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夫は愛人に別れを告げる
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「堰堤には言われたように竹の中をくりぬいて筒を取り付けたけど確かに水が落ちてるよ」
「上は何とかなってもまだ底には水が溜まっていますからね。水抜きパイプは必要ですわ」
堰堤の工事も着々と進んでいるようで安心です。
ちゃんと整備をすればもしもの時も決壊まで時間も稼げますしね。
「でも来週はちょっと来られないかも知れないです」
農夫さん達はエレインに指示を求めています。農作業としてはもう刈り取った草を寝かせて、しばらくして畝を作り。その上に刈った草を置いて、すっかり土壌改良は終わったのでショウガを植えて世話をしています。
来られないと言うのは領地には影響は少なそうですが、辺境の中の辺境に来る途中の崖が先ごろ発生した台風で通行が危険だと判断したためです。
「そうですわね。危険は事前に察知、回避するのが一番ですわ」
領地に影響はないとはいってもゼロではないので、床下浸水してしまうとほぼ床と同じ高さの家ばかりです。
「水は来たとしてもこれくらいかな」
とくるぶしのあたりを農夫は指さしますのでそれならばと、エレインは廃材で高床にするよう方法を教えます。
「河原でこれくらいの出来るだけ平たい石を拾ってきてくださいね。個数は家によって違いますが、1m四方なら4個みたいな感じで」
「高さが合わない時はどうするんだ?」
「土を掘るより、石を土にねじ込む感じで」
「なるほど」
部材の大きさを説明していきます。
「先ずはその石の上に束(つか)を置きますの。束を立てたらその上に土台を乗せます」
「束の上に?」
「えぇ。そうですわ。土台の上に1mより少し狭い間隔で大引(おおびき)を置いてくださいまし」
「重なってもいいのかい?亀の親子みたいになっても」
「構いませんわ!次は大引の上に方向が90度になるように根太(ねだ)を置きますの」
「グラグラしないかい?」
「えぇ、ですから水平方向に火打(ひうち)というのを斜めに取り付けます。垂直方向には方杖(ほうづえ)とか筋交(すじかい)を入れますの。向きは逆に。三角の天辺を合わせるイメージでね」
「でもそれじゃ寝られないよ」
「えぇ。根太の上に壁に使っていような平板を載せるんです。一種のフローリング床ですわね。その上なら水は来ないと思いますわ。使用する木は出来れば松、なければ杉かヒノキが良いですわね。ただ虫食いが始まればあっという間なのでご注意しくださいまし」
っと、木材を持ってきて継手と仕口(つぎてとしくち)を説明します。
「長さが足らない時は継手で接合するのです。T字のような角度を持ったものは仕口ですわ。
それぞれ、ほぞ というものを片方に掘って、カチャンと1本になるように、しっかり噛み合うようにするのです」
「難しいなぁ」
「継手を取る時は引っ張っても抜けないように鎌という広がった部分をつけるのを忘れない事と、仕口からあまり近い位置、そうね…端から端まで12分の1~8分の1の位置は避けるようにね。同じ位置に全部を合わせるのもダメよ。必ずズラせるの」
「長い木があればいいんだがなぁ‥‥難しいなぁ」
「ま、壁からあまり近い位置に取っちゃダメって事ですわ。大事な家具や衣類は出来るだけ高いところにね」
「わかった」
「浸水しても慌てないでね。もし水がドバーってなったらとにかく屋根でもなんでも高いところよ?」
「でも畑が心配だよなぁ」
「ダメダメ。畑なんか後でどうにでもなりますし、災害認定を王太子殿下には頼むから見に行かない。畑はやり直せるけど命は1個。コンティニューできないのよ?」
農夫たちを転移魔法で送った後、エレインも放牧していた馬やヤギを小屋に入れます。
万が一を考えて馬も全部返却されているので、久しぶりに全部揃ったという感じです。
新しく家族になった鴨も厩舎の中に入れて、窓ガラスには一応木を打ちつけておきます。
