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アタシのシンデレラストーリー
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この回は3日目にして遂に「アタシの出番ね!」と意気込むソフィーリアの視点となります。
★~★
考えていた以上に快適な「愛人生活」はソフィーリアにとっては願ったり叶ったり。
朝起きた時から使用人が顔も洗ってくれるし、着替えもさせてくれる。
ソフィーリアは幼い頃から貧しい生活でずっと我慢を強いられてきた。
欲しいものがあっても両親は買ってくれないし、男爵の父親は何故か「お父様」と呼んでも母親の手前恥ずかしいのか返事を返してはくれなかった。
平凡な容姿の両親はきっと貧乏だから平凡な容姿をしているのだと絵本で学んだ。
絵本の世界は誰もが憧れるお姫様は可愛くて美人だし、王子様もキラキラと星や花が背の側に描かれた美丈夫。
貧しさと容姿は比例するとバイブルである3,4歳児用絵本はソフィーリアに世の全てを教えてくれた。
だから我慢が出来た。
だって、男爵の父が儚くなり、母親の実家に連れて行かれた時、使用人までもがソフィーリアに冷たく当たった。
その後母親が伯爵の後妻となってまた住まう場所が変わったが、ここでも令嬢の扱いは受けず使用人も冷たかった。
その母親も使用人と一緒になってソフィーリアには「立場を弁えろ」と辛く当たる。
――これは試練なんだわ。灰被り姫と同じ試練なのよ――
そしてソフィーリアはブラウリオと出会った。
そこからは生活の全てが一変した。
家まで借りてくれたブラウリオはまさにソフィーリアの王子様そのものだった。
意地悪をする母親や使用人からブラウリオは救い出してくれた。
ここから「アタシのシンデレラストーリーが始まる」とソフィーリアは喜びに打ち震えた
★~★
10年近く伯爵には戻らず、ブラウリオの借りてくれた部屋で一人暮らしをしていたけれど、やっと侯爵家に迎え入れられた日。アタシは絶対に忘れないわ。
首が痛くなるくらい高い天井。
デートで行った美術館で見た壺や絵画のある部屋。
全部がアタシのものだなんて信じられない!
引っ越した当日に、壺の中には何があるんだろうとひっくり返していたんだけど、あまりに重くて割ってしまったの。でも、ブラウリオのお母様は何を思ったか悲鳴を上げて倒れちゃった。
きっとアタシが壺の下敷きになったんだとびっくりさせてしまったのね。
悪いことをしちゃったなと思ったから「お見舞いに行きたい」と思ったのだけれど、一緒に住んでいるからお見舞いの品って何がいいかなって選んでいるうちに、元気になったみたい。
でも、貴族って面倒臭いと思っていたけどそれは家によるんだって判ったの。
だって、お義兄様の奥さんはいつも伯爵のお父様の顔色を伺ってビクビクしていたし、お母様もそう。
「伯爵様を怒らせないで」「お父様なんて呼んではいけません」「部屋で静かにしていてくれればいいの」「勝手な買い物なんかしないで」何かあるごとにアタシは叱られてばかり。
伯爵令嬢に見合うようなドレスを内緒で作って、驚かせようと思っただけなのに。
でも、ここは違う。
やっぱり侯爵家は伯爵家なんかよりもずっと格上だから、リオのお父様とお母様はすっごく気を使ってくれて、日中に会う事なんか先ずないの。
嫁姑って誰でも嫌になる問題があるのにここにはそれもないの。
きっとリオのお母様はアタシを認めてくれてるから口出ししようにも出来ないんだわ。
だけど、する事が無くて暇!なぁんて全く無いのよ。
暇を持て余してみたいなんて思っちゃうのも贅沢かしら。
何れは侯爵夫人だもの。その日に備えての準備を怠ることなんか出来ないとっても忙しい毎日。
リオの手伝いをしようとしたんだけれど、執務室にあるのはアタシが読めない文字ばかり書かれた紙の山。何度かその山を倒してしまって直そうとしたんだけど使用人に「しなくていいです」と言われちゃった。
きっとアタシの手を煩わせるほどの物じゃないって事なんだわ。
ドレスを頼む時もデザイン画を何枚も見て最高の1着にしないと!って思うと小物にも気を抜けないでしょう?見えない所からお洒落には拘らないと本物にはなれないの。
アタシはリオには愛されているけれど、何でも手に入る訳じゃないって分かってる物分かりもいい女だから3年とは言え正妻の女性よりも出張ってはいけないって制約もあるのよね。
いけないんだけど…どうしても気になるの。
3年とは言え正妻だもの。
捨て置かれた女ってとっても惨めだから、きっと‥‥伯爵家で与えられていた試練のようにアタシに意地悪を仕掛けてくるはず。
だからせめて「今は愛人なのよ?」って一歩引いてる謙虚なアタシだけど、リオは溜息がでるくらい美丈夫だし、何を仕掛けてくるかも判らない。
そんなしなくてもいい事まで気を回さなきゃいけないなんて。
「これも試練だわ。今が頑張り時なの!」
そう思ったアタシは、ちょっと暇そうにしているリオにおねだりをしてしまうのよ。
だって張り詰めた緊張って絶対に続かないもの。息抜きは必要よね。
「ねぇ。リオ。今日は帽子を買いたいわ」
「いいよ。行っておいで」
「ち~が~う~。リオに選んでほしいの。ねっ」
豪華な馬車に乗ってリオとお出掛けをすればリオは目が覚めるような美丈夫だから皆が振り返るの。1人で行ってもつまらないでしょう?
なのにリオは「忙しくて行けない」って言うのよね。
「じゃぁ、ここで選ぶわ。商会の人を呼んでくれる?」
「あぁ判った。手配するが今日の事にはならないぞ」
「どうして?じゃぁお買い物に行きたいっ。どうしても今日欲しいの。毎日我慢してるんだからご褒美くれてもいいでしょう?」
「わかったよ」
リオはやっぱりアタシには優しいの。
だけど、このお出掛けでリオは…変わっちゃったの。
★~★
考えていた以上に快適な「愛人生活」はソフィーリアにとっては願ったり叶ったり。
朝起きた時から使用人が顔も洗ってくれるし、着替えもさせてくれる。
ソフィーリアは幼い頃から貧しい生活でずっと我慢を強いられてきた。
欲しいものがあっても両親は買ってくれないし、男爵の父親は何故か「お父様」と呼んでも母親の手前恥ずかしいのか返事を返してはくれなかった。
平凡な容姿の両親はきっと貧乏だから平凡な容姿をしているのだと絵本で学んだ。
絵本の世界は誰もが憧れるお姫様は可愛くて美人だし、王子様もキラキラと星や花が背の側に描かれた美丈夫。
貧しさと容姿は比例するとバイブルである3,4歳児用絵本はソフィーリアに世の全てを教えてくれた。
だから我慢が出来た。
だって、男爵の父が儚くなり、母親の実家に連れて行かれた時、使用人までもがソフィーリアに冷たく当たった。
その後母親が伯爵の後妻となってまた住まう場所が変わったが、ここでも令嬢の扱いは受けず使用人も冷たかった。
その母親も使用人と一緒になってソフィーリアには「立場を弁えろ」と辛く当たる。
――これは試練なんだわ。灰被り姫と同じ試練なのよ――
そしてソフィーリアはブラウリオと出会った。
そこからは生活の全てが一変した。
家まで借りてくれたブラウリオはまさにソフィーリアの王子様そのものだった。
意地悪をする母親や使用人からブラウリオは救い出してくれた。
ここから「アタシのシンデレラストーリーが始まる」とソフィーリアは喜びに打ち震えた
★~★
10年近く伯爵には戻らず、ブラウリオの借りてくれた部屋で一人暮らしをしていたけれど、やっと侯爵家に迎え入れられた日。アタシは絶対に忘れないわ。
首が痛くなるくらい高い天井。
デートで行った美術館で見た壺や絵画のある部屋。
全部がアタシのものだなんて信じられない!
