元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru

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火遊び少女と呼ばれて

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剣とサーベルを手にして扉から少し離れます。

ドンドン!

ノックというよりも思いっきり扉を叩いておりますね。

「こンな真夜中にどちら様かしら」

扉から少し離れていつでも応戦できるように剣をカチリと握りなおします。

「エレイン様、私です。お願いです。どうか話を聞いてください」
「お断り、と言ったらどうなさいますの」
「‥‥‥‥」

人の気配は玄関ドアの前だけではなく、横にある窓付近にも感じています。
左目が痛いくらいにチクチクと危険を知らせます。

「全く、面倒ねぇ…窓ガラス割られたら面倒じゃないのよ」

エレインは玄関扉に手をかけて、ガチャっと開けてサッと後ろに飛び退きます。
開いたドアの前には義母の飼い犬だった執事が立っております。
たった1年弱見ないだけでかなり落ちぶれた感は否めないほどの粗末な身なりです。

「こンな夜中に沢山のコバエを連れてブレーメンの音楽隊でもなさるのかしら」
「まさか。ちょっとお願いがございましてねぇ」
「わたくしに?おかしなことを仰るのね。侯爵家での飼い主に頼めばどうかしら」
「あれねぇ…年は食ってるし娘の方もパッとしませンでねぇ。ところでソレ、下ろしませン?」

エレインの持っている剣とサーベルをニヤニヤしながら下ろせと言う元執事。
面倒なので名前をつけましょう。元執事のズーオダ。(あっヤバい…まんまじゃん)

「お断りするわ。ついでにとっとと帰って頂戴」
「おやおや、良いンですか?私もねぇ紳士なので手荒な事はしたくないンですよ」

パチンと指を鳴らすと1人の男が何かを肩に担いでおります。
ナニソレ?っと思っていると、どさっと無造作に下ろしたのはエレインの父。
エレイン思わず遠い目をしております。期待外れも良ところだと手でシッシとやっております。

「なっなンだ?その遠い目は。父親だろう?お前の!」
「そうだったかしらぁ…そンなこと~あンなこと~あったかしら?」
「冷たいな!おいっ!お前からも何か言ってやれッ!」

エレインの父、キーファー元侯爵の頭を靴でツンツンしますが口枷をされているので喋れません。
ですが目でエレインに何かを訴えています。

「おいっ!娘に言う事があるだろうが!」
「無理ですわよ。お口にとっても素敵な口枷がありますもの」
「なっ?!‥‥ちっ世話がかかるヤツだ」
「取って差し上げればよろしいのではなくて?」

ズーオダはしゃがみ込んでキーファーの口枷を取ろうとします。
その途端、ガブっと手を噛まれたと思ったら、脳天にエレインの剣の柄が直撃します。

「フフフ‥‥真上と真下…脆い物よのう・・って名言ご存じなくて?」

言い終わるが早いか飛び掛かってくる義母の飼い犬に飼われている破落戸の駄犬たち。

「このアマぁ!」
「申し訳ないわ!尼さンになる予定は御座いませんの(ドゴッ!)」
「貴様!双剣なンて卑怯だぞっ!」
「あら?モン●ンでは当たり前田のクラッカーですわよ」
「き、汚いぞ。強い上に…」
「うふっありがとう。ところで皆様何人いらっしゃるのかしら?」
「じ、16人だッ」
「なんだ、つまりませンのね」
「なんだって?」
「だって、101ならダルメシアンだし、108ならフリーマンなのに。足らないのね。お気づきになられませン事?【ン】をカタカナにしてましたのに」

「うっうるせぇ!女一人だ!やっちまえ!」

飛び掛かってくる男の懐に入り込んでみぞおちに思いっきり拳を叩きこむと1回転!
怯んだ男たちが玄関前にワラワラと集まりだします。
腹に力を入れてエレインが叫びます。

「ひとぉつ!!生き血は啜るモノではなく!献血するのです!」(ザシャっ!)

「ふたぁつ!!フラチナリ●ムは八王子ッ!」(ドシャッ!)

「みぃぃっつ!!みにくいアヒルの子は熱血っぽい教師ドラマじゃー!」(シュパーン!)

倒れていく仲間にじりじりと後ろに下がっていく男達。
エレイン、サーベルをスっと真上にあげると月の光を浴びたサーベルで円を描いております。
まさか!それは!

「円月殺法!!」シュパッ!

「き、汚いぞ…お前眠ってないし狂ってないし長女だろうが!」
「細かい事を気にすると、ワカチコって連呼しますわよ?さてあと3名様ね」
「ヒッ…ヒィィィ!!」

ワタワタと逃げ出す3人。しかし逃げられるはずは御座いません。

「ウフフ。‥‥お仕置きだべぇ♡でございますわ。今週の山場ぁ~全国のJKの皆さぁん♡ぽちっとな♡」

何も起こりません。唖然とする3人の破落戸。
しかしそこにエレイン暢気に納屋から3人用の自転車を持ってきます。

「忘れてましたわ。さぁドロ●ボーさんのようにこれで逃げてくださいまし」
「エ”‥‥まさかと思いますが‥‥」
「大丈夫。火魔法で…(バチっ)これを風魔法で♡。丁度焼き畑をしようと思っていた所ですわ」

エレインの頭の上に浮かび上がる火球。手のひらサイスが段々大きくなり直撃すればそれなりのダメージっていうか生きていられるかは判らないくらいの大きさになっております。軍神ヴァルキリーの加護なのか、変形も始めております。腰を抜かす3人はポツリと呟きます。

「オォウ…プロ●カルチャー」
「何を言ってますの!まだ愛は覚えておりませんでしょう?」
「いや。そうなんだが…許してください!こんなのあり得ないっ!」
「あり得ないですって??わたくしだってまさか最後は一条君が早瀬さんを選ぶなんて思わなかったわよ!」
「なんの事ですかぁぁ!」
「ご存じないの?散々わたしの彼はパイ●ットとか歌うもんだからそう思うじゃない!?なのになんで最後の最後でミサちゃんなの?シャオパイロンは何だったの?サンセットビーチなんか間違い起こすじゃないのよ!0・G・ラブに騙されたわ!」

怒り狂うエレインですが目の前の全く意味が判っていない破落戸3人の視線はかなり大きくなった火球に固定されております。

「たっ頼む助けて…あいつに頼まれただけなんだ。アンタを攫えば金をくれるって・・」
「お金の為にわたくしを?‥‥って熱っ!なんでこんなに大きくなってるんですの!」
「そっそれは…あなた様が…」
「あら?そうだったね。このままだと牧草がダメになってしまうわ。危ない。危ない」
「消して‥‥くださいますぅ??」
「消す?どうしてですの?こうなったら、不良少女と呼ばれてみとうございます。さぁ!お呼びになって!火遊びをする不良少女!!さぁ!」

「か、勘弁してくださいよぅ」
「違うでしょう?そこは しょぉこぉ って言わないと!根性焼きいれますわよ!」
「いや、それもう根性焼きって大きさじゃないから!危ないデカさだから!」
「何を仰るの?あなた方、タカ●ユージでは御座いませんでしょう?ここにはW浅野もおりませんのよ?毎回ドリフトさせてたのがレパードだってご存じですの?!」

フンスフンスと怒っておりますが、完全に目の前の3人は歯向かう気持ちが無くなっているのに気が付いたエレインは息を一つ吐くと火球をポン!っと消し去ります。

指でクイクイと3人の男達を呼ぶと、倒れている者の手を後ろ手で縛らせます。

「緩くしてたりしたら‥‥お判りよね?」
「はっはい!それはもう十分に!」

そして最後の1人、ズーオダには長めの縄を持ってきて「これでやって頂戴」と3人に渡します。
丁寧にところどころに結び目をつけさせて見事な亀甲縛りの完成です。
エレインはレンゲ蜂蜜がたっぷり入ったホットヤギミルクを差し出します。

「ご苦労様。これはご褒美よ」
「えっ?俺たちに?」
「そうよ。はじめてにしては上手に出来たわね。きっと炭鉱に行っても喜ばれるわ。手に職ならぬ手に縄。一定数縛られたいって殿方は多いんですのよ?」
「そ、それはどこ情報ですか?」
「人妻シリーズよ。縄で縛られて喜ぶ旦那とお楽しみ中に宅配便が来るの♡」

エレインから誰得情報を聞いているとズーオダの目が覚めたようです。

「ぐっ…なんだこれは…」
「あらお目覚めね。どうかしら?気分は」
「いいわけがないだろう?縄を解け!」
「縄を?あらおかしいわ。あなた方、緩めにされたの?」

ブンブンと首を横に振るホットヤギミルクを飲む3人。
おかしいわねぇと背中の1本の縄をクイっと指で持ち上げるとズーオダ思わず・・・

「ハヒィっ…」
「なんだ…気分よさそうでは御座いませんか」(クイクイ‥‥クイクイ…)
「そっそんなわけが…ハフッ…ないだ‥アァァッ‥」
「誰から聞いたか知りませんが、あなたにあげるお金はビタの一文も御座いませんことよ」
「くそっ…あのアマ…騙しやがったな」
「騙されておりませんわよ。ただ、あなたにあげるお金はないって事ですわ」

3人が飲み終わると、「ついでにこれを渡して頂戴」と封を切っていない手紙の束を渡すエレイン。

「あの、これは?」
「気にしない~気にしない~気にしない~♪」

転移魔法でパトリックの屋敷の前にズーオダと愉快な仲間たちを転移させました。
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