旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru

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愛をささやく

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シャロンは目を覚ますと、見慣れない天井に困惑した。

「ここはどこなの?」

勢いよく起き上がり、部屋を見渡す。

長い、長い夢を見ていたような気がする。

――シリウスを…そう!石を使って!!…あれ?夢かしら?――

そこに扉が開き、ドレーユ侯爵と侯爵家の家令が入ってくる。

「気分はどうかな?」

――え?わたくし、どうしたのかしら?――

「まだ、混乱をしているようだね」

――混乱?えっと‥待って待って…何があったの?――

「貴女は本当に困ったひとだね」

ドレーユ侯爵はいつものように能面のような表情で
シャロンに語り掛ける。

「あの…わたくし…どうしてここに?」
「あぁ、そうか。そうだったね。これは失敬」

1人で話を進めるドレーユ侯爵にシャロンはますます困惑する。

「貴女に会わせたい人がいるのだが、大丈夫かな?」
「会わせたい?わたくしにですか?」
「そうですよ。言ったでしょう?適材適所です。
あるべき場所にある、いるべき場所にいることが大事です」

そういうと家令は一礼し、部屋の扉に向かい扉を開ける。
扉の先に立っていたのは‥‥

「シリウスっ!!!」

ベッドで半身を起こしただけのシャロンは自分の態勢を忘れ
思わずベッドに前のめりに倒れ込む。

「思った以上に女神フーレィリヤはお転婆のようだ。
さぁ、はいりたまえ」

ドレーユ侯爵に呼ばれてシリウスはゆっくりとシャロンに歩み寄る。
あと2,3歩で手を伸ばせば届く位置で立ち止まる。

「おやおや。これは失敬。
男女間の話に首を突っ込むほど私は野暮ではないので失礼するよ」

ドレーユ侯爵はそういうと、家令と共に退室した。

「‥‥」
「‥‥」

部屋に残された2人の間に静寂が漂うが、シャロンはふいに
シリウスの右手から目が離せない。
シャツの長袖の布地だけがそこにあったからだ。
思わず両手で口を覆う。

「ハゥッ・・・」

その仕草にシリウスは1歩、もう1歩とベッドに近寄った。

「シャロン」

まるで何年も離れ離れになった恋人に再開したような
切ない声、愛しむ眼差しでシャロンに声をかけた。
そして、ベッドのわきに片膝を付いて首を垂れる。

「シャロン。本当に申し訳なかった」

シャロンはシーツをまくり上げてシリウスの首に抱き着く。
バランスを崩してシリウスを仰向けに、馬乗りのようになってしまう。

「シリウス…あぁ…本当にシリウスだわ…」

そう言うとシリウスの胸に頬を押し付ける。
シリウスは左手で優しくシャロンの髪を撫でる。

「シャロン、僕は愚かだった。僕は…」
「いいの!いいの。こうやって貴方がいる。それだけでいいの」
「あぁ、シャロン‥‥愛を乞うても良いだろうか」
「えぇ!えぇ!愛しているわ!シリウス!愛しているわ!」
「僕もだ。何よりも愛しい。シャロン。愛している」

深く口づけを何度も交わす。
砕けた愛を拾い集め、また形とするように何度も愛を囁く。
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