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ハルメル王国崩壊

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ステファニアが辺境に到着した頃、つまりは出立して2か月ほど経った時、小さな変化がハルメル王国に起こった。それはとても小さな変化で気が付く者は極わずか。

日々の食材を購入する事で賄っている者は気が付かなった。

真っ先に気が付いたのは他国に本店を置く商会だった。商人たちは作物の収穫状況はしっかりと把握していた。取引をする上で収穫前の先物取引は大きく儲ける事も出来るが、逆に一族郎党が路頭に迷う事もある取引である。
(※リアルな株式の先物と混同しないようお願いします)

「すみませんが、買い付け頂いた価格の85%しか納入出来ません」
「それはないだろう。こっちは160トホン分の金はもう払っているんだ」
「お怒りは御尤も。ですが飼い葉の価格が上がったんですよ。作物そのものはご用意できます。ですがそれを運ぶ荷馬車の利用料が上がったんです」
(※1トホン=1トン)

商人は小麦を買い付けるが、荷馬車代は込みではなくその中に割合が存在したのだ。
いつもは買い付けで渡した金の20%が荷馬車代だったが、値上がり分で渡した金の中で処理できなかったのだ。


収穫は例年通りで大豊作ではないが【豊作】だった。
しかし、作物は獲れただけでは収入にはならない。購入してもらって利益が出るのだ。

「しかし、それでは15%分はどうするんだ」
「腐らせて肥料にするしかないだろう。値段が上がったのは飼い葉だけじゃない。馬糞や鶏糞を入れておく麻袋も価格が上がったんだ」

わずか2か月での出来事。

上がった価格は以前と同じ値段なら麻袋が100袋買えたものが95袋しか買えなかった。農夫たちは肥料を例年通りの量を確保する事が出来なかった。

同じように収穫した作物を運ぶのに、飼い葉や飼い葉に混ぜる飼料の値段も上がった。
こちらは飼い葉そのものと飼料の値上がりで以前の50キロ買う価格で38キロしか買えなかった。
荷を運ぶ馬のエサである。買えなかったから今日は食事抜きとはならない。

輸送業を生業とする商会は自腹を切って馬のエサを確保するか、馬を減らすしかない。
たった2カ月だがハルメル王国は敗戦国。まだ終戦から1年も経っておらずインフレが起きていないのはファミル王国の支援のおかげだった。

商人たちはなんとか自腹を切っていたが蓄えは2カ月で底をついた。
苦肉の策で値上げするしかなかったのだ。

商人たちの苦労を市井の民は、今日も食うや食わずやの毎日で考える余裕はない。
貴族も、国王代理のレアンドロも不作ではなく豊作なのだから数か月で改善するだろうと楽観視していた。
情報が回らなかったのは自国の商会ではなく他国に本社がある商会だったからだ。




そして、ステファニアが辺境で声を取り戻した頃、辺境へ出立して4カ月を過ぎた頃、耐えきれなくなった商人は商品価格を値上げ、若しくは同じ値段で量を減らして販売を始めた。

それでも商人たちは努力をしていたのだ。
2カ月経ち、さらに価格が上がった飼い葉や麻袋を利益を削り、雇っている従業員を解雇し、役員の給料も半分の支給として努力を続けた。

「ねぇ。このパン…少し前より半分とは言わないけど小さくなってない?」

少しづつ小さくしたパンに市井の民が気が付いた。
以前と同じ値段を払っても3分の2ほどの大きさのパンしか買えず、不作なら値上がりもある野菜は葉物も根菜も高止まりし続けている。

1袋に5個入っていた玉ねぎやジャガイモは3個になっても給料が上がるわけでなく出費を抑えるために、必需品の衣料品などの買い控えが始まった。

悪循環は加速していく。モノが売れなければ作っても仕方がない。
生産量を減らせば、生産するために買っていた原材料も購入量は少なくなる。

店に買いに行くよりも宝飾品や衣類を持って直接農家に購入に出向く庶民が増えた。そうなれば小売業者の店には閑古鳥が啼き始める。

「服や宝飾品は売るほどあるんだよ」
「そこを何とか。祖父の形見なんですがこれで小麦を分けてくれませんか」

物々交換を持ち込まれた農家は当初、どうせ廃棄するんだからと廃棄分を交換していたが、買取店も買い取り過ぎて看板はあるのに買い取ってくれなくなった。敗戦処理の最中で宝飾品など他国で売り捌く事も出来ない。
そうなれば農家も持ち込まれるだけ迷惑である。


