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VOL.29 クーヘンの機転
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「寒いな。今日はまた一段と冷える。うぅ~寒い…」
時間は朝の5時半。
クーヘンは寝台からもぞもぞと抜け出ると調理場に行き、竈に火を入れた。
暫く竈の前で体を温めて「よし、行くか」自分に気合を入れる。
手袋をして向かう先は共同井戸。
何往復かして、水瓶に水を汲むのだ。その水で自分とオリビアの食事を作る。
洗顔用の水でもあり、夕方になれば湯あみ用の水をまた足さねばならない。
オリビアはまだ眠っていて、水汲みはクーヘンの仕事。
起きる頃には竈の火で湯にして、オリビアに洗顔をさせるのだ。
いつも水を運ぶときに、オリビアが来た日の事を思い出す。
平民ではそんな大金は持ち歩かない額を持っていたので「貴族だな~」とは思っていたが、掃除をするのに井戸の水汲みをしたのだが、桶を持って行かないので井戸で組んでも運べなかったのだ。
「自分の家の桶を持ってこなきゃ」
「そうなの?」
井戸での水の汲み方は知っていたけれど、汲んだ水をどう運ぶか。オリビアは知らなかった。
そんな事を思い出しながら4回目。井戸の中に桶を放り込んだ時、路地の向こう側からフラフラになって歩いてくる2人がいた。
遠目では男か女か判らなかったが、路地を入ってすぐのところで1人が道の縁に積んだ雪の中に倒れた。もう1人は振り返らずによろよろ。文字通り1歩、1歩とクーヘンに近寄って来る気配だが様子がおかしい。
目を凝らしてみてみると、素足である事に気が付いた。
「嘘だろ?足の裏、壊れるぞ!」
クーヘンは桶を放り出して走り出した。
立って、歩いているのは女性。歩くと言うよりも足がもう上がらず摺り足になっていた。
雪の中に倒れたのも女性。この時間はまだ誰も歩いていないので夜に降った雪が積もっている。2人が歩いてきた方向を見れば足跡を残すように血が雪に色を付けていた。
「大丈夫か?しっかりしろ」
クーヘンは先ず、まだ立っている女性に肩を貸して店まで連れて行った。
「座ってろ。もう1人連れてきてやっから」
「すみま‥‥それより…はぁはぁ…伝えて…」
女性はもう一度外に行こうとするクーヘンの腕を力を振り絞って掴んでくる。
「話は後だ。少し待ってろ」
店の扉を勢いよく開けたのもあったし、クーヘンの声が大きかったのもあるだろう。奥からオリビアの「どうしたの?」と欠伸混じりな声が聞こえて来た。
「オリビア!竈で湯を沸かしているから桶に入れて水を足してくれ。けが人だ!」
「けが人?解ったわ!」
「もう1人いるんだ。運んでくるっ!」
外に飛び出したクーヘンは雪の中に倒れた女性の頬を叩き、意識があるのを確認した。
「少し待てるか?」
「は…い」
「すぐ戻るからな」
何か事情があるのかも知れないと感じたクーヘンは女性が来た方向の通りに出て血の付いた雪を足でぐしゃぐしゃにして路地を行き過ぎたあたりまで掻き混ぜるようにして歩いた。
女性の元に戻って来ると「行くぞ」声を掛けて肩を貸し店まで戻って行った。
店に戻るとオリビアが先に運び入れた女性に肩を貸して居住スペースに連れて行く姿が見えた。
「オリビア、そっちに運ぶのか?」
「えぇ。売り場はまだカーテンを付けてないわ。もう1人いるのね?」
「あぁ。この2人だけだと思う」
「その人も連れてきて」
クーヘンが居住スペースにもう1人を連れて行く。オリビアと手分けをしてクーヘンは桶に湯を。オリビアは2人に先ず毛布を掛けて使う予定の無かった居住スペースにある暖炉に火を入れた。
「裸足って…何があったのかな」
「・・・・」
