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おれたちともだち
236:03:54
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久しぶりに1人で入れるお風呂がまさかの露天風呂だとは思わず、今年入ってから1番気分が上がった。
携帯は高速に乗るまでにバッテリーが切れちゃったからもうそのままにして明日家に帰るまでほっとこ。
あもん「幸来未、夜飯来たから冷めないうちに来てね。」
幸来未「あ、はいっ。」
私は部屋に露天風呂がついてるところなんて来たことがなかったので、水を持ち込んでお風呂に入って楽しんでいたけど夜ご飯の時間になってしまったみたい。
私は軽く汗をシャワーで流して切られた髪の毛を隠すように頭にタオルを巻き、すべての噛み跡が見えないように少し大きめにした浴衣を着て部屋に戻るとすき焼きのいい匂いが広がっていた。
あもん「肉でよかったよね?」
幸来未「魚でもお肉でも食べられるだけで嬉しいです。」
全額を負担しているあもんさんに私はお礼を言い、ご馳走を堪能しているとあもんさんがじっと私を見てることに気づき、目を合わせるとあもんさんは微笑んだ。
あもん「ちょっと落ち着いたみたいでよかった。やっぱり美味いものは体も心も喜ぶね。」
そう言ってあもんさんはじゅるじゅるのお肉をといた卵に通し、口の中に詰め込むと頬を膨らませながら堪能する。
幸来未「突然連絡してしまってすみませんでした…。」
私は自分の極限の行動に少し後悔しつつも、1人の家には帰りたくなかったのであもんさんが電話に出てくれて本当に安心した。
あもん「大丈夫。文句を言うなら1ヶ月くらいずっと連絡くれなかったことかな。」
幸来未「ちょっと…、色々忙しくて…。」
あもん「悠雪と紀莉哉のせい?」
幸来未「…主に悠雪です。」
あもん「まあ、彼氏だもんね。好きなの?」
と、あもんさんは私の顔色を見て決まっている答えをなぜか質問してきた。
幸来未「怖いって感情が1番強いです…。」
あもん「どいつもこいつも腐ってるって言ったでしょ。なのに幸来未は自分からすぐに逃げ出そうとしないんだね。」
幸来未「ストーカーになったら嫌なので…。」
あもん「じゃあ俺と付き合っちゃう?」
私はその言葉に思わず驚き、止めていた箸を落とす。
あもん「なんてね。いいなって思う奴いないの?」
と、あもんさんは新しい割り箸を私に手渡しながら聞いてきた。
幸来未「付き合いたい人はいます。」
あもん「へー…、じゃあ今悠雪目線だと幸来未は浮気者なの?」
幸来未「そう…、なりますね…。」
あもん「付き合いたい人は幸来未のこと好きなの?」
幸来未「この間、告白してもらいました。」
あもん「じゃあキープになってるのか。」
幸来未「…そうです。」
私は自分のことが精一杯で気に求めてなかった最低な矢印をあもんさんに整理され、心が痛む。
あもん「そのキープくんは悠雪のこと知ってるの?」
幸来未「彼氏がいるっていうのは知ってます。けど、お互いが先輩後輩なのは知らないです…。」
あもん「意外と幸来未ってワイルドだね。」
そう言って呑気に笑うあもんさんにぐうの音も出ない。
幸来未「なんか…、自分の選択がどんどん悪い方に転んでこうなりました。」
あもん「まあ、幸来未が選んだものならしょうがないね。これからはどうしたいの?」
幸来未「悠雪と別れてその人と付き合いたいです。」
あもん「なるほど。付き合ってゴールなの?」
幸来未「…一緒に暮らしたいねとは話しました。」
あもん「ふーん。まあ、口約束ほど信用できないものはないよね。」
と、あもんさんは1番私が不安だと思っていたことをひと突きしてきた。
私はそのダメージが強すぎて言葉が出ないでいるとあもんさんはすき焼きのお肉を私のお皿に置いた。
あもん「幸来未が1番信頼してる人はその人なのかな?気を置ける人ってその人しかいないの?」
幸来未「んー…、気を使わないのは短大に知り合った人です。」
あもん「その人は好きにはならないんだ?」
幸来未「短大時代に好きだったんですけど…、今はちょっと変わったので…恋愛対象には…。」
あもん「幸来未は変化が嫌いなのかな。」
