元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru

文字の大きさ
上 下
35 / 56

居座り続ける女

しおりを挟む


「一体いつまでここにいるつもりだ。出ていけといっただろう」


大げんかの末、ついに出ていけと言われたリリシアですが理由なき反抗ではなく単に立て籠り状態です。
部屋に籠ってここ数日を過ごしております。
と言っても、エレインのように大量の漫画は持っていませんので、専らそれまでに買っていた乙女のバイブル。
以前はポップ●ィーンやニ●ラを愛読しておりましたが最近ではもっぱら小悪魔ア●ハ
バックナンバーも揃っているようで、乙女仕様のベッドに寝転がって読んでおります。

しかし、遊びに行けないのはそれなりに苦痛ですし、お腹も空いてしまいます。
パトリックの怒りで使用人たちはこの部屋に来ることは全くなくなり脱いだままの服や下着は散乱。
お腹がすくと夜中にこっそり厨房に行ってその辺にあるモノを部屋に持ち込んで食べるものだから、食べ残しに変な虫がわいていたりしてます。コバエも多いですね。

そろそろ許してくれるかなーっとクローゼットの中から出会った頃に着ていたワンピースを着て執務室に行こうとおもったら、お腹の肉と背中の肉が邪魔をして着られません。
っていうか、ここ数年いつも誰かに着せてもらっていたので自分では着られない!!

仕方なく、胸元にジッパーのある官能的なドレスでパトリックの部屋に行ったのですが、開口一番めっちゃ嫌な顔をされて言われたのが冒頭の一言です。

ですが、最新号の小悪魔ア●ハの特集にあった髪飾りがどうしても欲しいリリシア。
髪飾りの金額は52万。この前言ってた月に100万で十分におつりがきますから、ケンカはしたけれど機嫌が悪かったのよ!と書類をしなかった自分は何処かに消え去り、許してもらえるとしか思っておりません。

「ごめんなさい!ねぇリックぅ。反省してるの」
「反省?そんなものは今時サルでも出来る」
「おサルさん?いやぁん。りりィは可愛いウサギさんかリスさんよ?」
「は?何を言ってるんだ。どうでもいいが部屋から出たならついでだ。王都まで送ってやる。荷物を運ぶ荷馬車の手配も出来たという事なんだろう」

「ちっ違うわよ。アタシ…そんな事されたら生きていけない」
「あぁ、俺はもうお前と生きていくつもりはないからそれでいいだろう」
「ひどぉい!!うわーん!うわーん!!」
「涙が出ていないようだな。アイドルの熱愛発覚会見の方がまだ見ごたえがある」

まだ怒っているんだなと感じたリリシアはゆっくりとパトリックのほうに歩きます。
椅子に座るパトリックの前にチョコンと座ると太ももをサワサワ。
ちょっと前にホストのNO5に教えてもらった「こんな事されたら許すしかないよね?」って技を駆使しています。

「お願い。もう反省してるの。許してリックぅ♡」
「放してくれ。気持ち悪い」
「ねぇ‥‥ご奉仕してあげる…」
「バカか?時と場所を弁える事もだが、お前には触れてほしくないんだ。やめてくれ」
「そんな事言って…もう大きくなってるんでしょう?」
「は?まさか。俺はもうお前で勃つ事はない。見てみろ」

椅子から立ち上がったパトリック。股間には変動なし。微動だにしない大事な部分。
技が通じないと悟ったリリシア。脳内フル回転。回転ドアがグルングルン回ります。
おそらくこのスピードでドアの中に入れるのは超高速縄跳びの小学生でも無理でしょう。

「そんなっ!おかしいわ!どうしてなのよ!」
「どうして?わかりきった事だ。別れた女に何をされても何も感じないだけだ」
「そんなはずはないわ!別れてないわ!アタシは別れないって言ったでしょう?」
「はぁ、本当に五月蠅い女だな。早く目の前から消えてくれ」
「リック!酷いわ!散々にアタシを弄んだくせに!」
「それ以上の物は与えただろうが。それにだ。知らないとでも思っているのか?」
「何よ。何を知っているというの?」
「隣町のホストクラブで随分お愉しみだと聞いたが?」
「い、いいじゃない!請求書はここに来ていないでしょう!!」
「あぁ、だから何も言わなかったはずだ。今日も行けばどうだ?待っていると思うぞ」

ブルブルと震えるリリシア。おそらくそのまま売り言葉に買い言葉で出ていけばもう屋敷には入れてもらえないんだろうなってのは本能が訴えています。
それにもう手元にある宝飾品で【本物】は10個もないという状態。
今、指に嵌めている指輪も全部イミテーション。あの買い取ってくれる男が「数が少なくなると彼氏に怒られるんじゃない?」と似たようなのをくれているので数的には減っていないだけです。

窓に雨粒がぽつぽつとつきだし、雨が降って来たようです。

「旦那様、雨のようですね。夜間の見回りは中止致しましょうか」
「そうだな。この時期の夜の雨はだからな。やめておこうか」
「承知いたしました」

リリシアを無視して始まる執事とパトリックの会話。無視されて悔しくてリリシア泣きそうになっていますよ。

「行かないわ!リックの側にいるっ!」
「まだそんな事を。酔っぱらっているのか?」
「酔ってなんかないわ!」
「ほぅ、ウソ泣きは出来なくても悔し涙は出るんだな」
「泣いてないっ!煙草の煙が目に染みただけよ!」
「申し訳ないが、これは蚊取り線香だ。やはり昼間から酔ってるようだな」
「酔っぱらってても一人で戻れるわ!心配しなくて結構よ」

バタンと乱暴に扉をしめて部屋に戻るリリシア。

「畜生!きっとあの女よ。こんなにリックが冷たい事はなかったもの!」

爪をギリギリと噛んで悔しがっております。折角のマニュキアもボロボロですが、ふっと閃きます。

「うふっ。いい事思いついちゃった」

無い知恵絞ると大抵は良くない事だと思いますがリリシアも第二王子のようにニヤリと微笑みました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

前世の記憶を思い出したら、なんだか冷静になってあれだけ愛していた婚約者がどうでもよくなりました

下菊みこと
恋愛
シュゼットは自分なりの幸せを見つける。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...