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旦那様が女性を連れて来た!
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この回は第三者的視点です
★~★
アルフォンソ・ロカ。27歳。未婚。
アルフォンソは筆頭公爵家のロカ公爵家の第二子、つまり次男としてこの世に生を受けた。
天は二物を与えずと言うけれど、アルフォンソが持っているのは二物どころではない。
王族の血も引くアルフォンソは思わず二度見、覗き見したくなる麗しいかんばせを持っている癖に、剣で鍛え上げた細マッチョな肢体まで手に入れた。
それだけではなく、公爵家の次男ともあって常に控えめでありつつも時にグイっと前に出てくる咄嗟の決断力と、こうと決めたらどこかのゴットンストーンのように動きそうで動かない曖昧な行動力を兼ね備えている。
その性格は間違いなく母親譲り。
アルフォンソの母親は美姫と言われ、諸外国からも「是非、我が妻に!」と数多くの縁談が舞い込んだ第3王女。
王位には第2王子であった兄がつく事になったが、強欲な第1王子を剣で打ち負かし「大兄様は大公となり中兄様を支え下さいませ!」と国の方向を決めてしまった豪傑な王女様。
第1王子も決して出来が悪かった訳ではないが「遠慮」を知らなかったのである。
国王となれば何でもできると思ったら大間違い。少し足らないという自身の不足を知り、常に周囲の意見に耳を傾け、最後は「私が責任を取る!」という決断力があれば良い。
無駄に賢かったり、自己顕示欲の塊だと国を統べるには不適格なのである。
ちょっと足らないくらいが臣下に「やってあげなくちゃ」と思わせるので上手く行くのだ。
多少優柔不断な部分もあったが、人たらしとも言われた第2王子を押して押して押しまくった。
そんな王女の夫となったロカ公爵は一言で言えば「優しい」男。
見た目は中の下。いつもオドオドとしていた幼馴染でもあったが、王女はロックオン。
何故なら…唯一の取柄である優しさが王女の中に僅かに残る萌えを刺激したからである。決して征服できる喜びを見出した訳ではなく、色々な箇所にさりげなく現れる優しさは貴重なのである。
王女の性格と容姿を余すことなく受け継いだアルフォンソだったが、欠点もある。
女性観に於いて基準が母親になるので、恐ろしくハードルが高いのである。
「もしかしたら、女性よりも男性が好き?」そんな悩みもあった幼少期、邪念、雑念を剣にぶつけるとめきめき頭角を現し、気が付けば近衛隊長になっていた。
今までに縁談が無かったわけではないが、求める女性像とはかけ離れた「お嬢様」な令嬢はお呼びでなく、尽く撃破してきた結果、27歳になってもお相手がいない非常事態。
そんなアルフォンソは23歳という若さで「独り立ちしなさい」と父の後押しもあって祖母が権利を持っていた子爵家を興し今に至る。
王位継承権も持つ公爵子息でありながらも子爵家当主。
仕える使用人達は、母親譲りの豪傑と父譲りの優しさを兼ね備えたアルフォンソの家で奉仕できる喜びを感じつつも「後は奥様がいれば」と常日頃から思っていた。
そんなアルフォンソが部下の兵士と共に馬を飛ばし帰宅してきた。
「おや?今日は殿下の警護では?」
そう考えたものの状況を見て思考が何もかも吹っ飛んだ。
――まさかの女連れ?!え?拉致してきた?!――
アルフォンソは騎乗しながらも意識を飛ばした女性をしっかりと抱きかかえ、馬から降りる際にも細心の注意を払って、なんと!なんと!私室の隣の部屋にある大きな寝台にその女性を寝かせたのだ。
「だ、旦那様!このかたは!?」
使用人の心は一つ!
望む答えも1つ!
真実は1つだけあればイイッ!
