18 / 28
第二章 獣人の国バネーゼ
第十二話 魔人の女
しおりを挟む
「十年も前の話です」
キシムが重い口調で、昔話を語り出した。
「当時の私は十五歳でした。住んでいたのはこの街『ナイタス』ではなく、狼族だけで集まりできた、小さな集落でした。そこにディーバの家族も住んでいて、私とディーバは同い年と言うこともあり、幼なじみとして一緒に育ちました。そして、その集落の近くにある洞窟に、隠れるように暮らす鳥族の家族がいて」
そこまで言うと、彼はジジを見た。
彼女は俯いて下を見ている。
「大丈夫かい?」
キシムが声をかけると、ジジは無言で頷いた。
ーージジさんには、辛い過去なのかな。
その様子を見て、ミリアはそう思った。
キシムは話を続ける。
「ジジの家族は、薬を作るのが上手でした。だが、その姿を人目に晒すのを嫌っており、その販売方法に困っていました。そこで私達の集落の代表が、彼らが作成した薬を獣人や人間相手に仲介することで、彼らに生計が立てられるように協力していました。その中に当時十歳だったジジがいて、比較的に歳が近かった私とディーバの後をついて回る様になり、自然と仲良くなっていったんです」
彼の表情は、険しさを増す。
「あの日、いつもの様に、私とディーバが森へ狩りに出掛けた時の事。私達の集落の方角目指して、多くの魔獣が押し寄せて来ているのが見えました。私とディーバはすぐさま集落に帰り、大人達に伝えました。男達は武器を手に取り、防衛する体制を整えていました。しかし」
ジジの握る拳が震え始めた。
俯きの姿勢を崩さない為、表情は分からない。
だが彼女が醸し出す雰囲気に、ミリアは辛い思い出を引き出させてしまった事を後悔した。
彼女には悪いと思うが、話に耳を傾ける。
「歩速から考えて、集落に到着してもいい時間が過ぎました。だが魔獣は現れませんでした。そこでディーバの父親である『ライノス』さんは、その違和感に嫌な予感を覚え、ジジ達家族の元へ行こうとしました。そして、ディーバと私は同行しましました。ライノスさんには『危険かもしれないからダメだ』と反対されましたがね。それでも、無理矢理ついて行ったんです」
キシムは視線を下に落とした。
「それが、悪夢の始まりでした」
彼は記憶を辿りながら、その時の光景を克明に語り出した。
「いいかお前達。危ないと思ったら、直ぐに逃げるんだぞ」
ライノスは、鳥族の親子が住む洞窟を目指しながら、無理矢理ついてきた息子と幼なじみのキシムに釘を刺した。
彼は狼族の純血種。
体が大きく、身体能力に優れている。
人格も申し分なく、小さな集落だが代表を務める人物だ。
「親父、オレはもう十五だぜ?魔獣だって、もう倒せるだろ。問題ねぇよ」
「そうだよライノスさん。魔獣くらい何とでもなるよ」
ディーバとキシムは、自信あり気に言い放つ。
戦った事もないのに自信満々だ。
そんな二人を見て、ライノスは頭を掻く。
「倒した事もないから心配なんだ。侮るようなことはするなよ?油断したら死ぬんだからな」
そんな父親の注意など意に返さない。
「あぁ?オレが死ぬわけねぇだろ。強いんだからよ」
「僕も大丈夫だよ。ディーバの次に強いからね」
あくまで強気な二人に、ため息が溢れる。
ーーまぁ、魔獣と戦う事が決まったわけじゃないしな。あの家族が襲われてなければいいが。
ライノスは、洞窟に隠れ住む鳥族の家族を慮った。
その家族が何故洞窟に隠れ住んでいるのか知っている彼は、魔獣の目的がそちらに向いているかもしれないと心配していた。
「いいか?一つだけ約束だ。俺が逃げろと行ったら、従うんだぞ」
「へいへい。わかったよ、親父」
そう返事をしながら、ディーバは違う事を思っていた。
ーー親父がヤバそうな時に、オレが助けてやるよ。そんで、オレの力を認めさせてやる。
彼は、父親に認められたくて付いてきたのだ。
「仕方ない、その時はそうします」
それはキシムも同様で、手柄を立ててライノスに褒められたかったのだ。
ーーディーバより、カッコイイ所を見せてやる。
キシムも張り切っていた。
ジジ達家族が住む洞窟が近くなると、魔獣の姿が見え始める。
ーーやはり、狙いはこっちか!急がなければ!!
