元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru

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永久脱毛

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一言でいうならば、王宮の朝食は美味い。それに尽きる。
だが文句を言うならば量が少ない。せめてビュッフェ形式にしてもらえれば微妙な美味さを醸し出すスクランブルエッグをおかわりしたいくらいです。

あ~なんかスープは大人の夜会明けって感じで二日酔いには優しいシジミ汁。
でも朝から揚げ物がいらないと言いつつエビフライも尻尾までパクリ。
きっと名残惜しさを出すとまた来てくれるかも?ってリピーター狙いなのだろうか。

しかしトレーに量が決められていて無念と思い引きトレーを返却口に返した後で「あ、ご飯大盛」なんてリクエストに応えてくれるのを知った日にはもう立ち直れそうにありません。

部屋に戻ると今日の予定は御座いません。
ついでに言うならこの先の予定も御座いません。
予定のどこかで結婚式が入るようですが当事者が日取りをしらない結婚式。
こうなると替え玉でもいいんじゃね?なんて欲望もむくむく沸き立つものです。

する事がないというのは、忙しい時には天国に見えるけれどいざなってみると拷問に等しい。
いつ連絡があるか判らない状態だと買い物にすら行けない。
夕方になって「連絡ないじゃん!」「時間返せー」とか思ってしまうものです。

世の中お1人様が流行っておりますがこのエレインの世界にはオンラインゲームと言うものはないのでカバンの中にある遊び道具で昨日は「1人オセロ」「1人神経衰弱」「1人ババ抜き」「1人じゃんけん」で時間を潰しましたが流石に朝からとなる2日目はきついものがあります。

「暇~暇~ひぃま暇暇暇暇カメレェオォン~♪」替え歌を歌おうにもサビしか知らないと言うか歌えない異国の歌。
かといって大声で歌って扉の前を通る人に「くすっ」と笑われるのもどうかと小声で歌います。

そこに待望の待ち人来る!おみくじは小吉によく出るヤツ!がやってきます。

「はぁい」
「こんにちは。王宮のほうから来たんですけれども、お部屋の空調フィルターを今なら…」
ガチャリ

自分の部屋でもないのにフィルターなんか買えませんから!

危うく詐欺に引っかかるところでしたが、引っ掛かってみて散々に食い散らかすのももう飽きてしまったエレイン。
侯爵家にいる時からこの手の類はよくやってきますから見せるだけ見せておいて言い負かすのが大好きだった10歳の頃。あぁ懐かしい。

こんな時に限って魔石電話にオ~レオレオレ詐欺の電話もかかってこない。
ちっとも楽しくないと思っている今度こそ待ち人来りて笛を吹く。違いますそれ悪魔ね、デビル。

「こんにちは。陛下から預かって参りました」
「えーっと受け取りはサインでいいですか」
「出来ればハンコがいいんですけど」

無茶な事を言う配達員です。未成年がそうそうハンコは持ち歩きません。
社会人になって初めてシャチ●タを買ったのに肝心なところでハンコ忘れて100均で認めを探すのです。
そういう試練を乗り越えた時、ハンコ文化がなくなるという悲劇に見舞われるのが世の常。

陛下からの手紙には結婚式は1週間後で向こうのお宅に住み始めるのも1週間後。
荷物が少ないからいいようなものの、普通だったら引越業者探すの苦労しますよ?
苦労を知らない王宮育ち、あ~嫌だ嫌だ。まだ新宿育ちの方がマシです。

「女なんってさ~女なんってさ~♪」歌いながら何度目かになるトランク整理。
2つ持ってきたトランクを何とか1個に出来ないかを思案中です。
四角がどら焼き型になればなんとか詰め込めるんですが重たすぎるという問題が発生。
部屋が2階、3階ですと腕が千切れそうになります。
ホームエレベーターのある屋敷はこの世界には王宮を含め1軒もないのです。

諦めて2個にするエレイン。1週間後という事は今日は出かけてもオケって事だと自己解釈をして街にお出かけをします。
ギルドでお金を下ろして買い物をしていると、旧華族いえ、旧家族が向かいから歩いてきます。
パープルピンク頭は義姉です。
エレインこの義姉を見るといつも紫の街を歌ってしまいますが今日はグッと我慢をしたらカモメが飛んでいきます。
ついでに薄いブルーなレインも降ってくる始末。
※申し訳ありません。判る人しか判らないくだりです。

「あら?エレインじゃないの?」
「えぇ。疑問符をつけなくてもエレインです」
「丁度良かった♪ねぇちょっとお金貸してくれない?」
「34ペペなら貸せます。但し利息はトサンで。債権回収はボッタ組にお願いしますがどうします?良ければ顔写真のついた身分証明若しくは10ペペで良ければ馬車の馬車証明でお貸しできますわ」

「相変わらずケチね」
「いえ、そのお言葉、金を貸してくれそうな人に言う言葉ではないですね」
「さっきギルドから出て来たでしょう?貸しなさいよ」
「金融機関に行くのは出金だけじゃありません。入金にも使いますよ」
「なら下ろしてきなさいよ!」
「無理です。当座預金ですので」
「なっ何よ当座預金って…」
「手形や小切手の決裁に使う口座です。入れる一方通行の片道切符口座ですわ」
「チッ。使えないわね」
「いえ、使い道があるから100年以上金融機関が取り扱っているんですわ」
「そういう意味じゃないわよ!ホント、使えない子なんだから」

旧家族なだけで今は他人。使えない子呼ばわりされるいわれは微塵も御座いません。
むしろ、未成年の妹に金を借りる成人した姉の方が使えない子ではないかと思います。

と、言う事でこの先必要になりそうなものを買い物です。
包丁が欲しいのですが流石に1週間も部屋に寝かせておくのは銃刀法違反になるかと思うと手が出ません。
仕方がないのでこういうものは引っ越し後に買った方がよさそうです。

帰り道、特売セールだったトリートメントだけを購入するエレイン。
何故かと言うと、輿入れするメッシュ家。わきのお手入れをする一家ですがツルツルではありません。
トゥルトゥルです。腕を上げたら風にサラサラと靡かないといけない方なので肌ではなく毛のお手入れが必要なのですが‥‥エレインしくじりました。買った後にしくじりに気が付くのはメンタルやられます。

永久脱毛していたのでした。

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