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第14話 新しい人生設計①
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「ねぇ。予定を延長してカイスの滝も見に行きたいわ」
「アンナが望むなら何時でも」
馬車の中でも体を密着させているのはシリルとアンナ。
1週間の予定で王都郊外に旅行に行き、王都に戻る途中でアンナは更に旅行を延長し別の場所も観光に行きたいと言い出した。
シリルには肯定する返事しか出来ない。
心の中では1週間後、丁度王都に帰りついてから数日後にロッティーナの誕生日が来るのでロッティーナと過ごしたかったがアンナの手前そんな事を言えるはずもない。
2人を乗せた馬車は行き先を変え、分かれ道まで来た時に王都方面ではなくカイスの滝のある方に進路を取った。
アンナの年齢は34歳。シリルと付き合い始めてもうすぐ3年である。
シリルはロッティーナとの婚約が調って3か月もしないうちにアンナとの付き合いを始めた。
アンナは容姿端麗で、腐るほど金を持っていた。
どんな事業をしているのか、シリルには言わないがアンナ曰く「お金って腐るほどあるの」と言い、シリルの目の前で火種だと言って札束に火をつけて暖炉に放り込んだこともある。
シリルが連絡なしに何時アンナに会いに行ってもアンナは屋敷で寛いでいた。
アンナはシリルに言った。
「私ね、夫は要らないの」
「どうして?そこまで愛する人って出会ってないだけじゃないのかい?」
「愛したって結局お金よ。私のお金を愛しているだけで私を愛してはくれないの」
「そんな事ないよ」
「若いわね。だからね、私は夢を見るのが面白いのよ。その夢を見させてくれる恋人が欲しいの。恋人ならもし、私を殺したって私のお金はここにあるだけしか手に入らない。遺産まで手を付けられないでしょう?」
アンナは金をくれてやる代わりに割り切って恋人を演じてくれる男が欲しいのだ。
出来れば後腐れなく別れることが出来るので既婚者や婚約者のいる男の方がいい。
長く付き合おうとも思っていないのだ。
溺愛してくれる恋人を演じてくれたところで、同じ歌劇を何度も見ればオチも解るし飽きてしまう。それと同じで飽きてしまえば別れるしかない。そこでドロドロと痴情の縺れの様な事はしたくない。
実際シリルの前にも付き合った男は複数人で、宝飾品などの他に「思い出」として名前入りの指輪など幾つもあった。
一緒に居る時だけ恋人でいれば良くて、他に思い慕う人がいたって良い。ヤリモクは不可でアンナが望んでいるのは、自分の欲望を満たしてくれること。
欲望の中に通常であれば男性側が負担するであろう金銭問題があるが、金は一切不要。
アンナは「金にだけ」は困っていない。
買い物や旅行などの費用は全てアンナが持ってくれるし、小遣いまでくれる。
体の関係も持たねばならないが、満足させればいいだけ。
15歳のシリルには体力は有り余るほどあった。
会うたびに「はい」と渡される小遣いは初級文官の給料の額以上。
そこで思ったのだ。
――騎士やるよりいい稼ぎになるんじゃねぇの?――
実際アンナと付き合い始めて最初の1か月で「好きなもの買えば?」と渡された小遣いは100万以上。その小遣いからアンナなら端金で買える宝飾品をシリルが買ってやればアンナは大喜びする。
金の出所が自分かどうかは関係が無い。
自分のために安物でも贈り物をしてくれる「恋人」がアンナの希望なのだ。
アンナとシリルは利害の一致をみて付き合い始めた。
それまでの男は短くて半年、長くて1年とアンナは言ったが3年目になるシリル。
まだしばらくアンナとは切れる事もないだろうとタカを括っていた。
――どうせどっかの財産持ちの爺さんと結婚して遺産を貰ったんだろうな――
シリルはアンナをそう分析したのだった。
「アンナが望むなら何時でも」
馬車の中でも体を密着させているのはシリルとアンナ。
1週間の予定で王都郊外に旅行に行き、王都に戻る途中でアンナは更に旅行を延長し別の場所も観光に行きたいと言い出した。
シリルには肯定する返事しか出来ない。
心の中では1週間後、丁度王都に帰りついてから数日後にロッティーナの誕生日が来るのでロッティーナと過ごしたかったがアンナの手前そんな事を言えるはずもない。
2人を乗せた馬車は行き先を変え、分かれ道まで来た時に王都方面ではなくカイスの滝のある方に進路を取った。
アンナの年齢は34歳。シリルと付き合い始めてもうすぐ3年である。
シリルはロッティーナとの婚約が調って3か月もしないうちにアンナとの付き合いを始めた。
アンナは容姿端麗で、腐るほど金を持っていた。
どんな事業をしているのか、シリルには言わないがアンナ曰く「お金って腐るほどあるの」と言い、シリルの目の前で火種だと言って札束に火をつけて暖炉に放り込んだこともある。
シリルが連絡なしに何時アンナに会いに行ってもアンナは屋敷で寛いでいた。
アンナはシリルに言った。
「私ね、夫は要らないの」
「どうして?そこまで愛する人って出会ってないだけじゃないのかい?」
「愛したって結局お金よ。私のお金を愛しているだけで私を愛してはくれないの」
「そんな事ないよ」
「若いわね。だからね、私は夢を見るのが面白いのよ。その夢を見させてくれる恋人が欲しいの。恋人ならもし、私を殺したって私のお金はここにあるだけしか手に入らない。遺産まで手を付けられないでしょう?」
アンナは金をくれてやる代わりに割り切って恋人を演じてくれる男が欲しいのだ。
出来れば後腐れなく別れることが出来るので既婚者や婚約者のいる男の方がいい。
長く付き合おうとも思っていないのだ。
溺愛してくれる恋人を演じてくれたところで、同じ歌劇を何度も見ればオチも解るし飽きてしまう。それと同じで飽きてしまえば別れるしかない。そこでドロドロと痴情の縺れの様な事はしたくない。
実際シリルの前にも付き合った男は複数人で、宝飾品などの他に「思い出」として名前入りの指輪など幾つもあった。
一緒に居る時だけ恋人でいれば良くて、他に思い慕う人がいたって良い。ヤリモクは不可でアンナが望んでいるのは、自分の欲望を満たしてくれること。
欲望の中に通常であれば男性側が負担するであろう金銭問題があるが、金は一切不要。
アンナは「金にだけ」は困っていない。
買い物や旅行などの費用は全てアンナが持ってくれるし、小遣いまでくれる。
体の関係も持たねばならないが、満足させればいいだけ。
15歳のシリルには体力は有り余るほどあった。
会うたびに「はい」と渡される小遣いは初級文官の給料の額以上。
そこで思ったのだ。
――騎士やるよりいい稼ぎになるんじゃねぇの?――
実際アンナと付き合い始めて最初の1か月で「好きなもの買えば?」と渡された小遣いは100万以上。その小遣いからアンナなら端金で買える宝飾品をシリルが買ってやればアンナは大喜びする。
金の出所が自分かどうかは関係が無い。
自分のために安物でも贈り物をしてくれる「恋人」がアンナの希望なのだ。
アンナとシリルは利害の一致をみて付き合い始めた。
それまでの男は短くて半年、長くて1年とアンナは言ったが3年目になるシリル。
まだしばらくアンナとは切れる事もないだろうとタカを括っていた。
――どうせどっかの財産持ちの爺さんと結婚して遺産を貰ったんだろうな――
シリルはアンナをそう分析したのだった。
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