ライノスの走る速度が一段階上がる。
「お前達、もう帰れ!」
確実に魔獣と戦う事になるだろうと考え、二人に指示を出した。
だが、二人は従わない。
「親父、心配すんな。行けんぜ!」
「あぁ。問題ない!」
「あぁ?さっき約束しただろう!?」
「まだヤバくねぇだろ、なぁ?」
「そうだよ、ライノスさん」
危険だと説得したいが、そんな時間を割く暇はない。
「仕方ない。ヤバかったら逃げる!あと自分の命は、自分でしっかり守るんだぞ!」
そう言い残すと、さらに加速していった。
ーーくそっ、オヤジの野郎速いな!
その速度に二人はついて行けず、遅れをとった。
「負けらんねぇな!」
「あぁ!」
それでも二人は後を追った。
ライノスは魔獣達の群れに突入していく。
だが、彼に魔獣達は襲って来ない。
洞窟の方角を見つめ、大人しく佇んでいる。
ーーなんだ?何故襲ってこない。まさかっ!?
思い当たる節があり、嫌な予感が増していく。
ーー主が来ているのか?そうだとしたら、まずい!
そう思いながら、彼は急いだ。
ーー凄い数だ!同じ犬型ばかり。従えてる奴が来てるな!
洞窟周囲には、夥しい数の魔獣が集まっていた。
たが手前の魔獣達同様、動かずに一点を見つめている。
ライノスは大きく跳躍し、魔獣達を飛び越えて中心地に辿り着いた。
「なっ!?」
ライノスが驚き目を見張る。
輪の中心には、魔人の女が佇んでいた。
黒いドレスを身に纏い、紫紺の瞳を此方に向けている。
招かねざる客の動向を、伺っているようだった。
彼女の長い髪は、途中から肉質感のある触手へ変化している。
その触手に絡まり、ジジは空中に捕縛されていた。
動く気配が無く、よく見たら背中の翼がもぎ取られて、大量に出血している。
その血が滴る先に、彼女の両親が横たわっていた。
首が、胴体から切り離された状態で。
ライノスが惨劇を目の当たりにして絶句していた時、ディーバとキシムは追いついた。
そしてライノス同様、その光景に二人は凍りついた。
ディーバとキシムが恐怖に囚われ始めた時、ライノスは声を出さずに突撃した。
本気を出したライノスの速さに、魔人の女は反応が遅れた。
ライノスは手にした鉄棍で、魔人の触手を薙ぎ払う。
狙いすました一撃は、ジジを絡めていた触手を引きちぎり、彼女を奪うことに成功する。
だが、その行動に魔人の女は憤りを見せた。
「何をするの?良い子だから、大人しく返しなさい。そうすれば、貴方達には何もしないから、ね?」
「まだ、子供なんだぞ!」
ライノスがそう言うと、彼女の表情が憎しみの感情で歪む。
「その子は裏切り者の血を引いてる。子供だろうと、生かしておけないわ。私は忘れない!」
魔人の女は触手を動かし、ジジを奪い返そうとする。
ーーぐっ。この女、強いな!
ライノスは鉄棍を使い凌ごうとするが、片手がジジで塞がり思うように戦えない。
防戦一方で傷が増えていく中、ジジをディーバに託す事にした。
「おいディーバ!この子を守れっ!」
そう言い、触手の隙間をぬって彼女を放った。
「させないわ!」
魔人の女は触手を伸ばし、ジジを奪おうとした。
「ディーバ!頼んだぞ!」
だが、ライノスは鉄棍を使い壁となる。
力無くグッタリとした様子で、空中を漂うジジ。
着地点に素早く移動し、ディーバは受け取った。
背中から溢れる血が、グチャッと音を立てて腕を濡らす。
生暖かい感触が腕から伝わり、初めて恐怖を身近に感じた。
ーークソ!ビビるんじゃねぇ!動けっ!
恐怖にひりつく体に喝を入れ、ディーバは集落の方向へ体を向けた。
「キシムっ!!」
その呼びかけに、固まっていたキシムの時間も動き出す。
「逃げんぞ!」
「あぁ!」
二人は一気に駆け出す。
しかし、魔人の女が魔獣へ指示を出し、二人は危機を迎える。
「あの二人、食べちゃっていいわよ」
それまで微動だにしなかった魔獣達が、待ってましたと言わんばかりに、一斉に動き出す。
狙いは逃げ出した二人に定められ、一気に押し寄せる。
「キシム。絶対抜けんぞっ!」
「あぁ!やってやるっ!」
武器を手に、二人は応戦した。
彼らの戦闘能力は、魔獣達の数的圧力を少しだけ上回った。
「オラオラッ!道を開けやがれっ!!」
特に純血であるディーバの力は凄まじく、片手ながら魔獣を打ち払って行く。
取りこぼした魔獣は、キシムが片手剣で器用に捌く。
二人の連携で確実に前に進んで行く中、二人は思った。
ーー魔獣ぐらいなら全然いける!
