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気かぶり娘
382:05:13
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明日は金持ち主催者とゲームの日。
けれど、今日はバイト先に人がいないと言われて休みを返上してゴールデンタイム時の4時間のシフトをぶち込まれた。
しかも、少し前に新人を食い過ぎた佐原さんが別店舗からヘルプに来てる始末。
こんな奴に頭を使わずさっさとやることやって帰ろうと、できる範囲の締め作業をしながらホールを回していると佐原さんが私に手招きしていたのでキッチンに入り、要件を聞きに行く。
幸来未「はい?」
佐原「この後、呑みに行こうよ。」
…こりねぇ奴だな。
やるならもっと丁寧にやれよ。
こっちはすぐに新人が辞めていくし、元彼も辞めたから夏のクソ忙しい時期に3人で店を回すって言う無謀チャレンジもしたんだけど。
幸来未「明日朝早いんで。」
私は気を使う必要もなくなった元バイトリーダーを背にホールへ戻ろうとすると、腕を掴まれて止められてしまう。
佐原「大事な話。」
幸来未「…なんですか。いまここで言ってくださいよ。」
佐原「ここちゃんがいいなら俺はいいんだけど、弟さんは大丈夫?」
幸来未「え?」
佐原「姉弟が熱烈にキスし合うのは家族の教え?」
と、佐原さんは賑わうお店のキッチンでとても低く小さい声で私に耳打ちした。
幸来未「…呑みに行きます。」
佐原「うん。俺も同じ時間に上がるから終電には間に合うよ。」
21時に終わるから終電までの3時間でケリをつけようって魂胆か。
まあ、姉弟じゃないこと伝えればすぐに帰れるだろうし、あのBARに行けばなんとかなるかもしれない。
私は佐原さんに飛行船があるBARを指定して、仕事上がりに1杯呑みに行ったけれどとても混雑していて全席埋まっていた。
佐原「残念。じゃあ俺のオススメでもいい?」
…なんか嫌な感じする。
2回もホテル連行に失敗してて、今日は私の弱みを握ってる佐原さんが似たようなお店に行くわけがない。
幸来未「5分だけ。立ちでいいのでここで呑みましょう?」
私は足早に人混みの隙間に入り、佐々木さんか紀莉哉さんがいないかバーカウンターを覗いてみるけどあいにく2人はいなかった。
佐原「アイスティー2つ。」
と、佐原さんはカウンターと自分の体で私を囲い、身動きを取れなくした。
私は背中に当たる佐原さんの気味の悪い体温を感じながら度数が強いカクテルを佐原さんにストローを差し出され呑まされる。
佐原「ここちゃんの性癖は弟さんなの?」
…気持ち悪い。
これ以上私の耳元で喋らないでもらいたい。
幸来未「あの子、弟じゃないんです。」
佐原「…まあ、顔が全く似てないもんね。」
思ってたより簡単に姉弟じゃないことは分かってもらえた。
けど、この後になんて関係性を伝えればいいんだろう。
佐原「じゃあ彼氏?」
…って言ってもいいけど、そのデマが時音が将来売れた時の足枷になったら嫌だ。
幸来未「…違います。」
佐原「んー…、友達?」
幸来未「知り合い…?」
佐原「なんで疑問形?」
そう言って佐原さんは私のポロシャツワンピを他の人に見えないようにたくし上げ、片手でお腹を撫であげてながら胸を揉んできた。
佐原「セフレだよね?俺も仲間に入れてくれない?」
幸来未「…無理です。」
佐原「なんで?いつも同じ棒だと飽きない?」
幸来未「そういうのじゃなくて…」
佐原「俺、結構褒められるの。分かるでしょ?」
と言って佐原さんは私の背中に自分の腐ったジャーキーを擦り付けてきた。
幸来未「やめてください…。」
佐原「じゃあ今日だけ。ね?」
幸来未「いやで…」
私が他のお客さんを無視して佐原さんを跳ね除けようとカウンターの縁を持って力を込めた瞬間、あのカクテルの雨の匂いが私の背後からした。
佐原「…は?」
「ここ、ハプバーじゃないですよ。この店から1番近いのはまっすぐ歩いて2つ目の角を左に曲がった所にある龍吉ビル8階です。」