あもんさんはにこやかだった表情を少し鋭い顔に変えると、私の目の奥を見るようにじっと見てきた。
あもん「人は生きてれば関わっていく人たちに揉まれて変化していく。それはしょうがないことなんだ。その人も変わってしまった所が多々あるんだろうけど、変わってない所もあったんじゃない?」
幸来未「…少しは。」
あもん「その少しがその人の本質。変化してしまったものはまた変化していく。だからその本質を愛せる人を選んだ方がいいんじゃないかな。」
幸来未「でも…、好きな人はずっと変わらなかったです…。」
あもん「その人は出会って何年?」
幸来未「…1年です。」
あもん「その人が5年後、何も変わらないのはその人自身さえ誰も分からない。今、幸来未がいいと思っていた部分が変化しちゃうものだったら幸来未は好きでいられるかな。」
あもんさんの意見がブスブスと私の“普通”を壊すように刺してきてその胸の痛みで顔を歪ませると、あもんさんはご飯を食べ続けていた箸を止めた。
あもん「長く一緒にいれば、嫌な所、好きな所、どちらも見えてくるけど、変化しても一緒にいたいと思える相手が本当の恋人になるんじゃないかな。」
幸来未「…変化しないとダメですかね。」
あもん「変化しないものはどんどん死んでいったよ。その意味分かる?」
幸来未「分かりません…。」
あもん「変化しないと生き残れないから。そんな当たり前があったからこそ、今があるんだ。」
…じゃあ、私はもう絶滅寸前かな。
当たり前のことなんてみんなと同じように勉強して、学歴を貰ったことくらいしかないよ。
幸来未「今を生きる気力がないんですがどうすればいいですか…。」
私はどうしようもない目の前の現実への打開策が自分で思いつかず、ずっと私の根本を突き刺してきたあもんさんに質問した。
あもん「じゃあ、俺に幸来未の“今”を少し預けてもらっていい?」
幸来未「…出来る範囲でいいですか?」
あもん「んー…、明日仕事ある?」
幸来未「あります。」
あもん「仮病で休んで。その分のお金はあげる。」
幸来未「…分かりました。」
あもん「うん!じゃあとりあえずこのご馳走食べ終えてから休みの連絡入れよー。」
幸来未「はい。」
私は行く気が起きなかったバイトを休み、あもんさんに私の“今”を少しだけ預けてみることにした。
環流 虹向/23:48
携帯は高速に乗るまでにバッテリーが切れちゃったからもうそのままにして明日家に帰るまでほっとこ。
あもん「幸来未、夜飯来たから冷めないうちに来てね。」
幸来未「あ、はいっ。」
私は部屋に露天風呂がついてるところなんて来たことがなかったので、水を持ち込んでお風呂に入って楽しんでいたけど夜ご飯の時間になってしまったみたい。
私は軽く汗をシャワーで流して切られた髪の毛を隠すように頭にタオルを巻き、すべての噛み跡が見えないように少し大きめにした浴衣を着て部屋に戻るとすき焼きのいい匂いが広がっていた。
あもん「肉でよかったよね?」
幸来未「魚でもお肉でも食べられるだけで嬉しいです。」
全額を負担しているあもんさんに私はお礼を言い、ご馳走を堪能しているとあもんさんがじっと私を見てることに気づき、目を合わせるとあもんさんは微笑んだ。
あもん「ちょっと落ち着いたみたいでよかった。やっぱり美味いものは体も心も喜ぶね。」
そう言ってあもんさんはじゅるじゅるのお肉をといた卵に通し、口の中に詰め込むと頬を膨らませながら堪能する。
幸来未「突然連絡してしまってすみませんでした…。」
私は自分の極限の行動に少し後悔しつつも、1人の家には帰りたくなかったのであもんさんが電話に出てくれて本当に安心した。
あもん「大丈夫。文句を言うなら1ヶ月くらいずっと連絡くれなかったことかな。」
幸来未「ちょっと…、色々忙しくて…。」
あもん「悠雪と紀莉哉のせい?」
幸来未「…主に悠雪です。」
あもん「まあ、彼氏だもんね。好きなの?」
と、あもんさんは私の顔色を見て決まっている答えをなぜか質問してきた。
幸来未「怖いって感情が1番強いです…。」
あもん「どいつもこいつも腐ってるって言ったでしょ。なのに幸来未は自分からすぐに逃げ出そうとしないんだね。」
幸来未「ストーカーになったら嫌なので…。」
あもん「じゃあ俺と付き合っちゃう?」
私はその言葉に思わず驚き、止めていた箸を落とす。