そんな余裕も束の間だった。
魔獣達の雰囲気が突如変わる。
「あぁ?どうした!かかって来ねぇのか!?」
急に襲って来なくなった。
彼らを囲むように輪を作り、ジッと見据えている。
ーーなんだ?
荒ぶる呼吸を吐きながら、二人は周囲を見回した。
背を向けていた方向に、魔獣達が並んで作った花道が出来ている。
そこをゆったりとした歩調で、魔人の女が歩を進めていた。
「良い子だから、その子を渡してくれないかしら?」
艶やかな体で軽く微笑む。
しかしその笑顔は、冷たく狂気に満ちている。
ーー何なんだ、この女。
圧倒的な存在感に、二人は萎縮した。
そんな雰囲気を察して、彼女は二人に諦めさせるためにある物を見せた。
「邪魔をしないなら、貴方達に用は無いわ。命を吸い取るようなことは、したくないのよ。この獣人みたいに、ね?」
彼女の背後から出て来た物に、目が釘付けになった。
それは、魔人の触手に絡まれ、体が萎んだように細くなったライノスの姿だった。
筋骨隆々だった体は見る影も無く、生気が感じられない。
動かないことから察するに、もはや死んでいると思われた。
キシムは恐怖に震えながら思った。
ーー命を吸い取る?それじゃあ、ライノスさんは?ライノスさんは!?
頭では理解していたが、信じたくは無く否定したかった。
先程まで勇ましく戦う姿を見ていただけに、死んでしまった事が信じられなかった。
悲しみの感情が襲ってくる前に、彼の視界をジジの体が覆った。
咄嗟に受け取ると、ディーバは突進していた。
「テメェ!親父を、離しやがれぇっ!」
咆哮と共に武器を構え、高く跳躍した。
敵わない相手と理解していても、ディーバの中では感情が弾けて自制が効かない状態だった。
それほどまでに、父親の無残な姿が堪えたのだ。
握りしめた棍棒を天高く振り上げ、最高到達点から一気に振り下ろす。
まさに渾身の一撃だった。
「ぐぅっ!」
だがその攻撃は届くことはなかった。
呆気なく触手に弾かれ、そして体ごと吹き飛ばされる。
体勢を崩しながらも、なんとか受け身を取ったディーバに、魔人の女の脅威が迫る。
「あらぁ、貴方のお父さんだったの?ごめんなさい、ね?もう死んじゃったわ。寂しくないように、すぐに同じようにしてあげる、ね!」
言葉尻に艶やかな体を縮めたかと思ったら、爆発的な加速を繰り出して、吹き飛ばしたディーバを追撃する。
近づく魔人の女に、ディーバは憎しみの感情をぶつけた。
「ナメんじゃねぇ!ぶっ殺してやる!」
理性が吹き飛び、殺意に支配されたディーバの力は跳ね上がった。
普段の様子とは違い、限界を超えた戦闘力を見せて魔人の女に拮抗する。
「親父を返しやがれぇっ!!」
父親と同じように、棍棒で触手を引きちぎり、相手に迫ろうとする。
何度も何度も引きちぎるが、触手はすぐに再生して、近づく事が出来ない。
あと二メートル近づけば、父親に手が届くのに、それが出来ない。
ーークソ!クソ!クソッ!!
魔人の女に圧倒され、ジリジリと後退を余儀なくされていた。
その頃キシムは、自身を囲う魔獣達をいなす事に集中していた。
ディーバが抜けて凌ぐ事すら難しくなっていた。
少しでも気を抜くと、命を落としかねない状況だ。
「邪魔なんだよ!」
ーーアイツの助太刀を、しないといけないんだよ!
魔獣を斬り裂きながら、状況を変えるために策を考える。
ーージジを見捨てれば。
腕に抱く女の子は、翼がもがれた箇所から大量に出血している。
連れ帰ったとしても、助かる見込みは少ないだろう。
だが簡単には割り切れない。
ーーライノスさんの最後の頼みだろ!見捨てられるわけがない!
尊敬するライノスが、命と引き換えに救い出した子。
その意味が重く、ジジは見捨てられない。
ーーどうすればいい?どうしたらいいっ!?
気は焦り、考えることも難しくなる。
彼の体に刻まれていく傷が、時間と共に増えていった。
「フフフッ」
そんな状況を嘲笑うかの様に、魔人の女は不敵に笑う。
「笑うんじゃねぇ!笑うんじゃねぇ!!」
怒りで更に力強さが増すが、状況は良くならない。
魔人の女が繰り出す触手の打撃は、疲労で素早さが落ちる棍棒を擦り抜けて来る。
肉を打ち付ける鈍い音や、骨のひび割れる音がディーバの鼓膜を揺らす。
ーー痛ぇ!だが、コイツは許さねぇ!