「こんなにお天気はいいのに…まぁ風はちょっと強くなってきたわねぇ」
暇な時に改良をして水車を作り川からポンプで水を汲み上げて、屋根の上に置いたガラスで作った容器にためて太陽熱で温水にしております。
天気のいい日は熱湯になってしまいますが、バスタブに水と丁度いい塩梅に混ぜてお風呂も楽しんでおります。
水車も初回だけは馬に回転させる時は頑張ってもらいましたが一旦水が上がればポンプが破損するまでは水も供給できます。川まで水を汲みに行ったりしなくても馬にも水をたっぷり飲ませてあげられます。
ま、濁流になった時は濁った水になってしまいますけどね。
一方パトリックのお屋敷。やっぱりケンカ中です。
「もういや!こんなの出来るわけないじゃない!」
「どうしてだ?君は子爵家の令嬢だと言っただろう?」
「そうよ!お母様が子爵のおじさんと結婚したもの!れっきとした子爵令嬢よ」
一応間違いはない事はパトリックも確認をしています。母の連れ子であるリリシアは母が再婚後、子爵家の養子として貴族登録をされています。
ですが、遊びまわっていたリリシアは学業何て碌にやっていませんので簡単な資料すら意味が判りません。
パトリックが辺境に飛ばされる原因となったケンカの後、子爵家は当然責任を問われ、実母と義父は縁切りこそしていませんがリリシアとの付き合いを絶っています。
縁切りをしないのはパトリックの正妻となった時に、公爵家と繋がりが出来るから。要は捨てられてるんです。
「難しくないものを回しているんだ。遊ぶのもいいがそればかりではこれから先社交界ではやっていけない。頼むから仕事もしてくれ」
「嫌よ。そんなのあの女にやらせればいいでしょう?アタシは綺麗に着飾って優雅に踊れればいいの!」
パトリックは思います。多分ではなくエレインに任せれば間違いなくこれ以上の仕事を任せられる事を判っていますし、自分たちの案以上に結果を残せる事業をするだろうと。
実際、里芋の収穫は半期なのに小麦を育てていた時よりも倍以上の収穫があり、2倍まではいかなくても売り上げの数字が出ているのです。
売り方も単に売るだけではなく、大きくて形の良い物から、売り物にはならないだろうと思う形の悪い物も売り方を変える事でほぼ完売状態。次の収穫については予約も入っているほどです。
簡単なレシピをつけて見切り品も売った事で、中小の小売店からも問い合わせが来ているのです。
農夫からは既に税金は受け取っていますが、里芋の売り上げは全てパトリックに納められていて税の二重取り状態ともなっていたりもするのですが、農夫たちは【里芋の売り上げは納めるように言われているので】の一点張りで嬉しいのですが困ってもいるのです。
なんせその方法を教えたのがエレインである事も子供たちから聞き及んでいます。
もっとも、農夫たちは今回だけの蜂蜜が予想以上に好評で手ごたえを感じているのもありますから、口出しをされるより押さえ込んだ感も否めません。
売り上げからエレインが買ってくれた土壌改良に使った草の種代とレンゲ、蜂を購入するお金も返しています。
パトリックより農夫の方が賢い気もします。
「わかった。リリシア。俺たちもう別れよう。王都までは送るよ」
「はっ?何を言ってるの?嫌よ!絶対に別れない!」
「いや、もういい。買った物は全部持って行ってくれ。但し馬車の手配なんかは自分でしてくれ」
「待って!待ってよ!そんなことしたらアタシどこに行けばいいの?」
「あんなに物があるんだ。売り払えば遊んだところでしばらくは暮らせるだろう」
真っ青になるリリシア。
確かにドレスは売ればそれなりな金額にはなるでしょうがリリシアに合わせたテーラーメイド品。誰でも着られるわけではないので買い手が限られてしまうので布としての値しか付きません。
大量にあるとパトリックが思っている宝飾品も数個を残して他は全てイミテーション。
小遣いを制限されてからは売り払って遊ぶ金を作っていたので、残りの本物を売った所で安いアパートに2年の家賃で足りるかどうか。全く遊ぶことも出来なくなるのです。
「いやっ!絶対に別れない!ここから動かないんだから!」
執務室の床にゴロンと寝転んだリリシアですが、パトリックと執事は無視して仕事を始めてしまいました。
「上は何とかなってもまだ底には水が溜まっていますからね。水抜きパイプは必要ですわ」
堰堤の工事も着々と進んでいるようで安心です。
ちゃんと整備をすればもしもの時も決壊まで時間も稼げますしね。
「でも来週はちょっと来られないかも知れないです」
農夫さん達はエレインに指示を求めています。農作業としてはもう刈り取った草を寝かせて、しばらくして畝を作り。その上に刈った草を置いて、すっかり土壌改良は終わったのでショウガを植えて世話をしています。
来られないと言うのは領地には影響は少なそうですが、辺境の中の辺境に来る途中の崖が先ごろ発生した台風で通行が危険だと判断したためです。
「そうですわね。危険は事前に察知、回避するのが一番ですわ」
領地に影響はないとはいってもゼロではないので、床下浸水してしまうとほぼ床と同じ高さの家ばかりです。
「水は来たとしてもこれくらいかな」
とくるぶしのあたりを農夫は指さしますのでそれならばと、エレインは廃材で高床にするよう方法を教えます。
「河原でこれくらいの出来るだけ平たい石を拾ってきてくださいね。個数は家によって違いますが、1m四方なら4個みたいな感じで」
「高さが合わない時はどうするんだ?」
「土を掘るより、石を土にねじ込む感じで」
「なるほど」
部材の大きさを説明していきます。
「先ずはその石の上に束(つか)を置きますの。束を立てたらその上に土台を乗せます」
「束の上に?」
「えぇ。そうですわ。土台の上に1mより少し狭い間隔で大引(おおびき)を置いてくださいまし」
「重なってもいいのかい?亀の親子みたいになっても」
「構いませんわ!次は大引の上に方向が90度になるように根太(ねだ)を置きますの」
「グラグラしないかい?」
「えぇ、ですから水平方向に火打(ひうち)というのを斜めに取り付けます。垂直方向には方杖(ほうづえ)とか筋交(すじかい)を入れますの。向きは逆に。三角の天辺を合わせるイメージでね」
「でもそれじゃ寝られないよ」
「えぇ。根太の上に壁に使っていような平板を載せるんです。一種のフローリング床ですわね。その上なら水は来ないと思いますわ。使用する木は出来れば松、なければ杉かヒノキが良いですわね。ただ虫食いが始まればあっという間なのでご注意しくださいまし」
っと、木材を持ってきて継手と仕口(つぎてとしくち)を説明します。
「長さが足らない時は継手で接合するのです。T字のような角度を持ったものは仕口ですわ。
それぞれ、ほぞ というものを片方に掘って、カチャンと1本になるように、しっかり噛み合うようにするのです」
「難しいなぁ」
「継手を取る時は引っ張っても抜けないように鎌という広がった部分をつけるのを忘れない事と、仕口からあまり近い位置、そうね…端から端まで12分の1~8分の1の位置は避けるようにね。同じ位置に全部を合わせるのもダメよ。必ずズラせるの」
「長い木があればいいんだがなぁ‥‥難しいなぁ」
「ま、壁からあまり近い位置に取っちゃダメって事ですわ。大事な家具や衣類は出来るだけ高いところにね」
「わかった」
「浸水しても慌てないでね。もし水がドバーってなったらとにかく屋根でもなんでも高いところよ?」
「でも畑が心配だよなぁ」
「ダメダメ。畑なんか後でどうにでもなりますし、災害認定を王太子殿下には頼むから見に行かない。畑はやり直せるけど命は1個。コンティニューできないのよ?」
農夫たちを転移魔法で送った後、エレインも放牧していた馬やヤギを小屋に入れます。
万が一を考えて馬も全部返却されているので、久しぶりに全部揃ったという感じです。
新しく家族になった鴨も厩舎の中に入れて、窓ガラスには一応木を打ちつけておきます。
「こんなにお天気はいいのに…まぁ風はちょっと強くなってきたわねぇ」
暇な時に改良をして水車を作り川からポンプで水を汲み上げて、屋根の上に置いたガラスで作った容器にためて太陽熱で温水にしております。
