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静かな宮、新しい命の誕生
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ファミル王国の第二王子宮は静かなものだ。
第二王子アベラルドは宮には寄り付かず、王宮内にある執務室で日常の全てを終える。眠るのは執務室に併設された仮眠室で、食事も会食があればその場に出向くがそれ以外は執務室で軽めのもので済ませる。
2、3か月おきに開催される夜会ではカリメルラは当初の1年は妊娠中で大事を取り、翌年は産褥という理由を付けて半年ほど出席を許さなかった。復帰してからの夜会は2度あった。
アベラルドはその2回とも片道10日はかかる地方への視察として4、5日前に出立し、物理的に出席できない状況を作り上げて参加を見送った。
カリメルラと顔を合わせたのはステファニアが隣国に出立した1週間後が最後。
その日はアベラルドとカリメルラの結婚式の日だった。
ファミル王国では妊婦の花嫁姿は快く受け入れられない。特に王族であれば「順番」というものがあるだろうと無言の批判を受けるのである。
極秘に近い形で行われた結婚式はカリメルラには理解は出来ても屈辱だった。
カリメルラにはジージルという思い人がいたが、会う事もままならず宮に軟禁されたままこれからの生涯が始まるのだ。お互い、愛を誓いあうことなど出来るはずも無かった。
ステファニアが身綺麗なままの体で残っていたのは、アベラルドにしてみれば政略的な婚約、結婚とは言えステファニアは唯一無二であり、替えの利かない女性で何ひとつ瑕疵を付けたくなかったからだ。
アベラルドも12歳で精通を覚えてからは全くの無関心だった訳ではない。
1歳年下のステファニアが幼児体形から少女を思わせる体形、そして女性へと芋虫が蛹になり蝶になる過程を隣で見てきたのだ。どうしても欲望を抑えきれない時は自身で処理をしていた。
1歳の時に婚約したアベラルド、当時はステファニアを意識もしていなかった。月日が経ちステファニアが這いだし、よちよちと歩き出す。
妹のように可愛がり、「言葉が通じる」年齢になれば共に机を並べて教育を受け、ゆっくりと19年間で愛を育んできた。兄が即位をした後は臣籍降下をして、権利を持っている伯爵家を興し王都から離れた領地でステファニアと田舎暮らしをしようと領地の屋敷も建て替えたばかりだった。
第一王子とその婚約者よりも相思相愛と民からも慕われたアベラルドとステファニアの別れがこんな形で訪れるとはその場にいる者全てが夢にも思わなかった。
その年の冬。カリメルラは数日前からシクシクと痛みだす前駆陣痛とは違う痛みを感じた。腹から出れば子供がアベラルドの子でない事は一目瞭然である。
貴族の教育をまともに受けていないカリメルラは托卵が死罪である事は知らなかった。これでステファニアにアベラルドとはそのような関係になった事はないと弁解できる。
カリメルラはその思いだけで2日間に渡る辛い陣痛を1人で乗り切った。
生まれた子供は金髪碧眼のアベラルドには似ても似つかない女児だった。
オレンジの瞳の色に赤茶色の髪の色の赤子。
カリメルラのウグイス色の髪色も若草色の瞳の色も受け継いでいない子。
托卵だと誰もが心に思ったが、アベラルドが手を出してしまったのも事実だとされており、親に似ていなくても先祖返りと言う事もある。明確に親子ではないと判定する事が出来ない以上アベラルドは自身の籍に入れるしかなかった。
カリメルラには会わず、生まれた子を一目見たアベラルドは首謀者は判らないが謀られたと悔んだ。その日以来、報告は受けても子供の声も姿もアベラルドは拒否をした。
「…くよね…全然似てないの。もうびっくりよ」
「公爵家と言っても庶子なんでしょう?王子を寝取るなんてね」
「ねぇねぇ。これって…托卵ってやつじゃないの?」
「しぃぃ~っ!声が大きい。みんなそう思ってるわよ」
「でも、なら新しい勤め先探さないと!妃殿下が死罪なんて巻き添えはごめんだもの」
少し開いた扉から漏れ聞こえてくる声にカリメルラはまた何も言えなくなった。
托卵をするつもりなんか微塵もなかった。
そもそもで子供はジージルとの子供であるのは明らかだった。
こんな事になった時、カリメルラですらこの子が腹に宿った事は知らなかったのだ。
托卵は死罪。
隣の小さなベッドでぐずり出す赤子に、カリメルラは肘を使って体を起こしそっと手を伸ばした。皺くちゃの顔の目元も、唇も、耳たぶもジージルとそっくりな我が子に微笑みかける。
