王子殿下には興味がない

cyaru

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第二章~王子殿下は興味「しか」ない

トゥトゥーリアは二度寝をしたい

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この物語は別居もやむ無し!と自身の蒔いた種をせっせと刈り取る第2王子ヴァレンティノと、「ま、蓄えは有った方が良いし」とお気楽なトゥトゥーリア妃のその後の様子を描いたちょっとした続編である。

大公(王弟)となるのにそんなのあり?!

ところ変われば品変わる。
比べようがないのだから他国の常識を引き合いに出してはいけない。

ヴァレンティノの兄で間もなく即位する王太子も・・・。

そもそもで夫の部屋、妻の部屋と同じ屋敷にいても部屋は違う。
片方が神に召されたらその距離を縮めるのは至難の業。住まう国が同じなのだから部屋が違うのと大差ない、取るに足らない事だと問題視はしていない。



そして結婚から丁度2年目。

愛するトゥトゥーリアがミルクに困らぬよう2匹のヤギをプレゼントしたまでは良かったが、2匹とも未婚のメスと言えばいいだろうか。ヤギミルクはまだ出ない仕様で「じゃ、オスのヤギを」を思ったのだが、もう2匹増えて子ヤギまで生まれてしまうと、もれなく「ヤギの家」になってしまうので現在1匹のヤギのトレード先を探している。

自由気ままに過ごすトゥトゥーリアが住まう郊外の家に朝早くから宮の牛「シボリーナ」から搾ったばかりの牛乳を持ったヴァレンティノが低血圧の為、朝は苦手なボナパルト号に跨り午前6時30分にやって来た。


眠い目を擦りながら暢気に出迎えたのは護衛騎士。
全く護衛の意味がない護衛騎士。実は今、城の近衛隊ではトゥトゥーリアの家を夜勤で護衛するシフトになるにはアミダくじの後、ジャンケンという「運」だけで決まる争奪戦が繰り広げられている。

夜勤なのに夜22時に持ち場に着くと23時にはトゥトゥーリアから「仮眠時間だ」と朝7時までの仮眠を言い渡され、朝食も付いているという極楽シフト。

今日の当番も先端に毛糸で作った丸い玉がついたナイトキャップを被った護衛騎士は「仮眠」と言い張るがどう見ても「がっつり爆睡」を思わせる格好で玄関対応。

「ふぁぁ。殿下、今朝も早いですね」
「なっ!お前!また寝起きではないか!」
「そりゃそうです。妃殿下から仮眠は23時から7時まで。朝食は8時と言われてますから」


其々の家にルールがあるのは当たり前。
いや、そもそもでトゥトゥーリアが朝7時まで寝られる!それは奇跡のようなモノ。

一番鶏いちばんどりがコケコッコーと鳴く前から起きて使用人に混じって朝の支度をする事が当たり前だったトゥトゥーリアは当初、どんなに夜更かしをしても午前4時過ぎには目が覚めてしまった。

『不味いわ・・・目が冴えて二度寝が出来ないっ!!危険に陥りたいのに!』

危険に臨むトゥトゥーリア第2王子妃。


敢えて自ら危険に特攻するのは実は一般的にはよくあるのだが贅沢な悩み。


★~★経験はないだろうか?★~★

リリリリリ・・・リリッ・・・リリリリリ

枕元で鳴る目覚ましアラーム。
7時12分の快速なら間に合うし‥目覚ましはスヌーズあるし‥。
二度寝に陥り、ハッと気が付いて目覚まし時計を手に取れば7時11分!しまった!快速はもう走っても間に合わない!

電光石火の早業で起床から玄関ロックまで7分。駅まで3分で駆け抜けて次の快速に何食わぬ顔で飛び込むが、就業中、10時頃に腹の虫が騒ぎ出す。昼がこんなに遠いなんて!と時計の秒針が高速回転する事を願う2時間を過ごす嵌めになる二度寝。

★~★経験あるだろう?★~★



二度寝♡二度寝♡危険な二度寝♡
危険度は激高。
故に二度寝の目覚めほど瞬時の覚醒を促すものもない。

トゥトゥーリアは「うわぁ!寝過ごしたぁ!」と慌てたいのだ。
贅沢な悩みではあるが、長年培った夜明け前起床癖で覚醒をしてしまい二度寝が出来ない。

護衛騎士は提案した。
「でしたら、先ずは起きる時間を遅くするのはどうでしょう?」

丁度、冬場という事もあり太陽が山の稜線に「んちゃ!」と顔を出す時間は夏場よりも遅い。

トゥトゥーリアに気付かれぬよう護衛騎士は毎日時計の針を5分、10分と遅らせて1年目で午前6時までトゥトゥーリアは眠る事が出来るようになった。但し二度寝はまだ出来ない。

そして2年となる今、午前7時まで眠る事が出来るようになっていた。
ついでにちょっとしたサプライズで護衛騎士は時計の針を少し進めた。

「うわぁ!7時6分じゃないの!寝過ごしたわ!」

二度寝はまだ未経験だが、先に「疑似寝坊」をトゥトゥーリアは体験した。
それが2週間前の事である。



「そうかリアはまだ寝てるんだな?」
「もうすぐ起きてくると思いますがね。何するんです?」
「私が朝食を作って待っていようと思うんだが」
「・・・・・」


第2王子が手ずから朝食を作る。何という贅沢の極み。
と、言っても宮の調理人に作って貰ったものを並べるだけだろうと護衛騎士はヴァレンティノを家の中に招き入れた。

「7時まで部屋から出ないのが妃殿下との約束ですので」

そう言ってトゥトゥーリアの部屋の有る反対側の部屋に消えて行った。

――護衛騎士を配置する意味を誰か教えてくれ――

ヴァレンティノは細い目になり騎士を見送った。


そこから約30分の間に何があったのか・・・。


★~★
同時刻続きが公開になってます<(_ _)>
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