その怒りだけが、彼を支え続けていた。
「頑張るわ、ね?結果は変わらないのに。早く諦めてくれないかしら」
魔人の女は退屈気に言い放った。
その言葉に激昂したディーバは、守ることを辞めた。
「冗談じゃねぇ!!」
魔人の女を見据えて、彼は捨て身で突進した。
その突進は自身の血しぶきが混じり、赤い炎の様に魔人の女に迫った。
「くたばれやぁ!!」
渾身の力を込めた一撃を、魔人の女の頭を狙い、打ち下ろした。
だが、彼女は鼻で笑う。
「残念、ね?」
魔人の女の細い触手が何本も集まり、太くなった触手がカウンターの様にディーバの腹部を突く。
グチッと鈍い音が響き、バキッと砕ける音が同時に鳴った。
そして放物線を描いて、ディーバは吹き飛んだ。
体を貫くことは無かったが、受ける衝撃は細い触手に比べて数倍に跳ね上がっていた。
それは彼の意識を吹き飛ばすには充分過ぎる威力で、ディーバは受け身を取ることなく地に落ちた。
ディーバの体は、キシムの元へ狙ったように吹き飛んで来た。
ーーなんだ!?ディーバ?
突如降ってきた物がディーバだとすぐに気付いた。
彼はピクリとも動かず、口から血を流している。
そんな姿を見て、絶望が心を覆っていく。
払拭しようと、キシムは大声を上げた。
「ディーバ!しっかりしろ!起きてくれ!」
返事は返って来ない。
「ディーバ!起きろ!ディーバ!!」
その言葉は虚しく響いた。
呼びかけても、反応がない事に絶望は膨らむ。
諦めの気持ちが湧き、足に力が入らなくなる。
そのまま彼は、ジジを抱えたまま座り込んだ。
ーー終わった。
打開策が無く、打ちひしがれるように項垂れる。
最後は魔獣に食われて終わる。
その姿を想像していたが、魔獣が襲って来ない。
疑問が湧き、顔を上げ辺りを見回した。
魔獣達は道を開けて整列している。
その道を、ヒールの音をコツコツと響かせながら、魔人の女が近づいて来た。
ーー自ら引導を下すのか。
そう思った。
だが、彼女は選択を与えた。
「貴方は、どうするの?死にかけの子と、裏切り者は殺しちゃうけど。大人しく差し出すなら、命は吸わないであげる」
その言葉に、キシムの心は大きく掻き乱された。
ーー助かる?死にたくない。逃げ出したい。たが、ディーバが。ジジが。
魔人の女が近づいて来る中、キシムは恐怖から逃れたい気持ちと、親友を見捨てる事ができない気持ちで揺れていた。
どちらの感情が作用したのか判らないが、彼は自然と涙が溢れた。
それを見て、魔人の女が諭すように言う。
「鳥族以外はどうでもいいのよ。自分の命が大事なら、その二人を置いて去りなさい、ね?」
まさに、悪魔の如き囁きだった。
ーー置いていけ。どうせ二人は助からない。そうすれば自分は助かる。助かるんだ!
追い詰められた思考で、その様に判断した。
「わかっ」
震える声で『わかった』と言いかけた時、ディーバのか細い呼吸が聞こえた。
ーー生きてる。
そう実感した時に、ディーバとの思い出が溢れ出す。
一緒にメシを食い、一緒に笑い、一緒に泣いた日々。
幼なじみで親友のディーバ。
ーー見捨てない。裏切らない。死ぬ時は一緒だ!
