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VOL:27 出せない手紙
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グラウペルが目を覚ましたのは翌日の昼だった。
「お目覚めで御座いますか?軽く清拭し寝間着に着替えさせて頂きますのでお待ちください。その後侍医様にも診て頂きます」
声を掛けてきたのはパウゼン侯爵家の使用人だった。
(あぁ、倒れたんだった)
朧げな記憶ながら、はっきりと覚えているのはレイニーの愛称を思い切って口にしたところまで。その先は途切れ途切れになるが、レイニーが「重い~」と唸りながらグラウペルを客間に運んでくれた。
その後はレイニーが薬湯を飲ませてくれて、脇と膝、首回りに少し絞りが甘いが冷たいタオルをあててくれた。
部屋が暗かった気がするので使用人が来るまでレイニーが世話をしてくれたのだろう。
的確な熱の下げ方は夜間は1人になる事が通常のレイニーがそうしていたからかも知れない、いやそんな時は使用人がいたかも知れないが経験からだろう。
「起きないでくださいね。騎士団には連絡もしてあります。数日は休むようにと言付かっております」
「ありがとう・・・あの・・・」
「お嬢様でしたら今はお休み中なのでお声がけは遠慮して頂けると助かります」
やはりレイニーが夜通し看病をしてくれたのだろう。
食べられるならと出されたパン粥もぺろりと平らげる事が出来たし、もう熱も引いている。日頃の鍛錬もあるだろうが、やはり水を被るのは失敗だった。
その後は着替えをしてパウゼン侯爵家の侍医の診察を受けていると父である国王の使いが来ていると告げられた。
そう言えば宮の使用人には告げていたが国王には何も言っていなかった事を思い出した。
(1つ出来れば他の事が御座なりになってしまうな…)
寒くないようにと陽の有る時間帯なのに暖炉に火も入っている。
1つの行動が周りに迷惑をかけてしまっている事にグラウペルは自分が情けなくてうつ伏せになり、枕に顔を埋めた。
「殿下、旦那様からの言伝も御座いますが」
使用人の言葉にクルリと反転。グラウペルは上半身を起こすが、即座にその肩に上着が掛けられた。
「冷やすのは良くないとお嬢様からの命で御座いますので失礼いたします」
「ありがとう。で?侯爵はなんと?」
「仲良きことは美しきかな。で御座います」
「そうか。侯爵に謝辞を。心遣い痛み入ると伝えて欲しい」
「畏まりました」
父の国王からはレイニーの屋敷に住まうのなら宮を王太子の息子にという言葉。
いずれはその日が来ると判ってはいたが、レイニー用に用意した部屋に荷があるのでどうするかというもの。
一切手付かずの荷。そうなったのもグラウペルの言葉が原因だが、ここに運び入れるのもレイニーがどう思うかだが、悩む事も無かった。
夕食はレイニーと一緒に取ることが出来たので、問うてみた。
「要りませんので処分して頂ければ。使用人さんで欲しい方がいれば自己責任で持ち帰り頂くのが一番安上がりですわね」
「宝飾品やドレスもあるんだがどうする?」
「買い取りに出して頂き、宮も改装費が多少なりとも必要でしょうので充てて頂ければ。わざわざ民の血税から予算を割り振らなくても、そこにあるものでペイ出来たほうが合理的です」
「本当に物欲はないんだな」
「まぁ…こう言っては何ですけども価格のついているもので買おうと思って買えない物は有りませんので。お爺様も私を想って買い揃えたのでしょうけど・・・以前も申しましたが体は1つしかないのに住む場所が幾つもあっても仕方ありません」
育った環境もだが、それまで人の顔色を伺っていたレイニー。
元々物欲も薄い方で捨てる事に目覚めてからは最小限を追及してしまっている。
グラウペルもここに持ち込むものは最小限で良いと、宮にあるものを処分しようと考えていた。
「騎士団から10日ほど休みを貰っているんだが、4日後ではなく明日でも買い物はどうだろうか」
「病み上がりですよ?そう言う時こそ大事を取るものです」
「それなりに鍛えているからね。行軍中は熱が下がれば――」
「ここは軍隊ではありません。夜間は私1人なので昨夜のような事は困るのです」
「そうだな。軽率だった。では予定通りに。4日後までには完全復活するように努める」
「是非そうなさって。ですが買い物は予定を伸ばします。4日後に侍医ももう一度診察と言っておりましたので」
「そうだな・・・承知した」
ショボンとしたグラウペルにレイニーは声を掛けるのも忘れない。
「行かない訳ではありません。体が優先なだけです」
「うんっ!」
我ながら単純だとグラウペルは思うが、中止になった訳ではない事が嬉しかった。
そうしているうちにもレイニーの屋敷は改修工事も進み、家屋としての部分は小さくなっていく。解体の時は大きな音がすると言われてはいたが、桁梁を落とした時は大きな音がして何ごとかとグラウペルも飛び上がった。
「仕事が早いな・・・1週間やそこらでここまで壊すんだな」
「造る時は時間がかかるもの。壊すのは一瞬です。信頼と同じですから」
「そうだな・・・肝に銘じておくことにするよ」
すっかり回復をしているのに「大事を取れ」とレイニーが言うのも健康管理は自己責任。流感を貰ってしまうのは不可抗力なので誰も咎めないが、無理をする事で他者に感染してしまう事もある。
きちんと治す事は自分の為ではなく一緒に働く同僚のため、同居人の為でもある。
当たり前のことが騎士団でも出来ていない現実をグラウペルは実感する事も出来た。
(本当に教えられる事ばかりだな)
数日屋敷に居て、ウロウロするとレイニーの生態も垣間見ることができる。
物欲が薄いと言ってはいたが、何かをする度に全力なのだ。他の令嬢のように流行を追うバイタリティーを別の事に使っているだけというのもグラウペルは感じた。
次期当主というのは他家でも重責だけれど、レイニーの場合はパウゼン侯爵家という他家とは比べ物にならない領民の人生も背負う事になる。
本当に金で解決できる事など問題にもならないと現パウゼン侯爵が言う通りなのだ。
窓から見える小さな菜園で庭師と共に人参を引き抜き、ドテンと尻もちをついて満面の笑みのレイニーと、キャロルとじゃれ合うレイニー。昨日は本宅の執務に行くと同行させてもらったが、真剣な顔で執務を行うレイニーと色々なレイニーを見てグラウペルは父の国王に手紙を書いた。
【臣籍降下の日を早めて欲しい】
しかし、文字にしてグシャっと丸め、また同じ文字を書いて丸める。
ゴミ箱に捨てるのではなく、それらを暖炉に放り込んで灰にした。
「自分だけで決めちゃだめだ。相談をしないと」
相談の相手は国王ではない。グラウペルは臣籍降下が最初から決められている王子なので今の段階では成婚したらという日数を消化するだけの日々。
相談をするのはレイニー。
今はレイニーの情に縋って甘えている。
もう間違えてはいけないと明日の「買い物デート」でグラウペルはレイニーに相談しようと決めた。
「お目覚めで御座いますか?軽く清拭し寝間着に着替えさせて頂きますのでお待ちください。その後侍医様にも診て頂きます」
声を掛けてきたのはパウゼン侯爵家の使用人だった。
(あぁ、倒れたんだった)
朧げな記憶ながら、はっきりと覚えているのはレイニーの愛称を思い切って口にしたところまで。その先は途切れ途切れになるが、レイニーが「重い~」と唸りながらグラウペルを客間に運んでくれた。
その後はレイニーが薬湯を飲ませてくれて、脇と膝、首回りに少し絞りが甘いが冷たいタオルをあててくれた。
部屋が暗かった気がするので使用人が来るまでレイニーが世話をしてくれたのだろう。
的確な熱の下げ方は夜間は1人になる事が通常のレイニーがそうしていたからかも知れない、いやそんな時は使用人がいたかも知れないが経験からだろう。
「起きないでくださいね。騎士団には連絡もしてあります。数日は休むようにと言付かっております」
「ありがとう・・・あの・・・」
「お嬢様でしたら今はお休み中なのでお声がけは遠慮して頂けると助かります」
やはりレイニーが夜通し看病をしてくれたのだろう。
食べられるならと出されたパン粥もぺろりと平らげる事が出来たし、もう熱も引いている。日頃の鍛錬もあるだろうが、やはり水を被るのは失敗だった。
その後は着替えをしてパウゼン侯爵家の侍医の診察を受けていると父である国王の使いが来ていると告げられた。
そう言えば宮の使用人には告げていたが国王には何も言っていなかった事を思い出した。
(1つ出来れば他の事が御座なりになってしまうな…)
寒くないようにと陽の有る時間帯なのに暖炉に火も入っている。
1つの行動が周りに迷惑をかけてしまっている事にグラウペルは自分が情けなくてうつ伏せになり、枕に顔を埋めた。
「殿下、旦那様からの言伝も御座いますが」
使用人の言葉にクルリと反転。グラウペルは上半身を起こすが、即座にその肩に上着が掛けられた。
「冷やすのは良くないとお嬢様からの命で御座いますので失礼いたします」
「ありがとう。で?侯爵はなんと?」
「仲良きことは美しきかな。で御座います」
