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第05話   ルミスの魂胆

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「兄さま。説明をして頂けるかしら」


エマリアは静かに、目だけが笑っていない笑みをルミスに向ける。
帰宅したばかりのルミスは手にしていたカバンをどさりと床に落としてしまった。

変な所に知恵の回る長兄ルミス。
これだけの祝い事が重なるのは人生で何度も経験できるわけではない。

ルミスが送って来た旅費は一人分にも足らなかったが、それがルミスに出来る精一杯だったんだろうと領地では誰もその額について咎める者はいなかった。

そうしておけば、父親は領地に残るからエマリアとサベージだけが王都に行くことになるが、その上でサベージは人混みが苦手なので来ない可能性がある。

父親のモルトン伯爵は【聞くだけ、読むだけではなく実際に見る事、触れることが大事】と考えている人なので、僅かな金を同封し手紙を送れば誰も寄越さないなんて有り得ない。

父親の性格とサベージの体質を考えて・・・つまりエマリアだけが来るとよんでの事だった。

――皆の気持ちと慶事を利用するなんて!――

エマリアはふつふつと怒りが込み上げてくる。
ルミスが王都で文官になると地方試験を受けるように勧めたのは父親。

見識を広めてこいという意味だったのだが、どうやらルミスは意図しない方向の見識も広めた結果をばさりとテーブルに書類を叩きつけ、その上にバン!と手を置いたエマリアにルミスの肩が跳ねあがる。


「給料明細かと思ったら借用書じゃないの!」
「そ、それは必要経費とイウカ・・・」
「必要経費?なら王宮の然るべき部署に持って行ってもいいわよね?」
「そんなの決済してくれないよ!」
「なら、これは必要経費とは言いません。借りたものは仕方ないけどどうやって返すの?金利だって年利25%なんてボッタクリよ?利息が利息を生んでしまってどうにもならなくなるわよ?」


年収の3倍まで借りられる市井の金融商会で金を借りていたルミス。
返済するアテはと言えば、借用書と共に見つけたビラと申込用紙の控えなのだろう。

博打や遊興費に使ったわけではなく、税金を天引きされた給料からさらに何かを買うごとに徴収される税金。男の一人暮らしで自炊には限界があり、ついつい外食を重ねたりテイクアウトをしているうちに金が足らなくなり、最初は家賃を払うため、次に食費、そして衣料品など。

ルミスの借金はあっという間に増えてしまった。

叔母のアンジェの屋敷に居候をさせてもらうにも婿を取ったばかりの新婚夫婦のいる屋敷に世話になる事も出来ず、一人暮らしとなったが故に出来た借金とも言える。

何かにつけて税金が上乗せをされているが、それでも借金をせずに生活をしている者もいる。王都の実情に合わなければ領地に戻ればいいだけ。若しくは門限があり残業は出来なくなるが寮に入る事だ。

籍が抜けていると言っても父親に借金の心配をさせたくなくて何とかしようとしたのが今回だと思うと思わず口を突いて兄を詰ってしまう。

「兄さま、馬鹿なの?」

ルミスは椅子から立ち、床に突っ伏した。

「頼む!参加してくれるだけでいいんだ!」


参加してくれるだけでいい。その言葉はやはりビラに書かれている「参加費」で借金を何とかしようとした兄の浅はかな考えを露呈させるもの。

エマリアは呆れて床に突っ伏すルミスを見下ろした。
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