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居座り続ける女
しおりを挟む「一体いつまでここにいるつもりだ。出ていけといっただろう」
大げんかの末、ついに出ていけと言われたリリシアですが理由なき反抗ではなく単に立て籠り状態です。
部屋に籠ってここ数日を過ごしております。
と言っても、エレインのように大量の漫画は持っていませんので、専らそれまでに買っていた乙女のバイブル。
以前はポップ●ィーンやニ●ラを愛読しておりましたが最近ではもっぱら小悪魔ア●ハ
バックナンバーも揃っているようで、乙女仕様のベッドに寝転がって読んでおります。
しかし、遊びに行けないのはそれなりに苦痛ですし、お腹も空いてしまいます。
パトリックの怒りで使用人たちはこの部屋に来ることは全くなくなり脱いだままの服や下着は散乱。
お腹がすくと夜中にこっそり厨房に行ってその辺にあるモノを部屋に持ち込んで食べるものだから、食べ残しに変な虫がわいていたりしてます。コバエも多いですね。
そろそろ許してくれるかなーっとクローゼットの中から出会った頃に着ていたワンピースを着て執務室に行こうとおもったら、お腹の肉と背中の肉が邪魔をして着られません。
っていうか、ここ数年いつも誰かに着せてもらっていたので自分では着られない!!
仕方なく、胸元にジッパーのある官能的なドレスでパトリックの部屋に行ったのですが、開口一番めっちゃ嫌な顔をされて言われたのが冒頭の一言です。
ですが、最新号の小悪魔ア●ハの特集にあった髪飾りがどうしても欲しいリリシア。
髪飾りの金額は52万。この前言ってた月に100万で十分におつりがきますから、ケンカはしたけれど機嫌が悪かったのよ!と書類をしなかった自分は何処かに消え去り、許してもらえるとしか思っておりません。
「ごめんなさい!ねぇリックぅ。反省してるの」
「反省?そんなものは今時サルでも出来る」
「おサルさん?いやぁん。りりィは可愛いウサギさんかリスさんよ?」
「は?何を言ってるんだ。どうでもいいが部屋から出たならついでだ。王都まで送ってやる。荷物を運ぶ荷馬車の手配も出来たという事なんだろう」
「ちっ違うわよ。アタシ…そんな事されたら生きていけない」
「あぁ、俺はもうお前と生きていくつもりはないからそれでいいだろう」
「ひどぉい!!うわーん!うわーん!!」
「涙が出ていないようだな。アイドルの熱愛発覚会見の方がまだ見ごたえがある」
まだ怒っているんだなと感じたリリシアはゆっくりとパトリックのほうに歩きます。
椅子に座るパトリックの前にチョコンと座ると太ももをサワサワ。
ちょっと前にホストのNO5に教えてもらった「こんな事されたら許すしかないよね?」って技を駆使しています。
「お願い。もう反省してるの。許してリックぅ♡」
「放してくれ。気持ち悪い」
「ねぇ‥‥ご奉仕してあげる…」
「バカか?時と場所を弁える事もだが、お前には触れてほしくないんだ。やめてくれ」
「そんな事言って…もう大きくなってるんでしょう?」
「は?まさか。俺はもうお前で勃つ事はない。見てみろ」
椅子から立ち上がったパトリック。股間には変動なし。微動だにしない大事な部分。
技が通じないと悟ったリリシア。脳内フル回転。回転ドアがグルングルン回ります。
おそらくこのスピードでドアの中に入れるのは超高速縄跳びの小学生でも無理でしょう。
「そんなっ!おかしいわ!どうしてなのよ!」
「どうして?わかりきった事だ。別れた女に何をされても何も感じないだけだ」
「そんなはずはないわ!別れてないわ!アタシは別れないって言ったでしょう?」
「はぁ、本当に五月蠅い女だな。早く目の前から消えてくれ」
「リック!酷いわ!散々にアタシを弄んだくせに!」
「それ以上の物は与えただろうが。それにだ。知らないとでも思っているのか?」
「何よ。何を知っているというの?」
「隣町のホストクラブで随分お愉しみだと聞いたが?」
「い、いいじゃない!請求書はここに来ていないでしょう!!」
「あぁ、だから何も言わなかったはずだ。今日も行けばどうだ?待っていると思うぞ」
ブルブルと震えるリリシア。おそらくそのまま売り言葉に買い言葉で出ていけばもう屋敷には入れてもらえないんだろうなってのは本能が訴えています。
それにもう手元にある宝飾品で【本物】は10個もないという状態。
今、指に嵌めている指輪も全部イミテーション。あの買い取ってくれる男が「数が少なくなると彼氏に怒られるんじゃない?」と似たようなのをくれているので数的には減っていないだけです。
窓に雨粒がぽつぽつとつきだし、雨が降って来たようです。
「旦那様、雨のようですね。夜間の見回りは中止致しましょうか」
「そうだな。この時期の夜の雨は氷るように冷たい雨だからな。やめておこうか」
「承知いたしました」
リリシアを無視して始まる執事とパトリックの会話。無視されて悔しくてリリシア泣きそうになっていますよ。
「行かないわ!リックの側にいるっ!」
「まだそんな事を。酔っぱらっているのか?」
「酔ってなんかないわ!」
「ほぅ、ウソ泣きは出来なくても悔し涙は出るんだな」
「泣いてないっ!煙草の煙が目に染みただけよ!」
「申し訳ないが、これは蚊取り線香だ。やはり昼間から酔ってるようだな」
「酔っぱらってても一人で戻れるわ!心配しなくて結構よ」
バタンと乱暴に扉をしめて部屋に戻るリリシア。
「畜生!きっとあの女よ。こんなにリックが冷たい事はなかったもの!」
爪をギリギリと噛んで悔しがっております。折角のマニュキアもボロボロですが、ふっと閃きます。
「うふっ。いい事思いついちゃった」
無い知恵絞ると大抵は良くない事だと思いますがリリシアも第二王子のようにニヤリと微笑みました。
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