夫が離縁に応じてくれません

cyaru

文字の大きさ
上 下
5 / 7

第05話  不思議、発見?

しおりを挟む
オランド様がダメでも当主であるブンディル侯爵に許可を得ればいいのです。

ウキウキな気分で足取りも軽くブンディル侯爵の部屋を訪ねれば解ってはいるけど姑となるブンディル侯爵夫人にも怪訝そうな顔をされてしまいました。

――私は何もしてないのになぁ――

とは言っても、父が呼んでもいないノエルとミーシャを勝手に連れてきて品物を勝手に持ち出そうとしていたことは事実。

こんな事もあるだろうなとノエルとは養子縁組をしなかったけれど、他家から見れば家族としか見て貰えないのだからここで行うのは謝罪一辺倒!!


「昨夜は申し訳ございませんでした」
「あぁ」

――あんたもかぁい!!――

どうやらオランド様の会話言語が固定されているのは遺伝だったようです。


「今後は申し訳ないのだけれど、ご家族をお招きするのは控えて頂ける?」

「勿論でございます」

「それで?何の用だね」

「はい。今のお部屋も素敵ですしありがたく感じているのですが、私には分不相応に感じます。出来れば今後は庭にあります別邸で過ごさせて頂ければと」

「別邸?確かにあるが掃除も年に数回だし、今は不要になった品を置いておく倉庫代わりの建物だ。今から調度品などを運び入れるとなると…」

「結構です。掃除は自分でしますし、不用品の中から使えそうなものを選び、使用許可を頂いてから使うようにします」

「自分で掃除?そんな事が出来るのか?」

「はい?できますが‥‥。実家ではそうしておりましたし別邸に簡単なキッチンがあれば自炊も致しますので本宅の料理人さんの手を煩わせることもないかと」

――あれ?なんで首を傾げてるのかな?――

どれほどに掃除をしていないのかは実際に見てみないと解らないけど、壁に囲まれてて屋根があれば十分よ!!

それからもう1つ。許可を得ておかないといけない事があるのよね。


「あと1つなのですが、王宮のココホレ教授の元に月に4、5回でしょうか。時に週に2,3回になる事もあるかも知れませんが行きたいので外出の許可を頂きたいのです。この日と決まっていないので出かける際はどなたかに声掛けを致しますし、徒歩で参りますので特に何かをご用意頂くこともありません」

「は?今、何と言った?」

――え?驚くような事を言ったかな??――

「王宮のココホレ――」

「そうではなく!外出は自由にすればいいが歩いて行くと?」

「はい?そうですけど…」

――だって、私、御者は無理だもの。手綱さばき1つで馬を止めたり歩かせるの無理!――

どうしたんでしょうか。
ブンディル侯爵夫妻は目を丸くしてお互いを見つめあっておられますけど。

――ハッ!もしやお互いの知らない所を今、見つけて不思議、発見?――

うんうん。解るわぁ。
私もココホレ教授の研究室にあるアンモナイトの化石を見てて、よぉく見たら「まさか骨?!」って新種の小型翼竜の爪の先だった時は驚いたもの。

「もう一度聞くぞ?」

「はい」

「歩いて行くと言うのか?1人で?」

「はい。貴族の令嬢が1人で歩いて。危険だというご指摘でしたら安心してください!走れますよ?それにですね、馬車ですと近道が出来ませんので時間がかかるんです。教授の研究室は正門からですと遠回りなので歩いた方が便利がいいのです。今までも歩いてましたし慣れた道ですから」

「慣れた道…」

「はい。もうかれこれ…7年、いえ8年になるでしょうか。今まで危険は一度もありませんでした。むしろ通り縋りの方からパンを頂くこともあったりで昼食が助かった事もあります」


そうなのよね~。私は屋敷で食事が出ると言っても使用人の賄いの残りがあればだったから、賄いがない日、残らない日は食べるものがなくて、知らない人から物をもらっちゃいけないのは解ってるけど涙ぐんで「これを食べなさい」ってパンを握らせてくれて…美味しかったのよね。固さなんか感じた事もないわ。

ホームレスの方から「食ってく?」と怪しげな野草煮込みをご馳走になったこともあります。あの野草煮込み。同じ味が2度と出せなかったのよね。忘れた頃に食べるとこれがまた美味しいのよね。

