50 / 56
退去前日はバースディ!
しおりを挟む
ガランとした部屋です。もう荷物もトランクに入れていますし、明日の朝ベッドのシーツを片付けて朝食の洗い物を終われば出ていけそうね!っと預かった鍵2つをブラブラさせているエレイン。
屋根も窓もリスクーパー君のおかげでピカピカです。時刻はもう夕方。
そこにお約束通り、こわいお兄さんを従えてデビット君がやってきます。
コンコン
ノックされる玄関の扉。のぞき穴から見るとグラサンのお兄さんたちの中央に満面の笑みでデビット君。
チェーンを外して迎え入れます。
「エレイン!誕生日おめでとぉぉぉ!」
「まぁ、ありがとうございますわ」
大きな花束で顔が埋もれそうですが、その後ろのお兄さんたちがテーブルに大きなケーキやチキンを並べていきます。
ケーキに19本のろうそくを立てて火をつけて、お兄さんたちが歌うバースディソングは音域の低いバス仕様。
地を這うような低い声で祝われているのか呪われているのか判りません。
オマケにそれで輪唱するのでまるでどこかの亜空間に迷い込んだ気もします。
「トゥ・ユゥゥゥゥ~♪」
「さぁ!エレイン!炎を消して!!」
ヒクっとなるエレイン。どうやってこれを持ってきた!と言いたくなる程大きなケーキ。
いや、1段なのが救いなのか?しかし!直径が40センチほどある黒板仕様のコンパスの円ほどのケーキは一息で消せるものではありません。
「フッフゥゥゥゥゥゥ~」
「頑張って!あと10本だ!」
「クゥゥゥゥゥゥ~」
「あと7本だよ!」
「フッフッフゥゥ‥‥ゼェゼェ…息が‥‥続きませんわ…ハァハァ」
「エレイン…あと4本残っちゃったよ…こうしよう!えい!」
デビット君、蝋燭をさかさまにしてケーキにブスっとさして火を消します。
「ほら、こうすれば蝋燭の数は変わらないし火は消えた!」
その方法が良いか悪いかは別問題。デビット君はでっかいプレートもエレインの皿のケーキに盛りつけます。
「文字はねぇ、僕が書いたんだよ!さ、座って座って」
「なんですの?このプレート間違ってますわ」
「えっ?どこが間違ってる?おかしいな」
「MY heart ってデビット君の事でしょう?それにeとaが逆ですわ haertになってますわ」
「えっ?えっ?…うわほんとだ。仕方ないこうしよう」
パク
肝心のプレートをデビット君ぼりぼりと食べてしまいます。
怖いお兄さんたちの口が開いております。サングラスをしている事は唯一の救いでしょう。
夜間のサングラスの使い道が判った瞬間でもあります。
「ケーキもね!ばあやと一緒に作ったんだ。食べて食べて」
「あ、で、でも…プレートは?わたくしのでは?」
「うーん…今度間違ってないのを作るよ!」
「いえ、誕生日でもないのに何度もケーキは食べませんわ」
「じゃ…仕方ない。僕を食べればいいよ」
「‥‥‥‥」
怖いお兄さんたち、なぜか横を向いております。エレインも遠い目をしております。
デビット君、予定ではここで【そうね】って言ってもらってピンクな雰囲気になるはずだったのに予定が狂っています。
「あ、あれ?おかしいな‥‥アハハハ」
「デビット君、人は食べ物ではありませんわ。何時からわたくしを食人族と思っていましたの?」
「いや、そっちじゃなくてほら!好きなら色々あるじゃん?」
「あるじゃん?と言われましても…まぁケーキは美味しいですわ」
「ほんと!?うどん県から和三盆を取り寄せたんだ!」
「まぁ!あの希少な和三盆を?無駄な事しかしないデビット君が?」
チラチラと時計を気にしているデビット君。
怖いお兄さんたちとも一緒にたべる夕食。雰囲気は全く違いますが誰かと食べる夕食はやはり美味しいですね。
「姐さん、少し痩せられましたか」
「そうねぇ…2キロくらいは痩せたかしら?」
「えっ?そんな細かいところ…どうして判ったんだ??」
「まぁ、こんな過酷とも言える状況ですからなんとなく??」
「そうだったのか…抜かった。エレイン!もっと食うんだ!食べさせてやる!はいっ」
「え?自分で食べられますわ。それにそのお肉さっき半分パクってしてましたでしょう?」
折角話を振ったのにまたもや空振りなデビット君。動きに無駄が多いです。
夕食が終わってデビット君はエレインを外に誘います。
きっと付き人を外に出してしまうとエレインが怒ってしまうと考えております。
そこは無駄がありません。
外に出ると満天の星です。灯りは別邸の灯りしかありませんので外は真っ暗です。
こんな日に限って月も出ていないので山の静けさがより不気味にも思えます。
モジモジしながら、デビット君はプロポーズをするために立ち止まりポケットから小箱を手にします。
そっとその場に片膝をついて‥‥
「エレイン!大好きだ。絶対に苦労はさせない!結婚しよう」
そっと差し出す手‥‥あれ?あれ?
