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第25話 至れり尽くせりぃ~?
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☆~☆翌朝☆~☆
一睡もできなかったベンジャミンは午前5時、朝の空気を吸おうと牢のある建物を出た。
「な、なんだぁ?!」
「おはようございます。門番様、妃殿下の朝食を調理致しますが宜しいでしょうか」
昨夜、エマリアを着替えさせた侍女シーナが30人程の使用人を連れて「面会開始」の時間を待っていたのだ。差し入れを持って来る囚人の家族も仕事で朝が早いものもいて、融通を利かせているが「調理」の申し出は初めてである。
「妃殿下には温かいものは温かいうちに。冷たいものは冷たいうちに食して頂く。これはバクーウムヘン公爵家の決め事で御座います」
「は、はぁ…まぁ…どうぞ」
騎士団で活躍している頃に野営陣地で見た事のある大鍋が視界に入る。使用人達は持ってきた煉瓦で簡易の竈を作ると枯れ葉や落ちている小枝を拾い集め、火を起こし本格的に調理を始めてしまった。
――だからこんな時間からなんだなぁ――
ベンジャミンは遠くの緑を見るような遠距離ガン見。
キビキビと動く使用人達を「昨夜、碌に寝られなかったから夢を見てるのかな」と思いながら見つめた。
食事が出来上がったのだが、明らかに量がおかしい。
「ちょっと待った!」を掛ける前に動き出す使用人達。
次々と牢のある建物に持ち込みを始めたバクーウムヘン公爵家の使用人達。ベンジャミンが最後尾となって建物に入っていくと「まさか!」な状況が作り出されていた。
「うわぁ。このパン。柔らかいな!」
「なんてこった!肉まで入ってるじゃないか!THE 具!だぞ、おい!」
8つある牢には現在22人が収監されている。「個室」と呼ばれる独房は1つしかなくエマリアが使っているが男女で牢を分けていてそれぞれ2~4人が同じ牢。
その囚人全てが先程バクーウムヘン公爵家の使用人達が運び入れた食事に舌鼓を打っているではないか!しかも囚人だけでなく、同じ夜勤当番だった若い騎士も「御代わり出来ます?」と一緒になって食べている。
何という事だ。収監中の囚人に出来たてのパンやスープ、野菜に貴重な玉子を使った目玉焼きまでが配られている!いつもは黄身が半熟派なのだが、そんなの関係ない!問題にする方がどうかしている!
エマリアは1晩で他の7つの牢に収監された者達と仲良くなり、食事をしながら話をしている内容は「就職の斡旋」である。福利厚生を耳にしたベンジャミン。
――俺にも紹介してくれないかな――
侍女シーナは鉄格子を挟んだ向こう側にいるエマリアに飲料の果実水を手渡しながらベンジャミンに告げた。
「日頃配給される食材もアレンジして利用しておりますのでご安心を」
安心と言う言葉を聞いたらベンジャミンの腹の虫が騒ぎ出してしまう。
エマリアはにっこり微笑んでベンジャミンを食事に誘う。
「牢番様もご一緒にいかがです?食事は大人数で食した方が美味しいと聞きましたの」
ついでに・・・
「牢番をされているお2方にはそちらのバスケットもご用意しておりますので、ご家族とお召し上がりくださいませ」
――まさかの至れり尽くせりぃ~?――
しっかり食事をご馳走になったベンジャミンと若い牢番は日勤の牢番と交代をした。次にシフトが回った時にはもういないかも知れないエマリアに対しての「牢番記録」に書かれた文字はがっつり忖度の入った「無問題」だった。
一睡もできなかったベンジャミンは午前5時、朝の空気を吸おうと牢のある建物を出た。
「な、なんだぁ?!」
「おはようございます。門番様、妃殿下の朝食を調理致しますが宜しいでしょうか」
昨夜、エマリアを着替えさせた侍女シーナが30人程の使用人を連れて「面会開始」の時間を待っていたのだ。差し入れを持って来る囚人の家族も仕事で朝が早いものもいて、融通を利かせているが「調理」の申し出は初めてである。
「妃殿下には温かいものは温かいうちに。冷たいものは冷たいうちに食して頂く。これはバクーウムヘン公爵家の決め事で御座います」
「は、はぁ…まぁ…どうぞ」
騎士団で活躍している頃に野営陣地で見た事のある大鍋が視界に入る。使用人達は持ってきた煉瓦で簡易の竈を作ると枯れ葉や落ちている小枝を拾い集め、火を起こし本格的に調理を始めてしまった。
――だからこんな時間からなんだなぁ――
ベンジャミンは遠くの緑を見るような遠距離ガン見。
キビキビと動く使用人達を「昨夜、碌に寝られなかったから夢を見てるのかな」と思いながら見つめた。
食事が出来上がったのだが、明らかに量がおかしい。
「ちょっと待った!」を掛ける前に動き出す使用人達。
次々と牢のある建物に持ち込みを始めたバクーウムヘン公爵家の使用人達。ベンジャミンが最後尾となって建物に入っていくと「まさか!」な状況が作り出されていた。
「うわぁ。このパン。柔らかいな!」
「なんてこった!肉まで入ってるじゃないか!THE 具!だぞ、おい!」
8つある牢には現在22人が収監されている。「個室」と呼ばれる独房は1つしかなくエマリアが使っているが男女で牢を分けていてそれぞれ2~4人が同じ牢。
その囚人全てが先程バクーウムヘン公爵家の使用人達が運び入れた食事に舌鼓を打っているではないか!しかも囚人だけでなく、同じ夜勤当番だった若い騎士も「御代わり出来ます?」と一緒になって食べている。
何という事だ。収監中の囚人に出来たてのパンやスープ、野菜に貴重な玉子を使った目玉焼きまでが配られている!いつもは黄身が半熟派なのだが、そんなの関係ない!問題にする方がどうかしている!
エマリアは1晩で他の7つの牢に収監された者達と仲良くなり、食事をしながら話をしている内容は「就職の斡旋」である。福利厚生を耳にしたベンジャミン。
――俺にも紹介してくれないかな――
侍女シーナは鉄格子を挟んだ向こう側にいるエマリアに飲料の果実水を手渡しながらベンジャミンに告げた。
「日頃配給される食材もアレンジして利用しておりますのでご安心を」
安心と言う言葉を聞いたらベンジャミンの腹の虫が騒ぎ出してしまう。
エマリアはにっこり微笑んでベンジャミンを食事に誘う。
「牢番様もご一緒にいかがです?食事は大人数で食した方が美味しいと聞きましたの」
ついでに・・・
「牢番をされているお2方にはそちらのバスケットもご用意しておりますので、ご家族とお召し上がりくださいませ」
――まさかの至れり尽くせりぃ~?――
しっかり食事をご馳走になったベンジャミンと若い牢番は日勤の牢番と交代をした。次にシフトが回った時にはもういないかも知れないエマリアに対しての「牢番記録」に書かれた文字はがっつり忖度の入った「無問題」だった。
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