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デビット君のプロポーズ大作戦
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執務机で書いては丸めてポイ、書いては丸めてポイと何枚紙を無駄にするのだパトリック。
何も言わずに執事は窓から見える空を見ております。
「はぁ~…」
頭を抱えるパトリック。いい表現が出来ないようです。手紙なんて仕事なら雛型もあるしちゃっちゃとかけますけど、それまでの相手があのリリシアです。
リリシアの前も顔と家柄は良かったパトリックですから自分から告白をしなくても女の子の方から告白をしてくれたんですよねぇ。
ラブレターなんてもらったことはあっても書いた事はありません。
それまでパトリック自身ももらったラブレターは何通か読んだことはありますが、ほとんどは封も切らずにポイ。
捨てられなかっただけマシかとも思いますが、封も切らすに返されるとなかなかのダメージです。
「なんて書けばいいんだ‥‥」
「先ず冒頭は季節の挨拶ですねぇ」
「それは判っている。だが、どうやって封を切ってもらう?」
「お願いするしかないのでは?」
「誰に?」
「そりゃ手紙の受取人でしょう。配達員に開封されたくないでしょう?」
「そうなんだが…読む前に封すら切って貰っていないとは思わなかった」
「いや、十分にあり得るでしょう。最初が最初ですし」
ふと執事が思いつきます。「品物を送ってみてはどうでしょう」と言いますが・・・。
「だめだ。いらないと突き返されたら立ち直れない」
「まぁ、それ以前に何を送ったらいいかも判らないでしょうしねぇ」
「はっ!そうだ…なんでわかる?」
「だって今まで全部、あれ欲しい、これ欲しいを許しただけでしょう?」
「そうだな。そう言われればそうだ」
「パトラック様に聞かれてみては?」
パトラックはパトリックの弟。三男坊ですが一途な男で伯爵家の次女である彼女を落とすまでそれはもう尽くしに尽くし、今ではツクツクボウシになっているとも言われている男です。
パトリックのトバッチリで辺境に飛ばされましたが、婚約者の令嬢とは今まで通りのラブリィなお付き合いを続けております。三男なので公爵家を出て祖母が権利を持っている伯爵家を建て直すようになっています。
「パトラックか‥‥だが聞いている時間はもうないんだ」
「そうですね。日数にしてあと63日で婚姻期間が満了しますしね」
「王城に行って無効の手続きは出来ないだろうか」
「無理でしょう。魔道郵便で運んでますから同意の上とみなされます」
「なんとか話し合って離縁をやめる事はできないだろうか」
「難しいですね。その場にいた者全員を集める必要があります。あの女をまた呼ばねばなりません」
「そうだとしても…呼んで離縁が無くなるなら・・」
「難しいと思いますよ。炭鉱で性の奉仕をしているそうですから」
「は?何だそれは?」
「金も持たずに宿に泊まり、部屋の中めちゃくちゃだったそうですよ。本物の宝石を捨ててゴミを大事にしていた罰ですね。魔法契約の変更更新は諦めた方がいいです」
パトリックは直接ではなくても、近くまでいって大声で叫ぼうかと思いましたが、契約の2つ目がそれを阻みます。
1つ目は「公爵家」「領主」とついていましたが、2つ目は付いていません。パトリックが父や陛下に公爵家からの廃籍を頼んでもパトリックは訪れる事が出来ないのです。
エレインも「1つ目から5つ目まではパトリック用」だと言ってましたしね。
まだ問題もあります。農夫たちはもうエレインの元に行っていないので頼む者がいません。
目の前の執事も契約の時そこにいたので6つ目に引っかかるのです。
その上…王太子殿下から毎月乾電池を使用人にでも届けさせろという約束も守っていないのです。
