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侯爵令嬢が迷子?
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どんどん先に進んでいくパトリック御一行。エレインとの差は開くばかりです。
先に出たエレインは菓子を買うために遠回りをしましたので現在はパトリックの方が先に進んでいます。
「おい、見つけたのか?」
「いえ、女性1人で騎乗してこちら方面に向かっている者は1人もいません」
「おかしいな‥‥まさか早馬並みに馬を走らせたんだろうか」
「ですが、そんなに急いで辺境に向かうほど楽しみにもされてなかったと思いますが」
「そうだが…」
「もうすぐ宿場町ですから宿屋案内に声をかけておきましょう」
「そうしてくれ」
首を傾げるパトリック。女性で騎乗できるものはある程度は高位貴族にはいますが、一人旅をしようとする者はいません。
ふっと思い浮かびます。
「まさかと思うが迷ったと言う事はないだろうか」
「違う街道を行ってしまわれたと?」
「そうだ。全然違う方向に‥‥女性は方向に疎い者が多いと聞く」
「偏見もあるかと思いますが、一応地図は渡しております」
「どんな地図だ?まさかと思うが全国地図ではないだろうな?」
「いえ世界地図です」
どんよりとした空気が馬車の中に漂います。
世界地図…それでたどり着けるとしたら余程の旅慣れした玄人でも苦労するでしょう。
「あ、でも手書きですがそれも渡していますよ?目印も入れましたし」
「どんなものだ?」
「こんな感じです」
従者は紙に線を1本引いて手前に【公爵家】先端に【ここ】と書いて、途中にある目印のレストランを1つ書き込みます。
「こんな感じです」
「お前ならこれで行けるのか?」
「えぇ。何度も行き来していますから」
「このミーバヤンというのはレストランだが…」
「えぇ、ミーバヤン斎心橋支店です」
「支店名は入れたのか」
「あっ!忘れてますね‥‥どうしましょう」
「ミーバヤンは…確か…」
「えぇ。全国展開していますので王都だけで332店舗あります」
これでたどり着けというのがかなり無謀な手書き地図。それ以外に持っているのは世界地図。
もしかしたら到着する頃には半世紀過ぎているかもしれないとパトリック冷や汗が流れます。
下手をすると場所を知っていてもこの手書き地図があるばかりに迷う可能性が高いです。
しかし、引き返すにも王都から放射線状に16方向に伸びている街道です。
どこに向かったか。ここではないとすれば確率は15分の1。
間違っていない事を祈るしかありません。
さてエレイン。ちゃんと間違わずに馬に乗って進んでいます。
お昼を食べていないので、ミーバヤン斎心橋支店で日替わり定食を食べておりました。
「ふむ。豚肉とニラの玉子炒め定食【焼餃子3コ付】って…にら玉豚よねぇ」
そう思いながらも、オサレな店内ですから街道沿いのドライブインのような運ちゃんにわかりやすいネーミングだと売れないんだろうななんて考えておりますが、向かいの回転すしにすれば良かったかなとも思っています。
何故かって言うと、20分以内に30皿食べると無料って桃太郎旗が風に靡いているからです。
「コハダなら50貫はいけるのに残念ですわ」
とても18歳の女の子とは思えない渋さでチョイスするんですね。
出来ればサーモンとかにしましょう。
貰った手書きの地図を広げますが、正直この道で合っているかは判らない状態のようです。
ですが、真贋の加護で見ても、従者は自信を持って書いていますので嘘の情報ではないようです。
判らない時は人に聞け。エレインは店員さんを1人暇そうなので呼びます。
判らないといけないなと世界地図を広げます。
4つ折りでポケットに入る大きさ、広げてもA4サイズのコンパクトサイズ。
「あのメッシュさんのいる辺境ってこの地図でどっちに行けばいいですの?」
店員困っております。決して判らないのではありません。
小指でチョンと触ってもこの大きさの地図ですとこの国をさすのとほぼ同じ範囲を示すだけだからです。
ブルブル震えながら小指の爪でここ…っとしますが範囲は広大です。
おそらく爪楊枝の先でついての幾つかの領全域が入るでしょう。
「すみませんっ!救済措置ありますか!」
「救済措置?」
「えぇっ!ヒントですわ。ヒントをください。この地図ではっ!」
ガサガサと手書きの地図を取り出します。その地図を見て顔が引きつる店員さん。
1本の線。出発地公爵家。到着地ここ‥‥ここっ??っと見ております。
途中にあるミーバヤンの文字。
ですが店員もおバカではありません。16方位に伸びる全てに当てはまるこの手書き地図。
「すみませんっ!もう一度救済措置!お願いします」
「ですが地図はこの2つしか渡されてませんの」
「オゥノゥ!‥‥メッシュさんというのはメッシュ公爵ですか?」
パッと希望の光が見えた店員さん。表情が明るいです。
「そうですわ!メッシュ公爵の領地の辺境ですわ!」
「えーっと…確か3兄弟だったと思うんですがどなたです?」
そうです。メッシュ公爵の息子は3人。残念な事に3人ともケンカでそれぞれ飛ばされております。
なので3人とも辺境にいるって事です。もちろんそれぞれ別の地域ですが。
しかし!ここにきてエレイン大失態!夫となるパトリックの名前をド忘れ。
「えーっと…パルメック…いやデリック…ん?パトラッシュ?」
「あのですね。メッシュ公爵の持っている領はこの先で3つ道が分かれるんです。右から長男のパトリック様、真ん中が次男のパメリック様、左の端が三男のパララック様です」
似たような名前をつけてんじゃねぇよと店員も思いますがエレインも同じ。
一瞬、パトリック?と思いましたが三人の名前を出された瞬間判らなくなってしまいました。
真贋で見ても、店員は嘘を言っていません。どうする!?エレイン!