と、佐原さんの背後から低く落ち着いた声の女性が静まり返った空間で空のカクテルグラスを持ち、雨に降られた佐原さんに声をかけていた。
「見られながらしたいならそれ相応の場所でお金を払ってしましょうよ。そういう街なんですから。」
佐原「…お姉さん、何したか分かってんの?」
「ん?あなたの腰使いで私が転びそうになってカクテルを零したことですか?」
佐原「あー…、もういい。じゃあね。」
と言って佐原さんはお金を払わず私を置いて店を出て行った。
するとお店の賑わいはまた戻り、私を助けてくれたお姉さんがカクテルのおかわりをした。
私はそのお姉さんの横顔を見て、初めてこのBARに来たことを思い出した。
幸来未「今日もこの前も助けてくれてありがとうございます。」
私の背中に落ちてしまった雨をおしぼりで拭いてくれるシンデレラお姉さんに私は頭を下げてお礼を言う。
「あの人、いつもお店の雰囲気ぶち壊してたから。あなたがー…、5人目?」
と、お姉さんはあのカクテルを貰いながらあの日いたバーテンダーさんに質問した。
「あの日は3人目で、今日だと8人目です。」
「だって。」
幸来未「…クズ過ぎ。」
「そうだね。あなたの名前は?」
と、お姉さんは私に薄暗がりが映える琥珀色をした目を飛行船のネオンで少し光らせながら笑顔で名前を聞いてきた。
幸来未「西宮 幸来未です。お姉さんは?」
「大江 李代。ちなみにあっちは凛太郎。」
凛太郎「すみません。店がばたついていてお客様のピンチに気づけませんでした。」
幸来未「…いえ。」
凛太郎「そちらの代金はいらないので、1杯ご馳走させてください。」
幸来未「え?」
李代「じゃあ私も。」
凛太郎「…そうですね。厄払いしてくれたのでご馳走します。」
李代「やったね。幸来未ちゃんはなにがいい?」
…思ったよりこのお姉さん、フレンドリーだな。
私は憧れがたっぷり詰まったお姉さんとご馳走してもらったシンデレラを飲み、オレンジの小雨で汚れた服を着替えさせると意見を押し通す李代さんに連れられマンションの一室に通された。
環流 虹向/23:48
けれど、今日はバイト先に人がいないと言われて休みを返上してゴールデンタイム時の4時間のシフトをぶち込まれた。
しかも、少し前に新人を食い過ぎた佐原さんが別店舗からヘルプに来てる始末。
こんな奴に頭を使わずさっさとやることやって帰ろうと、できる範囲の締め作業をしながらホールを回していると佐原さんが私に手招きしていたのでキッチンに入り、要件を聞きに行く。
幸来未「はい?」
佐原「この後、呑みに行こうよ。」
…こりねぇ奴だな。
やるならもっと丁寧にやれよ。
こっちはすぐに新人が辞めていくし、元彼も辞めたから夏のクソ忙しい時期に3人で店を回すって言う無謀チャレンジもしたんだけど。
幸来未「明日朝早いんで。」
私は気を使う必要もなくなった元バイトリーダーを背にホールへ戻ろうとすると、腕を掴まれて止められてしまう。
佐原「大事な話。」
幸来未「…なんですか。いまここで言ってくださいよ。」
佐原「ここちゃんがいいなら俺はいいんだけど、弟さんは大丈夫?」
幸来未「え?」
佐原「姉弟が熱烈にキスし合うのは家族の教え?」
と、佐原さんは賑わうお店のキッチンでとても低く小さい声で私に耳打ちした。
幸来未「…呑みに行きます。」
佐原「うん。俺も同じ時間に上がるから終電には間に合うよ。」
21時に終わるから終電までの3時間でケリをつけようって魂胆か。
まあ、姉弟じゃないこと伝えればすぐに帰れるだろうし、あのBARに行けばなんとかなるかもしれない。
私は佐原さんに飛行船があるBARを指定して、仕事上がりに1杯呑みに行ったけれどとても混雑していて全席埋まっていた。
佐原「残念。じゃあ俺のオススメでもいい?」
…なんか嫌な感じする。
2回もホテル連行に失敗してて、今日は私の弱みを握ってる佐原さんが似たようなお店に行くわけがない。
幸来未「5分だけ。立ちでいいのでここで呑みましょう?」
私は足早に人混みの隙間に入り、佐々木さんか紀莉哉さんがいないかバーカウンターを覗いてみるけどあいにく2人はいなかった。
佐原「アイスティー2つ。」
と、佐原さんはカウンターと自分の体で私を囲い、身動きを取れなくした。
私は背中に当たる佐原さんの気味の悪い体温を感じながら度数が強いカクテルを佐原さんにストローを差し出され呑まされる。
佐原「ここちゃんの性癖は弟さんなの?」
…気持ち悪い。
これ以上私の耳元で喋らないでもらいたい。
幸来未「あの子、弟じゃないんです。」
佐原「…まあ、顔が全く似てないもんね。」
思ってたより簡単に姉弟じゃないことは分かってもらえた。
けど、この後になんて関係性を伝えればいいんだろう。
佐原「じゃあ彼氏?」
…って言ってもいいけど、そのデマが時音が将来売れた時の足枷になったら嫌だ。
幸来未「…違います。」
佐原「んー…、友達?」
幸来未「知り合い…?」
佐原「なんで疑問形?」
そう言って佐原さんは私のポロシャツワンピを他の人に見えないようにたくし上げ、片手でお腹を撫であげてながら胸を揉んできた。
佐原「セフレだよね?俺も仲間に入れてくれない?」
幸来未「…無理です。」
佐原「なんで?いつも同じ棒だと飽きない?」
幸来未「そういうのじゃなくて…」
佐原「俺、結構褒められるの。分かるでしょ?」
と言って佐原さんは私の背中に自分の腐ったジャーキーを擦り付けてきた。
幸来未「やめてください…。」
佐原「じゃあ今日だけ。ね?」
幸来未「いやで…」
私が他のお客さんを無視して佐原さんを跳ね除けようとカウンターの縁を持って力を込めた瞬間、あのカクテルの雨の匂いが私の背後からした。
佐原「…は?」
「ここ、ハプバーじゃないですよ。この店から1番近いのはまっすぐ歩いて2つ目の角を左に曲がった所にある龍吉ビル8階です。」
と、佐原さんの背後から低く落ち着いた声の女性が静まり返った空間で空のカクテルグラスを持ち、雨に降られた佐原さんに声をかけていた。
「見られながらしたいならそれ相応の場所でお金を払ってしましょうよ。そういう街なんですから。」
佐原「…お姉さん、何したか分かってんの?」
「ん?あなたの腰使いで私が転びそうになってカクテルを零したことですか?」
佐原「あー…、もういい。じゃあね。」
と言って佐原さんはお金を払わず私を置いて店を出て行った。
するとお店の賑わいはまた戻り、私を助けてくれたお姉さんがカクテルのおかわりをした。
私はそのお姉さんの横顔を見て、初めてこのBARに来たことを思い出した。
幸来未「今日もこの前も助けてくれてありがとうございます。」
私の背中に落ちてしまった雨をおしぼりで拭いてくれるシンデレラお姉さんに私は頭を下げてお礼を言う。
「あの人、いつもお店の雰囲気ぶち壊してたから。あなたがー…、5人目?」
と、お姉さんはあのカクテルを貰いながらあの日いたバーテンダーさんに質問した。
「あの日は3人目で、今日だと8人目です。」
「だって。」
幸来未「…クズ過ぎ。」
「そうだね。あなたの名前は?」
と、お姉さんは私に薄暗がりが映える琥珀色をした目を飛行船のネオンで少し光らせながら笑顔で名前を聞いてきた。
幸来未「西宮 幸来未です。お姉さんは?」
「大江 李代。ちなみにあっちは凛太郎。」
凛太郎「すみません。店がばたついていてお客様のピンチに気づけませんでした。」
幸来未「…いえ。」
凛太郎「そちらの代金はいらないので、1杯ご馳走させてください。」
幸来未「え?」
李代「じゃあ私も。」
凛太郎「…そうですね。厄払いしてくれたのでご馳走します。」
李代「やったね。幸来未ちゃんはなにがいい?」
…思ったよりこのお姉さん、フレンドリーだな。
私は憧れがたっぷり詰まったお姉さんとご馳走してもらったシンデレラを飲み、オレンジの小雨で汚れた服を着替えさせると意見を押し通す李代さんに連れられマンションの一室に通された。
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