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第09話 犬の会、出禁になる女
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ベラリアもまた癖のある女性だった。
――どうしてこんな人ばかりなんだろう――
アナベルはルーシュの友人を見るたびにそう感じるが、ルーシュの友人の中でベラリアだけはアナベルも知っていた。
★~★
アナベルがオオカミのリカルドを世話をし始めて間もない頃、年齢で言えば7歳頃。
どうやって躾をすれば良いか誰に聞いても判らず、藁をも縋る思いで「間違われるくらい似ているならヒントがあるかも?」と「犬の会」に出向いた。
リカルドを見た犬飼いさん達は声を揃えて驚く。
「マジルカオオカミか!初めて見たよ!」
オオカミは群れで生活をする生き物だがマジルカオオカミは変わっていて子オオカミが親の後をついてくるようになると親オオカミは何処かに行ってしまい、子オオカミは名前の由来通り魔力を発現させて過酷な中で生き抜いていくと考えられていた。
王太子サディスがリカルドを見つけたのは、親オオカミがいなくなりタヌキやウサギの巣をリカルドが狙っていた途中だったのかも知れない。
オオカミらしくないオオカミで基本が単独行動。オスは交尾の時だけメスと数日暮らすけれど何処かに行ってしまう。メスは出産を終えてトテトテと子オオカミが歩けるようになると、これまた何処かに行ってしまう。
姿を見るのも初めてという犬飼いたち。
それもそのはず、マジルカオオカミは魔力を発現させると周囲に擬態するので目の前にいても見つけられない事が多い。擬態は木や岩に限らず水や空気にすら擬態をするのだから。
何かヒントがあればと来たものの、誰もが「判らないな」と首を横に振る。
王太子サディスから預かっていると言えば下手な事は言えない。アドヴァイスでリカルドが命を落とす事があれば責任問題になって来る。
「もう帰ろうかな」と呟いた時、声を掛けてきたのがベラリア。
「あたしはね。チャチャワを買ってもらったの。ここに来てる中で一番小さいけど一番賢いの!あなたのリカルドも可愛いわ。ね?撫でてもいい?」
「うん!リカルドは吠えないし嚙みつかないの。大丈夫よ」
リカルドの頭や背をベラリアが撫でてもピクリともしないリカルド。
が、その毛はラビットファーを連想させるほどに柔らかくフカフカ。
「ふわふわだぁ。気持ちいい」
その日から犬の会で見かける度に声を掛けてくるベラリア。
アナベルとしては回数にして両手で余る回数。
犬の会で話をしただけで「友達」という感覚ではなかった。
友達になっても良かったのだ。
ベラリアと会った犬の会とは別の会で聞いた「助言」さえなければ。
ベラリアは犬もだが生き物を「アクセサリー」として考えているので、犬の会は幾つかあるが殆どから「出入禁止」とされていた事実を聞かされた。
躾だと言い、歩けなくなった犬や猫、飛べなくなった鳥は数知れず。
幼いアナベルにベラリアの所業はまるで悪魔の仕業にも思えた。
恐ろしくなりアナベルは街でベラリアを見かけても距離を取るようにはしていた。
のだが・・・。
アナベルが返す言葉を失うほどのベラリアとルーシュの関係を知ったのはベラリアとの出会いより遅れる事8年後の15歳の誕生日が過ぎた頃。デヴュタントの直前だった。
その数日前に開かれた茶会で3年半ぶりに再会したアナベルにベラリアは擦り寄って来た。翌日、約束もしていないのに屋敷にやって来たのである。
辻馬車を乗り継ぎ、歩いて来たというベラリアを追い返す事も出来ず、茶を振舞っているところに「近くまで来たから」とルーシュも連絡も無しに訪れた。
「やだ。どうしてここにルーがいるの?」
「それはこっちの台詞!なんでベラがここにいるんだ?」
アナベルがいる場で顔を合わせたのが初めてだった2人。
10歳になる前から趣味を通じて付き合いがあったと言う事をアナベルも初めて知った。
アナベルを愛称で呼ばないし、呼ばせないルーシュなのに、愛称で呼び合う仲の友人がいる事も初めて知った。
「犬の会で知り合ったの。ルーシュはベラリア様を御存じだったのね」
「犬の会?あぁそう言えばそんなの入ってたな」
「やだぁ。昔の話よ。ところでどうして?まさか婚約者ってアナベルの事だったの?」
「名前を言ってなかったっけ。まぁ名前を知ったところでアナベルだからな」
15歳のデヴュタントを終えると周囲はもう子供ではなく大人とみなす。
2人はそれからチームを組んで登山に泊りがけで出掛けていると知ったのだった。
ルーシュとアナベルは2歳差。つまり2年半以上この事実をアナベルは知らなかった。