震える足を抑えて立ち上がり、ボロボロになった片手剣を魔人の女に向けて叫ぶ。
「ふざけんな!コイツは死なさねぇ!オレが守る!」
心の底から出した本音は、周囲に荒々しく響いた。
そう叫んだものの、打開策があるわけでもない。
彼はただ、一緒に死ぬ覚悟を宣言しただけなのだ。
「そう。残念、ね?仲間を想うその気持ち。とても尊いわ、ね」
魔人の女は冷たい微笑みを初めて崩した。
キシムの仲間を想う気持ちに打たれ、表情に影を落としていた。
だが、キシムの瞳をキッと見据えると、お別れを言った。
「さよなら」
触手が動く。
貫ける様に先を細く尖らせ、自身に向かってくる。
ーーここまでか。だが、これでいい。
静かに目を閉じたキシムの顔は、血まみれになりながらも、達観した表情をしていた。
キシムが重い口調で、昔話を語り出した。
「当時の私は十五歳でした。住んでいたのはこの街『ナイタス』ではなく、狼族だけで集まりできた、小さな集落でした。そこにディーバの家族も住んでいて、私とディーバは同い年と言うこともあり、幼なじみとして一緒に育ちました。そして、その集落の近くにある洞窟に、隠れるように暮らす鳥族の家族がいて」
そこまで言うと、彼はジジを見た。
彼女は俯いて下を見ている。
「大丈夫かい?」
キシムが声をかけると、ジジは無言で頷いた。
ーージジさんには、辛い過去なのかな。
その様子を見て、ミリアはそう思った。
キシムは話を続ける。
「ジジの家族は、薬を作るのが上手でした。だが、その姿を人目に晒すのを嫌っており、その販売方法に困っていました。そこで私達の集落の代表が、彼らが作成した薬を獣人や人間相手に仲介することで、彼らに生計が立てられるように協力していました。その中に当時十歳だったジジがいて、比較的に歳が近かった私とディーバの後をついて回る様になり、自然と仲良くなっていったんです」
彼の表情は、険しさを増す。
「あの日、いつもの様に、私とディーバが森へ狩りに出掛けた時の事。私達の集落の方角目指して、多くの魔獣が押し寄せて来ているのが見えました。私とディーバはすぐさま集落に帰り、大人達に伝えました。男達は武器を手に取り、防衛する体制を整えていました。しかし」
ジジの握る拳が震え始めた。
俯きの姿勢を崩さない為、表情は分からない。
だが彼女が醸し出す雰囲気に、ミリアは辛い思い出を引き出させてしまった事を後悔した。
彼女には悪いと思うが、話に耳を傾ける。
「歩速から考えて、集落に到着してもいい時間が過ぎました。だが魔獣は現れませんでした。そこでディーバの父親である『ライノス』さんは、その違和感に嫌な予感を覚え、ジジ達家族の元へ行こうとしました。そして、ディーバと私は同行しましました。ライノスさんには『危険かもしれないからダメだ』と反対されましたがね。それでも、無理矢理ついて行ったんです」
キシムは視線を下に落とした。
「それが、悪夢の始まりでした」
彼は記憶を辿りながら、その時の光景を克明に語り出した。
「いいかお前達。危ないと思ったら、直ぐに逃げるんだぞ」
ライノスは、鳥族の親子が住む洞窟を目指しながら、無理矢理ついてきた息子と幼なじみのキシムに釘を刺した。
彼は狼族の純血種。
体が大きく、身体能力に優れている。
人格も申し分なく、小さな集落だが代表を務める人物だ。
「親父、オレはもう十五だぜ?魔獣だって、もう倒せるだろ。問題ねぇよ」
「そうだよライノスさん。魔獣くらい何とでもなるよ」
ディーバとキシムは、自信あり気に言い放つ。
戦った事もないのに自信満々だ。
そんな二人を見て、ライノスは頭を掻く。
「倒した事もないから心配なんだ。侮るようなことはするなよ?油断したら死ぬんだからな」
そんな父親の注意など意に返さない。
「あぁ?オレが死ぬわけねぇだろ。強いんだからよ」
「僕も大丈夫だよ。ディーバの次に強いからね」
あくまで強気な二人に、ため息が溢れる。
ーーまぁ、魔獣と戦う事が決まったわけじゃないしな。あの家族が襲われてなければいいが。
ライノスは、洞窟に隠れ住む鳥族の家族を慮った。
その家族が何故洞窟に隠れ住んでいるのか知っている彼は、魔獣の目的がそちらに向いているかもしれないと心配していた。
「いいか?一つだけ約束だ。俺が逃げろと行ったら、従うんだぞ」
「へいへい。わかったよ、親父」
そう返事をしながら、ディーバは違う事を思っていた。
ーー親父がヤバそうな時に、オレが助けてやるよ。そんで、オレの力を認めさせてやる。
彼は、父親に認められたくて付いてきたのだ。
「仕方ない、その時はそうします」
それはキシムも同様で、手柄を立ててライノスに褒められたかったのだ。
ーーディーバより、カッコイイ所を見せてやる。
キシムも張り切っていた。
ジジ達家族が住む洞窟が近くなると、魔獣の姿が見え始める。
ーーやはり、狙いはこっちか!急がなければ!!
ライノスの走る速度が一段階上がる。
「お前達、もう帰れ!」
確実に魔獣と戦う事になるだろうと考え、二人に指示を出した。
だが、二人は従わない。
「親父、心配すんな。行けんぜ!」
「あぁ。問題ない!」
「あぁ?さっき約束しただろう!?」
「まだヤバくねぇだろ、なぁ?」
「そうだよ、ライノスさん」
危険だと説得したいが、そんな時間を割く暇はない。
「仕方ない。ヤバかったら逃げる!あと自分の命は、自分でしっかり守るんだぞ!」
そう言い残すと、さらに加速していった。
ーーくそっ、オヤジの野郎速いな!
その速度に二人はついて行けず、遅れをとった。
「負けらんねぇな!」
「あぁ!」
それでも二人は後を追った。
ライノスは魔獣達の群れに突入していく。
だが、彼に魔獣達は襲って来ない。
洞窟の方角を見つめ、大人しく佇んでいる。
ーーなんだ?何故襲ってこない。まさかっ!?
思い当たる節があり、嫌な予感が増していく。
ーー主が来ているのか?そうだとしたら、まずい!
そう思いながら、彼は急いだ。
ーー凄い数だ!同じ犬型ばかり。従えてる奴が来てるな!
洞窟周囲には、夥しい数の魔獣が集まっていた。
たが手前の魔獣達同様、動かずに一点を見つめている。
ライノスは大きく跳躍し、魔獣達を飛び越えて中心地に辿り着いた。
「なっ!?」
ライノスが驚き目を見張る。
輪の中心には、魔人の女が佇んでいた。
黒いドレスを身に纏い、紫紺の瞳を此方に向けている。
招かねざる客の動向を、伺っているようだった。
彼女の長い髪は、途中から肉質感のある触手へ変化している。
その触手に絡まり、ジジは空中に捕縛されていた。
動く気配が無く、よく見たら背中の翼がもぎ取られて、大量に出血している。
その血が滴る先に、彼女の両親が横たわっていた。
首が、胴体から切り離された状態で。
ライノスが惨劇を目の当たりにして絶句していた時、ディーバとキシムは追いついた。
そしてライノス同様、その光景に二人は凍りついた。
ディーバとキシムが恐怖に囚われ始めた時、ライノスは声を出さずに突撃した。
本気を出したライノスの速さに、魔人の女は反応が遅れた。
ライノスは手にした鉄棍で、魔人の触手を薙ぎ払う。
狙いすました一撃は、ジジを絡めていた触手を引きちぎり、彼女を奪うことに成功する。
だが、その行動に魔人の女は憤りを見せた。
「何をするの?良い子だから、大人しく返しなさい。そうすれば、貴方達には何もしないから、ね?」
「まだ、子供なんだぞ!」
ライノスがそう言うと、彼女の表情が憎しみの感情で歪む。
「その子は裏切り者の血を引いてる。子供だろうと、生かしておけないわ。私は忘れない!」
魔人の女は触手を動かし、ジジを奪い返そうとする。
ーーぐっ。この女、強いな!
ライノスは鉄棍を使い凌ごうとするが、片手がジジで塞がり思うように戦えない。
防戦一方で傷が増えていく中、ジジをディーバに託す事にした。
「おいディーバ!この子を守れっ!」
そう言い、触手の隙間をぬって彼女を放った。
「させないわ!」
魔人の女は触手を伸ばし、ジジを奪おうとした。
「ディーバ!頼んだぞ!」
だが、ライノスは鉄棍を使い壁となる。
力無くグッタリとした様子で、空中を漂うジジ。
着地点に素早く移動し、ディーバは受け取った。
背中から溢れる血が、グチャッと音を立てて腕を濡らす。
生暖かい感触が腕から伝わり、初めて恐怖を身近に感じた。
ーークソ!ビビるんじゃねぇ!動けっ!
恐怖にひりつく体に喝を入れ、ディーバは集落の方向へ体を向けた。
「キシムっ!!」
その呼びかけに、固まっていたキシムの時間も動き出す。
「逃げんぞ!」
「あぁ!」
二人は一気に駆け出す。
しかし、魔人の女が魔獣へ指示を出し、二人は危機を迎える。
「あの二人、食べちゃっていいわよ」
それまで微動だにしなかった魔獣達が、待ってましたと言わんばかりに、一斉に動き出す。
狙いは逃げ出した二人に定められ、一気に押し寄せる。
「キシム。絶対抜けんぞっ!」
「あぁ!やってやるっ!」
武器を手に、二人は応戦した。
彼らの戦闘能力は、魔獣達の数的圧力を少しだけ上回った。
「オラオラッ!道を開けやがれっ!!」
特に純血であるディーバの力は凄まじく、片手ながら魔獣を打ち払って行く。
取りこぼした魔獣は、キシムが片手剣で器用に捌く。
二人の連携で確実に前に進んで行く中、二人は思った。
ーー魔獣ぐらいなら全然いける!
