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第26話 シュバイツァーは吟じる
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あと少し、もう少し、シュバイツァーが待っていれば!
もう少しメリルが早く帰っていれば!
ニアミスだったメリルとシュバイツァー。神は非情である。
シュバイツァーはウェーブ君(但し名前は知らない)に驚き、逃げるようにして馬を走らせた。数日経っても思い出すと動悸がなかなか治まらない。
「どうされましたか?汗を流したのでは?」
「そ、そうなんだけどさ・・・ビックリし過ぎる事があってさ」
汗を流し、寒いのに窓を開けて寒風が部屋の中の暖気を根こそぎ外に運び出しているのにシュバイツァーは「トビラのムコウ」を思い出すと冷や汗が火災用消火装置のように吹き出してしまう。
「侍医に診てもらいますか?若年性の更年期障害かも。最近まともに食べない、寝ない、落ち着かないの3拍子でしたからね」
「暢気に食って寝て・・・落ち着いていられる訳ないだろうがっ!」
「心配なのは判ります。私だって心配です。ですがもう2カ月になろう――」
「だから何だよ!2か月だろうと2年だろうと、見つかるまで探す!当たり前だろう!」
従者は部下でもあり、シュバイツァーの幼馴染でもある。
何かに憑りつかれたように毎日メリルを探して廻るシュバイツァーは確かに若いので体力もあるが、それにも限界というものがある。
メリルの失踪を聞いてからはもう見る影もないくらいに痩せていて、食事もとらない。
従者だってメリルの事は心配なのだが、シュバイツァーの事も心配。
通常は1カ月も貴族の令嬢や子息が見つからない場合は諦める事がほとんど。
従者は付き合いが長い分、つい本音が出てしまいそうになりシュバイツァーの言葉で遮られ、反省した。
「判りました。では薬を飲んでください。食事をしていないのは事実。探すにしてもしっかり食べて、体力を付けねばなりません。先日出入りのアルバンが持ってきた薬に食欲が出る効能があるものがありましたので、持って参ります」
「薬は嫌いだ」
「またそんな事を!あのですね!季節は冬なんです!エンザフルルも流行る時期です。今、り患したら捜索どころじゃないでしょうがっ!」
「でも、薬は苦いから要らない。飯は食うよ。それでいいだろ。俺はエンザフルルで寝込んだ事はない」
「だ~め~です!お子ちゃまではないんですから。飲んで頂きます。あ、でもアルバンから仕入れている薬ですが、苦味とかエグ味がないそうですよ」
ジィィっと部下を見るシュバイツァーの心は「ホントか?」と半信半疑。
シュバイツァーの薬嫌いは今に始まった事ではなく、交戦後も傷口を綺麗に洗わずに隠してしまうので、化膿したり腫れあがったりする。
渋々飲む事にしたのだが、「最後の1粒です」と部下が持ってきた薬を目の前に出されても手が伸びない。
「アルバンが仕入れている薬師さんって面白い人なんでしょうかね」
「面白い?昔、大道芸人でもしてたとか?」
「いえいえ。はい。お薬です。開いてみればわかります」
水の入ったコップと一緒に丸薬が包まれた紙を「手に取るんだ!」と眼力で推す部下。
ガサガサと開いて最後の1粒をシュバイツァーはギュッと目を閉じてパクリと口に入れ、即座に水で流し込んだ。
「あ、薬!って感じの臭いがしないな・・・」
「でしょ?でね、効き目もこれまでの薬よりあるんですよ。だ・け・ど!発疹が出る者は少ない。何故だかわかります?」
「何故だろうな。判らん」
「混ぜ物が無くてほぼ薬草100%だからみたいですよ。で、この丸薬を包んでいる紙。これが面白いんです」
部下は皺くちゃになった丸薬を包んでいた紙をひらいて、手で丁寧に皺を伸ばした。
確かに何か描かれている。シュバイツァーは何処かで見たような気が・・・。
「ほら!面白いでしょう?」
シュバイツァーの目の前に皺を伸ばした紙を指で端を抓んでグイっと突き出してきた。
「ウワァァッァーッ!!」
紙に描かれていたのはウェーブ君のデッサン。
「ヨクキク」という声が多数の薬だったが、シュバイツァーは体内に残る水分が全放出!白目を剥いてヒクヒク。
汗が噴き出すそもそもの原因が再来したのだった。
部下は「あれ‥‥おかしいな?」と思ったが、直ぐに閃いてポン!1つ手を打った。
「あれ?出たのは食欲ではなく汗??使用の実感、感想は個人差がありますという小さな文字はこの事か!」
シュバイツァーは部下に心で吟じた。
――それ、あると思います!――
もう少しメリルが早く帰っていれば!
ニアミスだったメリルとシュバイツァー。神は非情である。
シュバイツァーはウェーブ君(但し名前は知らない)に驚き、逃げるようにして馬を走らせた。数日経っても思い出すと動悸がなかなか治まらない。
「どうされましたか?汗を流したのでは?」
「そ、そうなんだけどさ・・・ビックリし過ぎる事があってさ」
汗を流し、寒いのに窓を開けて寒風が部屋の中の暖気を根こそぎ外に運び出しているのにシュバイツァーは「トビラのムコウ」を思い出すと冷や汗が火災用消火装置のように吹き出してしまう。
「侍医に診てもらいますか?若年性の更年期障害かも。最近まともに食べない、寝ない、落ち着かないの3拍子でしたからね」
「暢気に食って寝て・・・落ち着いていられる訳ないだろうがっ!」
「心配なのは判ります。私だって心配です。ですがもう2カ月になろう――」
「だから何だよ!2か月だろうと2年だろうと、見つかるまで探す!当たり前だろう!」
従者は部下でもあり、シュバイツァーの幼馴染でもある。
何かに憑りつかれたように毎日メリルを探して廻るシュバイツァーは確かに若いので体力もあるが、それにも限界というものがある。
メリルの失踪を聞いてからはもう見る影もないくらいに痩せていて、食事もとらない。
従者だってメリルの事は心配なのだが、シュバイツァーの事も心配。
通常は1カ月も貴族の令嬢や子息が見つからない場合は諦める事がほとんど。
従者は付き合いが長い分、つい本音が出てしまいそうになりシュバイツァーの言葉で遮られ、反省した。
「判りました。では薬を飲んでください。食事をしていないのは事実。探すにしてもしっかり食べて、体力を付けねばなりません。先日出入りのアルバンが持ってきた薬に食欲が出る効能があるものがありましたので、持って参ります」
「薬は嫌いだ」
「またそんな事を!あのですね!季節は冬なんです!エンザフルルも流行る時期です。今、り患したら捜索どころじゃないでしょうがっ!」
「でも、薬は苦いから要らない。飯は食うよ。それでいいだろ。俺はエンザフルルで寝込んだ事はない」
「だ~め~です!お子ちゃまではないんですから。飲んで頂きます。あ、でもアルバンから仕入れている薬ですが、苦味とかエグ味がないそうですよ」
ジィィっと部下を見るシュバイツァーの心は「ホントか?」と半信半疑。
シュバイツァーの薬嫌いは今に始まった事ではなく、交戦後も傷口を綺麗に洗わずに隠してしまうので、化膿したり腫れあがったりする。
渋々飲む事にしたのだが、「最後の1粒です」と部下が持ってきた薬を目の前に出されても手が伸びない。
「アルバンが仕入れている薬師さんって面白い人なんでしょうかね」
「面白い?昔、大道芸人でもしてたとか?」
「いえいえ。はい。お薬です。開いてみればわかります」
水の入ったコップと一緒に丸薬が包まれた紙を「手に取るんだ!」と眼力で推す部下。
ガサガサと開いて最後の1粒をシュバイツァーはギュッと目を閉じてパクリと口に入れ、即座に水で流し込んだ。
「あ、薬!って感じの臭いがしないな・・・」
「でしょ?でね、効き目もこれまでの薬よりあるんですよ。だ・け・ど!発疹が出る者は少ない。何故だかわかります?」
「何故だろうな。判らん」
「混ぜ物が無くてほぼ薬草100%だからみたいですよ。で、この丸薬を包んでいる紙。これが面白いんです」
部下は皺くちゃになった丸薬を包んでいた紙をひらいて、手で丁寧に皺を伸ばした。
確かに何か描かれている。シュバイツァーは何処かで見たような気が・・・。
「ほら!面白いでしょう?」
シュバイツァーの目の前に皺を伸ばした紙を指で端を抓んでグイっと突き出してきた。
「ウワァァッァーッ!!」
紙に描かれていたのはウェーブ君のデッサン。
「ヨクキク」という声が多数の薬だったが、シュバイツァーは体内に残る水分が全放出!白目を剥いてヒクヒク。
汗が噴き出すそもそもの原因が再来したのだった。
部下は「あれ‥‥おかしいな?」と思ったが、直ぐに閃いてポン!1つ手を打った。
「あれ?出たのは食欲ではなく汗??使用の実感、感想は個人差がありますという小さな文字はこの事か!」
シュバイツァーは部下に心で吟じた。
――それ、あると思います!――
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