クーヘンの声にオリビアは答えを返さなかった。変だな?と思いながらも「緊急だから、我慢してくれ」声を掛けて後から運んだ女性の足をぬるい湯に浸けた。
時間は朝の5時半。
クーヘンは寝台からもぞもぞと抜け出ると調理場に行き、竈に火を入れた。
暫く竈の前で体を温めて「よし、行くか」自分に気合を入れる。
手袋をして向かう先は共同井戸。
何往復かして、水瓶に水を汲むのだ。その水で自分とオリビアの食事を作る。
洗顔用の水でもあり、夕方になれば湯あみ用の水をまた足さねばならない。
オリビアはまだ眠っていて、水汲みはクーヘンの仕事。
起きる頃には竈の火で湯にして、オリビアに洗顔をさせるのだ。
いつも水を運ぶときに、オリビアが来た日の事を思い出す。
平民ではそんな大金は持ち歩かない額を持っていたので「貴族だな~」とは思っていたが、掃除をするのに井戸の水汲みをしたのだが、桶を持って行かないので井戸で組んでも運べなかったのだ。
「自分の家の桶を持ってこなきゃ」
「そうなの?」
井戸での水の汲み方は知っていたけれど、汲んだ水をどう運ぶか。オリビアは知らなかった。
そんな事を思い出しながら4回目。井戸の中に桶を放り込んだ時、路地の向こう側からフラフラになって歩いてくる2人がいた。
遠目では男か女か判らなかったが、路地を入ってすぐのところで1人が道の縁に積んだ雪の中に倒れた。もう1人は振り返らずによろよろ。文字通り1歩、1歩とクーヘンに近寄って来る気配だが様子がおかしい。
目を凝らしてみてみると、素足である事に気が付いた。
「嘘だろ?足の裏、壊れるぞ!」
クーヘンは桶を放り出して走り出した。
立って、歩いているのは女性。歩くと言うよりも足がもう上がらず摺り足になっていた。
雪の中に倒れたのも女性。この時間はまだ誰も歩いていないので夜に降った雪が積もっている。2人が歩いてきた方向を見れば足跡を残すように血が雪に色を付けていた。
「大丈夫か?しっかりしろ」
クーヘンは先ず、まだ立っている女性に肩を貸して店まで連れて行った。
「座ってろ。もう1人連れてきてやっから」
「すみま‥‥それより…はぁはぁ…伝えて…」
女性はもう一度外に行こうとするクーヘンの腕を力を振り絞って掴んでくる。
「話は後だ。少し待ってろ」
店の扉を勢いよく開けたのもあったし、クーヘンの声が大きかったのもあるだろう。奥からオリビアの「どうしたの?」と欠伸混じりな声が聞こえて来た。
「オリビア!竈で湯を沸かしているから桶に入れて水を足してくれ。けが人だ!」
「けが人?解ったわ!」
「もう1人いるんだ。運んでくるっ!」
外に飛び出したクーヘンは雪の中に倒れた女性の頬を叩き、意識があるのを確認した。
「少し待てるか?」
「は…い」
「すぐ戻るからな」
何か事情があるのかも知れないと感じたクーヘンは女性が来た方向の通りに出て血の付いた雪を足でぐしゃぐしゃにして路地を行き過ぎたあたりまで掻き混ぜるようにして歩いた。
女性の元に戻って来ると「行くぞ」声を掛けて肩を貸し店まで戻って行った。
店に戻るとオリビアが先に運び入れた女性に肩を貸して居住スペースに連れて行く姿が見えた。
「オリビア、そっちに運ぶのか?」
「えぇ。売り場はまだカーテンを付けてないわ。もう1人いるのね?」
「あぁ。この2人だけだと思う」
「その人も連れてきて」
クーヘンが居住スペースにもう1人を連れて行く。オリビアと手分けをしてクーヘンは桶に湯を。オリビアは2人に先ず毛布を掛けて使う予定の無かった居住スペースにある暖炉に火を入れた。
「裸足って…何があったのかな」
「・・・・」
クーヘンの声にオリビアは答えを返さなかった。変だな?と思いながらも「緊急だから、我慢してくれ」声を掛けて後から運んだ女性の足をぬるい湯に浸けた。
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