教授の所にあるパンは教授が没頭しちゃうと何日もそのままだから何時の物か解らなくてアオカビに美味しいところを食べられカッチカチの石みたいになってるのとかあって化石?って暫く顕微鏡で覗いちゃった事もあるわ。

フンフフン♪少し得意げになってしまいましたが、「大丈夫です!」議会議員の選抜の時みたいにとにかく連呼すればブンディル侯爵夫妻もOKを出してくださいました。

「ありがとうございます!!」

「だが…出かける時は声を掛けて行くんだよ」

「はい!あと書庫から本を貸していただくときも、借りた時、返した時が判るように台帳を置いておきます。本当にありがとうございます!早速部屋を移ります」

「それは良いんだが…食事がだな」

「食事ですか?ご心配なく!サロンと部屋から見た限りですが食べられる野草が見えましたので、草むしりがてらに収穫してそちらを頂きますので、本日の昼食から私の分は不要です」

「いや、それは流石に不味いだろう」

「いいえ?美味しいですよ?玄関横のシロツメクサは花は4月くらいですけど、新芽や茎葉は結構長い期間美味しく食べられるんです。毒があるので生食は無理なんですけど、軽く煮て塩味のショッパそうと一緒に食べると美味しいんです。部屋の窓からはギシギシも見つけました」

「不味いの意味が‥‥まぁいいが、ギシギシ?なんだそれは」

「繁殖力が強くて1つあればあっという間に倍々になるので面倒な雑草と呼ばれているんですけど陸蓴菜おかじゅんさいとも言われてて、ちょっとヌルっとするんですが美味しいんです。繁殖力が強いって最高ですよね。採っても採っても採りきれないので食べるのに困らないですし、葉っぱが枯れた後に根っこを掘り出して洗って乾燥させれば便秘薬にもなるんです。可愛い草ですよね」

「可愛いかどうかは良く判らないが庭の草を食べなくても――」

「いいえ。ブンディル侯爵家のお庭はまるで食糧庫ですわ!許可ありがとうございます!」


持ってきた荷物も多くありません。
クローゼットに吊るすほどでもないのでまだトランクの中ですし、私は早速トランク片手に庭にある別邸に引っ越しを敢行したのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約して半年、私の幸せは終わりを告げました。

ララ
恋愛
婚約して半年、私の幸せは終わりを告げました。 愛する彼は他の女性を選んで、彼女との理想を私に語りました。 結果慰謝料を取り婚約破棄するも、私の心は晴れないまま。

君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ
恋愛
十年以上婚約している男爵家の子息、カーサは婚約者であるグレーテルを蔑ろにしていた。 事あるごとに幼馴染との約束を優先してはこういうのだ。 「君は優しいから許してくれるだろ?」 都合のいい言葉だった。 百姓貴族であり、包丁侍女と呼ばれるグレーテル。 侍女の中では下っ端でかまど番を任されていた。 地位は高くないが侯爵家の厨房を任され真面目だけが取り柄だった。 しかし婚約者は容姿も地位もぱっとしないことで不満に思い。 対する彼の幼馴染は伯爵令嬢で美しく無邪気だったことから正反対だった。 甘え上手で絵にかいたようなお姫様。 そんな彼女を優先するあまり蔑ろにされ、社交界でも冷遇される中。 「グレーテル、君は優しいからこの恋を許してくれるだろ?」 浮気を正当した。 既に愛想をつかしていたグレーテルは 「解りました」 婚約者の願い通り消えることにした。 グレーテルには前世の記憶があった。 そのおかげで耐えることができたので包丁一本で侯爵家を去り、行きついた先は。 訳ありの辺境伯爵家だった。 使用人は一日で解雇されるほどの恐ろしい邸だった。 しかしその邸に仕える従者と出会う。 前世の夫だった。 運命の再会に喜ぶも傷物令嬢故に身を引こうとするのだが… その同時期。 元婚約者はグレーテルを追い出したことで侯爵家から責められ追い詰められてしまう。 侯爵家に縁を切られ家族からも責められる中、グレーテルが辺境伯爵家にいることを知り、連れ戻そうとする。 「君は優しいから許してくれるだろ?」 あの時と同じような言葉で連れ戻そうとするも。 「ふざけるな!」 前世の夫がブチ切れた。 元婚約者と元夫の仁義なき戦いが始まるのだった。

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

処理中です...