引っ越した当日に、壺の中には何があるんだろうとひっくり返していたんだけど、あまりに重くて割ってしまったの。でも、ブラウリオのお母様は何を思ったか悲鳴を上げて倒れちゃった。
きっとアタシが壺の下敷きになったんだとびっくりさせてしまったのね。
悪いことをしちゃったなと思ったから「お見舞いに行きたい」と思ったのだけれど、一緒に住んでいるからお見舞いの品って何がいいかなって選んでいるうちに、元気になったみたい。
でも、貴族って面倒臭いと思っていたけどそれは家によるんだって判ったの。
だって、お義兄様の奥さんはいつも伯爵のお父様の顔色を伺ってビクビクしていたし、お母様もそう。
「伯爵様を怒らせないで」「お父様なんて呼んではいけません」「部屋で静かにしていてくれればいいの」「勝手な買い物なんかしないで」何かあるごとにアタシは叱られてばかり。
伯爵令嬢に見合うようなドレスを内緒で作って、驚かせようと思っただけなのに。
でも、ここは違う。
やっぱり侯爵家は伯爵家なんかよりもずっと格上だから、リオのお父様とお母様はすっごく気を使ってくれて、日中に会う事なんか先ずないの。
嫁姑って誰でも嫌になる問題があるのにここにはそれもないの。
きっとリオのお母様はアタシを認めてくれてるから口出ししようにも出来ないんだわ。
だけど、する事が無くて暇!なぁんて全く無いのよ。
暇を持て余してみたいなんて思っちゃうのも贅沢かしら。
何れは侯爵夫人だもの。その日に備えての準備を怠ることなんか出来ないとっても忙しい毎日。
リオの手伝いをしようとしたんだけれど、執務室にあるのはアタシが読めない文字ばかり書かれた紙の山。何度かその山を倒してしまって直そうとしたんだけど使用人に「しなくていいです」と言われちゃった。
きっとアタシの手を煩わせるほどの物じゃないって事なんだわ。
ドレスを頼む時もデザイン画を何枚も見て最高の1着にしないと!って思うと小物にも気を抜けないでしょう?見えない所からお洒落には拘らないと本物にはなれないの。
アタシはリオには愛されているけれど、何でも手に入る訳じゃないって分かってる物分かりもいい女だから3年とは言え正妻の女性よりも出張ってはいけないって制約もあるのよね。
いけないんだけど…どうしても気になるの。
3年とは言え正妻だもの。
捨て置かれた女ってとっても惨めだから、きっと‥‥伯爵家で与えられていた試練のようにアタシに意地悪を仕掛けてくるはず。
だからせめて「今は愛人なのよ?」って一歩引いてる謙虚なアタシだけど、リオは溜息がでるくらい美丈夫だし、何を仕掛けてくるかも判らない。
そんなしなくてもいい事まで気を回さなきゃいけないなんて。
「これも試練だわ。今が頑張り時なの!」
そう思ったアタシは、ちょっと暇そうにしているリオにおねだりをしてしまうのよ。
だって張り詰めた緊張って絶対に続かないもの。息抜きは必要よね。
「ねぇ。リオ。今日は帽子を買いたいわ」
「いいよ。行っておいで」
「ち~が~う~。リオに選んでほしいの。ねっ」
豪華な馬車に乗ってリオとお出掛けをすればリオは目が覚めるような美丈夫だから皆が振り返るの。1人で行ってもつまらないでしょう?
なのにリオは「忙しくて行けない」って言うのよね。
「じゃぁ、ここで選ぶわ。商会の人を呼んでくれる?」
「あぁ判った。手配するが今日の事にはならないぞ」
「どうして?じゃぁお買い物に行きたいっ。どうしても今日欲しいの。毎日我慢してるんだからご褒美くれてもいいでしょう?」
「わかったよ」
リオはやっぱりアタシには優しいの。
だけど、このお出掛けでリオは…変わっちゃったの。
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