上 下
14 / 49

第14話   領地行きの許可を取り付ける

しおりを挟む
「領地に行く件ですが、侯爵夫妻のお心の中だけに留めて頂きたいのです」
「ジェイには伝えるなと?」
「えぇ。海のものとも山のものとも思えない事を今から行うのです。成功した時のサプライズは大きければ大きいほど楽しいでしょう?」


イリスの中では結婚式を行ってまだ24時間も経っていないのが今だが、もう確定&認定している事がある。

【ラジェットとメアリーに関わってはいけない】である。

危険だ、面倒だと解っていてわざわざ関わる必要はない。

世間一般は判らないがイリスの感覚からして「弟の嫁」に献身的に寄り添うラジェットは非常に気持ちが悪い。

これが弟のライモンドが不慮の事故で亡くなったばかりなど事情があれば、義理とは言え家族が寄り添うのは解るが、20歳を超えているメアリー。

ライモンドが放蕩者でたんぽぽの綿毛のように風に吹かれるままあちこちに出掛けて長期に渡って家を空けるのは解っていての結婚。1人で寂しいのならライモンドについて行けばいいし、従者も同行しているのだから月に数回、帰らないのなら会いに行けばいいだけ。

旅費などライモンドに渡される金をメアリーも自由に使っているのだから何とでもなるのだ。

こういうヤカラとは距離を置くに限る。
3年はまだ始まったばかりで道のりは遠いがゴールが見えている分イリスは幸運。


なので、「貴方の息子と距離を置きたい」と直球を投げるのではなくサプライズと誤魔化した本音は次男のラッセルの事業にもチャチャを入れて壊したメアリーを遠ざけたい。それに尽きる。

貴族の女性が茶会を開くのはきゃっきゃウフフと楽しくお喋りを楽しんで、甘い菓子に舌鼓を打つためではない。夜会もだか家の事業に有利で有益な情報を引っ張ったり、家と家を繋ぐパイプの役目もある。

それをただの歓談、余興のように何もわからないのに飛び入ってかき回すようなTPOの判らない人間は不要なのだ。

レント侯爵に寄ればメアリーがライモンドと結婚したのは15歳の時。
潰れた理由は「偽装」なので廃業し潰れる直前まで優雅な生活をしていた事だろう。

イリスのように10歳前後から集金に回ったり、あくせく働いていれば茶会の重要性は理解出来たはずなのだから。

それに物理的距離のある別居であっても婚姻期間の算定には含まれる。
現にライモンドとメアリーは結婚後に顔を合わせたのはこの2、3年で日数にして1カ月に足らないが、ちゃんとカウントされているのだ。

物理的に距離を置けば面倒事に巻き込まれる事もない。
ラジェットだって別棟に住まいを移すイリスが本宅で泊まる時に「出て行ってくれ」と頼まなくて済むだろうし、メアリーだって「部屋の使い心地」を身を挺して行わなくて済む。

――あら?皆がWINWINじゃないの!素敵だわ――

「では、調査隊の編成が終わり、出立の日が決まったら教えてください。今日から昼間の間は実家で経理の仕事をしますが夜には戻りますので」

「ははは。イリスさんは働くのが好きなんだね」

「何もしなくてもお腹は空きます。だけど働いてお腹ぺこぺこになった方が食事をより美味しく食べられるからです。同じものなら美味しく食べたいじゃないですか。私、食いしん坊なんですよ?」


朝食のプレートもペロリと平らげたイリスだからかレント侯爵夫妻はクスリと笑って頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈 
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので 結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...