公爵夫妻は今日も〇〇

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第3話♡  池ポチャからの計画頓挫

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頃は小春日和。

間もなく冬将軍がやって来るかと空を見れば見事な青空。
私は侍女と共に庭を散策しておりました。

かの日、ラウルといい雰囲気だったカレン様は男爵家のご子息と婚約がようやく調ったと知らせを受け、ラウルの心境を考えると本当に悪いことをしたなぁと思いつつだったのが良くなかったかも知れません。

考え事をしていると足元の注意を怠ってしまうもの。

池にかかる小さな石橋を渡っている途中で小さな突起に躓いた私はバランスを崩し、咄嗟に腕を掴んだ侍女と共に池に落ちてしまったのです。

幸いにも池の深さは膝丈で御座いましたが、観賞用に大きな岩を配置しており頭をぶつけてしまいました。慌てて次々に飛び込んだ侍女によって溺死は免れた・・・のかしら?

これはいったいどういう事?

もしや、ここが天国?
だとすれば天国にも寝台があると言う事かしら。



あり得ない世界がそこに御座いました。

寝台で目を覚ますとラウルが私の手を握り、寝台の横で睡魔には勝てなかったのか寝息を立てているのです。

まだ次期宰相とは言え、夜も遅くまで王太子殿下について多忙な日々を過ごすラウル。足を負傷させてしまった責任を今も感じているのでしょう。毎日どんなに遅くなっても帰宅し、朝食だけは共にするのです。

そんな無理に時間を作らなくてもいいのに。

個人的には・・・朝は1人でのんびりとお行儀は悪いのですが豪快にパクリ!とするのが好きな私。特に目玉焼きを半分にしてもらって、食パンという四角く焼いたパンをスライスし、その1枚に半分の目玉焼きを載せ‥‥何故か食パンはそのままに目玉焼きだけを先に口だけで「あむあむ」するのが好きなのです。

実家の侯爵家ではお父様やお母様に見つかると「お行儀が悪い!」と叱られるので、朝は「40秒で支度しな!」とばかりに素早く寝間着を部屋着にイリュージョン。

一足早く朝食を堪能しておりましたのに・・・ラウルと一緒では楽しめません。

それにラウルは私の一挙手一投足を離縁の原因にと考えているのか、常に視線を向けてくるのです。瑕疵を探し慰謝料の割合を模索しているのでしょうか。

私にも私財は御座いますが、減るのは勘弁。
離縁後に女一人、しかも生まれながらに使用人が常に世話をしてくれていますから、今後も使用人ナシの生活は無理だと思うと支払いは少ない方が良いのです。

お金の余裕は心の余裕・・・誰かが言ってた気がします。


しかし・・・。

――美丈夫って寝顔まで美丈夫なのね――

ラウルの寝顔を見て、そんなことを考えてしまいましたが、ふと思いついたのです。

【記憶を失ったとして離縁してもらったらどうかな?】

私は頭も負傷したのです。タンコブにもならない擦り傷程度ですが気を失ってしまったのは、池に落ちたことで驚いてしまい、思いのほか水を飲んでしまったのです。

落ち着いて考えれば膝丈の水深ですから溺れることはありませんのに。

安易だとは思いますが、記憶がなくなったとすれば左足の事も忘れて「あれ?この足どうしたのかな?」と惚ける事も出来ますし、その原因となった事も忘れたことに出来る。

何より!記憶のない公爵夫人なんて役に立たないのでは?!


取り敢えずは姑息だと思いますが小橋に転落防止の対策を怠っていたという瑕疵を問えば慰謝料はこちらからは無しで少し頂けるのではないかしら。

生きていくのにお金は少しでも多い方が安心出来ます。


名案だと思った私は、頭の中で色々なシチュエーションを巡らせます。

いきなり「離縁してください」というのは結婚しているという記憶があると思われるので却下。

「ここはどこ?私は誰?」というのも名を呼ばれうっかり返事をしてしまう危険性が高いので却下。

都合よくラウルの存在だけを忘れるのはどうかしら。
その場合は‥‥と考えている時で御座いました。


「百面相になって何を考えているのだ」
「ラウルの事だけ―――えっ?!」


記憶喪失計画は実行前に知られてしまい、頓挫致しました。

でも抱きしめられているのは何故かしら。
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