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B.C.
愁死
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自分の右手にある人差し指が自分よりも細い指に揉まれてることに気づいて目が覚めると、隣には不機嫌な世月くんが私と一緒にベッドで寝そべっていた。
奏乃「…今何時?」
ぼやぼやとした意識の中、私は体を動かそうと力を入れたけれど何故か全身に力が入らず動かない。
世月「4時。あとちょっとで朝。」
やってしまった…。
この家でいられる最低条件の家政婦としての働きをすっぽかして半日以上寝てしまったらしい。
私は1人、この家から追い出される覚悟をしていると世月くんが私の右手を強く握った。
世月「俺のお気に入りはみんな死ぬ。なんで?」
奏乃「…寿命?」
世月「殺される。なんで?」
知らないよと言いたいところだけど、答えを求めてくる世月くんに世話係の私はちゃんと答えを出さないといけないと思い、たくさん考えるけど全く答えが浮かばない。
世月「最初はだいふく。次は友達だった奴らとお母さんだった奴ら。みんな死んだ。」
奏乃「いっぱいお気に入りがあったんだね。」
世月「なのにみんな消えてった。」
と、世月くんは由月さんとお揃いの切れ長の目をして寂しさを私の目から逸らす。
奏乃「消えちゃう原因は知ってるの?」
私は世月くんの寂しさを埋めたくて手を握り返してあげたかったけれど、やっぱり力が入らず何もしてあげられない。
世月「ひまたんは俺のこと独り占めしたいんだって。」
そう言って世月くんは薄く開けていた目を閉じ、現実に蓋をした。
奏乃「毎日独占してるし、あれで足りないなら一緒に住めばいいのに。」
世月「俺が嫌なの。だいふく殺したの分かってから一緒に住むのやめた。」
奏乃「…だいふくは友達?」
世月「犬だったけど友達。」
世月くんの部屋に飾られてあるパグのぬいぐるみたちはそのだいふくの生まれ変わりなのかなと、私は目だけで見慣れた部屋をぐるりと見回すとベッド脇には懐かしい機械があり、その管が私の腕に繋がれている事に気づく。
それは死んでしまったおばあちゃんが定期的に繋いでいた血を綺麗にする機械でこれのおかげで今の私はまだ生きていることを知った。
世月「奏乃みたいに急にぶっ倒れて泡吹いて痙攣してた。死ぬかと思った。」
と、世月くんは私の右腕に抱きつき、蓋をしているまぶたをさらに覆うように私の肩に顔を埋める。
世月「睦が暇してたから助かったけど、だいふくの時は救急車を呼ぶ頭さえなかったから殺しちゃった。」
奏乃「…世月くんのせいじゃないよ。」
世月「けど、何も出来なかったのは事実でだいふくがいないのが現実。俺もみんなとだいふくと一緒に遊びたい。」
少し鼻をすする世月くんはさらに力強く私の腕に抱きついて、体を密着させてくるので若干血の巡りが悪くなるのを感じる。
奏乃「明日…、っていうか今日か…。授業サボって遊びにいく?」
私は学生時代ぶりにその言葉を口にすると世月くんは声を発さないまま頷いて頭だけで返事をした。
奏乃「じゃあ、私の体が動くようになった頃に誰にもバレないように逃げよ。」
私は少しだけ動かせるようになった指先で世月くんの手を握り返しながらもう一度だけ眠りについて体力を温存する事にした。
環流 虹向/UNDEAD・L・L・IVE
奏乃「…今何時?」
ぼやぼやとした意識の中、私は体を動かそうと力を入れたけれど何故か全身に力が入らず動かない。
世月「4時。あとちょっとで朝。」
やってしまった…。
この家でいられる最低条件の家政婦としての働きをすっぽかして半日以上寝てしまったらしい。
私は1人、この家から追い出される覚悟をしていると世月くんが私の右手を強く握った。
世月「俺のお気に入りはみんな死ぬ。なんで?」
奏乃「…寿命?」
世月「殺される。なんで?」
知らないよと言いたいところだけど、答えを求めてくる世月くんに世話係の私はちゃんと答えを出さないといけないと思い、たくさん考えるけど全く答えが浮かばない。
世月「最初はだいふく。次は友達だった奴らとお母さんだった奴ら。みんな死んだ。」
奏乃「いっぱいお気に入りがあったんだね。」
世月「なのにみんな消えてった。」
と、世月くんは由月さんとお揃いの切れ長の目をして寂しさを私の目から逸らす。
奏乃「消えちゃう原因は知ってるの?」
私は世月くんの寂しさを埋めたくて手を握り返してあげたかったけれど、やっぱり力が入らず何もしてあげられない。
世月「ひまたんは俺のこと独り占めしたいんだって。」
そう言って世月くんは薄く開けていた目を閉じ、現実に蓋をした。
奏乃「毎日独占してるし、あれで足りないなら一緒に住めばいいのに。」
世月「俺が嫌なの。だいふく殺したの分かってから一緒に住むのやめた。」
奏乃「…だいふくは友達?」
世月「犬だったけど友達。」
世月くんの部屋に飾られてあるパグのぬいぐるみたちはそのだいふくの生まれ変わりなのかなと、私は目だけで見慣れた部屋をぐるりと見回すとベッド脇には懐かしい機械があり、その管が私の腕に繋がれている事に気づく。
それは死んでしまったおばあちゃんが定期的に繋いでいた血を綺麗にする機械でこれのおかげで今の私はまだ生きていることを知った。
世月「奏乃みたいに急にぶっ倒れて泡吹いて痙攣してた。死ぬかと思った。」
と、世月くんは私の右腕に抱きつき、蓋をしているまぶたをさらに覆うように私の肩に顔を埋める。
世月「睦が暇してたから助かったけど、だいふくの時は救急車を呼ぶ頭さえなかったから殺しちゃった。」
奏乃「…世月くんのせいじゃないよ。」
世月「けど、何も出来なかったのは事実でだいふくがいないのが現実。俺もみんなとだいふくと一緒に遊びたい。」
少し鼻をすする世月くんはさらに力強く私の腕に抱きついて、体を密着させてくるので若干血の巡りが悪くなるのを感じる。
奏乃「明日…、っていうか今日か…。授業サボって遊びにいく?」
私は学生時代ぶりにその言葉を口にすると世月くんは声を発さないまま頷いて頭だけで返事をした。
奏乃「じゃあ、私の体が動くようになった頃に誰にもバレないように逃げよ。」
私は少しだけ動かせるようになった指先で世月くんの手を握り返しながらもう一度だけ眠りについて体力を温存する事にした。
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