動けば下腹にまだ痛みを感じながらも、カリメルラは赤子の背に手を回すと抱きしめた。小さな体の匂いが柔らかいなんて初めての感覚だった。
――この子だけは何としても守らなきゃ――
結果的には托卵になってしまっているけれど、カリメルラはアベラルドに説明をしようと思い立った。
「誰か!誰かいるかしら」
カリメルラの声に、扉が開きメイドが1人入室してきた。
「殿下に会いたいの。約束を取り付けてくれない?」
「それは私に言われましても‥‥」
「なら、カルロさんを呼んできて。彼なら――」
「カルロ様ならしばらくはこちらに来ないと思います」
「そうなの?‥‥なら誰でもいいわ。兎に角殿下に。アベラルド殿下に会いたいと言伝をお願い」
「約束は出来ませんが、伝えてはみます」
渋々とメイドは部屋から出て行った。
カリメルラはこれで、少なくとも説明は出来る。責を負わねばならないのならこの子をジージルの元に。そしてその責を負うのは自分だけで留め置いて貰えないか頼むつもりだった。
しかし数日経っても面会の返事が来ない。
「返事…まだなのかしら?」
「返事になるかはわかりませんが、赤ちゃんの名前はブリジッタ様、届けも出されていると聞きましたが」
「ブリジ…どういう事っ?!」
「ですから、それは私に言われても困ります」
カリメルラには信じられなかった。
明らかに自分の子ではないのにどうしてアベラルドは実子として届け出をしたのか。
相談もなく勝手に何故名前を決めたのか。
そして、どうして自分に会って話をしようとしないのか。
「偉い人の考えることは解りませんから」メイドは言った。
産褥の体も癒え、夜会に出席できるようになってもアベラルドは視察だと言って来なかった。庶子の公爵令嬢ではなく第二王子妃なのだとしても、夜会や茶会は針の筵以外何ものでもなかった。
周りの対応にカリメルラはそれまでステファニアにどれだけ守られていたのかを知った。
公爵家内のいびりや虐めなど大したものではない。
百戦錬磨の魑魅魍魎の中に放り込まれた格好のエサとなったカリメルラは、王子妃という立場故にそこから逃げる事も出来ない。
ステファニアを気に入っていた王妃や王太子妃もカリメルラを庇ってはくれない。
むしろ魑魅魍魎たちに燃料を投下する始末だ。
カリメルラは半年で起き上がる事が出来なくなる程に衰弱し、寝込んでしまった。
それでもアベラルドがカリメルラの元に訪れることはなかった。
第二王子アベラルドは宮には寄り付かず、王宮内にある執務室で日常の全てを終える。眠るのは執務室に併設された仮眠室で、食事も会食があればその場に出向くがそれ以外は執務室で軽めのもので済ませる。
2、3か月おきに開催される夜会ではカリメルラは当初の1年は妊娠中で大事を取り、翌年は産褥という理由を付けて半年ほど出席を許さなかった。復帰してからの夜会は2度あった。
アベラルドはその2回とも片道10日はかかる地方への視察として4、5日前に出立し、物理的に出席できない状況を作り上げて参加を見送った。
カリメルラと顔を合わせたのはステファニアが隣国に出立した1週間後が最後。
その日はアベラルドとカリメルラの結婚式の日だった。
ファミル王国では妊婦の花嫁姿は快く受け入れられない。特に王族であれば「順番」というものがあるだろうと無言の批判を受けるのである。
極秘に近い形で行われた結婚式はカリメルラには理解は出来ても屈辱だった。
カリメルラにはジージルという思い人がいたが、会う事もままならず宮に軟禁されたままこれからの生涯が始まるのだ。お互い、愛を誓いあうことなど出来るはずも無かった。
ステファニアが身綺麗なままの体で残っていたのは、アベラルドにしてみれば政略的な婚約、結婚とは言えステファニアは唯一無二であり、替えの利かない女性で何ひとつ瑕疵を付けたくなかったからだ。
アベラルドも12歳で精通を覚えてからは全くの無関心だった訳ではない。
1歳年下のステファニアが幼児体形から少女を思わせる体形、そして女性へと芋虫が蛹になり蝶になる過程を隣で見てきたのだ。どうしても欲望を抑えきれない時は自身で処理をしていた。
1歳の時に婚約したアベラルド、当時はステファニアを意識もしていなかった。月日が経ちステファニアが這いだし、よちよちと歩き出す。
妹のように可愛がり、「言葉が通じる」年齢になれば共に机を並べて教育を受け、ゆっくりと19年間で愛を育んできた。兄が即位をした後は臣籍降下をして、権利を持っている伯爵家を興し王都から離れた領地でステファニアと田舎暮らしをしようと領地の屋敷も建て替えたばかりだった。
