元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru

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宿に夫、妻は野宿

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ゆっくりと馬車の中でこれからの事を話す予定でしたが別行動になってしまった2人。
勿論エレインとパトリックでございます。

なかなか先に出たエレインを見つけられないパトリック御一行は急いだこともあり予定していた宿から次の宿場町に宿を取るようにしました。

夕食の時刻を少し過ぎておりますが、宿も空室があり全員がベッドで体を休めます。

「元々の予定の宿場町に泊ったのだろうか?」
「ですが我々が急いだのもありますが16時頃でしたらチェックインが17時ですし先に進まれたかと」
「まぁ、見知らぬ土地だし特にここには名物もないからなぁ」

そこに他の宿にエレインが宿泊をしていないか問い合わせに回った従者が戻ってきます。

「どうやらこの宿場町には宿泊はされていないようです」

女性の一人旅というのは結構目立つものですが、女性の4人でかなりの高齢マダムという組しかいないようです。

「いったい、何処に。やはり迷ってしまったのか」
「ですが、私の書いた地図を持っていますし大丈夫では?」
「それが一番不安材料だがな」
「大丈夫ですよ。濡れても滲まないインクを使ってますし紙も破れにくいやつですから」
「そっちの心配は全くない。むしろ破れて滲んで使えないほうが安心するくらいだ」

パトリックなりに心配をしているようですが・・・。

「リリシアのようにおとなしく馬車に乗ってくれればよかったのに」

ポツリと呟きます。

「リリシア様ねぇ‥‥」
「どうかしたのか?」
「いえ、前日に出発はされましたが、かなりのお買い物をされていて荷馬車の台数が増えたそうですよ」
「何か買うものがあったのか?」
「そりゃ、辺境の地に来る業者と王都の業者は違いますからね。ドレスだけでも15着。宝飾品も絵画も色々買われたようですよ。来月以降の請求書が心配です」
「そうか、来月以降は彼女の分も入るしな」
「女性2人となると‥‥他の予算を減らさねばなりませんがどうします?」

毎月のリリシアの買い物の額は辺境の屋敷の使用人全員の3,4か月分の給与に匹敵する額です。
おそらく王都での買い物だけでも2年分くらいの額になりそうだと従者は頭を抱えます。
すでに使用人の昇給は無くなる事が決まっていますし、今回王都に来る時に何頭も結構いい馬を連れてきて返済に充てるための金にするのに売ってしまいました。
今いる仔馬が売れるようになるまでは2,3年かかるでしょう。

「せめて半年くらい今ある物で我慢するとか、1回しか着ないドレスは売るとかしてくれませんかね」
「リリシアが着たものを売れというのか?変態男が買ったらどうするんだ?」
「さぁ‥‥(色んな男を股に咥えるよりマシじゃね?)」

喉元まで出かかったリリシアの裏の顔を伝えたくなりますがグッと我慢。
この従者もパトリックが辺境から王都に帰れば王宮の仕事に戻れます。
辺境から戻れなければ、戻るまで就いているしか仕事がないのです。
そう、今この国は就職氷河期でもあるのです。

なのでこの女、ブン殴ってやろうかと何度も思いましたが王都には実家に一時帰って貰っている妻と子がいるのです。生活費を稼ぐためにはグッと我慢をしているだけです。

翌朝は早めに出発する事にして21時にはフカフカのベッドでぐっすりと疲れを取ります。




一方エレイン。飛ばしたこともあっておそらくは明日の昼過ぎには辺境の屋敷には到達する位置まで進んでいます。
現在パトリック御一行よりも30キロほど進んだ位置まで来ておりますが若いとは言え馬も疲れます。
周りを見ても宿は一軒もありませんので野宿です。

「確か…マジック厩舎に飼い葉を多く買ってたと思うんだけど…」

ゴソゴソとポケットの中を覗き込み、元気そうな馬とヤギを見てニッコリしながら飼い葉を手にします。
泉に連れていき、馬に水を飲ませて簡易の柵を作っていきます。

当然手元が暗いので照明弾と称して火魔法で上空にミニ火玉を上げております。
DIYは侯爵家にいた時から屋根の修理などやっていましたのでお手の物。
あっという間に馬用の柵が出来上がります。
飼い葉を置いて、水をたっぷり飲んだ馬を連れてきて柵の中に居れると自分の番です。

マジック納戸から簡易テントと寝袋を出しワンタッチで広がるテントを飛ばないようにペグを打ち込んでカラビナでロープを使って固定をします。今夜風でゴロゴロ転がっては眠れませんからね。

食事も簡単です。マジック保管庫から焼きたてパンと野菜、それからスライスしてもらった肉を出し、肉に塩コショウをして枝にグサっとさすと、集めた枝をこんもり持ったら上空に上げた照明弾の火を下ろせば焚火の出来上がりです。

焚火で肉をコンガリ焼き上げれば出来上がり。
ジューシーな肉汁と焼きたてパン、キュウリ、トマトを交互に食べて夕食完了です。

「辺境の中の辺境かぁ…何をして過ごそうかなぁ…牧場は決定だとして、畑でも作るかぁ」

星空を眺めながら誰にも邪魔されない食事に読書タイム。
どうせ誰も見ていないからと、火魔法と風魔法を使って泉の水をシャワーにして体を洗います。
思いっきり馬を走らせたので結構髪の毛の中に砂が入っています。
ザラザラが無くなるまでしっかりすすぎ、シャンプーにトリートメント。

最後に温風にして体と髪を乾かしたら、馬の柵の周りに防御魔法を張った後はテントに入って寝袋に潜り込みます。

リーリー♪リーリー♪
虫の音を聞きながら読書タイム。今日はバナ●フィッシュのようですね。
相変わらずうつ伏せになって足を寝袋ごとなのでバタフライのような感じでバッサバッサ。
エレインのトランクの漫画ジャンルの構成はどうなっているのか知りたいくらいです。
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