「そうか。侯爵に謝辞を。心遣い痛み入ると伝えて欲しい」
「畏まりました」
父の国王からはレイニーの屋敷に住まうのなら宮を王太子の息子にという言葉。
いずれはその日が来ると判ってはいたが、レイニー用に用意した部屋に荷があるのでどうするかというもの。
一切手付かずの荷。そうなったのもグラウペルの言葉が原因だが、ここに運び入れるのもレイニーがどう思うかだが、悩む事も無かった。
夕食はレイニーと一緒に取ることが出来たので、問うてみた。
「要りませんので処分して頂ければ。使用人さんで欲しい方がいれば自己責任で持ち帰り頂くのが一番安上がりですわね」
「宝飾品やドレスもあるんだがどうする?」
「買い取りに出して頂き、宮も改装費が多少なりとも必要でしょうので充てて頂ければ。わざわざ民の血税から予算を割り振らなくても、そこにあるものでペイ出来たほうが合理的です」
「本当に物欲はないんだな」
「まぁ…こう言っては何ですけども価格のついているもので買おうと思って買えない物は有りませんので。お爺様も私を想って買い揃えたのでしょうけど・・・以前も申しましたが体は1つしかないのに住む場所が幾つもあっても仕方ありません」
育った環境もだが、それまで人の顔色を伺っていたレイニー。
元々物欲も薄い方で捨てる事に目覚めてからは最小限を追及してしまっている。
グラウペルもここに持ち込むものは最小限で良いと、宮にあるものを処分しようと考えていた。
「騎士団から10日ほど休みを貰っているんだが、4日後ではなく明日でも買い物はどうだろうか」
「病み上がりですよ?そう言う時こそ大事を取るものです」
「それなりに鍛えているからね。行軍中は熱が下がれば――」
「ここは軍隊ではありません。夜間は私1人なので昨夜のような事は困るのです」
「そうだな。軽率だった。では予定通りに。4日後までには完全復活するように努める」
「是非そうなさって。ですが買い物は予定を伸ばします。4日後に侍医ももう一度診察と言っておりましたので」
「そうだな・・・承知した」
ショボンとしたグラウペルにレイニーは声を掛けるのも忘れない。
「行かない訳ではありません。体が優先なだけです」
「うんっ!」
我ながら単純だとグラウペルは思うが、中止になった訳ではない事が嬉しかった。
そうしているうちにもレイニーの屋敷は改修工事も進み、家屋としての部分は小さくなっていく。解体の時は大きな音がすると言われてはいたが、桁梁を落とした時は大きな音がして何ごとかとグラウペルも飛び上がった。
「仕事が早いな・・・1週間やそこらでここまで壊すんだな」
「造る時は時間がかかるもの。壊すのは一瞬です。信頼と同じですから」
「そうだな・・・肝に銘じておくことにするよ」
すっかり回復をしているのに「大事を取れ」とレイニーが言うのも健康管理は自己責任。流感を貰ってしまうのは不可抗力なので誰も咎めないが、無理をする事で他者に感染してしまう事もある。
きちんと治す事は自分の為ではなく一緒に働く同僚のため、同居人の為でもある。
当たり前のことが騎士団でも出来ていない現実をグラウペルは実感する事も出来た。
(本当に教えられる事ばかりだな)
数日屋敷に居て、ウロウロするとレイニーの生態も垣間見ることができる。
物欲が薄いと言ってはいたが、何かをする度に全力なのだ。他の令嬢のように流行を追うバイタリティーを別の事に使っているだけというのもグラウペルは感じた。
次期当主というのは他家でも重責だけれど、レイニーの場合はパウゼン侯爵家という他家とは比べ物にならない領民の人生も背負う事になる。
本当に金で解決できる事など問題にもならないと現パウゼン侯爵が言う通りなのだ。
窓から見える小さな菜園で庭師と共に人参を引き抜き、ドテンと尻もちをついて満面の笑みのレイニーと、キャロルとじゃれ合うレイニー。昨日は本宅の執務に行くと同行させてもらったが、真剣な顔で執務を行うレイニーと色々なレイニーを見てグラウペルは父の国王に手紙を書いた。
【臣籍降下の日を早めて欲しい】
しかし、文字にしてグシャっと丸め、また同じ文字を書いて丸める。
ゴミ箱に捨てるのではなく、それらを暖炉に放り込んで灰にした。
「自分だけで決めちゃだめだ。相談をしないと」
相談の相手は国王ではない。グラウペルは臣籍降下が最初から決められている王子なので今の段階では成婚したらという日数を消化するだけの日々。
相談をするのはレイニー。
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