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第17話 とんでもない仕事の勧誘
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――何?何なの?もしかしてここは当たってヤッター!ってところだったの?――
それは無理だ。クジは買う事は出来ても当選番号を自分でどうにか出来るものじゃない。
どうしたらいいんだろうとジャックから目を逸らしたロッティーナの手をジャックは優しく握った。
「僕がその金を立て替えよう」
「フェッ?!‥‥あの‥いえいえ!そんな事して頂かなくて大丈夫ですから!」
流石にそんな大金をぶつかっただけで立て替えて貰うなんてあり得ない。
ロッティーナは固辞した。
しかしジャックは握った手に少し力を入れてロッティーナに問う。
「大丈夫じゃないだろう?君はこの婚約を望んでいない。僕は部外者だがそれでも婚約者がいるのに他の異性に傾倒している、そんな男の風上にも置けない男なんてな、仮に君がその婚約者にゾッコンで、どうあっても結婚したいと言っても貴族の婚約や結婚というのは契約なんだ。その契約をどうとでも考えているようなヤツとは考え直せと全力で説得するよ」
「ん?好きじゃないです。でも流石に3千万も立て替えて頂く理由がないと申しますか…」
「理由なら作ればいい。そうだな。丁度仕事の手伝いをしてくれる女性が欲しかったんだ。君を雇うよ。年棒は800万でどうだろうか。機密も扱うから住み込みになってしまうが、そこから住居費に食費など経費は引かせてもらってだな…。5年も勤めてくれれば貸した分を返してもらっても金は貯まるはずだ。3千万は先払いだな」
「無、無理ですよ!侯爵様のお手伝いなんて出来ません!」
「それが出来るんだ。実は侯爵って立場は厄介でね。斬った張ったの実働部隊は辺境伯が担ってくれているけれど、そうなる前に話し合いで落としどころを作ったり、戦略を練ったりするのが侯爵家の仕事なんだ。でもほら、話し合いの場に武骨な野郎どもばかりだと一触即発な空気になる事も多くてね。華が1輪あるだけで和やかに話し合いも出来ると言うものさ」
「ですから!そんな重大なお役目なんて出来ませんよ」
「君は僕の隣でにこにこしながら書類を渡してくれればいい。読み書きは出来るだろう?」
「それは…まぁ‥出来なくもありませんが他国の言語は‥」
「翻訳をする係は別にいる。君の仕事は僕の隣で「あ、ヤバそう」って空気になったらそいつに微笑んでくれればいいよ。剣ばかり握っている野郎たちは女性に免疫がなくてカッコいいところを見せようとする生き物なんだ。おそらく師団に匹敵する破壊力を持ってると思うからさ」
「で、でも…」
迷っているロッティーナに王太子は微笑む。
「引き受けてやってくれるとありがたいな。ジャックと結婚しろとかって事じゃなく国としてもね、これからは女性が働ける場っていうのも周知させる目的もある。女性は重要な役に付けない、大事な会議に席は不要、そんな考えを持っている奴らの目を覚まさせる意味もある。女性は実際の生活を根底から支えているんだ。女性でないと出来ない仕事もあると知らしめることも出来るんだよ」
王太子にそう言われたら「嫌です」とはなかなか言えない。
それにロッティーナは王太子の言葉に「そうね」と思う事もあった。
仕事を貰っている経理の仕事。役職はブルーノだがブルーノの部下は全員パートの女性達。ブルーノがダメという事ではなく、ブルーノも見落とす事をパートの女性たちが補佐しているから成り立っている。
商会の経営が一時期傾いたこともあったが、持ち直したのも女性従業員の知恵があった。
商会は茶葉を輸入し、販売をしているのだが茶葉だけで売れる時代はもう終わった。そこに茶に合う菓子をお勧めする、そんな事は他の商会でもしているが、商会の女性たちは飲んだ後に注目した。
茶器はどうしても茶渋などで色が残る事がある。
茶器は色んな装飾もあって洗うのにも一苦労する品。次に使う時のための洗剤を付けたのだ。
その洗剤が平民でも気軽に買えるため大当たりし、茶葉の売り上げと同じ売り上げを洗剤が叩き出して商会は持ち直した。
ちらりと王太子を見る。微笑んでる。
さらにちらりとサレンダーを見た。同じく微笑んでる。
恐る恐るジャックを見た。
「お願い」とやっぱり捨てられた仔犬のように「キュゥン」と声が聞こえてきそうな懇願する目でロッティーナを見ていた。
大金を立て替えて貰うのは心苦しいが、断る事が出来そうにない空気が漂う。
「解りました。でも本当に素人なので何もできないかも知れませんよ?」
「良いんだよ。そうだな。慣れるまでは侯爵家の執事たちと雑務をしてもらおうかな。住み込みになるけど大丈夫?」
「住み込みは大丈夫です。ただ商会から引き受けた仕事があるので月末までは待って頂ければ」
「侯爵家ですればいいよ。部屋は余っているしね。服とかは制服を支給するし…家には僕も説明に行った方がいいかな?」
「家は大丈夫です。荷物もありませんので…あ、頼まれた荷物だけ取りに行かないと…です」
「じゃ、決まりだ。支度金の方は任せて。一両日中にダストール伯爵家に払っておくよ。1週間後が誕生日だろう?手続きに僕も一緒に行くよ。余裕見てその頃には全部終わってるだろうしね」
「いいんですか?こんな面倒ごと‥。ぶつかっただけなのに」
ジャックはクスっと笑った。
「ぶつかったんじゃない。あたったんだ。クジには外れても幸運に当たったと思ってくれればいい」
不安がないと言えば噓になるが、王太子もサレンダーも「任せろ」とロッティーナに微笑んだ。