先に出たエレインは菓子を買うために遠回りをしましたので現在はパトリックの方が先に進んでいます。
「おい、見つけたのか?」
「いえ、女性1人で騎乗してこちら方面に向かっている者は1人もいません」
「おかしいな‥‥まさか早馬並みに馬を走らせたんだろうか」
「ですが、そんなに急いで辺境に向かうほど楽しみにもされてなかったと思いますが」
「そうだが…」
「もうすぐ宿場町ですから宿屋案内に声をかけておきましょう」
「そうしてくれ」
首を傾げるパトリック。女性で騎乗できるものはある程度は高位貴族にはいますが、一人旅をしようとする者はいません。
ふっと思い浮かびます。
「まさかと思うが迷ったと言う事はないだろうか」
「違う街道を行ってしまわれたと?」
「そうだ。全然違う方向に‥‥女性は方向に疎い者が多いと聞く」
「偏見もあるかと思いますが、一応地図は渡しております」
「どんな地図だ?まさかと思うが全国地図ではないだろうな?」
「いえ世界地図です」
どんよりとした空気が馬車の中に漂います。
世界地図…それでたどり着けるとしたら余程の旅慣れした玄人でも苦労するでしょう。
「あ、でも手書きですがそれも渡していますよ?目印も入れましたし」
「どんなものだ?」
「こんな感じです」
従者は紙に線を1本引いて手前に【公爵家】先端に【ここ】と書いて、途中にある目印のレストランを1つ書き込みます。
「こんな感じです」
「お前ならこれで行けるのか?」
「えぇ。何度も行き来していますから」
「このミーバヤンというのはレストランだが…」
「えぇ、ミーバヤン斎心橋支店です」
「支店名は入れたのか」
「あっ!忘れてますね‥‥どうしましょう」
「ミーバヤンは…確か…」
「えぇ。全国展開していますので王都だけで332店舗あります」
これでたどり着けというのがかなり無謀な手書き地図。それ以外に持っているのは世界地図。
もしかしたら到着する頃には半世紀過ぎているかもしれないとパトリック冷や汗が流れます。
下手をすると場所を知っていてもこの手書き地図があるばかりに迷う可能性が高いです。
しかし、引き返すにも王都から放射線状に16方向に伸びている街道です。
どこに向かったか。ここではないとすれば確率は15分の1。
間違っていない事を祈るしかありません。
さてエレイン。ちゃんと間違わずに馬に乗って進んでいます。
お昼を食べていないので、ミーバヤン斎心橋支店で日替わり定食を食べておりました。
「ふむ。豚肉とニラの玉子炒め定食【焼餃子3コ付】って…にら玉豚よねぇ」
そう思いながらも、オサレな店内ですから街道沿いのドライブインのような運ちゃんにわかりやすいネーミングだと売れないんだろうななんて考えておりますが、向かいの回転すしにすれば良かったかなとも思っています。
何故かって言うと、20分以内に30皿食べると無料って桃太郎旗が風に靡いているからです。
「コハダなら50貫はいけるのに残念ですわ」
とても18歳の女の子とは思えない渋さでチョイスするんですね。
出来ればサーモンとかにしましょう。
貰った手書きの地図を広げますが、正直この道で合っているかは判らない状態のようです。
ですが、真贋の加護で見ても、従者は自信を持って書いていますので嘘の情報ではないようです。
判らない時は人に聞け。エレインは店員さんを1人暇そうなので呼びます。
判らないといけないなと世界地図を広げます。
4つ折りでポケットに入る大きさ、広げてもA4サイズのコンパクトサイズ。
「あのメッシュさんのいる辺境ってこの地図でどっちに行けばいいですの?」
店員困っております。決して判らないのではありません。
小指でチョンと触ってもこの大きさの地図ですとこの国をさすのとほぼ同じ範囲を示すだけだからです。
ブルブル震えながら小指の爪でここ…っとしますが範囲は広大です。
おそらく爪楊枝の先でついての幾つかの領全域が入るでしょう。
「すみませんっ!救済措置ありますか!」
「救済措置?」
「えぇっ!ヒントですわ。ヒントをください。この地図ではっ!」
ガサガサと手書きの地図を取り出します。その地図を見て顔が引きつる店員さん。
1本の線。出発地公爵家。到着地ここ‥‥ここっ??っと見ております。
途中にあるミーバヤンの文字。
ですが店員もおバカではありません。16方位に伸びる全てに当てはまるこの手書き地図。
「すみませんっ!もう一度救済措置!お願いします」
「ですが地図はこの2つしか渡されてませんの」
「オゥノゥ!‥‥メッシュさんというのはメッシュ公爵ですか?」
パッと希望の光が見えた店員さん。表情が明るいです。
「そうですわ!メッシュ公爵の領地の辺境ですわ!」
「えーっと…確か3兄弟だったと思うんですがどなたです?」
そうです。メッシュ公爵の息子は3人。残念な事に3人ともケンカでそれぞれ飛ばされております。
なので3人とも辺境にいるって事です。もちろんそれぞれ別の地域ですが。
しかし!ここにきてエレイン大失態!夫となるパトリックの名前をド忘れ。
「えーっと…パルメック…いやデリック…ん?パトラッシュ?」
「あのですね。メッシュ公爵の持っている領はこの先で3つ道が分かれるんです。右から長男のパトリック様、真ん中が次男のパメリック様、左の端が三男のパララック様です」
似たような名前をつけてんじゃねぇよと店員も思いますがエレインも同じ。
一瞬、パトリック?と思いましたが三人の名前を出された瞬間判らなくなってしまいました。
真贋で見ても、店員は嘘を言っていません。どうする!?エレイン!
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