山登りを知らなかったのではなく、ベラリアの趣味も山登りでルーシュのチームにいるという事を。
2人きりではないとしても・・・と思ったが、あっけらかんとしているベラリアはアナベルが思わず手にした茶器を落としそうになる言葉を吐いた。
「途中でテントを張るんだけどルーって虫が怖いとかで、いつも私のテントに来るのよ」
「は?」アナベルは驚いた。
「失礼だな。虫が怖いのは仕方ないだろう?ベラだって僕の体が温かいから重宝すると言ってるじゃないか」
「は?」アナベルは再度驚いた。
「いい加減さぁ。寝袋新しいの買いなさいよ。いつも私の寝袋に入って来るんだから!」
「いいじゃないか。減るものじゃないし。ベラの寝袋は大きいから2人で丁度じゃないか」
「ルーがいつも上になるから重いのよ」
隠す事もない事柄かも知れないがアナベルは理解が追いつかず、思考停止した事に問題はないはずだ。
アナベルに知られたからではないだろうがベラリアとルーシュの関係は大胆になった。カトゥル侯爵家には「老婆心ながら」と密告のような真似をする者も訪れるようになる。
余りにもそれが頻繁なのでアナベルもルーシュに注意はした。
だが、「如何なものか」に特化した事柄を問い質しても「たまたま会っただけ」「友人だよ」「気にし過ぎ。むしろそう考えることの方が失礼だよ」と、流される。
ベラリアはと言えば茶会などで会った時に、ベラリアの方から「先日、街で会ったわ」とルーシュと買い物などを楽しんだことを先に言ってくる。その後は「どうしても見たかった歌劇なの!」とお気に入りの演者の話をするし、会った事を隠すでもなく、はぐらかすでもないので問い詰める事も出来なかった。
ルーシュの「友人」なだけあってベラリアもまた人の話を聞かない自己中心な人間だった。ただ、このベラリアに関しては、不意にやって来ては勝手にプライベートルームに迷ったふりをして入り込み、品を持ち帰ったりもする事から、カトゥル侯爵家からは子爵家に抗議が入っていた。
手癖が悪いのかと思えば微妙に違った。
ルーシュもベラリアも登山中は用具を共有する。勿論仲間も。
その感覚でルーシュの婚約者なのだから、アナベルの持ち物も自由にして問題ない。
それがベラリアの感覚で、ルーシュも「何処に問題が?結婚すれば共有財産なのに」とあっけらかん。
ルーシュとベラリアの思考や常識は一般の感覚を超える所にあった。
――どうしてこんな人ばかりなんだろう――
アナベルはルーシュの友人を見るたびにそう感じるが、ルーシュの友人の中でベラリアだけはアナベルも知っていた。
★~★
アナベルがオオカミのリカルドを世話をし始めて間もない頃、年齢で言えば7歳頃。
どうやって躾をすれば良いか誰に聞いても判らず、藁をも縋る思いで「間違われるくらい似ているならヒントがあるかも?」と「犬の会」に出向いた。
リカルドを見た犬飼いさん達は声を揃えて驚く。
「マジルカオオカミか!初めて見たよ!」
オオカミは群れで生活をする生き物だがマジルカオオカミは変わっていて子オオカミが親の後をついてくるようになると親オオカミは何処かに行ってしまい、子オオカミは名前の由来通り魔力を発現させて過酷な中で生き抜いていくと考えられていた。
王太子サディスがリカルドを見つけたのは、親オオカミがいなくなりタヌキやウサギの巣をリカルドが狙っていた途中だったのかも知れない。
オオカミらしくないオオカミで基本が単独行動。オスは交尾の時だけメスと数日暮らすけれど何処かに行ってしまう。メスは出産を終えてトテトテと子オオカミが歩けるようになると、これまた何処かに行ってしまう。
姿を見るのも初めてという犬飼いたち。
それもそのはず、マジルカオオカミは魔力を発現させると周囲に擬態するので目の前にいても見つけられない事が多い。擬態は木や岩に限らず水や空気にすら擬態をするのだから。
何かヒントがあればと来たものの、誰もが「判らないな」と首を横に振る。
王太子サディスから預かっていると言えば下手な事は言えない。アドヴァイスでリカルドが命を落とす事があれば責任問題になって来る。
「もう帰ろうかな」と呟いた時、声を掛けてきたのがベラリア。
「あたしはね。チャチャワを買ってもらったの。ここに来てる中で一番小さいけど一番賢いの!あなたのリカルドも可愛いわ。ね?撫でてもいい?」
「うん!リカルドは吠えないし嚙みつかないの。大丈夫よ」
リカルドの頭や背をベラリアが撫でてもピクリともしないリカルド。
が、その毛はラビットファーを連想させるほどに柔らかくフカフカ。
「ふわふわだぁ。気持ちいい」
その日から犬の会で見かける度に声を掛けてくるベラリア。