「大事な客人だ。殿下の元に引き返さねばならないが失礼にならないよう頼む」
心で涙が滝の如く流れ落ち、グッとガッツポーズをキメる執事ロカルド。52歳。既婚。
側仕えとなり苦節17年。ついにこの日が来たと喜びに打ち震えた。
「お任せくださいませ!」
「うん?気合が入っているな…何かあったのか?」
――さりげなく空気を読まない、いや平常心を装っている旦那様。そこが良いんです――
アルフォンソは全くそんなつもりはない。何処かの誰かに頬を張られた女性を保護しただけなのだが、執事を筆頭に盛大な使用人達の勘違いに気が付く事もなくアドリアナを寝かせるとパルカス侯爵家のパーティ会場に引き返して行ったのだった。
「さぁ!みんな、奥様が目覚めた時の為に働くのだ!」
<< おぉ!! >>
使用人の中では「奥様」となってしまったアドリアナが気絶からの爆睡から目覚めるのはこの12時間後。
運命の歯車が回り始めたのだった。
★~★
アルフォンソ・ロカ。27歳。未婚。
アルフォンソは筆頭公爵家のロカ公爵家の第二子、つまり次男としてこの世に生を受けた。
天は二物を与えずと言うけれど、アルフォンソが持っているのは二物どころではない。
王族の血も引くアルフォンソは思わず二度見、覗き見したくなる麗しいかんばせを持っている癖に、剣で鍛え上げた細マッチョな肢体まで手に入れた。
それだけではなく、公爵家の次男ともあって常に控えめでありつつも時にグイっと前に出てくる咄嗟の決断力と、こうと決めたらどこかのゴットンストーンのように動きそうで動かない曖昧な行動力を兼ね備えている。
その性格は間違いなく母親譲り。
アルフォンソの母親は美姫と言われ、諸外国からも「是非、我が妻に!」と数多くの縁談が舞い込んだ第3王女。
王位には第2王子であった兄がつく事になったが、強欲な第1王子を剣で打ち負かし「大兄様は大公となり中兄様を支え下さいませ!」と国の方向を決めてしまった豪傑な王女様。
第1王子も決して出来が悪かった訳ではないが「遠慮」を知らなかったのである。
国王となれば何でもできると思ったら大間違い。少し足らないという自身の不足を知り、常に周囲の意見に耳を傾け、最後は「私が責任を取る!」という決断力があれば良い。
無駄に賢かったり、自己顕示欲の塊だと国を統べるには不適格なのである。
ちょっと足らないくらいが臣下に「やってあげなくちゃ」と思わせるので上手く行くのだ。
多少優柔不断な部分もあったが、人たらしとも言われた第2王子を押して押して押しまくった。
そんな王女の夫となったロカ公爵は一言で言えば「優しい」男。
見た目は中の下。いつもオドオドとしていた幼馴染でもあったが、王女はロックオン。
何故なら…唯一の取柄である優しさが王女の中に僅かに残る萌えを刺激したからである。決して征服できる喜びを見出した訳ではなく、色々な箇所にさりげなく現れる優しさは貴重なのである。
王女の性格と容姿を余すことなく受け継いだアルフォンソだったが、欠点もある。
女性観に於いて基準が母親になるので、恐ろしくハードルが高いのである。
「もしかしたら、女性よりも男性が好き?」そんな悩みもあった幼少期、邪念、雑念を剣にぶつけるとめきめき頭角を現し、気が付けば近衛隊長になっていた。
今までに縁談が無かったわけではないが、求める女性像とはかけ離れた「お嬢様」な令嬢はお呼びでなく、尽く撃破してきた結果、27歳になってもお相手がいない非常事態。
そんなアルフォンソは23歳という若さで「独り立ちしなさい」と父の後押しもあって祖母が権利を持っていた子爵家を興し今に至る。
王位継承権も持つ公爵子息でありながらも子爵家当主。
仕える使用人達は、母親譲りの豪傑と父譲りの優しさを兼ね備えたアルフォンソの家で奉仕できる喜びを感じつつも「後は奥様がいれば」と常日頃から思っていた。
そんなアルフォンソが部下の兵士と共に馬を飛ばし帰宅してきた。
「おや?今日は殿下の警護では?」
そう考えたものの状況を見て思考が何もかも吹っ飛んだ。
――まさかの女連れ?!え?拉致してきた?!――
アルフォンソは騎乗しながらも意識を飛ばした女性をしっかりと抱きかかえ、馬から降りる際にも細心の注意を払って、なんと!なんと!私室の隣の部屋にある大きな寝台にその女性を寝かせたのだ。
「だ、旦那様!このかたは!?」
使用人の心は一つ!
望む答えも1つ!
真実は1つだけあればイイッ!
「大事な客人だ。殿下の元に引き返さねばならないが失礼にならないよう頼む」
心で涙が滝の如く流れ落ち、グッとガッツポーズをキメる執事ロカルド。52歳。既婚。
側仕えとなり苦節17年。ついにこの日が来たと喜びに打ち震えた。
「お任せくださいませ!」
「うん?気合が入っているな…何かあったのか?」
――さりげなく空気を読まない、いや平常心を装っている旦那様。そこが良いんです――
アルフォンソは全くそんなつもりはない。何処かの誰かに頬を張られた女性を保護しただけなのだが、執事を筆頭に盛大な使用人達の勘違いに気が付く事もなくアドリアナを寝かせるとパルカス侯爵家のパーティ会場に引き返して行ったのだった。
「さぁ!みんな、奥様が目覚めた時の為に働くのだ!」
<< おぉ!! >>
使用人の中では「奥様」となってしまったアドリアナが気絶からの爆睡から目覚めるのはこの12時間後。
運命の歯車が回り始めたのだった。
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