元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru

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王太子の人に言えない秘密

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「ほらほら、行っといで~」

夜中をブッ通しで駆け抜けたエレイン。昼過ぎには辺境の中の辺境に到着しております。
早速マジック厩舎から馬とヤギを出して放牧。
人が入ってきていないほぼ未開の地のような辺境です。飼い葉として売っているようなものは生えてはいないものの自然の草がどこかしこに生えており、馬はムシャムシャ。
ヤギは断崖絶壁を駆け上がって楽しんでおります。

一番頑張った若い馬の鞍を外して身軽にしてあげたあとは、屋敷の掃除です。

「どれどれ‥‥中は何が出るかな、何が出るかな…フッフー♪」

ギイイ~

少し丁番に油が足らないようですので、マジック倉庫から取り出す「●レ556」

「錆を取り、動きをよくする●レの556♪ やっぱコレよねぇ~」

スムーズな動きになった扉に大満足しております。

馬から外した鞍をヨッコラショと抱えます。
手にしているのはク●ポリメイト!どこで手に入れたんでしょう。

「ポリメ●イトをシュコシュコシュコ♪鞍にも艶出し遊ばせ♪」

確かにピカピカになっていきますが…エレイン。君の製造は何時なんだ?



しかし、建物の中は埃だらけです。多分ピカピカに磨き上げても埃が舞ってしまえば元の木阿弥。

洗浄魔法を使って隅々まで掃除を致します。
綺麗になるまで動き回る箒や雑巾を見てニコリ。

洗面台も汚れていますし蛇口を捻れば茶色い水が出ております。

「これじゃ暫く出しっぱにしなきゃいけないわねぇ」

ジャンジャン出ている水を見て歌うのは勿論あの歌です。

「ジャーンジャンタッタカターカズズズズズンっ!守るも攻ぇめるもくっろがぁねのぅ~♪」

っと、突然屋敷の外に飛び出したかと思うと、牧場に向かって「ヤッホゥー!」っと叫んで全然こだましない声を耳を澄ませて聞いております。

「はっ!そうだわ!何にもないから反射音がないんだわ!だから反響音も残響音もしないのよ!」

屋根についた苔を丁寧に取ると、家の周りにあったおそらく小さな池の残骸を修復して石に苔をつけていきます。
水を張ればそのうちトンボでも飛んできて産卵するかもしれません。

「やっぱ、秋になったらトンボを見て哀愁に浸らないとねぇ~。抱きしめぇるとぉ~いつも君はぁ~♪」

エレイン、密かにGO!が好きなのかも知れません。
カサブランカしながら、ぺたぺたと苔を石につけていきます。


※説明しよう (-。-)y-゜゜゜
反響音とは、音源がある状態で耳に聞こえてくる音である。
残響音とは、音源が途絶えてしまっても聞こえる音である。
なのでヤマビコを聞こうと思ったら、とてもつない声量が必要という事である。
ちなみにサイクリング、サイックリングヤホーヤホーはやまびこではない。



外に出たエレイン、キョロキョロとすると牧場のわきを流れる川に風魔法を使って水をまき上げると散水しております。
霧のようになったシャワーに太陽光線があたって虹が幾つも出来ております。

「ふむ。なかなかに楽しいカモ知れないわ!」

確かに自然以外は何もないけれど、これから1年誰にも干渉されず!誰にも何にも言われず!のんびりと暮らせると思うと悪いものではありません。

王都での生活は大変でしたものね!学園に行けば第三王子の婚約者だからとおべっかばっか。
王子妃教育はオールドヒステリーな元ご令嬢に虐められるし、家に帰れば書類整理に金の無心をやり過ごさないといけなかったんだもの!これはご褒美!ご褒美よぉ!!

放牧した馬たちは年がいったと言っていたけれど人間で例えればまだ50代くらい。
それにエレインの真贋で見た限りはまだやる気満々の馬ばかりだったのに肉にするなんてもったいない!

「お前たち…いい子ね~良い子♡」
「ブルル…」


なかなかに大自然を満喫する生活をしてほぼ2週間。目が覚めたら起きて、貯蔵している食料を食べて漫画を読み、牧場でヤギたちと戯れ、キャッキャうふふと遊んでいるとお客様が向かっているようです。

いつものようにテラスの椅子で寝転んでページをめくっているのは「山崎銀●郎」渋すぎない?
真っ赤なカセットデッキを置いて音楽を聞いております。

オートリバースになったこのカセットデッキに合わせて歌っております。
ここは大自然。ヒトというのはエレインしかおりませんのでかなり大声で歌っております。

「♪あっなたぁ~あっなたの影をぉぉ~あな」

A面の最後は曲が途中で終わります。エレインも歌うのをぴったりと止めます。
カセットテープあるあるで御座います。

「やっぱり46分じゃなくて60分か90分にすれば良かったわ」

そう言いながらカチっカチッと音がしてB面が始まります。

「♪チャララ‥‥」前奏から既にノリノリ。サビも勿論プロモーションビデオのように歌います。

「テェ~イク・オォォォン・ミィィ~♪テイクオッンミッ!」

1人ではなく、グループだと歌詞が重なるようですがしっかり歌っております。
勿論、歌いながらも漫画は読んでおります。

「いいわぁ~銀ちゃん。いいわぁ~」
「愉しんでいるようじゃないか」

突然の声に恐る恐る漫画で隠した目で声の主を確認すると…

「ワァオ!フゥッ!!」

椅子から飛び跳ねるように立ち上がるとムーンウォークで後ずさり。

「なっ何の用ですのっ?」
「いや、元気かなと思って」
「げ、元気ですわ。では御機嫌よう」
「おいおい、2日かけてここまであの屋敷から歩いてきたんだぞ?冷たすぎないか?」

爽やかな笑顔で語りかける王太子殿下。どうやら本当に歩いてきたようです。
後ろで従者たちがゼぇぜぇしております。

「どうしましたの?無駄に体力つけるために行軍ですの?」
「そんなのエレインに会うために決まっているだろう?」
「あのですね、わたくしこれでも人妻ですのよ?」

「フォッ!‥‥やめろエレイン‥そんなワードは…想像してしまうッ!」
「どんなワードです?団地妻?昼下がりの奥様?乱れ妻?」
「ハグゥッ‥‥マズイ。本当にマズい…」

エレインは知っています。怪しいチラシに掲載されているエロビデオ(勿論ビデオです)を購入し、見ようとしたら全てベータ専用テープで内容紹介と小さい写真だけで寝室に籠った王太子殿下の人に言えない過去。
そう、王太子殿下の持っているビデオデッキはVHS。ベータのテープは見られなかったのである。

返品をしようにも発送した後摘発された業者に魔石電話は繋がらない。
お気に入りは人妻シリーズ。見る事の出来ないエロビデオを秘蔵しているこの男が王太子殿下なのであった。
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