アナベルとしては回数にして両手で余る回数。
犬の会で話をしただけで「友達」という感覚ではなかった。
友達になっても良かったのだ。
ベラリアと会った犬の会とは別の会で聞いた「助言」さえなければ。
ベラリアは犬もだが生き物を「アクセサリー」として考えているので、犬の会は幾つかあるが殆どから「出入禁止」とされていた事実を聞かされた。
躾だと言い、歩けなくなった犬や猫、飛べなくなった鳥は数知れず。
幼いアナベルにベラリアの所業はまるで悪魔の仕業にも思えた。
恐ろしくなりアナベルは街でベラリアを見かけても距離を取るようにはしていた。
のだが・・・。
アナベルが返す言葉を失うほどのベラリアとルーシュの関係を知ったのはベラリアとの出会いより遅れる事8年後の15歳の誕生日が過ぎた頃。デヴュタントの直前だった。
その数日前に開かれた茶会で3年半ぶりに再会したアナベルにベラリアは擦り寄って来た。翌日、約束もしていないのに屋敷にやって来たのである。
辻馬車を乗り継ぎ、歩いて来たというベラリアを追い返す事も出来ず、茶を振舞っているところに「近くまで来たから」とルーシュも連絡も無しに訪れた。
「やだ。どうしてここにルーがいるの?」
「それはこっちの台詞!なんでベラがここにいるんだ?」
アナベルがいる場で顔を合わせたのが初めてだった2人。
10歳になる前から趣味を通じて付き合いがあったと言う事をアナベルも初めて知った。
アナベルを愛称で呼ばないし、呼ばせないルーシュなのに、愛称で呼び合う仲の友人がいる事も初めて知った。
「犬の会で知り合ったの。ルーシュはベラリア様を御存じだったのね」
「犬の会?あぁそう言えばそんなの入ってたな」
「やだぁ。昔の話よ。ところでどうして?まさか婚約者ってアナベルの事だったの?」
「名前を言ってなかったっけ。まぁ名前を知ったところでアナベルだからな」
15歳のデヴュタントを終えると周囲はもう子供ではなく大人とみなす。
2人はそれからチームを組んで登山に泊りがけで出掛けていると知ったのだった。
ルーシュとアナベルは2歳差。つまり2年半以上この事実をアナベルは知らなかった。
山登りを知らなかったのではなく、ベラリアの趣味も山登りでルーシュのチームにいるという事を。
2人きりではないとしても・・・と思ったが、あっけらかんとしているベラリアはアナベルが思わず手にした茶器を落としそうになる言葉を吐いた。
「途中でテントを張るんだけどルーって虫が怖いとかで、いつも私のテントに来るのよ」
「は?」アナベルは驚いた。
「失礼だな。虫が怖いのは仕方ないだろう?ベラだって僕の体が温かいから重宝すると言ってるじゃないか」
「は?」アナベルは再度驚いた。
「いい加減さぁ。寝袋新しいの買いなさいよ。いつも私の寝袋に入って来るんだから!」
「いいじゃないか。減るものじゃないし。ベラの寝袋は大きいから2人で丁度じゃないか」
「ルーがいつも上になるから重いのよ」
隠す事もない事柄かも知れないがアナベルは理解が追いつかず、思考停止した事に問題はないはずだ。
アナベルに知られたからではないだろうがベラリアとルーシュの関係は大胆になった。カトゥル侯爵家には「老婆心ながら」と密告のような真似をする者も訪れるようになる。
余りにもそれが頻繁なのでアナベルもルーシュに注意はした。
だが、「如何なものか」に特化した事柄を問い質しても「たまたま会っただけ」「友人だよ」「気にし過ぎ。むしろそう考えることの方が失礼だよ」と、流される。
ベラリアはと言えば茶会などで会った時に、ベラリアの方から「先日、街で会ったわ」とルーシュと買い物などを楽しんだことを先に言ってくる。その後は「どうしても見たかった歌劇なの!」とお気に入りの演者の話をするし、会った事を隠すでもなく、はぐらかすでもないので問い詰める事も出来なかった。
ルーシュの「友人」なだけあってベラリアもまた人の話を聞かない自己中心な人間だった。ただ、このベラリアに関しては、不意にやって来ては勝手にプライベートルームに迷ったふりをして入り込み、品を持ち帰ったりもする事から、カトゥル侯爵家からは子爵家に抗議が入っていた。
手癖が悪いのかと思えば微妙に違った。
ルーシュもベラリアも登山中は用具を共有する。勿論仲間も。
その感覚でルーシュの婚約者なのだから、アナベルの持ち物も自由にして問題ない。
それがベラリアの感覚で、ルーシュも「何処に問題が?結婚すれば共有財産なのに」とあっけらかん。
ルーシュとベラリアの思考や常識は一般の感覚を超える所にあった。
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