そんな余裕も束の間だった。
魔獣達の雰囲気が突如変わる。
「あぁ?どうした!かかって来ねぇのか!?」
急に襲って来なくなった。
彼らを囲むように輪を作り、ジッと見据えている。
ーーなんだ?
荒ぶる呼吸を吐きながら、二人は周囲を見回した。
背を向けていた方向に、魔獣達が並んで作った花道が出来ている。
そこをゆったりとした歩調で、魔人の女が歩を進めていた。
「良い子だから、その子を渡してくれないかしら?」
艶やかな体で軽く微笑む。
しかしその笑顔は、冷たく狂気に満ちている。
ーー何なんだ、この女。
圧倒的な存在感に、二人は萎縮した。
そんな雰囲気を察して、彼女は二人に諦めさせるためにある物を見せた。
「邪魔をしないなら、貴方達に用は無いわ。命を吸い取るようなことは、したくないのよ。この獣人みたいに、ね?」
彼女の背後から出て来た物に、目が釘付けになった。
それは、魔人の触手に絡まれ、体が萎んだように細くなったライノスの姿だった。
筋骨隆々だった体は見る影も無く、生気が感じられない。
動かないことから察するに、もはや死んでいると思われた。
キシムは恐怖に震えながら思った。
ーー命を吸い取る?それじゃあ、ライノスさんは?ライノスさんは!?
頭では理解していたが、信じたくは無く否定したかった。
先程まで勇ましく戦う姿を見ていただけに、死んでしまった事が信じられなかった。
悲しみの感情が襲ってくる前に、彼の視界をジジの体が覆った。
咄嗟に受け取ると、ディーバは突進していた。
「テメェ!親父を、離しやがれぇっ!」
咆哮と共に武器を構え、高く跳躍した。
敵わない相手と理解していても、ディーバの中では感情が弾けて自制が効かない状態だった。
それほどまでに、父親の無残な姿が堪えたのだ。
握りしめた棍棒を天高く振り上げ、最高到達点から一気に振り下ろす。
まさに渾身の一撃だった。
「ぐぅっ!」
だがその攻撃は届くことはなかった。
呆気なく触手に弾かれ、そして体ごと吹き飛ばされる。
体勢を崩しながらも、なんとか受け身を取ったディーバに、魔人の女の脅威が迫る。
「あらぁ、貴方のお父さんだったの?ごめんなさい、ね?もう死んじゃったわ。寂しくないように、すぐに同じようにしてあげる、ね!」
言葉尻に艶やかな体を縮めたかと思ったら、爆発的な加速を繰り出して、吹き飛ばしたディーバを追撃する。
近づく魔人の女に、ディーバは憎しみの感情をぶつけた。
「ナメんじゃねぇ!ぶっ殺してやる!」
理性が吹き飛び、殺意に支配されたディーバの力は跳ね上がった。
普段の様子とは違い、限界を超えた戦闘力を見せて魔人の女に拮抗する。
「親父を返しやがれぇっ!!」
父親と同じように、棍棒で触手を引きちぎり、相手に迫ろうとする。
何度も何度も引きちぎるが、触手はすぐに再生して、近づく事が出来ない。
あと二メートル近づけば、父親に手が届くのに、それが出来ない。
ーークソ!クソ!クソッ!!
魔人の女に圧倒され、ジリジリと後退を余儀なくされていた。
その頃キシムは、自身を囲う魔獣達をいなす事に集中していた。
ディーバが抜けて凌ぐ事すら難しくなっていた。
少しでも気を抜くと、命を落としかねない状況だ。
「邪魔なんだよ!」
ーーアイツの助太刀を、しないといけないんだよ!
魔獣を斬り裂きながら、状況を変えるために策を考える。
ーージジを見捨てれば。
腕に抱く女の子は、翼がもがれた箇所から大量に出血している。
連れ帰ったとしても、助かる見込みは少ないだろう。
だが簡単には割り切れない。
ーーライノスさんの最後の頼みだろ!見捨てられるわけがない!
尊敬するライノスが、命と引き換えに救い出した子。
その意味が重く、ジジは見捨てられない。
ーーどうすればいい?どうしたらいいっ!?
気は焦り、考えることも難しくなる。
彼の体に刻まれていく傷が、時間と共に増えていった。
「フフフッ」
そんな状況を嘲笑うかの様に、魔人の女は不敵に笑う。
「笑うんじゃねぇ!笑うんじゃねぇ!!」
怒りで更に力強さが増すが、状況は良くならない。
魔人の女が繰り出す触手の打撃は、疲労で素早さが落ちる棍棒を擦り抜けて来る。
肉を打ち付ける鈍い音や、骨のひび割れる音がディーバの鼓膜を揺らす。
ーー痛ぇ!だが、コイツは許さねぇ!
その怒りだけが、彼を支え続けていた。
「頑張るわ、ね?結果は変わらないのに。早く諦めてくれないかしら」
魔人の女は退屈気に言い放った。
その言葉に激昂したディーバは、守ることを辞めた。
「冗談じゃねぇ!!」
魔人の女を見据えて、彼は捨て身で突進した。
その突進は自身の血しぶきが混じり、赤い炎の様に魔人の女に迫った。
「くたばれやぁ!!」
渾身の力を込めた一撃を、魔人の女の頭を狙い、打ち下ろした。
だが、彼女は鼻で笑う。
「残念、ね?」
魔人の女の細い触手が何本も集まり、太くなった触手がカウンターの様にディーバの腹部を突く。
グチッと鈍い音が響き、バキッと砕ける音が同時に鳴った。
そして放物線を描いて、ディーバは吹き飛んだ。
体を貫くことは無かったが、受ける衝撃は細い触手に比べて数倍に跳ね上がっていた。
それは彼の意識を吹き飛ばすには充分過ぎる威力で、ディーバは受け身を取ることなく地に落ちた。
ディーバの体は、キシムの元へ狙ったように吹き飛んで来た。
ーーなんだ!?ディーバ?
突如降ってきた物がディーバだとすぐに気付いた。
彼はピクリとも動かず、口から血を流している。
そんな姿を見て、絶望が心を覆っていく。
払拭しようと、キシムは大声を上げた。
「ディーバ!しっかりしろ!起きてくれ!」
返事は返って来ない。
「ディーバ!起きろ!ディーバ!!」
その言葉は虚しく響いた。
呼びかけても、反応がない事に絶望は膨らむ。
諦めの気持ちが湧き、足に力が入らなくなる。
そのまま彼は、ジジを抱えたまま座り込んだ。
ーー終わった。
打開策が無く、打ちひしがれるように項垂れる。
最後は魔獣に食われて終わる。
その姿を想像していたが、魔獣が襲って来ない。
疑問が湧き、顔を上げ辺りを見回した。
魔獣達は道を開けて整列している。
その道を、ヒールの音をコツコツと響かせながら、魔人の女が近づいて来た。
ーー自ら引導を下すのか。
そう思った。
だが、彼女は選択を与えた。
「貴方は、どうするの?死にかけの子と、裏切り者は殺しちゃうけど。大人しく差し出すなら、命は吸わないであげる」
その言葉に、キシムの心は大きく掻き乱された。
ーー助かる?死にたくない。逃げ出したい。たが、ディーバが。ジジが。
魔人の女が近づいて来る中、キシムは恐怖から逃れたい気持ちと、親友を見捨てる事ができない気持ちで揺れていた。
どちらの感情が作用したのか判らないが、彼は自然と涙が溢れた。
それを見て、魔人の女が諭すように言う。
「鳥族以外はどうでもいいのよ。自分の命が大事なら、その二人を置いて去りなさい、ね?」
まさに、悪魔の如き囁きだった。
ーー置いていけ。どうせ二人は助からない。そうすれば自分は助かる。助かるんだ!
追い詰められた思考で、その様に判断した。
「わかっ」
震える声で『わかった』と言いかけた時、ディーバのか細い呼吸が聞こえた。
ーー生きてる。
そう実感した時に、ディーバとの思い出が溢れ出す。
一緒にメシを食い、一緒に笑い、一緒に泣いた日々。
幼なじみで親友のディーバ。
ーー見捨てない。裏切らない。死ぬ時は一緒だ!
震える足を抑えて立ち上がり、ボロボロになった片手剣を魔人の女に向けて叫ぶ。
「ふざけんな!コイツは死なさねぇ!オレが守る!」
心の底から出した本音は、周囲に荒々しく響いた。
そう叫んだものの、打開策があるわけでもない。
彼はただ、一緒に死ぬ覚悟を宣言しただけなのだ。
「そう。残念、ね?仲間を想うその気持ち。とても尊いわ、ね」
魔人の女は冷たい微笑みを初めて崩した。
キシムの仲間を想う気持ちに打たれ、表情に影を落としていた。
だが、キシムの瞳をキッと見据えると、お別れを言った。
「さよなら」
触手が動く。
貫ける様に先を細く尖らせ、自身に向かってくる。
ーーここまでか。だが、これでいい。
静かに目を閉じたキシムの顔は、血まみれになりながらも、達観した表情をしていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる