35 / 36
A.D.
聖夜
しおりを挟む
この間から耶月さんの嫌がらせがとても多くなって、今度はクリスマスに招待客を30人近く呼んでパーティーをすると開催日の2週間前に私に伝えてきた。
しかも、会場はこのマンション以外。
ケータリングはなし。
ひとつのワゴン車で全ての仕入れはすること。
手伝いは私の“お友達”のみ。
それを扉越しに聞いていた由月さんも30人呼んでくると嫌がらせに参戦してきて合計60人のクリスマスパーティーを実質1人で準備しないといけなくなってしまった。
これって家政婦の範疇を超えてる気がするけど、桜さんから秘書としての給料は貰ってんだからそのぐらい働けと言われ飲むしかない。
この双子は多分、私のせいで桜さんが前のように働けなくなった腹いせに私に嫌がらせをしてこの家を出て行かせようとしてるっぽい。
だから唯一お手伝いをしてくれそうだった芙蓉さんを出張で海外に飛ばし、クリスマスパーティー当日の朝に帰るように設定した。
手伝ってくれる知り合いさえいない私はずっとそばにいてくれる桜さんに明日のオードブルの仕込みを一緒にしてもらっている。
私はメインになるお肉や魚を広いはずの作業台をどんどん狭めながら、桜さんが作ってくれたフィンガーフードをタッパーに入れて大目に食べても余る80人分のオードブルを用意する。
大体のものはパーティー会場のキッチンにあるウォーマーで温めることができるけど、焼き料理はさすがに出来立てがいいよね…。
そんなことを毎日のように頭で考えて当日のシュミレーションをしていると、桜さんの指先が疲れで震え始めた。
奏乃「ちょっと休憩しましょうか。」
桜「…ん。」
私は震える指先から爪楊枝を投げ捨てた桜さんの手を取り、目の前のリビングに行って一緒にソファーに座り夕方のニュースを見る。
奏乃「また耶月さん出てますね…。」
由月さんよりもクマが濃く、二重幅が広い耶月さんは外ではクマを隠し、血色がいいように色付きリップをつけてメイクをしている。
そんな外の耶月さんは医療者として社会のワンピースとしてまた社会貢献したらしく、今回は保護犬の施設に投資したということでそのインタビューを受けていた。
この前は被災された人たちに小さいながら家をプレゼントしていたり、闘病している小さな子どもたちに夢を見せるように病院全体を天の川のようにライトアップしたり、ホームレスの人たちでも働けて住める場所を作ったりと双葉グループのポジティブキャンペーンを積極的にやっている。
なんでこんなことを最近熱心にしているんだろうと思っていると、隣にいた桜さんが私の膝の上に頭を乗せ、手を取ると私の人差し指をおしゃぶり代わりに遊び始めた。
最近は料理の味が染み込んでいるっぽくてふやけるほど舐められるけど、今日はなぜか甘噛みを何度もしてくる。
奏乃「私は食べられませんよー。」
と、本気で食べられる前に指を抜こうとしていると突然私の視界が閉ざされた。
「飯。」
奏乃「ごめん、今から作る。」
私は世月くんに閉ざされた視界を開けるように手を掴むけれど、世月くんは目元から手を離してくれない。
世月「俺が作る。」
奏乃「…作れるの?」
世月「何食べたい?」
私は初めて晩ご飯に何を食べたいか聞かれ、困っているとゆっくりと視界が明るくなり目の前のTVが天気予報を伝えているのが見えた。
世月「ないの?」
奏乃「えっと…」
桜「かなの。」
と、突然桜さんが私の名前を呼ぶと私の首に抱きついて体を起こし、そのままキスをしてきた。
それに私は驚いて体が固まっていると後ろから手が飛び出してきてその手が桜さんを突き飛ばした。
世月「嘘つき。」
奏乃「危ないよ。」
私はソファーから落ちそうになった桜さんをギリギリ捕まえてソファーに座り直させる。
世月「俺は2人分しか作らないから。」
そう言って世月くんは一度も私と目を合わせずにキッチンに行き、大きな鍋でお湯を作り始めた。
きっとパスタでも作ってくれるんだろうと私はまた膝の上で寝ようとしている桜さんの体温を感じながら、パスタが茹で上がるまでの時間に仮眠をとるように目を瞑って2日ぶりの睡眠を取った。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
しかも、会場はこのマンション以外。
ケータリングはなし。
ひとつのワゴン車で全ての仕入れはすること。
手伝いは私の“お友達”のみ。
それを扉越しに聞いていた由月さんも30人呼んでくると嫌がらせに参戦してきて合計60人のクリスマスパーティーを実質1人で準備しないといけなくなってしまった。
これって家政婦の範疇を超えてる気がするけど、桜さんから秘書としての給料は貰ってんだからそのぐらい働けと言われ飲むしかない。
この双子は多分、私のせいで桜さんが前のように働けなくなった腹いせに私に嫌がらせをしてこの家を出て行かせようとしてるっぽい。
だから唯一お手伝いをしてくれそうだった芙蓉さんを出張で海外に飛ばし、クリスマスパーティー当日の朝に帰るように設定した。
手伝ってくれる知り合いさえいない私はずっとそばにいてくれる桜さんに明日のオードブルの仕込みを一緒にしてもらっている。
私はメインになるお肉や魚を広いはずの作業台をどんどん狭めながら、桜さんが作ってくれたフィンガーフードをタッパーに入れて大目に食べても余る80人分のオードブルを用意する。
大体のものはパーティー会場のキッチンにあるウォーマーで温めることができるけど、焼き料理はさすがに出来立てがいいよね…。
そんなことを毎日のように頭で考えて当日のシュミレーションをしていると、桜さんの指先が疲れで震え始めた。
奏乃「ちょっと休憩しましょうか。」
桜「…ん。」
私は震える指先から爪楊枝を投げ捨てた桜さんの手を取り、目の前のリビングに行って一緒にソファーに座り夕方のニュースを見る。
奏乃「また耶月さん出てますね…。」
由月さんよりもクマが濃く、二重幅が広い耶月さんは外ではクマを隠し、血色がいいように色付きリップをつけてメイクをしている。
そんな外の耶月さんは医療者として社会のワンピースとしてまた社会貢献したらしく、今回は保護犬の施設に投資したということでそのインタビューを受けていた。
この前は被災された人たちに小さいながら家をプレゼントしていたり、闘病している小さな子どもたちに夢を見せるように病院全体を天の川のようにライトアップしたり、ホームレスの人たちでも働けて住める場所を作ったりと双葉グループのポジティブキャンペーンを積極的にやっている。
なんでこんなことを最近熱心にしているんだろうと思っていると、隣にいた桜さんが私の膝の上に頭を乗せ、手を取ると私の人差し指をおしゃぶり代わりに遊び始めた。
最近は料理の味が染み込んでいるっぽくてふやけるほど舐められるけど、今日はなぜか甘噛みを何度もしてくる。
奏乃「私は食べられませんよー。」
と、本気で食べられる前に指を抜こうとしていると突然私の視界が閉ざされた。
「飯。」
奏乃「ごめん、今から作る。」
私は世月くんに閉ざされた視界を開けるように手を掴むけれど、世月くんは目元から手を離してくれない。
世月「俺が作る。」
奏乃「…作れるの?」
世月「何食べたい?」
私は初めて晩ご飯に何を食べたいか聞かれ、困っているとゆっくりと視界が明るくなり目の前のTVが天気予報を伝えているのが見えた。
世月「ないの?」
奏乃「えっと…」
桜「かなの。」
と、突然桜さんが私の名前を呼ぶと私の首に抱きついて体を起こし、そのままキスをしてきた。
それに私は驚いて体が固まっていると後ろから手が飛び出してきてその手が桜さんを突き飛ばした。
世月「嘘つき。」
奏乃「危ないよ。」
私はソファーから落ちそうになった桜さんをギリギリ捕まえてソファーに座り直させる。
世月「俺は2人分しか作らないから。」
そう言って世月くんは一度も私と目を合わせずにキッチンに行き、大きな鍋でお湯を作り始めた。
きっとパスタでも作ってくれるんだろうと私はまた膝の上で寝ようとしている桜さんの体温を感じながら、パスタが茹で上がるまでの時間に仮眠をとるように目を瞑って2日ぶりの睡眠を取った。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
エンディングノート
環流 虹向
恋愛
出会って、付き合って、別れるまでのエンディングノート
[主人公]采原 明人/さいはら めりは、社会人2年目で毎日を多忙に過ごし癒しゼロ。
けれど、そんな明人にオアシスが現れた。
2021/09/30 完結しましたが改めて校正したいので一旦全話非公開にして、また順次投稿します。
11/27から19:00に更新していきます。
君と出会って
君と付き合って
君とお別れするまでが綴られている
私が書いた、もぐもぐノート
君がいる、あの時に戻りたいと思った時は
いつもこのノートに綴られたごはんを食べるんだ
そしたらあの日、君と食べたごはんが
1番美味しかったって思い出せるから
だから、このノートにはもうペンを走らせない
これは君と私のエンディングノートだから
他の人とのもぐもぐ日記はいらないの
だけど、また
始められるように戻ってきてほしいな
私はまだ、君をあの街で待ってるよ
君のじゃない、別のお家で
君じゃない人と一緒に
Ending Song
君がドアを閉めた後 / back number
転載防止のため、毎話末に[環流 虹向/エンディングノート]をつけています。
一なつの恋
環流 虹向
恋愛
一夏の恋日記。
主人公の日向 一/ひゅうが ひとは、親の金で美術専門学校に行き一人暮らしで自由自適に過ごし遊び三昧。
そんな中、あるBARで出会った“姐さん”に恋に落ちて、あり合わせの言葉でいつも遊び相手の女のように落とそうとするけれど、なかなか落ちてくれないし、振り向いてもくれない。
しかし、テスト明けの自分が開いたクラス会で、“姐さん”はクラスメイトの彼方 夏といい雰囲気になっていて、主人公の日向 一は思い切ってある行動に出る。
ひとなつの恋におちていくよ。
もう一度、あの景色を見るために。
あの日に、あの時に、あの自分がああしていれば
今の自分が好きになれたはずの主人公。
自分が好きな人たちも、好きをくれる人たちも、そばに居てもらうために今日もまた嘘をつき、愛も視線も自分に向くよう必死にもがく。
批判されると分かっていても、愛と視線が無いと自分が無くなってしまいそうになるから空っぽな好意をいつも渡してしまう。
そして、今日もまた
どうでもいい人と恋人ごっこをして愛を偽り、
自分への唯一無二な一途な愛を探し求めて
本当の自分を隠し、偽り、見繕って日々を過ごしていく。
1話ずつ、オススメの曲を紹介しています。
Spotifyにプレイリスト作りました。
https://open.spotify.com/playlist/6lpWCCAVpSkdOTDpTRBbwF?si=idDCM1uASneeoj6tr4tkIg&dl_branch=1
サイドストーリーの«ひと夏の恋»もあります!
・カクヨム
・小説家になろう
・魔法のiらんど
・ノベルアップ+ にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる