼び出そうと思ったりはしないし、稜平さんと無闇にデートを重ねたくはない。
だから家で1人を満喫して寝ようとしていると時音からチケット受け渡し場所が通知された。
私は急いでお風呂上がりの顔にメイクをして、今年の夏初めて下ろした透け感の可愛いブルーのワンピースを着て絶対終電を逃す電車に乗り込み、あの松ぼっくりの木の下に行った。
その松ぼっくりの木は時音が幸せを呼ぶ木とどこかの雑誌のインタビューで答えたからか、居酒屋のバイトに行く前にいつも人だかりが出来ていて待ち合わせスポットとしても有名になってしまった。
けれど、時音は周りを気にせず、私を呼び出してくれただけでとても嬉しく思う。
そんな私は一応時音のためにキャスケットを被って、丸出しの顔を隠そうとしてきたけれど時音はこの夏には少し暑そうな薄手のパーカーのフードを被ってやってきた。
時音「お待たせ。終電の時間なのに人多いね。」
幸来未「時音のせいだよ。インタビューでお気に入りの場所答えちゃダメだよ。」
私がそう文句を言うと、そばにいた人がこちらを向いた気がして焦った私は時音の腕に抱きつき、人混みの中に紛れる。
幸来未「…あと、名前も本名にしたら呼びにくいじゃん。今一瞬バレかけたよ。」
時音「僕はバレていいよ。」
幸来未「ダメ。若手俳優は女性ファンつけてなんぼなんだから。」
言いたくない本音を言うと時音は静かに笑い、繁華街の脇道に入ってちょっとタバコ臭い自販機の前で足を止めた。
時音「忘れないうちにこれ。」
そう言って時音は私にチケットをくれた。
幸来未「ありがとう。私もあげる。」
私は時音が誕生日プレゼントとしてくれたあの松ぼっくりを使ったリースによく似た手のひらサイズのリースが入った袋を渡す。
時音「え!?ありがとう。僕も何か持ってくればよかった…。」
幸来未「いいよ。このチケットだけで十分。」
時音「…けど、僕はもっと幸来未といたいよ。」
そう言って悲しげな顔をする時音は少しぎこちないキスを私にした。
幸来未「……いたいならいようよ。」
どうしても本人の前だと欲張りで正直な気持ちが出てしまう私は、時音と目を合わせられず思わず俯く。
すると時音は私の顔をそっと掴み上げて、自分が食べていたタブレットミントを私と溶かし合うようにキスをした。
時音「24:45から生放送のラジオに出るとこ抜け出してきたんだ。」
と、時音は私に携帯で23:48という時間を見せてきた。
時音「ラジオ局まで走って6分。バレる前に行かないといけないから10分前についてないといけない。ギリギリだけど、幸来未といつもの部屋行って出来るかな。」
幸来未「試そうよ。」
時音「そうだね。じゃあ行こう。」
私は時音から握ってくれた手をしっかり握り返し、少し一目を引きつけながらもあのホテルの部屋に入った。
環流 虹向/23:48
あのことがあってから、凛太郎さんからも李代さんからも連絡が分かりやすく来なくなった。
だからって春馬くんを呼び出そうと思ったりはしないし、稜平さんと無闇にデートを重ねたくはない。
だから家で1人を満喫して寝ようとしていると時音からチケット受け渡し場所が通知された。
私は急いでお風呂上がりの顔にメイクをして、今年の夏初めて下ろした透け感の可愛いブルーのワンピースを着て絶対終電を逃す電車に乗り込み、あの松ぼっくりの木の下に行った。
その松ぼっくりの木は時音が幸せを呼ぶ木とどこかの雑誌のインタビューで答えたからか、居酒屋のバイトに行く前にいつも人だかりが出来ていて待ち合わせスポットとしても有名になってしまった。
けれど、時音は周りを気にせず、私を呼び出してくれただけでとても嬉しく思う。
そんな私は一応時音のためにキャスケットを被って、丸出しの顔を隠そうとしてきたけれど時音はこの夏には少し暑そうな薄手のパーカーのフードを被ってやってきた。
時音「お待たせ。終電の時間なのに人多いね。」
幸来未「時音のせいだよ。インタビューでお気に入りの場所答えちゃダメだよ。」
私がそう文句を言うと、そばにいた人がこちらを向いた気がして焦った私は時音の腕に抱きつき、人混みの中に紛れる。
幸来未「…あと、名前も本名にしたら呼びにくいじゃん。今一瞬バレかけたよ。」
時音「僕はバレていいよ。」
幸来未「ダメ。若手俳優は女性ファンつけてなんぼなんだから。」
言いたくない本音を言うと時音は静かに笑い、繁華街の脇道に入ってちょっとタバコ臭い自販機の前で足を止めた。
時音「忘れないうちにこれ。」
そう言って時音は私にチケットをくれた。
幸来未「ありがとう。私もあげる。」
私は時音が誕生日プレゼントとしてくれたあの松ぼっくりを使ったリースによく似た手のひらサイズのリースが入った袋を渡す。
時音「え!?ありがとう。僕も何か持ってくればよかった…。」
幸来未「いいよ。このチケットだけで十分。」
時音「…けど、僕はもっと幸来未といたいよ。」
そう言って悲しげな顔をする時音は少しぎこちないキスを私にした。
幸来未「……いたいならいようよ。」
どうしても本人の前だと欲張りで正直な気持ちが出てしまう私は、時音と目を合わせられず思わず俯く。
すると時音は私の顔をそっと掴み上げて、自分が食べていたタブレットミントを私と溶かし合うようにキスをした。
時音「24:45から生放送のラジオに出るとこ抜け出してきたんだ。」
と、時音は私に携帯で23:48という時間を見せてきた。
時音「ラジオ局まで走って6分。バレる前に行かないといけないから10分前についてないといけない。ギリギリだけど、幸来未といつもの部屋行って出来るかな。」
幸来未「試そうよ。」
時音「そうだね。じゃあ行こう。」
私は時音から握ってくれた手をしっかり握り返し、少し一目を引きつけながらもあのホテルの部屋に入った。
環流 虹向/23:48
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