天気のいい日は熱湯になってしまいますが、バスタブに水と丁度いい塩梅に混ぜてお風呂も楽しんでおります。
水車も初回だけは馬に回転させる時は頑張ってもらいましたが一旦水が上がればポンプが破損するまでは水も供給できます。川まで水を汲みに行ったりしなくても馬にも水をたっぷり飲ませてあげられます。
ま、濁流になった時は濁った水になってしまいますけどね。
一方パトリックのお屋敷。やっぱりケンカ中です。
「もういや!こんなの出来るわけないじゃない!」
「どうしてだ?君は子爵家の令嬢だと言っただろう?」
「そうよ!お母様が子爵のおじさんと結婚したもの!れっきとした子爵令嬢よ」
一応間違いはない事はパトリックも確認をしています。母の連れ子であるリリシアは母が再婚後、子爵家の養子として貴族登録をされています。
ですが、遊びまわっていたリリシアは学業何て碌にやっていませんので簡単な資料すら意味が判りません。
パトリックが辺境に飛ばされる原因となったケンカの後、子爵家は当然責任を問われ、実母と義父は縁切りこそしていませんがリリシアとの付き合いを絶っています。
縁切りをしないのはパトリックの正妻となった時に、公爵家と繋がりが出来るから。要は捨てられてるんです。
「難しくないものを回しているんだ。遊ぶのもいいがそればかりではこれから先社交界ではやっていけない。頼むから仕事もしてくれ」
「嫌よ。そんなのあの女にやらせればいいでしょう?アタシは綺麗に着飾って優雅に踊れればいいの!」
パトリックは思います。多分ではなくエレインに任せれば間違いなくこれ以上の仕事を任せられる事を判っていますし、自分たちの案以上に結果を残せる事業をするだろうと。
実際、里芋の収穫は半期なのに小麦を育てていた時よりも倍以上の収穫があり、2倍まではいかなくても売り上げの数字が出ているのです。
売り方も単に売るだけではなく、大きくて形の良い物から、売り物にはならないだろうと思う形の悪い物も売り方を変える事でほぼ完売状態。次の収穫については予約も入っているほどです。
簡単なレシピをつけて見切り品も売った事で、中小の小売店からも問い合わせが来ているのです。
農夫からは既に税金は受け取っていますが、里芋の売り上げは全てパトリックに納められていて税の二重取り状態ともなっていたりもするのですが、農夫たちは【里芋の売り上げは納めるように言われているので】の一点張りで嬉しいのですが困ってもいるのです。
なんせその方法を教えたのがエレインである事も子供たちから聞き及んでいます。
もっとも、農夫たちは今回だけの蜂蜜が予想以上に好評で手ごたえを感じているのもありますから、口出しをされるより押さえ込んだ感も否めません。
売り上げからエレインが買ってくれた土壌改良に使った草の種代とレンゲ、蜂を購入するお金も返しています。
パトリックより農夫の方が賢い気もします。
「わかった。リリシア。俺たちもう別れよう。王都までは送るよ」
「はっ?何を言ってるの?嫌よ!絶対に別れない!」
「いや、もういい。買った物は全部持って行ってくれ。但し馬車の手配なんかは自分でしてくれ」
「待って!待ってよ!そんなことしたらアタシどこに行けばいいの?」
「あんなに物があるんだ。売り払えば遊んだところでしばらくは暮らせるだろう」
真っ青になるリリシア。
確かにドレスは売ればそれなりな金額にはなるでしょうがリリシアに合わせたテーラーメイド品。誰でも着られるわけではないので買い手が限られてしまうので布としての値しか付きません。
大量にあるとパトリックが思っている宝飾品も数個を残して他は全てイミテーション。
小遣いを制限されてからは売り払って遊ぶ金を作っていたので、残りの本物を売った所で安いアパートに2年の家賃で足りるかどうか。全く遊ぶことも出来なくなるのです。
「いやっ!絶対に別れない!ここから動かないんだから!」
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