ロッティーナは「なるようにしかならないかな」と…正直な気持ち、諦めの心境だった。
それは無理だ。クジは買う事は出来ても当選番号を自分でどうにか出来るものじゃない。
どうしたらいいんだろうとジャックから目を逸らしたロッティーナの手をジャックは優しく握った。
「僕がその金を立て替えよう」
「フェッ?!‥‥あの‥いえいえ!そんな事して頂かなくて大丈夫ですから!」
流石にそんな大金をぶつかっただけで立て替えて貰うなんてあり得ない。
ロッティーナは固辞した。
しかしジャックは握った手に少し力を入れてロッティーナに問う。
「大丈夫じゃないだろう?君はこの婚約を望んでいない。僕は部外者だがそれでも婚約者がいるのに他の異性に傾倒している、そんな男の風上にも置けない男なんてな、仮に君がその婚約者にゾッコンで、どうあっても結婚したいと言っても貴族の婚約や結婚というのは契約なんだ。その契約をどうとでも考えているようなヤツとは考え直せと全力で説得するよ」
「ん?好きじゃないです。でも流石に3千万も立て替えて頂く理由がないと申しますか…」
「理由なら作ればいい。そうだな。丁度仕事の手伝いをしてくれる女性が欲しかったんだ。君を雇うよ。年棒は800万でどうだろうか。機密も扱うから住み込みになってしまうが、そこから住居費に食費など経費は引かせてもらってだな…。5年も勤めてくれれば貸した分を返してもらっても金は貯まるはずだ。3千万は先払いだな」
「無、無理ですよ!侯爵様のお手伝いなんて出来ません!」
「それが出来るんだ。実は侯爵って立場は厄介でね。斬った張ったの実働部隊は辺境伯が担ってくれているけれど、そうなる前に話し合いで落としどころを作ったり、戦略を練ったりするのが侯爵家の仕事なんだ。でもほら、話し合いの場に武骨な野郎どもばかりだと一触即発な空気になる事も多くてね。華が1輪あるだけで和やかに話し合いも出来ると言うものさ」
「ですから!そんな重大なお役目なんて出来ませんよ」
「君は僕の隣でにこにこしながら書類を渡してくれればいい。読み書きは出来るだろう?」
「それは…まぁ‥出来なくもありませんが他国の言語は‥」
「翻訳をする係は別にいる。君の仕事は僕の隣で「あ、ヤバそう」って空気になったらそいつに微笑んでくれればいいよ。剣ばかり握っている野郎たちは女性に免疫がなくてカッコいいところを見せようとする生き物なんだ。おそらく師団に匹敵する破壊力を持ってると思うからさ」
「で、でも…」
迷っているロッティーナに王太子は微笑む。
「引き受けてやってくれるとありがたいな。ジャックと結婚しろとかって事じゃなく国としてもね、これからは女性が働ける場っていうのも周知させる目的もある。女性は重要な役に付けない、大事な会議に席は不要、そんな考えを持っている奴らの目を覚まさせる意味もある。女性は実際の生活を根底から支えているんだ。女性でないと出来ない仕事もあると知らしめることも出来るんだよ」
王太子にそう言われたら「嫌です」とはなかなか言えない。
それにロッティーナは王太子の言葉に「そうね」と思う事もあった。
仕事を貰っている経理の仕事。役職はブルーノだがブルーノの部下は全員パートの女性達。ブルーノがダメという事ではなく、ブルーノも見落とす事をパートの女性たちが補佐しているから成り立っている。
商会の経営が一時期傾いたこともあったが、持ち直したのも女性従業員の知恵があった。
商会は茶葉を輸入し、販売をしているのだが茶葉だけで売れる時代はもう終わった。そこに茶に合う菓子をお勧めする、そんな事は他の商会でもしているが、商会の女性たちは飲んだ後に注目した。
茶器はどうしても茶渋などで色が残る事がある。
茶器は色んな装飾もあって洗うのにも一苦労する品。次に使う時のための洗剤を付けたのだ。
その洗剤が平民でも気軽に買えるため大当たりし、茶葉の売り上げと同じ売り上げを洗剤が叩き出して商会は持ち直した。
ちらりと王太子を見る。微笑んでる。
さらにちらりとサレンダーを見た。同じく微笑んでる。
恐る恐るジャックを見た。
「お願い」とやっぱり捨てられた仔犬のように「キュゥン」と声が聞こえてきそうな懇願する目でロッティーナを見ていた。
大金を立て替えて貰うのは心苦しいが、断る事が出来そうにない空気が漂う。
「解りました。でも本当に素人なので何もできないかも知れませんよ?」
「良いんだよ。そうだな。慣れるまでは侯爵家の執事たちと雑務をしてもらおうかな。住み込みになるけど大丈夫?」
「住み込みは大丈夫です。ただ商会から引き受けた仕事があるので月末までは待って頂ければ」
「侯爵家ですればいいよ。部屋は余っているしね。服とかは制服を支給するし…家には僕も説明に行った方がいいかな?」
「家は大丈夫です。荷物もありませんので…あ、頼まれた荷物だけ取りに行かないと…です」
「じゃ、決まりだ。支度金の方は任せて。一両日中にダストール伯爵家に払っておくよ。1週間後が誕生日だろう?手続きに僕も一緒に行くよ。余裕見てその頃には全部終わってるだろうしね」
「いいんですか?こんな面倒ごと‥。ぶつかっただけなのに」
ジャックはクスっと笑った。
「ぶつかったんじゃない。あたったんだ。クジには外れても幸運に当たったと思ってくれればいい」
不安がないと言えば噓になるが、王太子もサレンダーも「任せろ」とロッティーナに微笑んだ。
ロッティーナは「なるようにしかならないかな」と…正直な気持ち、諦めの心境だった。
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