第一王子とその婚約者よりも相思相愛と民からも慕われたアベラルドとステファニアの別れがこんな形で訪れるとはその場にいる者全てが夢にも思わなかった。
その年の冬。カリメルラは数日前からシクシクと痛みだす前駆陣痛とは違う痛みを感じた。腹から出れば子供がアベラルドの子でない事は一目瞭然である。
貴族の教育をまともに受けていないカリメルラは托卵が死罪である事は知らなかった。これでステファニアにアベラルドとはそのような関係になった事はないと弁解できる。
カリメルラはその思いだけで2日間に渡る辛い陣痛を1人で乗り切った。
生まれた子供は金髪碧眼のアベラルドには似ても似つかない女児だった。
オレンジの瞳の色に赤茶色の髪の色の赤子。
カリメルラのウグイス色の髪色も若草色の瞳の色も受け継いでいない子。
托卵だと誰もが心に思ったが、アベラルドが手を出してしまったのも事実だとされており、親に似ていなくても先祖返りと言う事もある。明確に親子ではないと判定する事が出来ない以上アベラルドは自身の籍に入れるしかなかった。
カリメルラには会わず、生まれた子を一目見たアベラルドは首謀者は判らないが謀られたと悔んだ。その日以来、報告は受けても子供の声も姿もアベラルドは拒否をした。
「…くよね…全然似てないの。もうびっくりよ」
「公爵家と言っても庶子なんでしょう?王子を寝取るなんてね」
「ねぇねぇ。これって…托卵ってやつじゃないの?」
「しぃぃ~っ!声が大きい。みんなそう思ってるわよ」
「でも、なら新しい勤め先探さないと!妃殿下が死罪なんて巻き添えはごめんだもの」
少し開いた扉から漏れ聞こえてくる声にカリメルラはまた何も言えなくなった。
托卵をするつもりなんか微塵もなかった。
そもそもで子供はジージルとの子供であるのは明らかだった。
こんな事になった時、カリメルラですらこの子が腹に宿った事は知らなかったのだ。
托卵は死罪。
隣の小さなベッドでぐずり出す赤子に、カリメルラは肘を使って体を起こしそっと手を伸ばした。皺くちゃの顔の目元も、唇も、耳たぶもジージルとそっくりな我が子に微笑みかける。
動けば下腹にまだ痛みを感じながらも、カリメルラは赤子の背に手を回すと抱きしめた。小さな体の匂いが柔らかいなんて初めての感覚だった。
――この子だけは何としても守らなきゃ――
結果的には托卵になってしまっているけれど、カリメルラはアベラルドに説明をしようと思い立った。
「誰か!誰かいるかしら」
カリメルラの声に、扉が開きメイドが1人入室してきた。
「殿下に会いたいの。約束を取り付けてくれない?」
「それは私に言われましても‥‥」
「なら、カルロさんを呼んできて。彼なら――」
「カルロ様ならしばらくはこちらに来ないと思います」
「そうなの?‥‥なら誰でもいいわ。兎に角殿下に。アベラルド殿下に会いたいと言伝をお願い」
「約束は出来ませんが、伝えてはみます」
渋々とメイドは部屋から出て行った。
カリメルラはこれで、少なくとも説明は出来る。責を負わねばならないのならこの子をジージルの元に。そしてその責を負うのは自分だけで留め置いて貰えないか頼むつもりだった。
しかし数日経っても面会の返事が来ない。
「返事…まだなのかしら?」
「返事になるかはわかりませんが、赤ちゃんの名前はブリジッタ様、届けも出されていると聞きましたが」
「ブリジ…どういう事っ?!」
「ですから、それは私に言われても困ります」
カリメルラには信じられなかった。
明らかに自分の子ではないのにどうしてアベラルドは実子として届け出をしたのか。
相談もなく勝手に何故名前を決めたのか。
そして、どうして自分に会って話をしようとしないのか。
「偉い人の考えることは解りませんから」メイドは言った。
産褥の体も癒え、夜会に出席できるようになってもアベラルドは視察だと言って来なかった。庶子の公爵令嬢ではなく第二王子妃なのだとしても、夜会や茶会は針の筵以外何ものでもなかった。
周りの対応にカリメルラはそれまでステファニアにどれだけ守られていたのかを知った。
公爵家内のいびりや虐めなど大したものではない。
百戦錬磨の魑魅魍魎の中に放り込まれた格好のエサとなったカリメルラは、王子妃という立場故にそこから逃げる事も出来ない。
ステファニアを気に入っていた王妃や王太子妃もカリメルラを庇ってはくれない。
むしろ魑魅魍魎たちに燃料を投下する始末だ。
カリメルラは半年で起き上がる事が出来なくなる程に衰弱し、寝込んでしまった。
それでもアベラルドがカリメルラの元に訪れることはなかった。
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