あもん「なんてね。いいなって思う奴いないの?」
と、あもんさんは新しい割り箸を私に手渡しながら聞いてきた。
幸来未「付き合いたい人はいます。」
あもん「へー…、じゃあ今悠雪目線だと幸来未は浮気者なの?」
幸来未「そう…、なりますね…。」
あもん「付き合いたい人は幸来未のこと好きなの?」
幸来未「この間、告白してもらいました。」
あもん「じゃあキープになってるのか。」
幸来未「…そうです。」
私は自分のことが精一杯で気に求めてなかった最低な矢印をあもんさんに整理され、心が痛む。
あもん「そのキープくんは悠雪のこと知ってるの?」
幸来未「彼氏がいるっていうのは知ってます。けど、お互いが先輩後輩なのは知らないです…。」
あもん「意外と幸来未ってワイルドだね。」
そう言って呑気に笑うあもんさんにぐうの音も出ない。
幸来未「なんか…、自分の選択がどんどん悪い方に転んでこうなりました。」
あもん「まあ、幸来未が選んだものならしょうがないね。これからはどうしたいの?」
幸来未「悠雪と別れてその人と付き合いたいです。」
あもん「なるほど。付き合ってゴールなの?」
幸来未「…一緒に暮らしたいねとは話しました。」
あもん「ふーん。まあ、口約束ほど信用できないものはないよね。」
と、あもんさんは1番私が不安だと思っていたことをひと突きしてきた。
私はそのダメージが強すぎて言葉が出ないでいるとあもんさんはすき焼きのお肉を私のお皿に置いた。
あもん「幸来未が1番信頼してる人はその人なのかな?気を置ける人ってその人しかいないの?」
幸来未「んー…、気を使わないのは短大に知り合った人です。」
あもん「その人は好きにはならないんだ?」
幸来未「短大時代に好きだったんですけど…、今はちょっと変わったので…恋愛対象には…。」
あもん「幸来未は変化が嫌いなのかな。」
あもんさんはにこやかだった表情を少し鋭い顔に変えると、私の目の奥を見るようにじっと見てきた。
あもん「人は生きてれば関わっていく人たちに揉まれて変化していく。それはしょうがないことなんだ。その人も変わってしまった所が多々あるんだろうけど、変わってない所もあったんじゃない?」
幸来未「…少しは。」
あもん「その少しがその人の本質。変化してしまったものはまた変化していく。だからその本質を愛せる人を選んだ方がいいんじゃないかな。」
幸来未「でも…、好きな人はずっと変わらなかったです…。」
あもん「その人は出会って何年?」
幸来未「…1年です。」
あもん「その人が5年後、何も変わらないのはその人自身さえ誰も分からない。今、幸来未がいいと思っていた部分が変化しちゃうものだったら幸来未は好きでいられるかな。」
あもんさんの意見がブスブスと私の“普通”を壊すように刺してきてその胸の痛みで顔を歪ませると、あもんさんはご飯を食べ続けていた箸を止めた。
あもん「長く一緒にいれば、嫌な所、好きな所、どちらも見えてくるけど、変化しても一緒にいたいと思える相手が本当の恋人になるんじゃないかな。」
幸来未「…変化しないとダメですかね。」
あもん「変化しないものはどんどん死んでいったよ。その意味分かる?」
幸来未「分かりません…。」
あもん「変化しないと生き残れないから。そんな当たり前があったからこそ、今があるんだ。」
…じゃあ、私はもう絶滅寸前かな。
当たり前のことなんてみんなと同じように勉強して、学歴を貰ったことくらいしかないよ。
幸来未「今を生きる気力がないんですがどうすればいいですか…。」
私はどうしようもない目の前の現実への打開策が自分で思いつかず、ずっと私の根本を突き刺してきたあもんさんに質問した。
あもん「じゃあ、俺に幸来未の“今”を少し預けてもらっていい?」
幸来未「…出来る範囲でいいですか?」
あもん「んー…、明日仕事ある?」
幸来未「あります。」
あもん「仮病で休んで。その分のお金はあげる。」
幸来未「…分かりました。」
あもん「うん!じゃあとりあえずこのご馳走食べ終えてから休みの連絡入れよー。」
幸来未「はい。」
私は行く気が起きなかったバイトを休み、あもんさんに私の“今”を少しだけ預けてみることにした。
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