アメイジングな恋をあなたと

cyaru

文字の大きさ
上 下
10 / 41

魅力的な提案だけど

しおりを挟む
「だ、だったら・・・ここで暮らせばいい。別居なのならどこだって一緒だ。少なくともここなら私が貴女を守ってやれる」


ここでも耳がおかしくなったのかしら。
耳掃除のし過ぎは良くないと申しますが、清潔第一。月に1、2回でよいとお医者様から言われておりますが、実は私は10日に1度の頻度で耳掃除をするのです。

――適度に汚れていた方がいいのかしら――

はて?と首を傾げる私にアルフォンソ様は鼻を指で抓みながら再度仰ったのです。

「別居なのだったらこの屋敷も使わない部屋は幾つもある。それに私は子爵家の当主だが公爵家の子息でもあるし身元の確かさは折り紙付きだと自負している。何より暴力を振るうような男の元に別居と言えど返すのは騎士としても男としてもあり得ない」

――そぉなんですよ!!そうなの!――

私としても心配なのはその点なのです。

両家で「離縁ありき」とした契約ですので、婚約も白い結婚の期間に含めるために1年未満の半年としたのです。当初は、いえ、昨日までは別居ですし?顔を合わせるのも参加が回避できない夜会や茶会、つまり王族の方か公爵家がホストとなり「参加してね?」とわざわざ招待状を頂いた物に限って一緒に参加。

どうしても外せないのは年に3回ですし、近年に限って言えば近いうちに3人いる王子殿下のどなたかが立太子をされるでしょうから3年のうち1年だけは4回になる可能性がある程度。

3年間で最大10回の短時間の顔見世なので「ま、いいか」と思っただけなのです。

ですがそれでも、暴力系となると話は別。
何を思って手をあげたのか。

意図的であれば力で持って支配するドメスティックバイオレンス型のクズ。
無意識であればより質の悪いゲス。

クズとゲス。どっちがいいかなんて私には選べません。

このテのヤカラは老若男女問わず進化系。
最初は軽めの嫌がらせ的な悪口から始まり、最後は斬った張ったの世界。一歩足を踏み入れれば後戻りできない世界の住人には近寄らないのが一番なのです。

なんせ後戻りできないので改心とは無縁。物理的に隔離して人間を含め生きとし生けるものとの断絶をせねばなりません。治らないのですから接触を物理的に断つしかないのです。


しかしながら、そこに大きな問題が御座います。
この婚約が調った日。カレドス家にはパルカス侯爵家から多額の支援金が既に支払われているのです。

金銭援助を目的とした婚約、婚姻は国家間でも行われているので違法ではなく合法。この場合は暴力行為と金銭援助は全く別の問題ですので、1つの婚約に関わる事と言ってもそれを理由に破棄や解消は難しいのです。

せいぜい暴力行為については当主の話し合いで慰謝料をいくらにするか。
その支払方法は金銭で都度支払うのか、それともプールしておいて3年を待たずにこの関係が解消になった時に相殺するのか。その程度の違いにしかならないのです。

救いは後者の場合、離縁の慰謝料とは別にプールされた金が支払われるという事でしょうか。


前の婚約破棄でも娘である私に慰謝料が支払われましたが、それは当主同士の話し合いで決まった異例中の異例な出来事。通常は「家」に対して支払われるのです。


この婚約も破棄や解消をする方法がないわけではないのです。
支援された金に法定利息を付けて返金すればいいのですが、そうなれば数万、数十万の領民に飢えて死ねと言うに同義。カレドス家には出来ないのです。


「お言葉は大変に有難いのですが、お断り申し上げます」
「しかしそれでは君の身が危険だ」
「判っています。ですが相手がどんな方であれ家と家との約束です。3年を待たずに関係を無くすには借りたものを返すのが筋。恥ずかしながらカレドス家には出来ないのです」
「人身御供のような事を君がしなくても!」
「大義名分としてはそうでしょうけども、貴族の家に生まれたのならその身は領民の為に有ります。何らかの対応は必要でしょうけども大筋を変えることはできないのです」


アルフォンソ様はとてもお優しいのはよく判ります。
騎士様ですので、弱いものを虐めるヤカラは許せないのでしょうし、被害者が泣き寝入りする必要もないとお考えなのだと。

「貴女の言いたい事は解った。だがこの件は少し預からせてくれないだろうか。悪いようにはしないし貴女の両親にも私が責任をもって話をする。仮に侯爵家所有の屋敷に住まわねばならなくなったとしても最大限の配慮をするように働きかけてみようと思っている」


アルフォンソ様は公務中の出来事で私を保護しておりますので、騎士団などに報告の義務があるそうで、「ゆっくりしていてほしい」と言い残されてお出掛けになりました。


「お寛ぎくださいね」と至れり尽くせりな対応に全身が舌鼓を打っていた午後のお茶の時間。

バタバタと慌ただしくなったと思ったら、お母様が私に飛びついて来たのです。

「良かった!良かった!アナっ!!うわぁぁぁん」

「あの…お母様…重たいです」

よし!来いっ!と受け身を取ったとしても自身とほぼ同じ質量を持つ物体が飛びついてきたら転びます。床がフカフカのクッションだったから良かったものの、石や木の板だったら腰と後頭部を痛打つうだしていた所で御座いました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

王子様と朝チュンしたら……

梅丸
恋愛
大変! 目が覚めたら隣に見知らぬ男性が! え? でも良く見たら何やらこの国の第三王子に似ている気がするのだが。そう言えば、昨日同僚のメリッサと酒盛り……ではなくて少々のお酒を嗜みながらお話をしていたことを思い出した。でも、途中から記憶がない。実は私はこの世界に転生してきた子爵令嬢である。そして、前世でも同じ間違いを起こしていたのだ。その時にも最初で最後の彼氏と付き合った切っ掛けは朝チュンだったのだ。しかも泥酔しての。学習しない私はそれをまた繰り返してしまったようだ。どうしましょう……この世界では処女信仰が厚いというのに!

失意の中、血塗れ国王に嫁ぎました!

恋愛
私の名前はカトリーナ・アルティス。伯爵家に生まれた私には、幼い頃からの婚約者がいた。その人の名前はローレンス・エニュオ。彼は侯爵家の跡取りで、外交官を目指す優秀な人だった。 ローレンスは留学先から帰る途中の事故で命を落とした。その知らせに大きなショックを受けている私に隣国の『血塗れ国王』から強引な縁談が届いた。 そして失意の中、私は隣国へ嫁ぐことになった。 ※はじめだけちょっぴり切ないかも ※ご都合主義/ゆるゆる設定 ※ゆっくり更新 ※感想欄のネタバレ配慮が無いです

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

処理中です...