周りをブンブンと手を横に振ってみますが、エレインがいません!!
しかし見渡してもあたりは真っ暗で何も見えません!!
「エレイン!!エレインどこだ!?」
遠くのほうで声が聞こえます
「どうなさったの?」
手を繋いでいなかったので、デビット君が立ち止まりゴソゴソしている間にもエレインは進んでいます。
ポっとエレインが上空に照明弾を打ち上げた時、2人の距離は20mほど。
慌ててエレインの元に駆け寄ろうとするデビット君ですが、先日農夫の子供たちが悪戯で牧草をところどころ結んでいて見事に引っ掛かりズシャーっと転んでしまいます。
「あっ!!」
転んだ拍子に大事な小箱が手から離れてしまいます。
その場をバサバサ探すものの見当たりませんというか、暗くて見えません。
「どうなさったの?」
軍神の加護で夜目も利くエレインは迷う事無くデビット君の元にやってきます。
「ないんだ…探してぇ…」
「何がないの??」
「エレインにあげる…ハッ!!」
「わたくしに?何を??」
「えっと…ちょっと待って…急いで探す…うわぁぁ!暗いよ!!」
「お待ちになって」
上空に火魔法で照明弾を上げるエレイン。ごそごそ何かを探すデビット君を見ていましたがしゃがみ込みます。
しばらく探しますが、見つからない小箱。消えそうになると上空にエレインが照明弾を上げてくれます。
ダメだ。夜が明けてから探そうと半泣きでエレインの元に来たデビット君。
しゃがみ込んだエレインのスカートの裾に半分隠れているけれど間違いない!小箱だ!
「きゃぁ!何をなさいますの!」パチーン!!
小箱を取ろうとスカートの裾をピロっと捲ったデビット君。
小箱は手にしましたが、同時にエレインの怒りと頬にモミジもいただいてしまいました。
屋根も窓もリスクーパー君のおかげでピカピカです。時刻はもう夕方。
そこにお約束通り、こわいお兄さんを従えてデビット君がやってきます。
コンコン
ノックされる玄関の扉。のぞき穴から見るとグラサンのお兄さんたちの中央に満面の笑みでデビット君。
チェーンを外して迎え入れます。
「エレイン!誕生日おめでとぉぉぉ!」
「まぁ、ありがとうございますわ」
大きな花束で顔が埋もれそうですが、その後ろのお兄さんたちがテーブルに大きなケーキやチキンを並べていきます。
ケーキに19本のろうそくを立てて火をつけて、お兄さんたちが歌うバースディソングは音域の低いバス仕様。
地を這うような低い声で祝われているのか呪われているのか判りません。
オマケにそれで輪唱するのでまるでどこかの亜空間に迷い込んだ気もします。
「トゥ・ユゥゥゥゥ~♪」
「さぁ!エレイン!炎を消して!!」
ヒクっとなるエレイン。どうやってこれを持ってきた!と言いたくなる程大きなケーキ。
いや、1段なのが救いなのか?しかし!直径が40センチほどある黒板仕様のコンパスの円ほどのケーキは一息で消せるものではありません。
「フッフゥゥゥゥゥゥ~」
「頑張って!あと10本だ!」
「クゥゥゥゥゥゥ~」
「あと7本だよ!」
「フッフッフゥゥ‥‥ゼェゼェ…息が‥‥続きませんわ…ハァハァ」
「エレイン…あと4本残っちゃったよ…こうしよう!えい!」
デビット君、蝋燭をさかさまにしてケーキにブスっとさして火を消します。
「ほら、こうすれば蝋燭の数は変わらないし火は消えた!」
その方法が良いか悪いかは別問題。デビット君はでっかいプレートもエレインの皿のケーキに盛りつけます。
「文字はねぇ、僕が書いたんだよ!さ、座って座って」
「なんですの?このプレート間違ってますわ」
「えっ?どこが間違ってる?おかしいな」
「MY heart ってデビット君の事でしょう?それにeとaが逆ですわ haertになってますわ」
「えっ?えっ?…うわほんとだ。仕方ないこうしよう」
パク
肝心のプレートをデビット君ぼりぼりと食べてしまいます。
怖いお兄さんたちの口が開いております。サングラスをしている事は唯一の救いでしょう。
夜間のサングラスの使い道が判った瞬間でもあります。
「ケーキもね!ばあやと一緒に作ったんだ。食べて食べて」
「あ、で、でも…プレートは?わたくしのでは?」