「エレイン様の使用する乾電池なのですから王家からの支度金で買ってもよかったのでは?」
執事の言う事はもっともですが、1万ペペ札のうちは使わずに置いておこうと思っても一旦崩れるとなし崩しになりそうな気がして手が付けられなかったパトリック。後悔の嵐。
嵐を起こして全てを壊せば笑顔が見られるのか?!きっと空が落ちるか海が割れるだけでしょう。
一方、こちらはデビット君。久しぶりの登場です。
魔石電話でエレインに電話中です。
「エレイン!もうすぐだね。迎えに行こうか?」
「結構ですわ。ご心配なく」
「いろいろ考えたんだけどさ、やっぱり嫁に来るのは嫌?」
「まぁ、しばらくはのんびりしたいですわよ」
「って言うか、のんびりしかしてなくね?」
「デビット君、無駄話なら切りますわよ?」
「いやいや、ちょっと待って!もうすぐ誕生日だろう?渡したいものがあるんだ」
「そう言えばそうですわね。誕生日と結婚式と離婚日が一緒なんて最悪でしたが誕生日の翌日でしたわね。で、何をくださるの?月の石?イエティの毛皮?少女物語の初版本?」
「また薄いところをリクエストするなぁ…違うよ」
「なんですの?教えてくださいまし」
「会ったら判るよ。とにかく!誕生日は開けといてくれ」
「開けとくも何も予定はないですわ。ご安心くださいまし」
「よっしゃ!じゃ、その日は絶対に行くから!」
「はいはい。気を付けて来てくださいましね」
魔石電話を切った後、デビット君飛び跳ねて喜んでおります。
遂にこの小箱に入った指輪を渡す時がやってきた!!
誕生日に一緒にいれば、翌日日付をまたいだ時点でエレインは独身になります。
この日からコワモテのお兄さんをエレインに見立ててプロポーズの練習を開始するデビット君。
初恋を拗らせ、この日を待ちわびて~待ちわびて~エレインの帰りを待ちわびて~
逢いたくて逢いたくて・・・・。
「よし!初めての女の悦びを教える俺は…えっ?酷い人?それはマズイ…」
日野美●大先生にファンレターでどうするべきか聞いてみようと思ったデビット君でした。
何も言わずに執事は窓から見える空を見ております。
「はぁ~…」
頭を抱えるパトリック。いい表現が出来ないようです。手紙なんて仕事なら雛型もあるしちゃっちゃとかけますけど、それまでの相手があのリリシアです。
リリシアの前も顔と家柄は良かったパトリックですから自分から告白をしなくても女の子の方から告白をしてくれたんですよねぇ。
ラブレターなんてもらったことはあっても書いた事はありません。
それまでパトリック自身ももらったラブレターは何通か読んだことはありますが、ほとんどは封も切らずにポイ。
捨てられなかっただけマシかとも思いますが、封も切らすに返されるとなかなかのダメージです。
「なんて書けばいいんだ‥‥」
「先ず冒頭は季節の挨拶ですねぇ」
「それは判っている。だが、どうやって封を切ってもらう?」
「お願いするしかないのでは?」
「誰に?」
「そりゃ手紙の受取人でしょう。配達員に開封されたくないでしょう?」
「そうなんだが…読む前に封すら切って貰っていないとは思わなかった」
「いや、十分にあり得るでしょう。最初が最初ですし」
ふと執事が思いつきます。「品物を送ってみてはどうでしょう」と言いますが・・・。
「だめだ。いらないと突き返されたら立ち直れない」
「まぁ、それ以前に何を送ったらいいかも判らないでしょうしねぇ」
「はっ!そうだ…なんでわかる?」
「だって今まで全部、あれ欲しい、これ欲しいを許しただけでしょう?」
「そうだな。そう言われればそうだ」
「パトラック様に聞かれてみては?」
パトラックはパトリックの弟。三男坊ですが一途な男で伯爵家の次女である彼女を落とすまでそれはもう尽くしに尽くし、今ではツクツクボウシになっているとも言われている男です。
パトリックのトバッチリで辺境に飛ばされましたが、婚約者の令嬢とは今まで通りのラブリィなお付き合いを続けております。三男なので公爵家を出て祖母が権利を持っている伯爵家を建て直すようになっています。
「パトラックか‥‥だが聞いている時間はもうないんだ」
「そうですね。日数にしてあと63日で婚姻期間が満了しますしね」
「王城に行って無効の手続きは出来ないだろうか」
「無理でしょう。魔道郵便で運んでますから同意の上とみなされます」
「なんとか話し合って離縁をやめる事はできないだろうか」
「難しいですね。その場にいた者全員を集める必要があります。あの女をまた呼ばねばなりません」
「そうだとしても…呼んで離縁が無くなるなら・・」
「難しいと思いますよ。炭鉱で性の奉仕をしているそうですから」
「は?何だそれは?」
「金も持たずに宿に泊まり、部屋の中めちゃくちゃだったそうですよ。本物の宝石を捨ててゴミを大事にしていた罰ですね。魔法契約の変更更新は諦めた方がいいです」
パトリックは直接ではなくても、近くまでいって大声で叫ぼうかと思いましたが、契約の2つ目がそれを阻みます。
1つ目は「公爵家」「領主」とついていましたが、2つ目は付いていません。パトリックが父や陛下に公爵家からの廃籍を頼んでもパトリックは訪れる事が出来ないのです。
エレインも「1つ目から5つ目まではパトリック用」だと言ってましたしね。
まだ問題もあります。農夫たちはもうエレインの元に行っていないので頼む者がいません。
目の前の執事も契約の時そこにいたので6つ目に引っかかるのです。
その上…王太子殿下から毎月乾電池を使用人にでも届けさせろという約束も守っていないのです。
「エレイン様の使用する乾電池なのですから王家からの支度金で買ってもよかったのでは?」
執事の言う事はもっともですが、1万ペペ札のうちは使わずに置いておこうと思っても一旦崩れるとなし崩しになりそうな気がして手が付けられなかったパトリック。後悔の嵐。
嵐を起こして全てを壊せば笑顔が見られるのか?!きっと空が落ちるか海が割れるだけでしょう。
一方、こちらはデビット君。久しぶりの登場です。
魔石電話でエレインに電話中です。
「エレイン!もうすぐだね。迎えに行こうか?」
「結構ですわ。ご心配なく」
「いろいろ考えたんだけどさ、やっぱり嫁に来るのは嫌?」
「まぁ、しばらくはのんびりしたいですわよ」
「って言うか、のんびりしかしてなくね?」
「デビット君、無駄話なら切りますわよ?」
「いやいや、ちょっと待って!もうすぐ誕生日だろう?渡したいものがあるんだ」
「そう言えばそうですわね。誕生日と結婚式と離婚日が一緒なんて最悪でしたが誕生日の翌日でしたわね。で、何をくださるの?月の石?イエティの毛皮?少女物語の初版本?」
「また薄いところをリクエストするなぁ…違うよ」
「なんですの?教えてくださいまし」
「会ったら判るよ。とにかく!誕生日は開けといてくれ」
「開けとくも何も予定はないですわ。ご安心くださいまし」
「よっしゃ!じゃ、その日は絶対に行くから!」
「はいはい。気を付けて来てくださいましね」
魔石電話を切った後、デビット君飛び跳ねて喜んでおります。
遂にこの小箱に入った指輪を渡す時がやってきた!!
誕生日に一緒にいれば、翌日日付をまたいだ時点でエレインは独身になります。
この日からコワモテのお兄さんをエレインに見立ててプロポーズの練習を開始するデビット君。
初恋を拗らせ、この日を待ちわびて~待ちわびて~エレインの帰りを待ちわびて~
逢いたくて逢いたくて・・・・。
「よし!初めての女の悦びを教える俺は…えっ?酷い人?それはマズイ…」
日野美●大先生にファンレターでどうするべきか聞いてみようと思ったデビット君でした。
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