労働者も解雇される者が多くなり、ステファニアが辺境に旅立って半年する頃には失業者が街にあふれた。

家賃が払えずアパートメントを追い出されたものは廃材を集め、雨を凌ぐ家を建てた。それが1つ、2つと集まりあっという間に貧民窟が幾つか出来た。


「ねぇ…このスープ。薄くない?」

ロザリーがカチャンとカトラリーを投げて皿に当たり跳ね返り床に落ちる。
贅沢がしたくてレアンドロの元にいる。邪魔者はいなくなったのに未だ王城住まいではなく離宮住まい。ここ1、2か月で侍女もメイドも数が減って、1人が2人分の仕事をしているためロザリーの支度にも影響があった。

イライラしている所に、明らかに質の落ちた食事。
フィレ肉はスジ肉になったし、そうでない時は半分ほどが脂身。
野菜も萎びたようなモノを混ぜて誤魔化している。
スープの具は減ったし、塩味がメインで胡椒の味がしない。
コンソメの味も忘れてしまいそうだった。

ロザリーの愚痴にレアンドロは執務室に従者を呼びつけた。

「どうなっているんだ」
「どうとは?」
「食事や使用人、明らかにおかしいだろう」
「そこですか…おかしいと思うのなら、ご自分の目で市井は視察されましたか?」
「何故俺がそんな所に行かねばならない。俺は実質の国王なんだぞ」
「では、その国王の役目を果たすために先ずは市井をご視察ください」

従者には原因がわかっていた。
わかっていたが、今は何とか民衆を誤魔化すために紙幣を刷り続けている。
それがインフレの引き金となる事は判っていたが、手元に来る金の額面をあげねば凌げなかった。


原因は、ステファニアの下賜である。

ファミル王国の国王レオポルドは狡猾だった。
ステファニアを下賜せよと命令を下し、命令に従って下賜すれば王宮内での待遇について問い合わせてきた。本当の事など言えるはずがないレアンドロは言い訳を考えろと従者に丸投げをした。

当たり障りない文言を考えて返答をすれば、虚偽があったとハッキリするまで支援を止めると通告があった。

この時まだ王都の離宮にステファニアはいたが、両国がやり取りを始めて一部の業者は戦の再来かとハルメル王国から手を引き始めた。悪い話ほど速く広まる。それが初回の値上げの要因になったのである。

実際にステファニアが辺境に出立した事を知った商人たちはハルメル王国切りが加速した。残って値上げをしていた商会はそれも慈善活動と割り切った者と、最後まで汁を吸い上げる悪徳業者だった。


民の不満がどんどんと高まり、警備隊との小さな衝突が起きるようになった。他国に親類や姻戚関係のあるものがいる貴族は【小旅行】だと言って早々に荷をまとめて出ていく。


「小さいうちはまだいい。早めに殿下の首を差し出す手筈を整えねば」


文句と丸投げばかりで執務をせず、ロザリーと遊興にこうじるか酒を飲むかのレアンドロは既に王宮の使用人からは見放されていた。

国王付きの従者も侍医から回復は見込めない事と持って1か月と国王の余命を宣告されていた。

「木偶と阿婆擦れを逃がさないようにしておけ」
?」
「今はまだダメだ。民衆が暴徒化すればそれもやむなしだが」
「承知致しました。それから備蓄の食料がもうありません」

少ない量でも王宮の従者たちは飢饉に備えて小麦などを備蓄していたが、度重なる値上がりの度に値上がり率を抑えるために二束三文で小売業者に放出してきたが、それももう底をつく。

――食べ物がなくなれば、人は人でなくなる――

国が国で無くなる日が戦の敗戦よりも身近に感じるとは思いませんでしたと従者は寝台でブツブツと呟く国王に視線を移しぽつりと呟いた。





「また値上がりか…1週間前の倍じゃないか」
「だが、給金の袋には給料が倍額で入っていたぞ」
「ホントか?俺のところは明後日が給料日なんだ。給料を倍にしてもらっても食費が追いつかないが、無ければ無いで何も買えないから困ってるんだ」

インフレが始まったハルメル王国では、紙幣の価値いや、ハルメル王国が発行する貨幣全ての価値が落ちていく。今では貧民窟でさえ銅貨や銀貨が落ちていても拾う者はいない。

2カ月前は銅貨3枚でパンが1斤買えた。
1カ月前は銅貨なら80枚になり、銅貨20枚で紙幣1枚のため、パンを紙幣で買うようになった。それまでパン屋で紙幣を出せば釣りがないと断られたのに、銅貨で支払われると山のように積み上がってしまい場所を取る。結果的に紙幣での支払いしか出来なくなった。

そしてそれからは週ごとに価格は倍となった。

100ルメルは翌週200ルメルになり、また週が明ければ400ルメル。4周目には800ルメル。支払われる給与もゼロの数が増えていき、厚さ、いや重さを持った給料袋となったが、生活は苦しくなるばかりだった。


「どうしてこんな急に生活が苦しくなったんだ。戦時中の方がまだ余裕があったくらいだ」
「俺なんか最悪だ。1年前に復興事業も始まるっていうから貯金してた金で国債を買ったんだ…文字が書いてあるばかりに無地の紙より価値がないんだぜ」

「ファミルのご令嬢が散財して借金が増えたんじゃないか?」
「くそっ。戦争に勝った国の女だからといい気になりやがって」
「大通りの仕立て屋で、またドレスを作ったって言うぜ」
「なんだって?俺んのガキは繕いながら一張羅を着てるってのによ!」
「お妃様はこんな汚ねぇ所に来なくても城まで来てくれるからなぁ。街に来たら一言言ってやりてぇよ」


民衆はステファニアが辺境伯に下賜された事を知らない。
次々に口汚くステファニアや王家を罵り始めた。

人々の不満は日ごと、いや時間ごとに高まっていく。






そんな中、従者に【市井を見てこい】と言われたレアンドロはロザリーを連れて貴族街に行った。しかし、レアンドロの目には【人が多い=活気がある】としか見えなかった。

以前は大通りと言えば小汚い服を着たものは覗く事すら憚られていた。大通りの店は【つけ払い】の出来る裕福な者以外はほとんどの店で入店すら断られていた。
多額の現金を持ち歩くのは下品な行為とされていて、富裕層の民や貴族は「お代は請求書を回して」貰って後払いだったのだ。
一般の民衆でも【大通りの店に行く】となれば御粧しおめかしをして出かけたものだった。

だが、今は職を失って食べるために大通りを訪れる貴族などに物乞いをしたり、取り囲んで食料を恵んでもらう者が増えた。路地に隠れていては貴族がやってきても間に合わないため「その時に備えて」店舗の壁に背を預けて居座り、いつでも飛び出せるように並んでいたのだ。


「人が多いな。並んでいるのは店への入店街の行列か?」
「やだ…なんだかあの人たち、汚いわよ?顔も汚れてるし」
「顔?…そう言えばそうだな…」
「それに足を見て!素足よ?靴を履いてないわ…臭そう」


レアンドロは御者に「道を間違っていないか」と声をかけた。
1つ裏の通りに入れば、よろしくない連中の住処でもあり囲まれれば終わりだ。
しかし御者は道は間違っていないと言い、通りの四つ角に立てられた「通りと筋」の名前が書かれた木札を指差した。レアンドロが木札を見れば確かに王都一番の大通りの名前が見てとれる。

「仮装行列でもあるのか?…いやその前に馬車の速度が速い。ゆっくり走らせろ」


再度、レアンドロは御者に声をかけた。
しかし、御者は2人もレアンドロと違って御者席にいるため、人々の注目をおおいに浴びている。スピードを緩めればあっという間に馬車は取り囲まれて動けなくなってしまうだろう。
通常1人の御者が2人となれば、それなりに「食料」を持っている者だと思われてしまう。

そうなればレアンドロは馬車内にいるので扉を壊されでもしない限り安全だろうが御者は違う。身ぐるみ剝がされるのは目に見えている事だ。彼らは剥ぎ取った服は売るか、着るのだ。

彼らに囲まれた時に、遠ざける方法は一つ。食べ物を遠くに投げる事だ。
金を投げても効果はない。数枚の紙幣を掴んだところでパンは4分の1斤も買えないのだ。
だから貴族たちの馬車には「投げる」ための食料が積まれているのだが王族の乗る馬車に食料など積み込んではいない。

今回は「お忍び視察」と言う事で、護衛の兵士すら一人としていない。
尤も、給料の支払いが王宮関係の者は人事院の決定が無ければ変更が出来ないため以前のままの給料。支払われる1か月分の給料全額で、キャベツ1個と人参が2本買えるかどうかだ。これでは生活が出来ないと今、騎士団に所属をしているのは10名もいない。お忍び視察を護衛する前に自分のロッカーを片付ける方が大事なくらいだ。


「おいっ!速度を落とせ。尻がバカになる」
「知りませんよ。どうなっても…」

御者は御者台から飛び降りて脱兎の如く逃げ出すにはどこで速度を落としてよいかを考えた。馬に付けられた馬車を繋ぐハーネスを外している時間などないだろう。

ガラガラガラ…ガラ…ガラ‥馬車の速度が落ち、飛び乗ろうと思えば飛び乗れるくらいになると座っていた者達が立ち上がるのが見える。後ろを振り返ればもう数人が小走りになりながら馬車を追いかけて来ていた。

「もっとゆっくり走らせろ。何をそんなに急いでるんだ」
「そうよ。これじゃ視察にならないわ。来た意味がないじゃない」

レアンドロとロザリーの声に御者はお互いの顔を見合わせた。

ガラガラと言う車輪の音が、カタン、カタンとゆっくり回転を始めた時、御者は「せぇの!」で手綱を放り出し、馬車を飛び降りた。歩くのとほぼ変わらない速度の馬車からは転ぶ事なく地面に足をつけた御者は一目散に走り出した。

ドドン!!ドンドン!

馬車は前にも後ろにも進まなくなったが、何かが四方からぶつかって来る音に大きく揺れた。

「えっ?何?何?何で揺れているの?」
「うわぁ!なんだこいつら」

小窓には何人もの男が顔を貼り付けて中を覗いていた。ドアノブもガチャガチャと激しく音を立てる。

「何をしてるんだ!早く馬車を走らせろ!」

レアンドロの声に応える者などとっくに逃げ出してしまっている。
御者がいなければ馬車が動くはずがない。

レアンドロは内側からドアノブを押さえつけたが、外側から激しく扉を開けようとする動きに何時まで耐えられるかわからない。「早く出せ」と何度も叫ぶが、叫ぼうが泣いて喚こうが馬車は動かない。

「キャァァ!!」
「どうしたっ」

ギシギシと庫内が揺れるが、側面の壁と天井との間に人間の指先が見えた。
ドアは開いたところで3、4人しか中に入れない。
ならば天井板を剥がしてしまえとばかりに力づくで天井板が剥がされ始めていた。

ガゴン!!ミシミシ‥‥バギッ!

薄暗かった庫内が突然明るくなった。天井は半分なくなり青空が見えていた。
青空は真ん中を残し、縁取りになって中を覗いていたのは人間の顔だった。


あっという間に馬車の外に引きずりだされたレアンドロとロザリーは着ていた服やドレスを幾つもの手があちこちに引っ張り、ビリリと裂けたと思えばあっという間に剥ぎ取られた。
ブルルンとレアンドロの腹が揺れる。

「俺たちはアバラも浮き出てるってのに!なんだ!この、みっともない体は!」
「やめろっ!欲しいものはなんでもやる!止めてくれっ」

レアンドロとロザリーに襲い掛かる民衆。痛みを感じなくなり意識がなくなりかけた時、周りから突然人間が消えた。残ったのは舞い上がる砂埃。

「ゴホッゴホッ…つぅっ…」
「何をしてるんですかね。こんな場所で…どうせ馬車をゆっくり走らせろとか言ったんでしょう?」

しゃがみ込みもせず、裸で横たわるレアンドロを見下ろしていたのは国王付きの執事だった。失神したロザリーを足で蹴り転がすのはレアンドロに「市井を見ろ」と言った執事。

2人がパンや野菜などを幾つも放り投げた結果、群がっていた民衆が散ったのだった。

「まだ死なれては困るんですよ。責任が取れるのはあなた位ですからね」
「何を…言って…」
「息が臭いから喋らなくて結構。あぁそこの君。肉とパン、ワインをやるからこの大きな荷物を運んでくれないか」

物々交換のように、食料と引き換えに離宮に戻ったレアンドロとロザリーだったが、体を横たえた部屋はそれまでの部屋とは違った部屋だった。

服も着せられないまま、逃げ出さないようにと右足と左手が背中側で重石の付いた拘束具で固定をされる。寒さからではない。恐怖でレアンドロとロザリーはガタガタと震えた。
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