「うーん…今度間違ってないのを作るよ!」
「いえ、誕生日でもないのに何度もケーキは食べませんわ」
「じゃ…仕方ない。僕を食べればいいよ」
「‥‥‥‥」
怖いお兄さんたち、なぜか横を向いております。エレインも遠い目をしております。
デビット君、予定ではここで【そうね】って言ってもらってピンクな雰囲気になるはずだったのに予定が狂っています。
「あ、あれ?おかしいな‥‥アハハハ」
「デビット君、人は食べ物ではありませんわ。何時からわたくしを食人族と思っていましたの?」
「いや、そっちじゃなくてほら!好きなら色々あるじゃん?」
「あるじゃん?と言われましても…まぁケーキは美味しいですわ」
「ほんと!?うどん県から和三盆を取り寄せたんだ!」
「まぁ!あの希少な和三盆を?無駄な事しかしないデビット君が?」
チラチラと時計を気にしているデビット君。
怖いお兄さんたちとも一緒にたべる夕食。雰囲気は全く違いますが誰かと食べる夕食はやはり美味しいですね。
「姐さん、少し痩せられましたか」
「そうねぇ…2キロくらいは痩せたかしら?」
「えっ?そんな細かいところ…どうして判ったんだ??」
「まぁ、こんな過酷とも言える状況ですからなんとなく??」
「そうだったのか…抜かった。エレイン!もっと食うんだ!食べさせてやる!はいっ」
「え?自分で食べられますわ。それにそのお肉さっき半分パクってしてましたでしょう?」
折角話を振ったのにまたもや空振りなデビット君。動きに無駄が多いです。
夕食が終わってデビット君はエレインを外に誘います。
きっと付き人を外に出してしまうとエレインが怒ってしまうと考えております。
そこは無駄がありません。
外に出ると満天の星です。灯りは別邸の灯りしかありませんので外は真っ暗です。
こんな日に限って月も出ていないので山の静けさがより不気味にも思えます。
モジモジしながら、デビット君はプロポーズをするために立ち止まりポケットから小箱を手にします。
そっとその場に片膝をついて‥‥
「エレイン!大好きだ。絶対に苦労はさせない!結婚しよう」
そっと差し出す手‥‥あれ?あれ?
周りをブンブンと手を横に振ってみますが、エレインがいません!!
しかし見渡してもあたりは真っ暗で何も見えません!!
「エレイン!!エレインどこだ!?」
遠くのほうで声が聞こえます
「どうなさったの?」
手を繋いでいなかったので、デビット君が立ち止まりゴソゴソしている間にもエレインは進んでいます。
ポっとエレインが上空に照明弾を打ち上げた時、2人の距離は20mほど。
慌ててエレインの元に駆け寄ろうとするデビット君ですが、先日農夫の子供たちが悪戯で牧草をところどころ結んでいて見事に引っ掛かりズシャーっと転んでしまいます。
「あっ!!」
転んだ拍子に大事な小箱が手から離れてしまいます。
その場をバサバサ探すものの見当たりませんというか、暗くて見えません。
「どうなさったの?」
軍神の加護で夜目も利くエレインは迷う事無くデビット君の元にやってきます。
「ないんだ…探してぇ…」
「何がないの??」
「エレインにあげる…ハッ!!」
「わたくしに?何を??」
「えっと…ちょっと待って…急いで探す…うわぁぁ!暗いよ!!」
「お待ちになって」
上空に火魔法で照明弾を上げるエレイン。ごそごそ何かを探すデビット君を見ていましたがしゃがみ込みます。
しばらく探しますが、見つからない小箱。消えそうになると上空にエレインが照明弾を上げてくれます。
ダメだ。夜が明けてから探そうと半泣きでエレインの元に来たデビット君。
しゃがみ込んだエレインのスカートの裾に半分隠れているけれど間違いない!小箱だ!
「きゃぁ!何をなさいますの!」パチーン!!
小箱を取ろうとスカートの裾をピロっと捲ったデビット君。
小箱は手にしましたが、同時にエレインの怒りと頬にモミジもいただいてしまいました。
46
お気に入りに追加
4,234
あなたにおすすめの小説
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる